長期レビュー

象印「極め羽釜 NP-ST10」その1

~13万円の炊飯器は、価格に見合ったおいしさが味わえるのか?
by 藤山 哲人

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



9月15日に発売されたばかり、象印の最高級炊飯器「圧力IH炊飯ジャー 極め炊き 南部鉄器 極め羽釜 NP-ST10」

 炊飯器の高級化に歯止めがかからない。掃除機に洗濯機、冷蔵庫など生活家電など全体的に言えることだが、ありったけの技術と最高の部品を突っ込んだ高級機と、そこそこの性能でそこそこの値段で買える廉価版の二極化がここ数年で進んでいる。その際たるものが炊飯器だろう。

 各メーカーのハイエンドモデルは10万円、いや軽く10万オーバーするする炊飯器!まで登場し、端から見ている「この不況の日本で誰が買うのさ?」と思ってしまうほどだ。

 だが高い炊飯器にはワケがある。そのキーワードは「本物志向」。旧三洋は純銅製の内釜、三菱は炭(炭素)を使った内釜、タイガーは土鍋の内釜を採用し、本格的なごはんを炊こうと特色を出している。さながら「内釜戦争」といったところだ。

 そして2012年9月に登場したのが、南部鉄器を使った内釜を持つ、象印マホービンの「圧力IH炊飯ジャー 極め炊き 南部鉄器 極め羽釜 NP-ST10」だ。メーカー希望価格はなんと13万6,500円! それでも、他社の高級機より安かったりする。安いものなら2、3万円で買える炊飯器に大枚をはたく価値はあるのだろうか?

 今回の長期レビューでは「圧力IH炊飯ジャー 極め炊き 南部鉄器 極め羽釜」を1カ月使い倒して、本当に価格に見合うものなのかを、3回の連載でお届けする。1回目では、本製品の最大の特徴である「極め羽釜」と、その味について検証したい。

メーカー象印マホービン
製品名極め炊き 南部鉄器 極め羽釜 NP-ST10
希望小売価格136,500円
購入場所ヨドバシカメラ
購入価格108,000円


まずは内釜の重さと分厚さに驚く! 職人が手作りした南部鉄器はお寺の鐘の音

爺ちゃんから貰ったウチのスキヤキ鍋は南部鉄器製。値段を聞いたら1万円以上もする!自分じゃ買わないですな……

 さてIH炊飯器は、その仕組みから磁石にくっつきやすい金属や電気を流す材質でなければ発熱しない。仕組みについては、2009年に書いた記事を参照して欲しいが、その点、象印の「南部鉄器 極め羽釜」は、IH炊飯器の内釜としては最高の組み合わせだ。

 というのも、鉄は磁石によくくっつく上に、熱を出すために必要な電気的な抵抗も大きい。しかも、鉄器の中でも一流品、高級ブランドとしても名高い南部鉄器を使っている。職人が砂で作った鋳型に溶けた鉄を流込み、固まったら内釜の形に削り出し、最後に焼き入れするのだ。肉厚で重い鉄器は工業製品でも、20数cmの鍋が1万円ほど。職人の手作りとなれば、価格は万単位になる。

 ただ、炊飯器の内釜は精度が要求されるため、部分的に工作機械を使って切削などをしているようだが、一般的の南部鉄器にはない表面加工などが施されている。筆者の推測では、この内釜だけの値段は1万円を軽くオーバー、下手をすれば2万円近くすると思われる。安い炊飯器の内釜は、アルミをプレスすれば一瞬で作れるものだけに、この「南部鉄器 極め羽釜」の高さにもうなづけるというものだ。

南部鉄器の羽釜製造工程。一般的なアルミの内釜に比べると、手間と時間がかかっている(象印のWebページより抜粋)
見るからに重厚な内釜は、多くの鉄が使われているので蓄熱性も桁外れに高い
内釜だけでおよそ2kgもあるフチの厚みを測ったところ6.5mmもある。鍋底は加熱を早くするために3mmとなっていた一般的なアルミ製の内釜(左)と極め羽釜の鉄製の南部鉄器内釜(右)。形状がまったく異なる

