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東京ガスとパナソニック、“日本初”200万円を切った「エネファーム」

~実質負担額は130万円程度となる見込み

第3世代の家庭用燃料電池「エネファーム」

 東京ガスとパナソニックは、“世界最高”の総合効率で、価格を抑えた家庭用燃料電池「エネファーム」の第3世代モデルを共同で開発した。4月1日より東京ガスが発売する。価格は1,995,000円(工事費別)。

 エネファームは、ガスを利用して発電と給湯を行なう家庭用の創エネシステム。創エネの仕組みは、まず「燃料処理器」において燃料となる水素をガスから取り出し、次に「スタック」部において水素と酸素を反応させて、発電を行なう。ここで生まれた電気は、家庭内で使用できる。また発電時に発生する排熱は、給湯に利用される。

燃料電池ユニットと貯湯ユニットのカットモデル
上段にはスタックが位置する
中段には、燃料処理器が位置する
下段には、空気ブロアと外気の通り道が配置されている
エネファームは、ガスと空気から電気とお湯を創るコージェネレーションシステム
「燃料処理器」においてガスから水素を取り出し、この水素を「スタック」部において酸素と反応させて、発電する仕組み
エネファームのような燃料電池はエネルギー効率が高く、CO2の排出量が少ないためクリーンであることがメリット

 パナソニックと東京ガスは、エネファームシリーズを2009年5月より一般販売しており、今回は第3世代モデルに当たる。新製品では、“世界最高”の総合効率となる定格総合効率95%LHVを達成したことと、希望小売価格を200万円以下に抑えたことが最大の特徴。

 まず効率化の面では、発電時に発生する熱の回収経路の断熱性を強化し、排熱回収効率を高めた。これにより、総合効率は“世界最高”の95%(LHV)となった。

総合効率は95%(LHV)で、世界最高を達成したという
熱回収経路の断熱性を高めて、熱回収効率をアップした
高効率、高耐久、低コストを目指し、スタックと燃料処理器を改善した

 発電時間は、従来の5万時間から6万時間に2割伸びた。発電出力は200~750Wで、最少出力を従来の250Wよりも下げ、電力需要の少ないユーザーにもきめこまかく対応できるようにした。

コストを抑えるため、部品を減らし、スタックや燃料処理器の触媒量なども削減した
高耐久、低コスト化のため、スタックでは触媒や電解質膜などを見直した
燃料処理器では、高活性触媒を開発して低コスト、高耐久、対応ガスの拡大を図った

 価格を抑えるために、燃料電池ユニットの部品を従来よりも20%削減し、重量を従来比で10%軽い90kgとした。また、水素を取り出す燃料処理器内の触媒「PROX触媒」の貴金属量や、水素と酸素を反応させるスタック部の白金触媒量を半減させ、コストダウンを図った。

 標準タイプのバックアップ熱源機を選択した場合、希望小売価格は1,995,000円で、従来より約76万円安くした。なお、エネファームの希望小売価格が200万円を切るのは“日本初”という。実際には、政府からの補助金が出るため、今年度当初の70万円という補助金額を考慮に入れると、ユーザーの実質負担額は、130万円程度という計算になるという。ただし、新製品の発売は来年度となるため、具体額は未定。東京ガスの穴水孝 燃料電池事業推進部長は、「今回の価格は通過点。今後とも、希望小売価格を下げる努力を続けていく」とコメントした。

燃料電池と貯湯ユニットを小型化して、設置性を向上

 燃料電池と貯湯ユニットのサイズを従来比で26%小型化し、設置性を向上させた点も特徴となる。設置に必要なスペースは約2平方mで、このうち奥行きは、従来よりも15cm浅い75cmとなった。スペースに限りのある首都圏の戸建住宅にも設置しやすいという。

 また、従来は貯湯ユニットに搭載されていたバックアップ熱源機を外付けとすることで、設置の自由度を高めた。バックアップ熱源機は、暖房用に温水を加熱したり、貯湯タンクにお湯がなくなった場合にお湯を作るもの。バックアップ熱源機と貯湯ユニットを繋ぐ配管の長さは最長8mで、この長さに収まる範囲であれば、貯湯ユニットや燃料電池と離して設置できる。

バックアップ熱源機を貯湯ユニットから分離した
バックアップ熱源機を分けて置けるので、さまざまな設置スペースに対応する
バックアップ熱源機は環境に合わせて4タイプより選べる

