コヤマタカヒロの男の料理道具!



第1回 デロンギ「ミニコンベクションオーブン EO420J-WS」

~立ち上がりが早くストレスゼロで作れる男のオーブン料理

 今回からスタートする「コヤマタカヒロの男の料理道具!」は男目線で調理家電を紹介する連載だ。著者は40歳になるフリーランスライターで、現在最大の趣味が料理。本業はPCやデジタルガジェットだが、大型量販店にいくと家電コーナーに滞在する時間が一番長く、仕事がピークを過ぎるとストレス解消に料理を作りまくるという癖がある。3歳と1歳の子どもがいることもあり、子ども向けメニューも試行錯誤中。連載では、普段の食事から、男料理らしいヘビー級メニューまでいろいろと挑戦するつもりだ。

「ミニコンベクションオーブンEO420J-WS」

 栄えある第1回はデロンギ・ジャパンが今年3月に発表した「ミニコンベクションオーブンEO420J-WS」を取り上げる。

メーカー名デロンギジャパン
製品名ミニコンベクションオーブン EO420J-WS
希望小売価格23,800円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格19,800円

 本体サイズは405×320×200mm(幅×奥行き×高さ)と非常にコンパクト。いわゆるオーブンレンジよりは、オーブントースターに近いサイズだ。庫内サイズは8.5Lで、1,400Wの高火力で食材を加熱できる。

 製品名にもある「コンベクション」とは熱対流のこと。EO420J-WSでは庫内上下に設置したヒーターの熱をファンを使って庫内で対流させる仕組みだ。食材を高温の熱風で包み込んで焼き上げることができるため、一般的に通常のオーブンと比べて、食材の表面はカリッと、内部は柔らかく仕上げることができるとされている。

庫内にセットするワイヤーラック。料理に追う怖じて上段と下段の2段階が選べる
穴から脂が落とせるオイルプレートと深さ2cmのトレイ。フィットして重なるようになっている
ピザだけでなくお餅や焼きおにぎりの調理にも使える「ピザストーン」が付属
付属のレシピブックとマニュアル

 パッケージには、ワイヤーラックと食材の脂を落としながら焼けるオイルプレート、その脂を受け止められる深さ2cmのトレイ、食材の余分な水分をしっかりと吸収しながら加熱できるピザストーン、そしてマニュアル、オリジナルレシピブックが付属している。

 ワイヤーラックの網の目は比較的大きいため、多くのメニューでは、ワイヤーラックの上に2種のトレイを重ねて利用することになる。

 操作は非常にシンプルで、装備するのは2つのダイヤルのみ。上部のダイヤルで保温やオーブンの温度、グリル調理(上ヒーターのみ)の設定が可能。下部のダイヤルがタイマーとなっている。レンジ機能などは搭載していない。なお、付属のレシピブックには15種類のメニューを掲載が掲載されている。

上部に装備する操作ダイヤル。約80℃に設定できる保温と120~230℃のオーブン調理、そして上ヒーターで焼き上げるグリルモードが選択できる
最長45分まで設定できるタイマー。右下のランプが消えると予熱完了だ

コンパクトだから予熱が速くて使いやすい

 まずは最初に、デロンギがパンフレットやWEBサイトでアピールしていたフォカッチャ作りに挑戦してみた。小麦粉やドライイーストなどを指定された量で捏ね、寝かせた上で、2cmトレイの上で伸ばし、210℃に温めた「EO420J-WS」で10分ほど焼くだけ。生地を寝かせる時間を含めて仕込みに1時間強かかるため、トータル約1時間半ほどの調理時間でできあがった。平日の朝は厳しいが、忙しくない週末の朝なら、問題なく作ることができそうだ。

 できあがったフォカッチャは、表面はカリッとしていながら中はふわふわ。味もしっかりしていて、子どもたちも大喜びで食べていた。ホームベーカリーがない家庭でもこのフォカッチャが作れれば満足できるはずだ。

生地を深さ2cmトレイにセットして焼き上げたフォカッチャ。オリジナルでオリーブをおいてみた
表面はカリッとしていて、中はふんわり。焼きたては大人2人で一気に食べてしまうレベルの美味しさだった

 使ってみて便利に感じたのが、予熱の速さだ。計ってみたところ、設定できる最高温度の230℃まで約5分で予熱できた。個人的に所有しているオーブンレンジ(パナソニック、ビストロR302、2009年製)では、約13分かかったため、半分以下の時間で予熱できたことになる。もちろん、庫内の大きさが半分以下のため、単純には優劣は付けられないが、小容量のオーブン調理が素早くできるのは間違いなさそうだ。

肉、肉、肉を焼き上げる!