 炊飯器選びの1つの目安として「内釜は重ければ重いほどいい」とよく言われる。これは肉厚な内釜ほど蓄熱効果が高いこと意味するが、極め羽釜は文句なく重い! アルミと鉄では比重が違うので一概に比較はできないが、釜の厚みはおよそ5mm、重量は内釜だけで2kgもある。見るからに蓄熱効果が高そうだ。実際、炊飯を終えて保温をせずに3時間放置してみたが、まだ釜を直接手で持ててないほど熱かった。

 さらに一般的な炊飯器の内釜と大きく異なるのは、その形状だ。お茶碗のような形をしていて、お米や水と釜が触れる面積を広くしているだけでなく、熱が対流しやすくなっている。大火力で調理する中華なべや北京鍋が、この内釜と同様の形をしているのは同様の理由からだ。

 そして内釜のもう1つの特徴は、かまどでごはんを炊くための釜「羽釜」同様に、釜の中央外側付近に出っ張ったツバが設けられている点。本物の羽釜は、このツバをかまどのフチに引っかけ固定する役目がメインだが、この炊飯器の羽釜のツバは、本体の出っ張りとかみ合って、熱を逃さないように機能している。

 さてここまで内釜を見てきたが、筆者はここでふと思った。 これ、お坊さんがお経を読むときに叩く超デカイお鈴と同じ音がするんじゃネ?そこで、実際に試したムービーを見て欲しい。

ここまで釜が厚いと、叩いた時にいい音がするのでは? と思い、ホントに叩いてみた

 ええ! まさにこの音でしょ! 釜がかなり肉厚なので、荘厳な低音が響き渡る。みなさんの家にある内釜を実際に叩いて聞き比べて欲しいが、薄いアルミ製の釜は「カーン!」と軽い音しかしない。この羽釜がどれだけたくさんの鉄を使っているかは、音からもよく分かるほどなのだ。

他社炊飯器と家族で食べ比べ! 家族は極め羽釜に軍配!

 釜についてひと通り見てきたが、実際にはどのようなごはんが炊けるのか。我が家の炊飯機と食べ比べてみよう。筆者の家では、炊飯器の名器として名高い旧三洋のおどり炊き(2009年に買った「ECJ-LG10」)を使っている。購入価格は約4万円(当時)で、非常においしいごはんが炊けるのだが、象印の極め羽釜はどの程度おいしいのだろうか。

 使った米は、いつも食べている農家直送のあきたこまち。いずれも3合のお米をふつうモードで炊いてみた。まずは炊き上がりの写真から。

旧三洋の匠炊きは、ごはんが輝いている。カニ穴もたくさんあって、ごはん粒が立っているのが分かるごはん粒を拡大すると、お米の表皮が割れるほどたくさんの水分を含んでいるようで、これが光を反射しているようだ
象印の極め羽釜は、ごはんの照りは少ないものの、たくさんのカニ穴があり、ごはん粒も立っている極め羽釜はお米の表皮が破れるほど水分を含んだもの(左)とお米の形がしっかり残っているものがある

 旧三洋のおどり炊きは、ごはんツブが立った状態で、おいしく炊けた目安となるポツポツとした「カニ穴」というものができている。ごはん粒は水分を含んでピカピカと光っているのが印象的だ。

 一方象印の極め羽釜も、ごはんツブが立っていてカニ穴もたくさんできている。違いはあまりお米が光っていないという点だ。

ごはんの味がよくわかるように、夕食だが塩ジャケとお味噌汁というシンプルなメニューで試食

 炊き上がりを見てみると、お米がツヤツヤしているおどり炊きのほうがおいしそうだが、実際の味はどうだろうか?

 試食の結果は、家族5人とも「象印『極め羽釜』の方がおいしい」と、票を総ざらいした。その感想をまとめると、次のようになる。

おどり炊き:つやつやしていておいしそうなのだが、ごはんツブの周りが少しベタついている。硬さはちょうどいいが、口に入れた瞬間は粘りがあり少し団子っぽい感じ

極め羽釜:口に入れるとホロホロと崩れて、旅館で食べるごはんに近い。硬さもちょうどよく、口にいれた瞬間に甘みが広がる

 見た目の勝負はおどり炊きが優勢だったが、おいしさや食感では極め羽釜の圧勝となった。昨日まで一番おいしいと思っていたおどり炊きが、あっさり極め羽釜に覆されるとは……。


おいしさのカギを数値化する!

