教えて! 家電先生

完成度のダイソン、使いやすさの東芝、ちょいかけのシャープ。予算5万円で選ぶ、猫あり我が家のスティック掃除機

新しい家電製品を使って、「もっと暮らしを便利に」、「日々の暮らしをちょっと楽に」したい。でも売り場に行くと、たくさん製品がありすぎて戸惑うことも……。自分の生活スタイルや生活環境にあった製品はどれなのか? 家電のプロに聞いてみましょう。

 「予算5万円で、さっと使えて、猫あり家庭にも最適なスティッククリーナーが欲しい!」ということで、昨年12月に田中・河原塚両先生に、シャープ、東芝、パナソニック、ダイソンなどの6製品をピックアップしてもらいました。

 その情報を参考に、ダイソンの「Dyson V8 Animalpro」、東芝「TORNEO V cordless VC-CL1300」、シャープ「RACTIVE Air EC-A1R」の3製品をテスト。それぞれ2週間~1カ月使ってみると、各製品の特長や違いがかなり鮮明に。製品選びは楽しいのだけれど、ある意味悩ましい結果に……。

「トルネオ V cordless VC-CL1300」と「Dyson V8 Animalpro」

相談:気軽に使え・吸引力があり・カッコいいスティッククリーナーが欲しい

選んでほしいもの

・製品:スティック型掃除機
・予算:できれば5万円以内

プロフィール・使用環境

・名前:臼田勤哉
・年齢/性別/職業:40代/男性/AV Watch編集部
・家族構成:2名+猫
・部屋の広さ(間取り):70m2(3LDK)
・床:ほぼフローリング
・掃除頻度:いまは週1~2回だが、これからは毎日使いたい

現在の状況

・製品:2004年製シャープ「EC-BP2」
・不満点:コードによる制約、フィルタを洗ってから乾かすと異臭がする

こだわり

・こまめに掃除したいので、ケーブルをつなぐのが面倒。とにかくコードレス
・週1回は集中的に掃除するので、バッテリ駆動時間は長めがいい
・吸引力もそれなりに欲しい
・猫毛もちゃんと取れて、ゴミを捨てやすいもの
・設置スペースは小さめがよい
・格好イイのがいい

吸引力とバッテリ長持ちで隙なし! ダイソン「Dyson V8 Animalpro」

 最初に使ったのは「Dyson V8 Animalpro(アニマルプロ)」。実売価格は63,760円(税込)と、予算をかなり超過した上位モデルだけれど、編集部でちょうど実機を借りていたこと、またペット向けということで、V8アニマルプロを試してみた。

実売価格は2月27日現在のヨドバシ.comを参照(税込)。ポイント還元(10%)も含む金額となっています

Dyson V8 Animalpro

 重量は2.55kgで、手に持ってみると少し重く感じたが、使い始めれば問題なし。大きなヘッドは一気に掃除しやすく、吸引力は申し分なくパワフル。スティッククリーナーのパワーへの不安はすぐに払しょくされた。

Dyson V8 Animalproの付属品

 [強]モードもあるが、[標準]でもパワフルで、フローリングだけでなく、ラグやカーペットも標準で十分だ。大型のダイレクトドライブクリーナーヘッドで、掃除の効率も申し分ない。

 スティッククリーナーが欲しくなった最大の理由は、「猫毛を思い立ったときにササッと掃除したい」というもの。V8は、ちょっと重たいもののキャニスター型よりは手軽だし、なにより吸引力が素晴らしい。

 ちなみに、どのスティッククリーナーでも猫毛はきっちり掃除できた。性能の違いが出るのは「猫砂」だった。V8は、とにかく猫砂をよく吸ってくれるのがうれしい。

 我が家の猫砂は、木材系の「ニャンとも清潔トイレ 抗菌チップ」と、おから素材の「トフカスサンド」の2種類。ニャンともは大粒で吸引力が必要なタイプ、一方のトフカスサンドはチップ自体は小さいが、粉状のため床の汚れが目立つ。だが、V8であれば大きなチップのニャンとももトフカスサンドも、あっさりと吸い込んでくれて頼もしい。ニャンともをものともせずに吸引できたのは、今回試用の3製品ではV8のみ。猫砂吸引という点では、圧勝だ。

我が家の猫砂。左が「トフカスサンド」、右が「ニャンとも清潔トイレ抗菌チップ」

 また、V8で最も気に入った点が、手元のトリガーでON/OFF動作をコントロールできること。掃除自体はあまり気が進むことではないけれど、掃除機を自在に操っている感覚があり、掃除の達成感が味わえる。細かいことだが、気分良く掃除できるのは重要な要素だと思う。

 スティッククリーナーで不安視していた「バッテリの持ち」も問題なし。そもそも、V8の連続運転時間は、標準モードで25分、強モードで7分(ダイレクトドライブクリーナーヘッド装着時)で、今回の製品では一番長い。20分近く掃除した後に、空気清浄機や換気扇の掃除まで、充電なしに行なえた。

