藤山哲人の実践! 家電ラボ
第23回
4つの方式の加湿器を徹底検証! 前編は加湿器選びの指針を紹介
by 藤山 哲人(2015/2/13 07:00)
ここ数年、毎年売り場が広くなっているのが加湿器コーナーだ。通年販売されている、加湿機能付きの空気清浄機に加え、加湿器としてのみ機能するものがさまざま並んでいる。
また、雑貨屋でもカラフルでデザイン性に溢れる加湿器が、モクモクと煙を出す姿は、この時期の風物詩になったといってもいいだろう。
そんな加湿器だが、いざ買おうというとき、あまりの機種の多さに戸惑ってしまうのも事実。スイッチを入れると、いかにもうるいおいそうな煙が出るものから出ないものまで、価格も数千円から数万円のものまで。メーカーもさまざまで電気代も変わってくる。
加湿器だけに、五里霧中になってしまいがちな機種選び。今回の記事で、その霧を晴らしていこう。まず前編では、自分にベストマッチする加湿器選びができるように、やさしく説明していこう。
後編では、1人暮らしのリビングやファミリーの寝室にピッタリなオススメ加湿器を紹介するとともに、加湿能力や電気代などさまざまな実験データを比較してみたい。
加湿の仕方で4タイプ、特徴いろいろ、ライフスタイルに合わせて選ぼう
加湿器選びを難しくしている1つの原因が、4種類の加湿方法だ。ざっくりまとめると、次のような機能の違いがある。
加湿方式 | 電気代 | スチーム(湯気) | 水の腐敗 | お手入れ | 加湿開始までの時間 |
スチーム(湯沸かし)式 | △ | ○(一部見える) | ◎(ほぼ腐敗せず) | ◎(簡単) | △(お湯が沸くまで) |
気化式 | ◎ | × | ○(タンク内のみ) | △(やや手間) | ○ |
ハイブリッド式 | ○ | × | ○(タンク内のみ) | △(やや手間) | ◎ |
超音波式 | ◎(安い) | ◎(見える) | △(部屋に飛散) | ○ | ◎(瞬時) |
詳細は後述するが、ここでは4つの加湿方式があるという点と、それぞれに特徴があることだけを抑えて欲しい。
・スチーム(湯沸かし)式
電気ポットと同じ要領で加湿する。ポットの中に入れた水を沸かし、沸騰したときの蒸気で加湿する方式だ。湯気も見えるので、加湿しているイメージが分かりやすい。
・気化式
洗濯物を部屋干しする要領で加湿する。湯気が見えないので加湿力が弱く見えるが、部屋干し同様、確実に乾燥した空気は加湿される。多くの場合、内部の濡れたフィルターに送風するためのファンを持っている。
・ハイブリッド式
髪の毛をドライヤーで乾かす要領で加湿する。気化式にドライヤー同等のヒーターが内蔵されているものがほとんど。急速に加湿する場合はヒーターを暖め送風し、設定湿度になったらヒーターを切って気化式として機能する。違う方式を2つ組み合わせた加湿器はすべてハイブリッド式だが、発売されている製品のほとんどは気化式にヒーターを搭載したもの。
・超音波式
部屋の中で霧吹きを撒くのと同じ要領。ただ、水を霧状にする仕組みが霧吹きとは違い、超音波を使っている。毎秒2万回以上振動する超音波ユニットが、湯気のサイズまで水を砕き割るという感じだ。
湯気が見えるスチーム式と超音波式は、見た目にも部屋が潤う感じがして癒し効果も期待できる。しかし両者とも湯気が上がるので、近くにモノが置いてあると濡れてしまう。とくに湯気がよく見える超音波式は、放出される水の粒が大きいので、空気中に溶け込む前に床にたれ(霧吹きを上に向けて吹いたときと同じ)、床が水浸しになる場合もあるので注意したい。
湯気が見えない気化式とハイブリッド式は、放出される水の粒が目に見えないほど小さいため、家具などを濡らしてしまう心配がない。ただ湯気が見えないので、癒し効果は期待できず、(実際には潤っているが)潤っている感があまりない。
とにかく手間いらずで衛生的なスチーム式
