東芝、白熱電球の生産を中止

~今後はLED/蛍光灯に移行

 東芝ライテックは、CO2排出量の削減のため、白熱電球の製造を17日をもって中止すると発表した。今後は、消費電力の少ない電球型蛍光灯やLEDといった省エネ型の照明に移行する。

 同社は2008年4月に、白熱電球の生産を2010年に廃止する旨を発表。他メーカーでは2012年に製造を中止するところが多いなか、予定通り2010年に生産を中止する。

 同社ではこれにより、年間2千万個の白熱電球を出荷していた2008年に比べ、約43万tのCO2削減に貢献できるとしている。

中央が、東芝が生産を中止する白熱電球。右は消費電力の少ないLED電球。左は1890年に開発された白熱電球のレプリカ東芝では2008年4月に、「2010年を目処に白熱電球の製造を中止する」と宣言していたこれにより、2008年に比べて約43万tのCO2削減に貢献できるとしている

ホワイトランプなど103機種を生産中止

生産を中止する白熱電球の一部
 生産中止となるのは、白熱電球の「ホワイトランプ」「ホワイトボール」など103機種。ただし、蛍光灯やLEDで代用できない、ミニクリプトン電球、ホワイトボールの一部、ハロゲン電球、レフランプなど648機種については、同工場にて引き続き製造を継続する。

 生産を中止する電球のラインナップは以下の表の通り。なお、2008年のリリース時点では81機種とされていたが、新たにパステルカラーランプなどの特殊電球も廃止されるため、合計103機種となっている。

品種品種数製造中止時期
ホワイトランプ長寿命タイプ82010年
3月
10%節電タイプ18
5%節電タイプ3
その他8
ホワイトボールφ603
φ708
φ806
φ9521
クリヤーボールφ607
φ806
ウスシリカランプ5
セミホワイトランプ6
パステルカラーランプ一般電球型4

 

代用が利かない白熱電球648機種については、今後も生産を継続する
【お詫びと訂正】初出時、数字に誤りがありました。正しくは写真の通り648機種です。訂正してお詫びさせていただきます
今後を担う電球形蛍光灯LED電球も主力となる

最後の生産ラインを公開

 東芝ライテックで、白熱電球を唯一製造する栃木県の鹿沼工場では、同日、製造中止式典が開催された。鹿沼工場は、白熱電球や蛍光灯などの照明器具を作っておりLED電球にも一部携わっている。

 式典に先立って、報道関係者向けに生産ラインが公開された。以下に、写真を中心に公開する。

“生産中止式典”が行なわれた、東芝ライテックの鹿沼工場。東北自動車道の鹿沼インターチェンジからすぐ白熱電球の生産ライン。1970年10月に北九州工場に設置されて以降、約40年間稼働した製造ラインの概略図

まずは、ガラス球の内面を水で洗浄洗浄後はベルトコンベアーで次の工程へ電球頂部にある「TOSHIBA」のマーキング(右上)を、ペタリを押す
ガラス球面内部に付着させた微粒子の粉末を加熱し、球面を白くする「ベーキング」という工程加工後は、ご覧のように白くなる。これで、光が拡散する
ガラス球の下の部分だけに火を強く当てるこれで余分なガラスをカットする
口金を付けた後は、製品が正しくできているかどうかを目視でチェックあとはパッケージで包まれる段ボールに梱包されて出荷される

先輩より受け継いだチャレンジスピリットで、新たな照明を

 式典に登壇した東芝ライテックの恒川真一代表取締役社長は、120年間続く東芝の白熱電球の歴史を説明した。1890年に日本初となる白熱電球は、東芝の前身である白熱舎によるものという。

 「白熱電球は、東芝の創業事業のひとつ。それから120年が経つが、発足当時の製造は1日で10個、15個がやっとだったと聞いている。それが、先輩方の努力により、大量生産化が図られた。特に、二重コイルや電球内面のつや消し加工は、東芝によってなされたもの。当初は2時間だった寿命は、1,000時間まで改良された。このような努力のかいがあって、日本に広く普及した。これらは藤岡博士(白熱舎の創業者である故・藤岡市助氏)、先輩方、皆様方の努力によってなされたものです」(恒川氏)

東芝ライテック 恒川真一代表取締役社長式典は生産ラインの前で行なわれた
日本で初めて白熱電球を作った故・藤岡市助氏。東芝の前進となる白熱舎を創設した東芝の照明技術の変遷


 しかし、電球型蛍光灯など省エネ電球の普及により、東芝の白熱電球の生産量は2000年頃より減小が続いている。鹿沼工場にあったという6本の製造ラインも、現在では1本のみとなっている。

 恒川氏は、式典に出席した従業員に対し、「皆さんに知ってただきたいのは、東芝自らが初めて作った白熱電球を、自らの意思で製造を停止するということ。藤岡博士から受け継いだのは、白熱電球そのものではなく、新しいものに挑戦するチャレンジスピリット。藤岡博士が白熱電球を普及させたように、私たちも新しい明かりを創造し、日本に、世界に広めていきましょう」と檄を飛ばした。

 恒川氏のスピーチ後、生産ラインは運転を停止。会場は一転して静寂に包まれた。


式典会場には生産ラインのガチャンガチャンという音が響いていたが、運転がパート毎に止められ始めると徐々に音が弱まってくる。ラインが完全に停止すると、会場は一転して静寂に包まれた
最後の白熱電球最後の白熱電球を、LED電球と同時に点灯。なお、写真左は東芝の佐々木則夫社長停止した生産ラインを前に、従業員が一礼

式典終了後の生産ライン。つい数時間前まで稼働していたが、もうこれからは動かないと思うと、感慨深いものがある


LED電球はハイスペック/スタンダード/バリエーションの3本柱

LED電球は、ハイスペック/スタンダード/バリエーションの3本柱を設定
 恒川氏はまた、白熱電球の代用となるLEDに関する今後の戦略を説明。LED電球については、高価格で高機能の“ハイスペック”と、低価格の“スタンダード”、またE17口金や調光器対応型などの“バリエーション”という、3本柱で今後も展開していく方針を明らかにした。

 また、電球型照明の2009年度の台数構成比は、電球60%、蛍光灯35%、LED5%とのことだが、2010年度は、蛍光灯55%、LED45%という比率に引き上げるという。

 「既存の電球は、今後はLEDなどに切り替わると見ている。今後は電球の販売本数は確実に減ると思うが、売上金額では(電球型蛍光灯やLED電球などで)カバーしていきたい」(恒川氏)

 ちなみに2009年度の東芝の市場でのシェアは、白熱電球は約30%、電球型蛍光灯は約40%、LEDは30%強とのこと。

 LED電球については、欧米を中心に海外への展開もスタートする。既にフランス/ドイツ/イギリス/北米に販売拠点を構えており、販売を順次拡大した後に、中国をはじめとする新興国にも展開する予定。

 なお、白熱電球の生産ラインの担当者は、蛍光灯部門へ配置転換されるという。ラインの跡地の利用法については未定。

東芝のLED電球「E-CORE(イーコア)」は、2009年度の省エネ大賞において資源エネルギー庁長官賞を受賞した鹿沼工場の入り口には、恒川氏のスピーチにも登場した藤岡市助氏の銅像が設けられている




(正藤 慶一)

2010年3月17日 18:48