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家電1,000万台を業界に先駆けてリサイクルしたパナソニックの取り組み
(2013/10/16 00:00)
パナソニックの子会社であるパナソニック エコテクノロジーセンター(PETEC)は、2013年7月に、家電リサイクル処理台数1,000万台を達成したと発表した。2013年10月15日午前10時から行われた累計処理台数1,000万台到達の記念式典では、パナソニック エコテクノロジーセンターの冨田和之社長をはじめとする同社幹部のほか、兵庫県・井戸敏三知事などが出席。記念植樹や序幕式などが行なわれた。
また、同日、PETECに隣接するパナソニック アプライアンス社加東樹脂循環工場の再生樹脂生産設備を、報道関係者に公開した。
Aグループでは初の1,000万台突破へ
パナソニック エコテクノロジーセンターは、2000年4月4日に設立、2001年4月1日に操業したリサイクル処理専門会社。兵庫県加東市に、約3万8,570平方mの敷地面積、約1万2,700平方mの建物延床面積を持ち、家電リサイクル法による指定品目である冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコンのリサイクルを行なうほか、リサイクル技術の研究、開発、実証実験の拠点となっている。
リサイクルの対象は、パナソニック製品だけでなく、業界内でAグループと呼ばれる、東芝、ダイキン工業、日本ビクター、旧三洋電機、東京ガス、大阪ガス、コロナ、LG電子など約20社の製品。近畿2府4県の「指定引取場所」に集められた家電4品目をリサイクル処理する。Aグループのなかで1,000万台に到達したのはPETECが最初だという。
内訳は、テレビが400万台、冷蔵庫が90万台、エアコンが180万台、洗濯機が230万台となり、すでに合計で1,040万台に達している。
1,000万台のリサイクル処理によって回収した資源は、鉄15.4万t、銅2.4万t、アルミニウム1.4万tに達するという。
これは、鉄では自動車に換算して18万8,052台、銅では奈良の大仏に換算して96体、アルミニウムではジャンボ飛行機に換算して118機に匹敵するという。
2012年度のリサイクル処理実績は4品目合計で年間76万台であったが、地上デジタル放送への完全移行に伴うテレビの買い換え需要が集中した2009年は105万台、2010年は144万台、2011年は109万台をリサイクル処理した実績を持つ。
高精度樹脂選別システムなどでリサイクル率高める
PETECでは、高精度樹脂選別システムの採用や、エアコン室外機のネオジム磁石の回収など、独自のリサイクル技術を開発。これにより高い水準での選別およびリサイクルを可能としているのが特徴だ。
資源として活用できるリサイクル率は、テレビで90%、冷蔵庫で85%、エアコンで95%、洗濯機で93%となり、「一般のリサイクル拠点に比べて数%高いリサイクル率を維持している」(パナソニック エコテクノロジーセンター・冨田和之社長)という。
高精度樹脂選別システムでは、独自判別アルゴリズムにより、樹脂種とRoHS規制対象であるBr含有樹脂を判別し、樹脂片の飛翔軌道を予測した高精度なエア吐出システムにより選別。ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)を純度99.0%以上の精度で選別できるという。
また、ネオジム磁石回収システムでは、エアコンのコンプレッサーのなかにあるネオジム磁石を効率的に回収するもので、「回収には脱磁が必要であるが、一般的には300℃で加熱をして、それを冷やすという仕組みを採用している。当社では電気による脱磁を採用しているのが特徴。年間1,500kgの回収が可能であり、1人の作業員が1台あたり60秒で回収できる。1台あたり、7~8mmの長さ、2~3mmの厚さのネオジム磁石を4枚取り出すことになる」(パナソニック エコテクノロジーセンター開発部・竹下弘行部長)という。
そのほか、PETECでは、設計開発部門と連携して、リサイクル処理がしやすい設計へと変更するような取り組みも実施。「かつてのテレビには約400本のビスが使用されていたが、それが現在では4分の1となっている。またガイドラインを用意し、パナソニックの設計開発部門に対して、リサイクルしやすい形での設計をお願いしている」という。