お手入れが面倒という場合にオススメするのが、ポットのようにお湯を沸かすスチーム式。加湿する際は、タンクの水を必ず沸騰させるので雑菌がほとんど死滅するという特徴がある。また気化式やハイブリッド式と違い、加湿すると湯気が出るという分かりやすさもポイント。機構が単純で加湿能力が高いため、コンパクトな加湿器が欲しいという場合にオススメしたい。
短所は、ポット内でお湯を沸かすので熱い蒸気が出るという点。小さな子どもがいる家庭にはあまりオススメできない。また、構造は注ぎ口がない電気ポットなので、電気代が高くつく。一日中付けっぱなしにしておくと、電気代はほかの方式と目に見える差が出てくるだろう。
【メリット】
・ほとんどお手入れの必要がない
・小型でも加湿能力が高い
・湯気が出るので分かりやすい
【デメリット】
・熱い湯気が出るのでやけどに注意
・電気代が高い
【ベストマッチする人】
・一人暮らしの男性やとにかく時間のない人
・使い方を簡単にイメージできるので高齢の方に
マイコン制御で24時間付けっぱなしでもOKの気化式
単機能の加湿器としては数少ないが、空気清浄機との複合型も合わせると最もポピュラーなのが気化式だ。超音波式同様に消費電力が少なく、24時間付けっぱなしでも電気代がさほど気にならない。超音波式との大きな違いは、たいていの製品に湿度をコントロールする機能が付いている点だ。湿度50%に設定しておけば、あとは自動でお任せできる。
常に湿ったフィルターに風を当てて加湿するため、水やフィルターのお手入れを怠るとカビが発生しやすいという短所がある。しかし、超音波式と違い水を蒸発させるので、もしカビてもタンク内のみに食いとどめられる。
【メリット】
・湿度を自動制御するモデルが多い
・空気清浄機との複合モデルもある
・電気代が安い
【デメリット】
・こまめなお手入れが必要
・カビが発生しやすい
・湯気が出ないので加湿を確認しづらい
【ベストマッチする人】
・ファミリーのリビングでみんなの加湿器として
・ほぼ週単位でお手入れができる人
寝室など急速加湿したいならハイブリッド式
気化式はおもに24時間付けっぱなしで使うのに対し、寝室や子ども部屋というようにスポット的に使いたい場合はハイブリッド式がいい。同じ大きさの気化式に比べると、ヒーターを内蔵しているぶん急速に加湿ができる。
また気化式と同様、湿度を自動制御してくれるモデルが多いのも特徴。もちろんリビングの加湿器としても使えるが、気化式に比べるとやや電気代が高くつくので、24時間付けっぱなしはオススメできない。
【メリット】
・湿度を自動制御するモデルが多い
・小型でも加湿能力が高い
【デメリット】
・こまめなお手入れが必要
・カビが発生しやすい
・湯気が出ないので加湿を確認しづらい
・電気代がやや高め
【ベストマッチする人】
・寝室や子ども部屋など人がいるときだけ使う加湿器として
・ほぼ週単位でお手入れができる人
安くてデザイン豊富で見た目の楽しい超音波式
一番手軽でデザインも豊富なのが超音波式。電気店だけでなく、雑貨屋にも多く並び、ひときわ目立つ湯気を上げるので見た目にも楽しい。
電気代も安く、スイッチONですぐ加湿できるのが特徴。その反面、タンクに水を入れっぱなしにして放置しておくと雑菌が繁殖し、しかもそれを部屋中に撒き散らしてしまう恐れがある。そのため、タンクの水を頻繁に取り替え、清掃もこまめにする必要があるのが短所。雑菌が繁殖しないよう、除菌機能を搭載しているものもある。
価格は数千円のものからあるが、高級機だと数万円もする。価格の違いは、弱点をカバーするための工夫がメイン。特殊な超音波ユニットなどを使いより小さい水滴にして家具を濡らさないようにしたり、カビが発生しにくくする工夫などがなされている。
【メリット】
・安くてデザイン豊富
・スイッチONですぐ加湿
・湯気による癒し効果
・電気代が安い
【デメリット】
・繁殖した雑菌が部屋に噴霧される
・こまめなお手入れが必要
