やじうまミニレビュー

Barefootinc Japan「ビブラムファイブフィンガーズ KSO」

~夏を前に引き締まった足を最速で手に入れる
by 鳴海 淳義


やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです


ビブラムファイブフィンガーズ「KSO」

 気候がよくなってきて、外を走っている人をよく見かけるようになってきた。ジョギングはもはや一時のブームではなく、手軽に取り組めるスポーツとして十分に定着してきた感がある。というわけで今回は珍しいジョギングシューズを紹介したい。

 ジョギング用のシューズといえば、クッション性があって、着地時のショックを吸収してくれるもの。走るならちゃんとしたシューズを履かないと怪我してしまう。なんとなくそう考えている人が多いのではないだろうか。

 ところがその逆、ソールが薄く、着地のショックをダイレクトに足に伝えてしまうシューズがいま密かな人気なのだ。その名も「ビブラムファイブフィンガーズ」。つま先は5本指で、そのシルエットはかなり薄っぺらい。重量も非常に軽く、なんとも不思議なシューズである。


メーカーBarefootinc Japan
製品名ビブラムファイブフィンガーズ KSO
希望小売価格13,440円
購入場所LOCONDO.jp
購入価格9,408円

 

 さて、ソールが薄くて何がいいのかというと、一言でいえば「足を鍛えられる」のだ。

 通常のジョギングシューズで走ると、ほとんどの方がカカトから着地してるはず。分厚いソールがある程度ショックを吸収してくれるため、遠慮なくカカトを地面に叩きつけ、その後、膝で衝撃を引き受けられる。だが、人によっては膝に負担がかかり過ぎるため、痛みが出てしまうこともある。

 ところがあえてソールの薄いシューズで走ると、当然だが着地のショックをダイレクトに受けるためカカトで着地すると痛い。だから自然につま先立ちで走ることになり、ふくらはぎの筋肉で衝撃を吸収するようになる。これによりふくらはぎの筋肉を鍛え、引き締まった足を手に入れることができ、膝の故障もある程度軽減できるのだ。

 ビブラムを購入するにあたり、いくつかの種類の中から筆者が選んだのは「KSO」というモデル。ジョギングからジムでのトレーニング、さらにはアウトドアまで対応するオールマイティなモデルである。「ブラック/グレー」というカラーはビブラムにしてはシックな色合いなので、ビブラム初心者の方も選びやすいのではないだろうか。

 価格は実売13,000円前後でジョギングシューズとしては平均的。作りが特殊なだけに購入の際は試着が必須だ。筆者はLOCONDO.jpという靴専門ECサイトで買った。このサイトは送料無料、返品も無料というところがいい(しかも購入時はセール中だった)。靴は自宅でゆっくりと履いてみたい。鏡の前でいろいろなウェアーに合わせられるというメリットもある。筆者は普段28.0cm前後の靴を履いているので、43(28.0cm)を購入した。ビブラムは履くのに少しコツが必要だ。親指から順番に丁寧に指を入れないと、一箇所に2本の指が入ってしまいイライラすることになる。

 ではさっそく実際に履いて運動してみよう。筆者の利用シーンは2つ、ジョギングとジムでのトレーニングだ。

製品パッケージつま先は5本に分かれている履いたところ。見た目はちょっと異様な感じだ

ジョギング

 このシューズは裸足での着用が推奨されている。五本指用のソックスも別途販売されているが、もう寒い季節でもないので、裸足で履いてみることにした。汗で蒸れても洗濯ネットに入れて洗濯機に入れれば簡単に洗える。

 さて履き心地はというと、本当に裸足の感触に近い。普通のジョギングシューズに比べてソールが圧倒的に薄いため、まるで地面のヒンヤリ感まで伝わってくるようだ。「これで本当に走れるの……?」。不安になってきたが、一歩を踏み出してみた。

外側から見たところ内側から見たところ後ろから見たところ
ソール部分はかなり薄いソールが薄く、アスファルトのヒンヤリ感まで伝わってくる

 いつもの癖でカカトから着地すると、当たり前だが衝撃を直接受けて痛い。自然とつま先立ちになり、ピョンピョンと跳ねて走ることになる。3分ほど、距離にして500mも進まないうちにふくらはぎがパンパンに張ってきた。しばらくの間ウォーキングに切り替えて、また3分ほど走る。こんなふうに約30分ジョギングとウォーキングを繰り返してみたが、足の筋肉を相当使った感じがした。これだけで次の日は激しい筋肉痛になった。普段使っていない部分の筋肉が刺激されたのだ。