 この極め羽釜のおいしさをうまく表現したいが、ごはんのおいしさを文章で表現するのは限界がある。「つやつや」「ホロホロ」「もっちり」「しゃきり」「ほんのり甘い」などの語句をいくら並べても、その度合いがどうしても伝えられない。

 そこで「ごはんのおいしさとは何か?」について、いろいろ文献を当たって、筆者なりの項目をリストアップしてみた。

・甘さ
 ごはんの甘さには2種類あり、口に入れた瞬間の甘さと、噛んだときに染み出てくる甘さがある。前者は、お米に水を入れ加熱することで、米の澱粉質がα化(糊化)と呼ばれる化学反応で、糖分に変化した甘さだ。後者の噛んだときの甘さは、米の中に残っている澱粉質が唾液のアミラーゼと反応して糖分に変わる甘さ。

・食感
 ごはんがしゃっきりしていると感じるのは、パスタのアルデンテのようにわずかに米の中心部に芯が残っている状態のようだ。バスタ同様「コリッ!」とした感覚がしゃっきり感の正体らしい。逆にもちもちとした触感は、中心部まで水分を含んで弾力があるごごはん粒だ。ごはん粒には弾力があるため、噛むと「プニュ!」と潰れてその後噛み切れるという食感がもちもち感の正体らしい。

・粘り
 粘りは甘さと食感に深く関連している。1つは米のまわりに糊化した「おねば」が付く粘りだ。おねばは、澱粉がα化した糖分なので粘り=甘みと言ってもいいだろう。もう1つは米の表面に含んだ水分が多いと粘りが増す。つまり食感と大きく関連している。ただ過度に粘りがあると、今度は「団子っぽい」ごはんになってしまうので、その塩梅がおいしさのカギとなる。

 このようにごはんおおいしさは、だいたいこの3つに集約されるようなので、この記事では次の3つの指標でおいしさをデータ化してみることにした。

1)ごはんの甘さ

 テレビ番組などで果物の甘さを計るとき使われる屈折式糖度計(温度補正つき)を安く手に入れたので、これで「口に含んだ瞬間の甘さ」を調べることにしよう。ただごはん粒は固形なので、直接糖度計で測れない。そこでごはん5gに水10ccを加え、すり鉢ですりつぶし糖度を測った。この値から水で希釈した分を逆算して、ごはんの糖度としている。

0.1g単位のはかりと、10ccを測れる注射器を使ってごはんをペースト状にするこんな感じにすりつぶせば、糖度計で測定できる
テレビでよく見かける糖度計。光の屈折を利用して、糖度を測る覗き込むとグラフで表示される

2)澱粉の状態

 うがい薬の「ルゴール」(もしくはイソジン)を水で薄めて、ヨウ素液を作った。これで澱粉に反応すると紫色になるので、ごはんの澱粉を写真で確認できる。

ルゴールやイソジンを水で10倍程度に薄めると、ヨウ素液として使える。ヨードチンキでもOK小学校のときに習ったように、ヨウ素液をたらすと澱粉が紫色になる。高倍率のルーペを使ってるため写真の周囲がボケているのはご了承いただきたい

3)食感

 ギロチンのようなものを作り、その下に圧力センサーを設置して、オシロスコープで10ミリ秒単位でどれだけ力がかかるかを調べるようにした。もしごはん粒に芯があれば、噛む力(圧力)が途中で変化し、芯がなければプニュ! っとごはんが潰れた後スッと歯が入る(圧力が一気に下がる)はずだ。なお圧力の単位はグラムではなく、独自の単位になっている点をご理解いただきたい。

アクリル板をセンサーで作った歯ごたえ測定器。センサーの感度が直線的ではなく、圧力が低いと敏感に高いと鈍感になる対数的な感度なので、剃刀の刃を使っている丸い部分がセンサーで、上から刃を下ろすと噛み応え(圧力)が分かるオシロスコープでセンサーの状態を0.01秒単位で記録すると、かかった圧力が分かる。グラフは中央部分が平らになっているので、チョット芯が残っているごはん粒ということになる

 なお以降の実験結果は、特に但し書きのない限り、お米はあきたこまち、2合の米を炊いた結果となっている。また、「おどり炊き」については、前述の通り三洋の2009年製のものを使用しており、炊飯モードは両機とも「ふつう」モードを選択している。