・湿度を自動制御するモデルが少ない
【ベストマッチする人】
・こまめにお手入れできる人
・アロマディフューザーとして使いたい人
空気清浄機能つきでも加湿性能は同じ! ポイントは加湿能力
どんなタイプの加湿器がベストマッチか分かれば、あとは使う部屋の大きさに合わせて、細かい機種選びをすればいい。加湿器には必ず対応畳数が明記されているので、使う部屋の大きさ以上のものを選ぼう。
またよく聞くのが「空気清浄機の加湿機能はオマケ程度で単機能の加湿器に劣るのでは?」という疑問だ。しかし決してオマケ機能などではなく、単機能の加湿器と性能は変わらないということを明言しておこう。
もし心配であれば「(定格)加湿能力」というスペックを見比べてみるといいだろう。この数値は、1時間に放出できる水分量(ml)を示したもの。最近の高気密住宅なら、300mlで8畳、500mlで14畳ほどの部屋を加湿できる。
メーカー名 | 製品名 | 本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 重量 | 加湿能力 | 消費電力 | 実売価格 (Amazon) |
タイガー魔法瓶 | ATC-A300 | 185×185×218mm | 1.5kg | 300mL/h | 450W | 6,900円 |
パナソニック | FE-KFK03 | 305×190×295mm | 3.1kg | 300mL/h | 10W | 14,300円 |
ダイニチ | HD-RX314 | 325×150×325mm | 3.3kg | 300mL/h | 161W | 11,640円 |
ダイソン | AM10 | 240×222×579mm | 3.4kg | 300mL/h | 55W | 48,480円 |
パナソニック | F-VKK20 | 230×230×612mm | 6.2kg | 300mL/h | 24W(加湿時) | 21,772円 |
加湿器は部屋のマスク! インフルエンザの予防効果も
声を大きくして訴えたいのは「加湿器によるインフルエンザ予防効果」だ。これは医学的にも解明されており、厚生労働省でもインフルエンザの予防には、加湿器で部屋の湿度をコントロールすることを推奨している。
インフルエンザ予防として一般的なのは、マスクをつけることだ。しかし、マスクにインフルエンザウイルスが捕らえられて予防できるわけではないので、目の粗いガーゼのマスクは何の効果もないはずだ。
目の粗いマスクでも予防できるのは、マスクと口(から肺にかけて)の間にできた湿度の高い空間で、インフルエンザウイルスが死滅するからだ。その境は、湿度50%(40~60%)と言われている。
冬場の乾燥した空気は10%ほどなので、ウイルスにとっては楽園。マスクをつけて湿度の高い空気で呼吸していれば、インフルエンザにかかりにくくなるというわけだ。
つまり、加湿器で部屋の湿度を上げることで、マスクをしているのと同じ効果が得られる。加湿器で加湿した空気が、インフルエンザウイルスを死滅させるのだ。
詳細は、「第20回:エアコン暖房ってホントに石油ファンヒーターより乾燥するの?」を参照して欲しいが、「ウチはエアコン暖房(電気ストーブやオイルヒーター)だから加湿しなくても大丈夫」という人は要注意だ。
実は、燃料を燃やさない暖房機器の方が乾燥しやすい。その理由は先に紹介した記事で詳しく説明しているが、エアコン、電気ストーブ、オイルヒーター、ハロゲンヒーターなどの暖房機器では、加湿器が必須。
逆に、石油ストーブやファンヒーター、ガスファンヒーターなど燃料を燃やす暖房は、燃料を燃やした際に化学変化で水が発生するので、湿度はそれほど下がらないのだ。
いずれにしても、人間の湿度に対する感覚は非常に鈍感なので、安い湿度計を1つ用意するといい。そして先に紹介した50%よりも低いなら、加湿器を入れることを強くオススメする。