 一週間ほど履き続け、ようやく約10分間休まずに走れるようになってきた。それでも運動後はしっかりとふくらはぎの筋肉をマッサージしてほぐさないと翌日に疲労が残ってしまう。徐々に距離を伸ばして慣らしていくのがコツだ。張り切りすぎると、ふくらはぎがパンパンになり、階段すら上がれなくなってしまいそうだ。

いつものようにカカトから着地すると、衝撃を直接受けて痛いビブラムを履いている時は、つま先から着地するのが正解だ

「体幹ランニング」を実感

 ビブラムを履いていて思わぬ発見もあった。つま先で走っていると、自然と走るフォームが前傾姿勢になる。そうすると前の方にある重心につられてどんどん足が出てくる。これは「体幹ランニング」という走り方に近い。体幹、つまり体の中心を常に前の方に置く意識で走ると楽に走れて、しかも速度もアップするというものだが、筆者はこれまでどうしてもその感覚をつかめずにいた。それがビブラムを履いてつま先立ちで走っていると体で覚えることができた。

 1カ月ほど経つと30分は続けて走れるようになってきた。距離にすると5kmまであと少しというところだ。ふくらはぎの筋肉が発達し、引き締められた気がする。久しぶりに普通のジョギングシューズを履いて走ってみたところ、10km走のタイムが10分以上縮んだ。これまではゆっくり走って1時間10分ほどだったのが、同じペースで走っているつもりでも終えてみたら1時間を切っていた。足の筋肉が鍛えられたというのもあるし、体の重心を前に置いて、テンポよく走るフォームが身についたのだと思われる。

 3カ月経った現在は1時間走れるようになった。もうつま先立ちで走り続けてもふくらはぎが張ることはない。トントントンと軽快に走れる。それでも1時間以上走る際には通常のジョギングシューズを履いている。やはり長時間走るのには向いていないからだ。ビブラムは短時間で効果的に足の筋肉を鍛えたいときにこそ有効だろう。ダイエットにも効果はある。足の筋肉が増えればそれだけ代謝が増し、消費カロリーも増える。

スポーツジムでのトレーニング

 ビブラムのシューズはスポーツジムでのトレーニングにも適している。5本指のグリップはまるで床をつかむかのような感触だ。エアロビクス系の激しいスタジオプログラムでもキュキュっと動いたり、止まったりできる。足裏のグリップ性能は高く、特にボクササイズのような前後の小刻みな移動を伴う動きには向いている。

 もちろんスタジオプログラムでも自分だけつま先立ちである。他の人よりもこっそりと負荷の高い運動を楽しんでいるわけだ。最初は辛いが、慣れてくると無意識につま先立ちでいられるようになる。

 またビブラムのような薄いソールで、いきなり外を走るのは正直言って怖い。道路には石なども落ちている。明るい時間ならいいが、暗い夜道などを走っていると何を踏んでしまうかわからない。怪我を防止するためにもまずはスポーツジムのランニングマシーンから始めてみるのもいいだろう。得られる効果は外を走るのと変わらない。

ビブラムは重ねると片手で持てるほどコンパクト。ジムや屋外に持ち歩くのも苦にならない

 これから夏に向けてスポーツジムに通おうかと考えている人は屋内シューズをぜひビブラムにしてみてはいかがだろうか。シューズ自体がコンパクトなため、カバンに入れてもかさばらない。毎日の持ち運びが容易なのも大きなポイントだ。

 そもそも昔の人間はいまのようなスニーカーなど履いていなかった。皆、裸足に近い感触の履物で外を走り回っていたのだ。自然と足は鍛えられ、健康な状態を維持できていたという。それがいまでは足が必要以上に守られているため、本来の状態よりも“退化”しているというのだ。昔の人と同じような健康な足を取り戻すには“裸足感覚”の再現が必要なのかもしれない。こうした背景はビブラムファイブフィンガーズの人気のきっかけとなったベストセラー、「BORN TO RUN」(日本放送出版協会)に詳しく書かれているので、興味のある方はぜひ。

 私事だが、ビブラムを履いてからの3カ月で13kgほど体重が減った。すべてこのシューズのおかげというわけではもちろんないが、大きな役割を果たしてくれたと思う。個人的には間違いなく今年前半の「買ってよかったモノ」ランキング1位だ。そろそろもう1足、ちょっと派手なデザインのものが欲しくなってきた。





2012年 6月 7日   00:00