長期レビュー

日立「ビッグドラム BD-V3100」 最終回

~ビッグドラムの乾燥機能。本当にシワは伸びるのか?
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「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



 

日立「ビッグドラム BD-V3100」
 最終回となる今回は、ドラム式洗濯乾燥機のキモとなる乾燥性能を詳細に見ていきたい。

 初代ビッグドラムが発売されたときから、このシリーズのウリとなっているのが、「乾燥時のシワの少なさ」だ。

 このシワの問題、これまでもそして現在も、メーカーを問わず洗濯乾燥機には宿命づけられたものとされている。特に洗濯→乾燥と連続運転した場合、洗濯物同士が絡んだまま乾燥されるケースが多く、シワが発生する原因となる。そこで、ビッグドラムでは、ドラムの径そのものを大きくして、強い風を当てることでシワを伸ばす「風アイロン」機能を搭載。シワに対する根本的な対策を謳う機種は他のメーカーにも見られず、ビッグドラムの特色のひとつとなっている。

 用意したのは、
(1) 綿100%のTシャツ
(2) 化繊混合のTシャツ(綿63%、ポリエステル37%)
(3) 麻67%、綿33%のボタンシャツ
(4) 綿100%のボタンシャツ
(5) 化繊混合のポロシャツ1(綿71%、ポリエステル27%、ポリウレタン2%)
(6) 化繊混合のポロシャツ2(綿65%、ポリエステル30%、ポリウレタン5%)

 テストではこれら6点の衣類を以下の条件で洗濯、乾燥した。この2つの条件としたのは、乾燥時に詰める衣服の量で仕上がりが変わる、というのが一般的に知られているからである。

(a) 乾燥容量いっぱい、6kgで洗濯→乾燥を「標準モード」で連続運転
(b) 6点のみ。約2kgで洗濯→乾燥を「標準モード」で連続運転

 まず、もっとも厳しい結果が予想されるのは天然素材のみから構成される(1)、(3)、(4)だろう。逆に、化繊混合のものはそもそもシワが付きにくいのだから、そのまま着て出られるクオリティを期待したいところだ。

1回目の乾燥の様子。6kgというとこのくらい約3時間かかる
2時間経過。かなり乾いてきた1回目が終わって取り込んだところ

 なお、写真は、衣類をビッグドラムから出してそのまま吊した状態で撮影した。シワを伸ばす作業は行なっていない。まずは写真をご覧頂きたい。

標準モード、洗濯物の量が6kgの場合

(1) 綿100%のTシャツシワが目立つ

(2) 化繊混合のTシャツ(綿63%、ポリエステル37%)同じTシャツでも(1)に比べるとぐっとシワが少ない
(3) 麻67%、綿33%のボタンシャツ。シワに関しては一番、条件が厳しいことが予想されるシワが目立つが、「風合い」とも言えるくらいの仕上がり
(4) 綿100%のボタンシャツシワ自体はあるが、模様が派手なためあまり目立たない
(5) 化繊混合のポロシャツ1(綿71%、ポリエステル27%、ポリウレタン2%)シワはやはり残っているが、天然素材だけのものに比べれば少ない
(6) 化繊混合のポロシャツ2(綿65%、ポリエステル30%、ポリウレタン5%)化繊の割合が多い分、シワが(5)より薄い

 やはり、天然素材の衣類はシワが目立つ。特に麻が混ざった(3)の黄色いリネンシャツは、とてもこのまま着て外出するのはためらわれるシワだ。(1)の綿100%Tシャツもシワだらけ。救いだったのは(4)のチェックの綿100%のボタンシャツ。色柄がはっきりしているためシワが目立ちにくかった。

 この結果からすなわち、ビッグドラムの「風アイロン」機能に効果はない、という結論になってしまいそうだが、そうではない。

 着ていけるか着ていけないか、という基準で見れば「けっこう厳しいね」となるが、これまでの洗濯乾燥機、特に縦型から生じるシワの多さと比較すれば、まったく別の次元にある。縦型洗濯機で発生するシワは、ちょっとやそっとじゃ取れないような折り目の深いシワだが、ビッグドラムはそうではない。数回、パタパタと洗濯物を振ってシワを伸ばせば着られるレベルだ。いちばんシワがひどい(3)のシャツでも、軽くアイロンをかければ大丈夫だろう。ちなみに、私が過去に使っていた、2006年式のななめドラムよりも明らかにシワは少ない印象だ。

 一方、化繊混合の衣類はどうだろうか。

 たしかに天然素材に比べるとシワが少ない。(5)と(6)を比べてみると、化繊の割合の多い(5)のほうがシワがより少ないのがわかる。シワの量は、素材で大きく左右されることがわかるだろう。いずれにしても遠くからみるとほとんど目立たない。だが、近くに寄ってみると、やはりシワはある。「外に着ていけるか」という基準で見れば、「着ていける」と言っていいだろう。

 結論。6kgいっぱいまで乾燥した場合、化繊ならシワは少ない! 天然素材はシワは多め。

乾燥する量を減らすと効果テキメン

 次に、今回サンプルとした6枚だけを洗濯→乾燥した場合を見てみよう。

(1) 綿100%のTシャツ1回目よりかなりシワが減った首回りもヨレがない
(2) 化繊混合のTシャツ(綿63%、ポリエステル37%)ほとんどシワはなし。化繊+少量乾燥の組み合わせはシワを極限まで減らせる実例だ首回りもきれい
(3) 麻67%、綿33%のボタンシャツシワの量はほとんど変わらない。だが、比べてみるとシワが浅い首まわりも若干、クタッとしている
(4) 綿100%のボタンシャツシワの量、深さともに1回目との差がほとんどわからない首元はわりときれい。乾燥機能を多用する場合、柄の濃いものを選ぶのも1つの手だ
(5) 化繊混合のポロシャツ1(綿71%、ポリエステル27%、ポリウレタン2%)明らかにシワが減ったこのまま着ていくのに何の問題もないレベル
(6) 化繊混合のポロシャツ2(綿65%、ポリエステル30%、ポリウレタン5%)こちらも劇的にシワが減った当然、そのまま着ていけるレベル