 ここまでは良いところばかり。実際気に入っているのだが、少し不満に感じたのは、「長さ」だ。東芝のVC-CL1300と比べるとかなり長く、2週間使っても、しっくりこなかった。身長175cmの筆者でもそう感じるので、より背の低いユーザーにとっては使いにくいかもしれない。この長さによって、“手軽さ”が少し損なわれているように感じる。

東芝「VC-CL1300」(上)と比べると、長さが気になる

 ただ、気になったのはそれくらい。課題は実売63,760円(税込)とほかの製品よりもやや高価ではあるが、価格に見合う魅力が感じられる。

これが一番使いやすい。東芝「TORNEO V cordless VC-CL1300」

 ダイソンV8の次に使ったのは、東芝「TORNEO V cordless VC-CL1300」(実売57,090円)。重さは1.9kgと、V8よりも600gほど軽いが、スペック以上に軽さを感じた。重量バランスや長さ、ヘッドブラシの大きさ、掃除のフィーリングなどがちょうどよく、使ってすぐに「これが欲しい!」と思ったほど。

TORNEO V cordless VC-CL1300
同梱品

 吸引力も十分で、自動モードでも十分にパワフル。この自動モードが秀逸で、ゴミの量に併せて吸引力を調整してくれるのがうれしい。「ゴミ残しまセンサー」により、汚れを検出すると強く動作し、汚れが減ってくると自動的に吸引をセーブしてくれる。ゴミを見つけると手元のインジケータが赤く点灯し、ある程度ゴミが取れると緑色の表示に戻るので、掃除の進捗がわかりやすい。進捗の目安になるのはもちろん、掃除を“やった気”にさせてくれる。

 気になったところだけすぐに掃除できる、という手軽さと吸引力のバランスが良さがとても良い。とても気に入ったが、大粒の猫砂、特に「ニャンとも」の吸引はイマイチだった。“猫用”としては、この点はマイナスかもしれない。

 とにかく第1印象が良かったVC-CL1300。このまま購入決定か? と思いきや、大きな問題が2点。「バッテリの持ち」と「ダストカップの容量」だ。

 まずはバッテリ。自宅の3部屋はフローリング中心なのだが、一気に掃除すると最低でも10分、だいたい15分ぐらいかかる。だが、最後の一部屋の途中ぐらいでバッテリが尽きてしまった……。スペック上のバッテリ駆動時間は、自動モードで約8~20分間、強モードで約8分間、セーブモードで約20~25分間。20分はかかっていないはずだが、一気に掃除する時にはやや心もとない。

 VC-CL1300では、自動モードでゴミを検知してくれるのが気持ちよく、他のスティッククリーナーよりもじっくり掃除してしまう。そのため、他の掃除機よりも掃除時間が長くなってしまったようだ。

 バッテリ問題の対応として、まず「強を使わない」という方法をとってみた。ラグやカーペットは[強]にしたくなるが、自動を中心にあっさり目に掃除したところ、翌週は3部屋無事に掃除を終えることができた。カーペットだと、自動でも強相当のハイパワーで動作する時間が多いため、動作時間にかなり影響するようだ。ただ、人間が機械の都合に付き合わされる感が、どうにも面白くない。

 自分の使い方だと、正直もう少し動作時間に余裕が欲しい。VC-CL1300は、ふとん用ブラシ、丸ブラシ、すき間ノズルに加え、ゴミを風で掃き出す「エアブローノズル」など、付属アタッチメントが充実しているのも特徴。しかし、部屋全体の掃除が終わった後に、ふとんやすき間掃除をしよう、といった時にも再充電が必要で、しかも充電時間が約5時間と結構長いのだ……。

 そして、もう一点気になったのが「ダストカップの容量」。我が家が汚いのかもしれないが、3部屋を一気に掃除すると、掃除中に2~3回ゴミ捨てが発生する。V8の場合は、掃除中のゴミ捨ては基本的に不要で、終了後に捨てるだけだったが、CL1300では掃除中に何度もゴミ捨てが発生して面倒だった。ゴミ捨て自体は簡単でいいのだが……。

 吸引力が高いからか、ラグやカーペットの毛がすごく取れる。特に、我が家のラグの1枚が、CL1300だとやたらと毛が抜けてしまうようで、1回の掃除だけでダストカップが一杯になってしまう。

 そのため、まず3部屋のフローリングを一気に掃除する。フローリングの掃除だけだったら、途中のゴミ捨ては無し、もしくは1回なので、それほど不満なし。その後、ラグやカーペットをあっさり目に掃除(バッテリ問題もあるので)するという運用にした。

ラグを掃除するとすぐにダストカップが一杯になってしまう

 掃除の気持ち良さは、VC-CL1300が一番お気に入り。ただ、バッテリとダストボックス容量については、自分の掃除スタイルにマッチしないという状態。別の掃除機を選ぶべきなのか、それとも自分の掃除スタイルを変えるべきなのか、という予想もしなかった悩みを抱えることになった……。