再生樹脂の活用を促進する加東樹脂循環工場
一方、このほど初めて公開したパナソニック アプライアンス社加東樹脂循環工場は、PETECに隣接するアプライアンス社キッチンアプライアンス事業部内に設置しているもので、家庭用炊飯器の生産を行なう棟の中に設置し、2011年11月から稼働させている。
パナソニック アプライアンス社製造革新本部加東樹脂循環工場プロジェクト・西田保夫プロジェクトリーダーは、「パナソニックでは、2018年に投入資源における投入再生資源の比率を16%以上に高める目標を掲げており、そのなかで樹脂再生を担うのが加東樹脂循環工場となる。また、樹脂の原価トレンドはナフサ連動となり、中長期では右肩上がりとなる。ナフサ非連動の再生材を採用することで、経営リスクを回避できる」と、加東樹脂循環工場の役割を示す。
加東樹脂循環工場では、PETECから入庫した再生材料を、手解体選別材料と近赤外線選別材料とを別々に管理。それぞれにロット均一化を図るところから再生作業がはじまる。
「加東樹脂循環工場は、PETECと同じ社サイエンスパーク内にあり、樹脂再生への物流導線が短くできるメリットがある。再生材料は、メーカーごとや年式ごとに使用している樹脂の性質が異なるためロットの均一化が必要。500kgごとに運び込まれる再生樹脂材料の袋を、6袋一緒にし、3t単位でワンロット化して樹脂のリサイクル化を行なう」(西田プロジェクトリーダー)という。
材料は、洗浄ラインで洗浄および異物除去を行ない、ペレタイズラインで調質、着色が行われ、劣化した材料の物性を改革。加東樹脂循環工場でパナソニックグループが定めた品質水準を保証し、製品の生産工場に売却されることになるという。
設備能力は、手解体選別洗浄ラインで年間900t、近赤外線選別洗浄ラインで年間1,800t、ペレタイズラインで年間1,200tとなり、「現時点では年間700tの規模で操業している」という。
すでに再生PS樹脂では、エアコンのフィルター枠に活用する再生材として年間170tを供給。再生PP樹脂ではIHクッキングヒーターの内部部品として年間40t、冷蔵庫内部のカバーダクトに年間100tを供給しているという。
なお、パナソニックでは、2012年度実績では、樹脂の投入再生資源比率として、すでに15%の水準を達成しているが、「回収製品が変化するなかで、一度数字を達成したからといって、それが維持できるとは限らない。常に改善が必要である」(パナソニック モノづくり本部環境経営推進グループ・立上和男グループマネージャー)としている。
斜めドラム対応のリサイクルラインへ進化
一方、PETECでは、2013年4月から洗濯機のリサイクルラインを更新したことも明らかにした。
洗濯機のリサイクルラインが稼働から約12年を経過し、老朽化した設備の更新が必要になったことに加えて、斜めドラムタイプの洗濯機が増加したことに対応したもの。これまで斜めドラムタイプの手解体は別工程としていたが、これをインライン化。手解体から破砕、選別工程を一気通貫とすることで、処理能力の増強を図った。
エコテクノロジーセンターの北平吉浩工場長は、「斜めドラムタイプの洗濯機は、全自動や二槽式、乾燥機に比べて、解体工数が3倍強かかる。また、回収される資源が異なるため、樹脂の回収方法が異なるという課題がある。前行程において分解解体をインライン化し、シンプルな破砕編成とクリーンな樹脂浮沈選別を実現することで、処理能力を月間20万4,000台と約20%向上、生産性は1人あたり一日66台へと30%向上。PP資源回収量は、1台あたり7.5kgと50%の改善を行なった」とする。
斜めドラムタイプの洗濯機の構成比は2012年には6%だったものが、2015年には13%にまで拡大すると予測しており、混流化することで柔軟なリサイクル処理が可能になるとしている。
「リサイクル対象製品は、時代とともに商品構成が変わり、内部で使用している部材も変化する。常にそれに応じた処理を行なうことが必要になる。冷蔵庫では真空断熱材にガラスウールが使用されはじめており、これがリサイクルの処理設備のフィルターを詰まらせるといった問題も起きている。これに伴う設備変更が課題になる。今年度末には、いまはダスト処分しているウレタンを、固形燃料として再生できる設備を導入する予定である」(北平工場長)などとし、今後も継続的に設備増強を図る姿勢をみせた。
パナソニック エコテクノロジーセンターと、パナソニック アプライアンス社加東樹脂循環工場の様子を写真で見てみよう。