 まず、最初のテストでもっとも厳しかった麻混合の(3)。シワは減ったかと言われると、決して減っていない。だが、シワがより細かく、細くなった印象だ。麻は、もともとシワの風合いを楽しむ素材だが、それでも量は多い。やはり着る前にある程度、シワを伸ばす必要はあると思う。

 一番違いがわかったのが、綿100%Tシャツの(1)。シワの深さ、量ともに6kgの時と比べるとよくなっており、問題なくそのまま着られる状態に仕上がった。

 もう1つの天然素材、(4)の綿100%のチェックのシャツは写真でも、実際の目視でも違いがよくわからなかった。もともとシワが目立ちにくい模様というのもあるのだろう。手で何回かはたけば、十分そのまま着られる。

 次に化繊だが、こちらは全体的に量を減らした効果がはっきりと見て取れた。化繊の割合の少ない(6)に、その差が顕著だ。(2)、(5)はもともとシワが少なかったが、比べてみるとさらにシワが少なくなっている。

 すべてを総合すると、洗濯物の量は乾燥の仕上がりを大きく左右することは間違いない。「風アイロン」のシワの少なさは、確かにこれまでの洗濯乾燥機の水準を明らかに上回る。どんな民生用の洗濯乾燥機と比べても、間違いなくトップクラスに入るはずだ。

 ただし、これまで乾燥機能を使ったことがない人が、「へぇー“風アイロン”か、これ使えば、アイロンなしで洗濯から乾燥までできるんだ」というレベルを期待するのは、厳しいだろう。この製品が悪いのではなく、まだ洗濯乾燥機というジャンルそのものが、そうした期待に応えるレベルにまで達していないのだ。

 すべての洗濯乾燥機に通じて言えることだが、今の段階で洗濯乾燥機とうまくつきあうには、使い手側の歩み寄りが必要となる。たとえば、衣類がからまないように、洗濯工程が終わったあとに、衣類を1回取り出してシワを伸ばしてから乾燥したり、よりシワの目立ちにくい化繊混合の衣類を選ぶ、といったことが具体的な方法になる。洗濯乾燥機か、乾燥なしの洗濯機か。どちらか迷っている人は、まずこうした“歩み寄り”ができるかどうかを問うてみると良い。

 最後に、BD-V3100の目玉機能でもある、「スチームアイロン」機能を試してみたい。これは、1kgまでの衣類に、スチームと強風を当てて、あたかもアイロンをかけたかのようにシワを伸ばすという機能だ。時間が15分しかかからないのが特徴で、メーカーによれば、ワイシャツのシワを出勤前に伸ばす、といった使い方を提案している。

 素材には、1回目のテストでシワだらけになった、(1) 綿100%のTシャツと、(3) 麻67%、綿33%のボタンシャツを使った。この2枚を庫内に入れ、スタート。15分後の仕上がりは以下のようになった。

スチームアイロン機能

2枚のシャツをスチームアイロン機能にかけるかかる時間は15分
(1)のTシャツを、1回目の乾燥が終わった直後に、スチームアイロン機能をかけたたしかに、シワは改善されているが、“アイロン”のレベルを期待するのには荷が重いかただ、そのまま着るには十分なレベル
同じく、1回目の乾燥後に、(3)のシャツをスチームアイロン機能にかけたシワが細かくなっているが、劇的、というほどではないやはり、乾燥時に洗濯物の量を減らす方が効果は高いようだ

 結論から言うと、期待したほどの結果は得られなかった。細かく見ると、(1)のTシャツは多少、シワが減っているように見えるが、(3)のほうはあまり変わらないように見える。

 これまでの結果を総合すると、スチームアイロン機能を使うより、乾燥時に衣類の量を減らす、2回目のテストのアプローチが一番効果的であることがわかった。「乾燥はなるべく量を少なく!」というのは、覚えておきたい鉄則だ。

 前回で、ドラム式洗濯乾燥機のキモとなるのは、乾燥機能だと述べた。洗濯にまつわる機能について、このレビューで述べなかったのも、ケチャップや醤油を白布につけて洗うテストでは簡単にクリアしてしまい、他機種との比較でもしないかぎり、ほとんど意味をなさないからだ。

 一方で、差が出やすい乾燥機能の面において、まちがいなくビッグドラムは最先端を行っている。先ほども述べたように、今このBD-V3100が越えられない壁は、そのまま、ドラム式洗濯乾燥機が越えられない壁といっていい。

 3回のレビューを通じてつくづく感じたのは、ドラム式洗濯乾燥機というジャンルは、今、まさに現在進行形で進化しているジャンルだな、ということである。

 2006年にななめドラムを導入してから、まだ3年も経っていないわけだが、今回のレビューで検証したように消費電力量、そして乾燥性能をはじめ、すべての面で明らかに進化していた。普通の消費者なら、洗濯機を2年で買い換えることはまずないだろうが、生まれたばかりのこのジャンルは、まだまだ成長過程。1年ごとに進化していくだろう。




2009年5月28日 00:00