老師オグチの家電カンフー
第22回
バルミューダのケトルでドリップ。おいしいコーヒーを淹れるための寸止めコントロールと聴覚
2016年11月16日 07:00
私にとってコーヒーは、仕事道具と嗜好品の間にある存在です。集中するためのドラッグであり、豆を挽いてハンドドリップで淹れる程度には味にもこだわりはあります。
最近は、バルミューダの電気ケトル「BALMUDA The Pot」でドリップしています。喫茶店のマスターが使っているコーヒーポットのような細くカーブした注ぎ口が特徴で、普通のやかんよりもお湯が細く注げます。
ハンドドリップにおいては、空手の“寸止め”じゃないですが、お湯を止めないギリギリまで細く出すことが重要です。ていねいに注ぐと、コーヒーの粉がふわっと膨張し、香りが立ち、味も明らかに電気ポットで注いだのとは違います。
「BALMUDA The Pot」は、逆に勢いよくお湯を注ぐことも可能で、カップラーメンを作るときにも便利ですよ。
コントロールのしやすさが重要という点は、クルマに近いかもしれません。ステアリングにおいて繊細さと安定性、切れ味の良さを持つクルマは、気持ちよく運転できます。
感覚的かつ自在にコントロールすることに対して、どちらかというと男性のほうが強くこだわりがちじゃないでしょうか。
さて、電気ケトルでは、お湯が沸騰するとスイッチが切れる仕組みになっていますが、コーヒーを淹れるお湯の適温は90〜95℃前後とされています。したがって、沸かしてすぐではなく、少し時間を置いて淹れることになるのですが、この時間って無駄じゃないですか?
完全に沸騰してスイッチが切れるまで待たず、寸止めして使えばいいじゃないかと思うんですが、せっかちですかね? 僅かですが節電にもなりますし。
そこで、どのタイミングでスイッチを切るのが適切なのかを知るため、「BALMUDA The Pot」に温度計を入れて計測してみることにしました。
スイッチを入れ、50℃を超えるあたりから、「シャーッ」「ジャーッ」と細かい泡が出ている音がします。
90℃を超えると「ゴボゴボ」と大きな泡の音が増えてきます。耳を澄ませば、高音と低音がハッキリと分離して聞こえるはずです(オーディオ製品の試聴か! )。さらに温度が高まると、「シャーッ」「ジャーッ」という音が徐々に弱まり、消えていきます。そして完全に沸騰したとポットが判断するとスイッチが切れます。
温度はフタをわずかに開けた状態での計測なので、通常の使用とは異なってくるでしょうが、アバウトには「ゴボゴボ」という音が強まった時、もしくは「シャーッ」という音が弱まったあたりが、コーヒーを淹れる適温になっているわけです。
しかし、この使い方に問題はないのか。一度沸騰させるのが好ましいという見解もありそうです。赤ちゃんのミルクを作る場合(適温は50℃前後)は、殺菌の意味で一度沸騰させて冷ましたお湯を使うのが良いとされていますし。
しかし、コーヒーの場合は90℃以上ですから、問題はなさそうです(ダイオキシンがどうとか、怪しい情報はネット上に色々ありますが……)。そもそも、そこを気にしだしたら、水出しコーヒーも飲めませんよね。