 最近のオーブンレンジでは過熱水蒸気調理などを利用して減塩、減脂調理ができるのがスタンダードになっている。しかし、EO420J-WSにはそんな機能は搭載しない。ただ、高温の熱風で焼き上げるだけだ。そこで、男の料理らしい、がっつりとした肉料理を作ってみた。

 まず、一品目はチャーシューだ。豚肩ロースの塊を用意し、観音開きにして、醤油や砂糖、蜂蜜、五香粉などの入った中華だれに5時間ほどつけ込む。それをオイルプレートの上に載せて焼き上げる。200度で15分、さらに裏返して15分焼いたのが写真のチャーシューだ。表面の一部は香ばしく焦げ、中はわずかに赤い絶妙な焼き加減にできあがった。

 裏返した時にたれをさらに塗っているため、脂やたれが下に落ちていたが、すべて2cmトレイが回収していたため、庫内の底面が汚れなかったのもうれしかった。

500gほどの豚肩ロースを中華ダレにつけ込む
EO420J-WSで焼き上げたところ。わずかに焦げているのがいい香りだった
切り分けてみると、中はわずかに赤みが残っていた。好みによってはもう少しやいても良さそうだ

 続いて、2品目も豚肉だ。同じく豚肩ロース(近所のスーパーでは国産がグラム69円で買えるので安い)を塩竃焼きにする。卵白と500g超の粗塩を混ぜ、そこに昆布茶をプラス。それで豚肩ロースを包んでしまう。先のチャーシューとは異なり、下味を付けたり、つけ込む必要はなしだ。

 庫内の温度は180℃に設定して予熱をスタートする。調理時間は60分だが、EO420J-WSのタイマーは45分までしか設定できないため、一度タイマーが切れたあとプラス15分加熱した。

トレイの上に塩竃の元を流し込み、400gほどの豚肩ロースをのせ塩竃で包み込む
1時間ほど焼いた塩竃は表面も焦げてカチカチになっていた。たたき割ると香ばしい香りが漂う
食べやすい大きさにカット。表面に残った塩はあえて取り切らない
同じ豚肩ロースを簡単に2つの味にして堪能できた

 やけ上がった塩竃は表面はこんがり。カチカチに堅くなっていた。麺棒でそれを叩いて割り、塩竃を取り除いていく。塩竃の中で蒸し焼きになった豚肩ロースは、表面に焦げもなく、非常に柔らかく、ジューシーに焼き上がった。

 先のチャーシューと合わせて、ご飯の上に盛り合わせ、チャーシューと塩竃豚の2色丼のできあがり。わずかな甘さと五香粉の香りを纏ったチャーシューと、塩気のある豚肩ロースの組み合わせは至福の出来だった。

ローストビーフとハンバーグにも挑戦

 続いてオーブン調理ではスタンダードなローストビーフとハンバーグに挑戦してみた。一般的なオーブンと比べて庫内が狭いため、牛肩ロースの塊は小さめで、特に厚みがあまりないものを用意。まずは、たこ糸で縛り、フライパンで表面に焼き色を付ける。続いて、2cmトレイに載せて、200℃に熱した庫内に投入する。15分ほど焼き、一度タイマーが切れたら、160℃に下げてもう10分だけ焼き上げる。

400gほどの薄めにカットされた塊を使用。フライパンで焼き上げる
そして「EO420J-WS」でトータルで25分ほど加熱。庫内から出した後アルミホイルで包んで10分ほど予熱で蒸す
赤みの残ったローストビーフができあがり。赤身の旨みが堪能できた

 できあがったのは中までしっかりと火が通っていながら、中央部がわずかに赤いまさにローストビーフ。市販品と見まがうような出来だった。肉の大きさによって加熱時間は調整の必要はあるが、お店で買うと高いローストビーフがここまで簡単にできることにちょっと感動した。

 続いてハンバーグ。フライパンで焼いた後にオーブンで加熱すると美味しいのは知ってはいるものの、面倒でなかなか普段はやらず、結局フライパンに蓋をして蒸し焼きにして終わり、というのがこれまでだった。そこで今回は、フライパンで両面を焦がした後、2cmトレイに投入。230℃に熱した庫内に入れて、15分加熱した。

 自分で作っておきながらその味には驚かされた。フライパンだけで焼いたハンバーグとは異なり、全くパサパサ感がなく、中がジューシーでふわふわなのだ。まさに昔ながらの洋食店などで食べるハンバーグの出来。EO420J-WSなら、フライパンにハンバーグを投入するタイミングで予熱をスタートしておけば、ちょうどいいタイミングでハンバーグをオーブンに移動できる。

 家族からも大好評で、作った翌々日には再びリクエストされたほどだ。

表面だけ焼き上げてトレイに移し、「EO420J-WS」へ。15分ほど加熱する間にお皿などの準備ができる
中までしっかり火が入り、肉汁があふれているのがわかる
付け合わせにパプリカをロースト。しっかりと焼けたが、最高火力の230℃でも、表面を焦がすことはできなかった。このあたりに若干火力不足を感じる部分もある
ハンバーグとパプリカ、また焼きトマトを添えて夕食に