 バックアップ熱源機は、設置スペースや環境に応じて4タイプから選べる。ラインナップは、暖房能力17.4kWの「標準」タイプのほかに、暖房能力11.6kWの「コンパクト」タイプ、暖房能力11.6kWで狭小な場所への設置に適した「スリム」タイプ、暖房機能を省いた「風呂給湯」タイプが用意される。「標準」「コンパクト」と「スリム」タイプは暖房、追いだき、給湯機能付きで、「風呂給湯」タイプは追いだきと給湯が可能。

 なお選んだバックアップ熱源機によって、エネファームシステムの希望小売価格は変わる。「標準」は1,995,000円、「コンパクト」は1,949,850円、「スリム」は1,993,950円、「風呂給湯」は、1,919,400円。

フルカラーの液晶で操作も簡単、太陽光発電の使用状況もチェックできる

 このほかの特徴として、電力の使用状況や給湯温度を表示するリモコンに、カラーディスプレイを標準採用した点も挙げられる。画面サイズは従来の1.6倍となる4.3インチで、解像度も従来の3倍に高め、文字やグラフを見やすくした。浴室用リモコンにも同様のカラーディスプレイを搭載する。

左が台所用リモコン、右が浴室用リモコン
4.3インチの大型カラーディスプレイを標準装備している。バックライト付きで明るく、見やすい
浴室用リモコンでも、台所用と同様に、グラフや数値を確認できる

 機能面では、新たに「今日の実績」ボタンをリモコン下部に設け、発電量や給湯量、自給率などのエネファームの効果を簡単に確認できる。

 さらに、エネファームと太陽光発電を連携して“W発電”を行なう場合、これらのリモコンから太陽光発電の使用状況も確認できる。エネファームと太陽光発電を合わせて、家全体の発電、買電、売電状況も表示する。

連携させると、太陽光発電の状況も表示する
カラー液晶搭載で、画面サイズも大きくし、解像度も高めた

 表示する太陽光発電については、パナソニック製以外の太陽光発電パネルにも対応する。ただし、太陽光発電用のモニターが付属してくるメーカーの場合、モニターが2台になることもあるという。

 各ユニットのサイズは、燃料電池ユニットが400×400×1,850mm(幅×奥行×高さ)。貯湯ユニットが560×400×1,850mm(同)。バックアップ熱源機が480×250×750mm(同)。重量は順に、90kg、55kg、44kg。このうち、「燃料電池ユニット」はパナソニックが製造し、「貯湯ユニット」および「バックアップ熱源機」は東京ガスの子会社ガスターから調達する。無償メンテナンスサポート期間は10年間。

 なお、停電時には発電が止まるが、別売りの蓄電池を外付けすることによって、自立運転が可能となるという。

マンション向けエネファームの発売予定も

パナソニックアプライアンス社の清水俊克 燃料電池プロジェクト プロジェクトリーダーと東京ガスの穴水孝 燃料電池事業推進部長

 パナソニックと東京ガスでは、1999年より共同で開発をはじめ、2009年より市場に発売してきた。東京ガスの穴水孝 燃料電池事業推進部長は、「3.11の東日本大震災以降、自宅で発電したい、光熱費を下げたいという需要が増しており、エネファームはこうしたニーズに応えることができる」と力を込めた。

東京ガス 穴水孝 燃料電池事業推進部長

 また東京ガスでは、集合住宅向けのエネファームの開発も行なっているという。エネファームは、エアコンの室外機などと同様に、屋外での設置スペースが必要となる。東京ガスは首都圏を基盤にエネファームを展開しているが、首都圏の住宅のうち7割が集合住宅で、設置場所の確保が普及の課題だった。東京ガスでは今回の新製品をベースとしてより省スペースモデルを開発しており、来年度下期の発売を目指すという。

パナソニックアプライアンス社 清水俊克 燃料電池プロジェクト プロジェクトリーダー

 エネファームの海外展開については、パナソニックアプライアンス社の清水俊克 燃料電池プロジェクト プロジェクトリーダーは「ヨーロッパやアメリカでも潜在的な需要があるとは思うが、きれいで安定している日本のガスと違って、海外ではさまざまなガスが使われており、成分やカロリーもバラバラで、窒素や硫黄成分の含有量も多く、技術的に越えなければならない壁が高い。ただし、弊社ではドイツのフランクフルト近郊に燃料電池の研究所を設置しており、またイギリスのウェールズにも昨年、燃料電池の実験ラボを開設し、今後に向けて研究している」と説明した。

 なおパナソニックでは従来モデルと同様に、東京ガス以外の大手都市ガス会社へ新製品のエネファームを提供するほか、北海道ガスには寒冷地仕様のエネファームを提供する予定としている。

小林 樹