 さてここで改めて先に比較した、おどり炊きと極め羽釜で炊いたごはんの違いを見てみよう。まず糖度については、次の通りだ。

・おどり炊き(ふつう)……12%
・極め羽釜(ふつう)……15%

 わずか3%の違いではあるが、人間の舌は糖度が低いほど敏感に見分けられる。なので、この違いは口に入れた瞬間に違いが分かるはずだ。おどり炊きは粘りが強かったのに、それほど甘くないというのが不思議だ。逆に極め羽釜は、粘りが少ないのにα化が進み、甘いということを示している。

 続いて澱粉の状態は、次の写真のようになった。

【おどり炊き】左は輪切りにした状態、右はごはんの長い方の断面。おどり炊きは、ごはん粒の中心にも澱粉が多く残っているので紫色に変化している
【極め羽釜】多くの澱粉がα化して糖にかわっているので、あまり紫色になっていない。つまり口にいれて瞬間から甘いごはんということだ

 おどり炊きはあまりα化が進まなかったようで、ごはん粒の表面を除き大部分が紫色になっている。つまり澱粉が多く残っているので、口に含んだ瞬間はそれほど甘くないが、噛んでいると甘くなるというごはんだ。

 一方極め羽釜は、米の芯までα化が進んで、大部分の澱粉が糖に変わっているのが分かる。口に含んだ瞬間から甘さが広がり、噛んでいると中の糖分が染み出るような甘さのごはんと言えるだろう。

 最後は食感の違いを見てみよう。

【おどり炊き】
表面は柔らかく、中央部にやや硬い部分がある
【極め羽釜】
弾力(表面が固め?)があるようで、刃を入れてもしばらくは圧力が高く、中盤からスッと刃が入るようだ

 家族の感想では、いずれも「硬さはちょうどいい」ということだった。グラフを見ると部分部分で若干の違いはあるものの、グラフはほぼ同じような山を描いていて、感想と一致しているようだ。

 ん~、即席で作った歯ごたえ測定器にしては、ウマいことデータを取ってくれるぞ! 作った本人もビックリだ(笑)。

ただおこげを作るだけじゃないかまど極みメニューは羽釜のごはんソックリのうまさ

 というわけで、ふつうモードで炊いたごはんがおいしいことは分かったが、やはり羽釜と言えば“おこげ”のあるごはんだ。静岡の下田で農業をしている爺ちゃん・婆ちゃんの家でも羽釜でごはんを炊いているのだが、これが絶妙にうまい!

爺ちゃん・婆ちゃんは、日常的にごはんを本物の羽釜で炊いているこれが本物の羽釜で炊いたごはん。水分はかなり少なめ羽釜で炊いたごはんの楽しみといえは、おこげだ。ただ、歯に詰め物などをしていると、取れちゃうこともある(笑い)。もちろん火加減を調整すればおこげなしもできる

 象印の極め羽釜にも、おこげを作り羽釜で炊いたごはんを作れる「かまど極み」メニューがあるので、さっそく試してみた。炊き上がりの状態を、実際の羽釜で炊いたごはんと見比べてみると、かなり似ている。これは期待が持てそうだ。

極め羽釜で炊いたごはん(左)と、本物の羽釜で炊いたごはん(右)。極み羽釜で炊いたごはんの方が、よりお米が立っているようだ極め羽釜のおこげは少し薄め。もうちょっと焦げててもいいかもしれない

 家族に感想を聞いてみると「本物の羽釜で炊いたごはんそっくりの食感と味、そして香ばしさがあっておいしい」と大好評。白米の部分は若干水分が少なめで、硬さはふつう~ややもちもちと言ったところだ。しかしおこげと一緒に口に含むと、さらにもちもち感が増すとともに、おこげの香ばしさが口から鼻に抜けて、実においしい。

 さっそくごはん粒を測定器で色々しらべてみたところ、ふつうで炊いたごはんとはかなり違いが出た。

左はかまど極めモードで炊飯したごはん粒(左の2粒は焦げていない部分、右2つはおこげ)、右はふつうモードで炊いたお米。かまど極めで炊いたほうが、透明度が高くごはん粒も小さいようだ