ちょいかけフックが最高すぎる。シャープ「RACTIVE Air EC-A1R」

 3台目はシャープの「RACTIVE Air EC-A1R」(実売価格54,360円)。業界最軽量の1.5kgが大きな売りだが、個人的にはドライカーボンを採用したデザインが気になって借りてみた。必要な時だけささっと取り出して使う、自分がイメージする「格好いいスティッククリーナー」を体現しているように見えたからだ。

RACTIVE Air EC-A1R
同梱品

 さっそく使ってみると、思ってたほど軽く感じない(笑)。いや、V8よりは明らかに軽快だし、持ち比べればトルネオとよりも相当軽いのだが、床掃除の操作抵抗など、実使用の軽快感にはそれほど違いがないように感じてしまう。見た目が“軽そう”と期待しすぎたのかもしれない……。もちろん、エアコンのフィルタなどの高所掃除時は、他のスティッククリーナーよりすごく軽いことは実感できた。

 主に自動モードで使いながら、カーペットやラグだけ強を使用した。吸引力は今回の3製品では一番弱いが、大きな不満はない。猫砂に関しては、大粒の「ニャンとも」は吸わないこともあるが、意外にもトルネオより吸ってくれる印象だ。ただ、動作音を猫が一番嫌がったのもRACTIVE Airだった。

RACTIVE Air EC-A1R

 基本性能は十分なのだが、物足りなさを覚えるのは、掃除の「達成感」が味わいづらいことだ。「掃除に達成感? 」と思われるかもしれないが、ダイソンのフック型コントローラやトルネオのセンサーを使った自動モードには、「マシンを操ってミッションを終えた」という充実感がある(ように思う)。それらを使った後だと、RACTIVE Airでの掃除後の印象がなんとも淡泊だ。どうせ誰も褒めてもくれない作業なのだから、自己満足を味合わせてくれる“演出”が欲しい。それらは前記の2製品比べて弱いと感じた。

 バッテリ交換式も特徴。最長運転時間は強モード約8分、標準モード約30分だが、別売のバッテリを使えば、さらに長時間利用できる。ただ、付属のバッテリで20分以上使えて、トルネオより安心して使えた。また、充電時間も80分と早めで、バッテリ関連の不安は少ない。

バッテリの取り外しも可能

 そして、RACTIVE Airで個人的に最高に気に入ったのが、「ちょいかけ」フックだ。本体部分にゴム製のフックを備えており、棚やテーブルなどに立てかけられる。掃除中はもちろん、未使用時も棚などに置くだけでOK。自宅でも使い終わったら猫の寝床になっている棚に引っかけておいたが、猫が少し触れたぐらいでは倒れることもない。スティッククリーナーの置き場に困る人は多いと思うが、ちょいかけフックはその問題をうまく解決していると思う。本体重量が軽いからこその特徴といえるかもしれない。

ちょいがけフックが最高

 他のスティッククリーナーは別室で充電していたが、RACITIVE Airはリビング(の棚)にずっと置いておけた。そのため、利用頻度が圧倒的に多かった。毎週の掃除には1台だとやや物足りないが、RACTIVE Airを使うと、明らかに掃除スタイルが変わると実感できた。いまの掃除機(キャニスター型)をそのまま使い続けて、RACITIVE Airを追加する、というのもありかな、と感じた。

猫の寝床の脇に「ちょいがけ」している

選んだのは……

 3製品使ってみてわかったのは、メーカーや製品によって、想定されている利用者のイメージがかなり違うということ。自分の「基本は週1+気になったときにさっとかける」という掃除スタイルにあった掃除機選びでは、Dyson V8はそのまま移行できそうだが、ほかの2製品は、工夫や従来の掃除機の併用が必要かな、と感じた。

 だが、そもそも、これまでの掃除スタイルにこだわりがあったわけでもない。いまの我が家は基本週1だが、考えてみれば、毎朝掃除する人もいれば、2~3日ごとに掃除する人も多いようだ。そういえば実家もほぼ毎日掃除していたし……。掃除機にあわせて掃除方法を変えるというのもあり、という気はしている。

 筆者の結論は、本命はダイソン「Dyson V8 animalpro(実売63,760円)」。ちょっと予算オーバーではあるが、大きな不満が無いという意味で、一番選びやすかった。価格を抑えた「V6 Fluffy」(実売価格54,210円)もあるが、V8と比べると、バッテリ駆動時間が20分(標準装備のヘッドは16分間、強モード6分間)と短めなのは気がかり。であれば、東芝でもいいような気がしてくる。

 フィーリング的に一番気に入った東芝「VC-CL1300」(57,090円)は、バッテリに不安がある。ただ、ふとんブラシなどのアタッチメントをあきらめれば、下位モデルの「VC-CL300」(42,850円)もほぼ同仕様で、1.5万円安価。この安さは魅力的で、この価格差であれば「自分が掃除機にあわせてもいいかな」と思えてくる。ということで、予算が確保できれば本命「Dyson V8 animalpro」、厳しければ対抗「VC-CL300」としたい。