家電店ちょっとイイ話

家電はコロナ給付金の反動で市場が振るわない今こそ買い時!?

本連載では、家電量販店業界を20年にわたりWatchしてきた筆者が、お得な買い方、店頭で見つけた面白い商品、家電製品を買う時に注意したいことなど、家電購入時に役立つちょっとイイ話をお伝えしていきます
「決算セール」の言葉が飛ぶ、新聞折り込みチラシ

今年度に入り、家電市場が振るいません。4月こそ前年実績(金額)を超えたものの、5月以降はマイナス基調が続いています。昨年のこの時期は、新型コロナウイルス感染症対策として、1人あたり10万円が支給された特別定額給付金が家電の購入にも使われたことにより、5-7月は前年比120%を超える売れ行きを見せましたが、今年はその反動が押し寄せ、ほぼ全方位的に不調となっています。

パソコンの減少幅が大きく、生活家電もマイナス傾向

特に下げ幅が大きいのはパソコンで、4-8月累計では約3割減にもなっています。昨年は緊急事態宣言により在宅ワークが推奨され、在宅ワーク環境整備のための補助金も支給されたことから、パソコン本体はもとより、プリンターやWebカメラ、マイク、パソコンデスクなど周辺機器市場も大いに活性化しました。しかし、その需要が一巡し、今年は大きな反動となって返ってきた格好です。

生活家電も振るいません。冷蔵庫が前年比20%強の減少、洗濯機は5%程度の減少、電子レンジをはじめとしたキッチン家電は10%前後の減少となっています。昨年は、在宅時間が増えたことで料理や家事を増える時間が増え、特別給付金をもって生活家電を買い替える消費者が増えました。特に冷蔵庫やレンジ、炊飯器などキッチン周りの家電は活況を呈しましたが、こちらも需要が一巡したものです。

エアコンに関しては、7月こそ猛暑の影響で前年実績を大きく上回りましたが、6月は長引いた梅雨、8月も雨が多かったことで、ともに30~40%前後の減少となっています。また、これまで順調に市場が回復してきたテレビに関しても、4-8月累計では5%程度の減少にとどまりました。期待されていたオリンピック効果はほぼ現れなかったようです。

半期末決算と新製品入れ替えの今がチャンス

例年、9月は半期末決算と新製品の入れ替え時期が重なり、価格が下がりやすいために家電の買い時シーズンとなります。既にほとんどの家電量販店は決算セールを展開しており、店頭には黄色に値下げ札が貼られた家電製品が多数展示されています。

店頭に「決算セール」の大きな幟

特に今年は、上記の市場低迷を受けて、半期末予算確保のために一部の店舗ではセールに力を入れています。店舗だけでなく、メーカー側としても売り上げ確保に向けて店舗横断でキャンペーンを展開しているケースも散見されます。まさに今が買い時なのですが、一つ注意したいのが、全世界的な半導体不足やコロナ禍による海外工場の生産能力減少などで、一部の製品では在庫数に余裕がなく、早めに商品が売り切れる場合があること。その場合、大きな値下げは期待できません。店舗をこまめに歩いて情報を収集しつつ、自分の生活にあった製品を探したいものです。

賢い買い物に裏技はない

筆者は家電ライターという立場から、「どうすれば安く買えるのか」とよく訊かれますが、値引き交渉に裏技はありません。以前にも紹介したと思いますが、値段交渉のセオリーは以下の6点です。

  1. 新製品発表後の現行品を狙う
  2. 複数店舗を回って値段交渉する
  3. まとめ買いする
  4. 今日買うという姿勢を見せる
  5. 持ち帰る
  6. 真摯な態度で臨む

メーカーも店舗も、新製品を発売後は新製品を売りたいため、旧製品の在庫はなるべく早く消化したいと考えています。新製品の進化機能も魅力的ですが、自分の使い方や予算と照らし合わせて折り合いがつくならば、旧製品の在庫があるうちに購入しましょう。

店舗によって、セールを展開するメーカーや機種は異なります。同じ製品でも大きく価格が異なる場合があります。複数の店舗を回り、それぞれに価格交渉し、提示された価格をメモしておきましょう。

ただし、店舗を構えないアキバ系Web通販や某大手ネット通販専門サイトの価格を引き合いに出して強気の交渉に望む人がいますが、これは間違いです。Web通販とは利益構造や流通構造が異なるため、同列に扱うことはできません。製品に初期不良があった場合の迅速な対応や長期無料保証、設置工事のスムーズな手配、不要家電の引き取りなど、店舗にしかないメリットが多く存在します。それを踏まえた上で、真摯に対応しましょう。

店員も人の子です。製品の仕入原価に店舗側の利益を含めると、値引きにも限界があります。居丈高な振る舞いで過度な要求をしたところで、望むような結果は得られません。相手の立場を慮り、常識的な落とし所を探りましょう。

大手家電量販店のオンラインショップでも夏物処分やまとめ買いセールを展開中

大型家電製品の場合、店頭で代金を購入しても売り上げには計上されず、お客の家に配送が完了してはじめて売り上げにカウントされる場合があります。配送日が月をまたいでしまうと、翌月の売り上げにカウントされる場合もあるので、できれば9月末までに売り上げを完了したいと考える店もあります。

また、お客に対しては無料配送としていても、店側は運送業者に配送料を支払っていることになります。こうしたことから、持ち帰ることができる製品は値段交渉できる可能性があります。

筆者はこの機会に、テレビとエアコンを買い替えました。テレビはリビングで10年間使用していたものが突然故障したため、最新の55型液晶全録モデルと6TBのハードディスク2台および3TBを1台、リビングで全録した番組をネットワークを介して書斎でも見るために同じメーカーの32型液晶テレビ、さらに在宅ワークで宅配便利用が増えたために書斎でもインターホンが受けられるように子機付きインターホンをまとめ買いしました。

さすがに持ち帰りはできなかったのですが、前述したセオリーの2、3、4、6を駆使した結果、合計で10%ほどの値引きを引き出すことに成功しています。複数の製品をまとめ買いする場合、値引きしやすい製品が含まれているということがあります。Aという製品の値引率はこの程度だけど、一緒に購入するBという製品はここまで下げられます、という組み合わせにより、トータルで結果が出る場合があるのです。

店舗指定メーカー限定、期間限定だが、まとめ買いで大幅値引きキャンペーンを実施している場合もある

エアコンに関しては、まだ使えそうなものの、購入してから10年が経過しており、真冬の寒い時期や真夏の暑い時期に壊れて慌てて買いに行く恐怖を考えると、良いタイミングだと思い買い替えたものです。今回は、1、2、4、6を駆使し、昨年発売のフラグシップモデルが値下がりしていたところにさらに10%ほどの値引きに成功しました。

エアコンは毎年10月から12月にかけて新製品が発売されるので、真夏の暑い時期が過ぎた今頃がお買い得なシーズンとなります。加えて、真夏のピークシーズンは設置工事が2週間待ちとなる場合もありますが、ピークを過ぎた今の時期は業者にも余裕があるため、購入翌日の設置工事も可能な場合があります。

9月の終わりまで既に10日を切ってしまいましたが、製品や店舗によってはまだ間に合うものもあるかもしれません。気になる製品があるなら、量販店へ!

近藤 克己