 どうやらおこげを作る際に加熱することで、普通に比べるとごはんの水分が少なくなり、ごはんツブも小さめになっている。糖度はふつうで炊いたものが15%なのに対し、かまど極みで炊いたごはんは18%と甘い。一方澱粉質を調べてみると、次のような違いが見られた。

ごはん粒は、澱粉と糖分が半々になっているようだ

 ふつうで炊いたごはんはごはん粒の中心までα化が進み甘いごはんとなっていたが、かまど極みで炊いたごはん粒は、中心部にも多くの澱粉が残っていて、糖の間にサシのように澱粉質が残っているようだ。

 なお食感はふつうで炊くと、どのごはんつぶも同じような食感となるが、かまど極みで炊くと、しゃっきりともっちり、そしておこげの硬い部分が混ざり合い、一口一口の食感が異なる。またおこげは硬く、咀嚼回数が増えるので、ごはん粒のなかの澱粉が唾液で糖分にかわり、より甘さが強調されるようだ。

ふつうモードで炊いたごはんの歯ごたえ
こちらは「かまど極め」モードで炊いた、焦げていない部分のごはんの食感のグラフ。色々な食感がある。オレンジの線は中心部に少し芯が残っているようでしゃっきりとした食感。青い線はもちもちの食感で、外側の水分が少ないためか、もちっ! っと歯が入ったあとに0.28秒で一気に歯が入ってる
「かまど極め」のおこげの部分の食感。横軸の時間が違うことに注意していただきたい。これまでは最大0.3秒だったが、このグラフは2.18秒になっている。こげでごはんが硬くなっているので、歯が入るのに時間がかかるというわけ

 ただ、かまど極みには弱点がある。1~2合のごはんを炊くと、おこげばかりが目立ってしまい、全体としては硬めになってしまう点。落としどころを調べてみたが、3合以上が一番羽釜で炊いたごはんに近いものに仕上がるようだ。

 さらに子どもにも大好評だったのでお弁当にも詰めてあげたところ、水分が少ないためかお昼時には硬くなってしまい、あまりおいしくないとのこと。おこげはお弁当には向かないので、炊きたてを食べるのがいい。

マニュアルレスでも使える簡単操作、でもおいしい炊き方情報が満載

 今回の味見はここまでにして、操作性について見てみよう。お米の種類や仕上がりの硬さなど、さまざまな設定ができるため、メニューは数多くなるが、操作はいたって簡単。ウチの奥さんも、その晩のごはんをマニュアルなしで炊いていた。

左のボタンでお米を選択。次に矢印ボタンで炊き分けを選ぶ。最後に炊飯ボタンを押す3ステップ

 どんなお米で、どんな炊き方をしようと、3ステップでOK。まずはお米の種類を選び、次に炊き分けを矢印ボタンで選ぶ。最後に炊飯ボタンを押すだけだ。

 ちなみにタイマー予約も簡単で、やっぱり奥さんはマニュアルも見ずに翌日のお弁当用のごはんを予約炊飯していた。炊飯器を使ったことのある人なら、マニュアルはほぼ不要だろう。

予約ボタンを押して、矢印ボタンで時刻を10分単位で指定。最後に炊飯ボタンを押せばOK。予約は2つ用意されている

 ただマニュアルにはおいしいごはんの炊き方のアドバイスがいくつも掲載されているので、一読することをオススメしたい。またアドバイスのみをまとめた「ご家庭で理想のごはんを炊くための十カ条」なるシートも添付されているので、これは必読だ。

添付されている「ご家庭で理想のごはんを炊くための十カ条」は、極め羽釜だけでなく、一般的な炊飯器でも参考になるアドバイスが満載されている。これを読まずして「炊飯器のご飯がまずい」なんていうのは言語道断という知識ばかり

 筆者の母がそうなのだが、お米を研いだ後1時間ほどざるに上げて給水させたり、炊き上がったあとにさらに蒸したりしている人がいるが、10箇条によればそれは大きな間違いらしい。現在の炊飯器は、給水工程も蒸し工程もすべて込みでごはんを炊いてくれるので、お米を研ぎ終えたらすぐに炊飯器に入れて炊くだけでいい。また炊き上がったごはんを蒸す必要はまったくない。つまり炊飯器のふたを開けた時点で一番おいしいごはんが炊けているのだ。