魚料理やキッシュに挑戦

 男の料理って肉ばかり……と思われるといけないので、肉以外に作った料理を紹介しよう。

 まずはアジのパン粉焼き。開いたアジをオイルトレイに並べ、梅味噌を塗りつける。その上にパン粉を振って軽く抑えるだけのシンプルな料理。本当はアジは開いた状態で並べたかったのだが、それだと4匹分載せられなかったので、尾びれを落とし、アジもふたつに分けて8切れとして載せた。これも230℃で15分ほど焼いただけだが、パン粉はこんがりと適度に焦げ、梅味噌のさっぱりした味わいと柔らかく焼き上がったアジの食感が絶妙だった。

3枚に開いたアジに梅味噌を塗るだけの簡単料理
表面に振ったパン粉がこんがり焼けた。手軽だが十分にメインの一品になる
ピザストーンの上にホイルを置いて蒸し焼きに。鱈のふんわりした食感が楽しめた

 ピザストーンを使うメニューを、と考えて作ったのが、鱈のホイル焼き。これは付属のレシピブックに乗っている「鮭ときのこのホイル焼き」をアレンジしたものだ。鱈とさまざまな野菜、きのこをホイル内にいれ、オリーブオイルとバターを投入。230℃でピザストーンごと予熱した庫内に投入して焼き上げた。

 他のメニューとは異なり蒸し料理なので、表面がこんがり焼けたりはしないのだが、ホイルの底に入れておいたズッキーニがとろけるような食感になっていたのが印象的だった。これも手早くでき、さらに野菜やきのこ類がたっぷり摂れるのが魅力的なメニューだ。

 そして最後に作ったのが、サーモンとほうれん草のキッシュだ。ちょうど、数日前にイタリアンレストランの前菜として出てきたキッシュを1歳の娘が喜んで食べていたこともあり、挑戦してみることにした。

 フードプロセッサーで土台となるパートプリゼ生地の材料を捏ね、成型してタルト型に乗せて焼く。そのあと卵や生クリームを混ぜた液状の生地アパレイユとフライパンで事前に炒めた具材を先に作った生地の上に投入して、200℃に設定した庫内で20分ほど焼き上げて完成だ。

 初挑戦ではあったが、表面もしっかりと焦げ、濃厚なバターの香りと柔らかな具材の食感が楽しめた。

いわゆるタルト台となる、パートプリゼ生地を練る。バターを練り込むため、フードプロセッサーは必須
タルト台に生地をのばして、いったん生地だけ仮焼きする
その間にほうれん草とスモークサーモンをフライパンで下準備
具材と生地をタルト台に流し込む
しっかりと焼き上がったキッシュ。個人的にはもう少し柔らかいともっとよかった用に思う。焼き時間の調整は今後の課題だ
とはいえ、自宅メニューとは思えない出来。手間はかかるがまた作りたいメニューだ

素早く予熱ができ、日常的にオーブン調理が楽しめる

 3週間ほどミニコンベクションオーブンを使った上で紹介した料理以外にもいろいろな料理を試してみた。最初は、レシピブックに載っているメニュー数も少なく、使いこなすのが難しいかなというう印象だった。しかし、2つ、3つと料理を作っていく上で、その印象はがらりと変わった。

 「EO420J-WS」は最近の調理家電に多い、ボタンを押すだけで、メニューを選ぶだけでレシピで紹介されている料理が作れるといったタイプのオーブンではない。できることは非常にシンプルで、基本となるのは設定した温度の熱風で焼き上げるということだ。だからこそ、手軽に、日常メニューで使うことができるのだ。

 たとえば、30Lクラスのオーブンレンジは、ハンバーグを焼くときに、フライパンと組み合わせて使おうとはなかなか思わないもの。しかし、「EO420J-WS」ならサッと使うことができる。そのほかの料理も、非常に短時間で気軽に作ることができた。

 また、本体がコンパクトな分、トレイなども小さいため、料理に使っても洗い物が楽なのがよかった。一般的なオーブンレンジでは使用後はシンクに入りきらないような大きなトレイを洗う必要がある。しかし、EO420J-WSなら日常使いのお皿と変わらないサイズなので、サッと洗うことができるのだ。

 レンジ機能を搭載しないため、いわゆるオーブンレンジと比較する商品ではないが、料理が好きなら、オーブントースターの代わりに選ぶという選択肢は十分に考えられそうだ。


コヤマタカヒロ

1973年生まれ。大学生の頃にライターデビューをして現在17年目。パソコンからAV機器、デジタルガジェット、白物家電などの電気が流れる製品と、その関連サービスを中心に執筆活動を展開する雑食系のデジタルライター。一般商品者目線で、最新テクノロジーを伝え、完成品はできる限り自分で試して記事にすることを信条にしている。