藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム

令和に「さらし」を使ってみたら便利の正体が見えてくる!?
2026年8月17日 08:04
目の前にあるゴミ箱や色ペン、手帳カバーにサプリ、目薬……等々。そもそもいま身につけている下着やシャツ、靴下、そしてこの指の下にあるパソコンまでもが、すべて石油製品であると気づくと、さすがにギョッとする。
日用品や掃除道具、洗剤パッケージ、プラスチックのスプレーボトル。数多のお掃除指南記事でおすすめする「使い捨て掃除シート」なども、ほぼほぼポリエステル、レーヨン不織布。いまや石油製品の使い捨ては「当たり前」の営為だ。
これまではとにかく安く便利で時短に寄与していた石油製品。でも、これで本当にいいんだろうか、と少し考え込むことの多い数カ月を過ごしていたが、約20年ぶりに、あるものを筆者は手にした。
それが「真岡晒(もおかさらし)」。ご存じの方はいるだろうか?
素材は綿100%で、サイズは約34×10cm(幅×長さ)の長い布が商品としての「晒」というものである。江戸時代の産地名の名残で「真岡」と言い習わすゆえに「真岡晒」という名称でも呼ばれている。
一反(約10~12m)もの長さの「晒」を半分の長さに切った腹帯を、妊娠5カ月の頃から毎日お腹に巻いて過ごすために買ったのが、筆者の「晒」との出会いだった。
「万能の布」だと称されていた時代が長く、その用途の1つとして「腹帯」はあったが、かつては出産後に布おむつや肌着に作り替えてもいたようだ。でも、約20年前にしてもそんな時流ではなかった。筆者宅でもおむつは高分子ポリマーの紙おむつ、衣類は市販品で済ませることになった。
さて、この長い布はどうしよう? 普通の着物帯に親しんでいるわけでもない感覚においては、あまりに長すぎる……。そこで調べてみると、柄のない「手拭い」同様に使えるものらしい。
市販の手拭いの約90cmという長さに揃えて切り、そこから数年。我が家ではいろいろな用途に再利用している。水をよく吸う晒はタオル代わりになったし、出先の手拭きや、家の中でも蒸し物などの調理やちょっとしたキッチンタオルとしてもなかなか便利だった。
しかし、いつの間にか筆者の生活から消えていき、ここ数年では目にすることもなくなった。
約20年ぶりに触れた「真岡晒」は、約34×34cmの正方形にすると、より使いやすいことに気づいた。キッチンペーパーと同様に使えるものだが、一点注意したいことがある。
木綿は水を吸うけれど、現代の油汚れには相性が悪い。油汚れというか、調理の際に出る油に対しても同様だ。使い古しを掃除に使うにしても、石油製品のポリエステル布や不織布のほうが「油なじみ」がよくて拭き取りもスムーズ。ただ、ポリエステル布は洗剤で洗った程度では油汚れが落ちきらない。布と油の相性が良すぎるのだろう。
食べるものや身の回りの汚れの内容も変化した。「晒」が当たり前にあった時代からいまに至る間、石油という「油」のみならず、現代の生活にどれほどの「油」が蔓延しているのだろうか。少し考えたところで、呆然とする。
おそらく、現代の「真岡晒」はどのように使っても“趣味のエコグッズ”の域を出ない。その「使いにくさ」と「使いやすさ」を体感すると、令和の「便利」の正体が見えてくるような気がしている。
余談だが、おしゃれな「手拭い」を買うと、サイズはだいたい1枚(35×90cm)で1,500円程度するが「真岡晒」は1反(約34cm×10m)でもほぼ同額である。1,500円で1反買ったら11枚程度の無地の手拭いが手に入る。存外、エコは経済だったりする。