ごはんが炊き上がったら、内釜に接触しているごはんと、内側のごはんをひっくり返すように混ぜるのがポイント。これはどんな炊飯器でも一緒だ

 ただ1つやるべきことは、炊き上がったらすぐにごはんをかき混ぜること。内釜の側面や横に接触しているごはんが予熱で火が入り過ぎないように、中心部と釜に触れていたごはんを入れ替えるようにするといい。

 そしてこの炊飯器は、炊き上がりにその場にいなかった場合などのために、炊き上がったあとにフタを開けないとブザーが鳴りかき混ぜを促してくれるので便利だ。


一般的な炊飯器に比べると少し大きめで蒸気もかなり出る

 ところで、この炊飯機の本体については、サイズと蒸気などに関して、事前に注意したい。

 まず大きさだが、一般的な炊飯器の内釜はほぼ円筒系をしているが、極め羽釜はお茶碗状に上部が広がっているため、一般的な炊飯器に比べ若干大きめになっている。とくに奥行きは大きく感じられる。

一般的な炊飯器に比べると一回り大きな極め羽釜。幅よりも奥行の大きさが気になる
通常の炊飯モードでは、かなり湯気が出る炊飯器の部類になる。とはいえ圧力をかける炊飯器は、だいたいこんなモノだ

 また、詳しくは連載2回目以降で説明するが、蒸気を抑えるモードは備えているものの、蒸気レスではないことに注意したい。通常モードの炊飯では、かなり蒸気が出る炊飯器の部類に入るだろう。

 そして南部鉄器の羽釜が重いので、総重量も8kgとかなり重い。キッチンでごはんをよそう場合は問題ないが、キッチンから食卓に炊飯器を運ぶ家庭では注意したい。小さな子どもや爺ちゃん婆ちゃんにはチョット重すぎるだろう。

 なお消費電力は1,330Wなので、壁コンセントにプラグを直接差し込むのがベスト。しかし象印の炊飯器に限らず、電源コードはたいてい1mほどしかないので、もし延長する場合は15Aのテーブルタップを炊飯器だけで使いたい。12Aや7Aのテーブルタップだと発熱や火災の原因になるので、絶対に使ってはならない。

今回の一品「おこげ八宝あんかけ」

添付のレシピブックには、おいしそうな26種類のメニューが掲載されている

 さて、今回の長期レビューでは、レビューの最後に「今回の一品」として、添付のレシピブックに掲載されているメニューの中から、ウマそうなものを選んで実際に作っていくことにしよう。今回はかまど極めで作ったおこげを使い、そのうえに八宝菜を乗せて食べるというレシピ「おこげ八宝あんかけ」だ。

 作り方は簡単で、1合のお米をかまど極めで炊いておこげを作り、あとは八宝菜を乗せるだけ。

1合のごはんをかまど極めで炊いておこげを作るあとは八宝菜を乗せるだけ。いつもの八宝菜がオシャレな中華に早代わりする

 気になる味は、おこげの香ばしさと八宝菜のあんが絡まって、絶妙においしい。これは家族の大絶賛だった。

 ただ、我が家は大家族なので、レシピブック1合のお米で3~4人前、というのはかなり物足りない。ほかにおかずもう1品と、ごはんが欲しいところだ。

毎日食べるごはんがおいしいと、家族の笑顔も増える

ごはんの味を損なわないように、夕食のメニューもシンプルな毎日を送っています

 第1回では、これまで家族みんなが一番おいしい炊飯器と思っていた「おどり炊き」をあっさりと越えておいしいごはんが炊けたということに驚いた。また、おこげを作れる炊飯器はいくつかあるが、本物の羽釜で炊いたごはんソックリに仕上がるという点にもびっくりした。

 毎日食べるごはんがおいしければ、食卓を囲む家族の笑顔も増える。そいういう意味では、高級炊飯器でも買う価値があるのかもしれない。しかしまだ機能の半分も使っていないので「13万円の価値があるのか?」という答えを出すのはまだ保留にしておこう。

 次回はさらに使い込んで、しゃっきり~もちもちまで5段階で炊き分けできるという機能や、毎日使う保温機能を調べてみることにしよう。どんな炊き分けでも本当においしいごはんが炊けるのかが楽しみだ。



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2012年9月19日 00:00