パナソニック大坪社長、「燃料電池を3000億円規模の事業に」
――新エネファームの説明会

4月1日に発売される、新しいエネファーム。左がパナソニックの大坪社長、右が東京ガスの岡本社長

 東京ガスとパナソニックは、両社が共同開発した家庭用燃料電池「エネファーム」の新製品について、4月1日の発売に先駆けて、住宅メーカー幹部などを対象にした説明会を、2月9日、東京・内幸町の帝国ホテルで開催した。約150人の参加者を前に、東京ガスの岡本毅社長と、パナソニックの大坪文雄社長が直接説明した。

 両社は同日午前に、新しいエネファームの発表会を、報道関係者向けに開催している。製品の詳細については、9日のニュース記事を参考にされたい。


“将来的には100万円以下の価格での提供を目指す”――東京ガス・岡本社長

東京ガス 岡本毅社長

 説明会ではまず、東京ガスの岡本毅社長が登壇。エネファームがCO2排出量の削減に有効である点を指摘し、「日本の家庭部門におけるCO2排出量は、京都議定書で定められた基準を大きく上回っている。CO2排出量を削減するには、家庭に効率よくエネルギーを供給する仕組みや省エネ行動が求められているが、エネファームを設置することは、冷蔵時の設定温度の変更や、自動車のアイドリング時間の短縮などに比べて、大きな効果がある。政府でも、各政権ごとに家庭用燃料電池に関する施策を展開しており、継続的な取り組みが行なわれてきた」と話した。

 岡本社長はまた、エネファームを販売するに当たり、ハウスメーカーなどとのコラボレーション広告による訴求をはじめ、住宅会社向けの個別説明会の実施、太陽光発電と燃料電池を組み合わせた“ダブル発電”による省エネ住宅の提案、住宅展示場モデル住宅へのエネファームの設置など、数々の取り組みをしてきたことを紹介。昨年3月には、エネファームのオーナー1,000人を招待した感謝のつどいを開催したことも明らかにした。

 「東京ガスは、1999年から、パナソニックと家庭用燃料電池の共同開発研究に着手し、2009年5月から一般販売を開始。わずか10年で商品化できたのは、パナソニックの努力と、ハウスメーカーの指導があったことが大きい。発売後の訴求ポイントは環境性と先進性。“環境派”と“先進志向派”を対象とした提案営業を、ハウスメーカーとのコラボレーションによって展開してきた」(岡本社長)

エネファームは「環境性」と「先進性」をテーマに据えて営業提案を行なっていたという住宅会社向けに個別の説明会を開催することもあったという
太陽光発電と燃料電池を組み合わせた“ダブル発電”の提案も行なっていた住宅展示場に実際にエネファームを設置した営業も行なっていた
東京ガスのエネファームの販売数は、累計で約4,000台

 東京ガスでは、エネファームを累計で4,000台を出荷。エネファームのブランド全体では、全国約1万台の家庭用燃料電池が普及したという。「燃料電池は普及してはじめて、社会に貢献できる」とする岡本社長だが、普及に向けてはいくつかの克服すべき課題があるとした。

 「1つ目は、環境といえども経済性が重要であり、環境性と経済性を両立すること。2つ目には、より多くの住宅に設置してもらうための設置性の向上。そして、3つめには“見える化”することで、環境貢献意識を高める新たな価値の提供である」(岡本社長)

 しかし新製品では、「大幅なコスト低減、設置スペースを約2分の1に縮小、業界トップの環境性能、より大きく見やすくなったリモコンという、4つのフィットを提供できる」ことから、前述の課題が解決できるとした。

 岡本社長は最後に、今後の事業展開について「2010年度は2,500台の販売計画だったが、2011年度は倍増の5,000台を目指す。今後も、住宅需要にあった機器の開発、エネファームの認知度向上、そして、将来的には100万円以下の価格での提供を目指す。燃料電池は、温暖化対策の切り札。エネファームの普及によって温暖化対策に貢献していく。環境立国として社会をリードしていきたい」と語った。

エネファームの拡大には、経済性や設置性など、解決すべき問題がある2011年度は、2010年度の倍となる5,000台の販売を目指すという


“数年後には海外展開、3,000億円の事業規模を目指す”――パナソニック・大坪社長

パナソニック 大坪文雄社長

 続いて、パナソニックの大坪文雄社長が登壇。大坪社長はスピーチにて「エネファームは滋賀県草津の生産拠点で生産されているが、試作機を生産した時には手作り感が満載の工場であった。だが現在は、先進の生産体制のもとで生産されており、大きな変化を感じる。今回、盛大に第2号モデルを発表できたのも、国、自治体、関係先の協力によるもの」と、パナソニックのエネファームの生産体制が整ってきたことを明らかにした。

 また、新製品については「性能、耐久性、価格で進化を遂げ、さらに設置面積も省スペース化しており、これまで以上に自信を持ってお勧めいただける商品ができたと確信している」と、自信を見せた。

 大坪社長はさらに、エネファームを含む燃料電池事業を、パナソニックグループの“最重点事業”に位置づけることも明言した。

 「パナソニックは、創業100周年を迎える2018年度に、エレクトロニクスメーカーナンバーワンの環境革新企業を目指し、あらゆる活動の機軸を『環境』に置く。その中核となるのが、省エネ、蓄エネ、創エネおよびエネルギーマネジメントによって、家庭内のCO2排出量プラスマイナスゼロの提案を行なっていく“まるごとエナジーソリューション”である。エネファームは、太陽光発電とともに、創エネの両輪を担うもの。環境技術の粋を集めたものである。燃料電池はまだ期待先行の状況であり、事業はスタートしたばかり。だが、パソナニックグループの『最重点事業』と位置づけ、推進していきたい」

 大坪社長は最後に「数年後には、海外展開にも乗り出し、2,000~3,000億円の事業規模を目指す」と、今後の展開の抱負を述べた。





(大河原 克行)

2011年2月10日 00:00