家電製品ミニレビュー

まさしく醸しマシーン。甘酒はじめ発酵食品を手作りできる甘酒メーカー「糀美人」がすごい!

 今回はマルコメの「プラスこうじ 甘酒メーカー糀美人MP101」をじっくり試してみた。あのお味噌などで有名な発酵食品のプロのマルコメが、同じく発酵食品の甘酒を作るとこうなるのか! という目から鱗のまさかの家電。保温・タイマー機能が付いた甘酒メーカーなら、家で簡単に甘酒を作ることができるのだ。マルコメは家電メーカーではないので、本体自体はOEM商品だけれど、発酵食品をとても身近に感じることができるネーミングと商品となっている。

本体と付属品一式。本体と容器は全てマトリョーシカのようにコンパクトに収まる。
メーカー名マルコメ
製品名プラスこうじ 甘酒メーカー糀美人MP101
実勢価格5,240円(Amazon)

 甘酒は「飲む点滴」とも言われるほど栄養満点で美肌美容にも良いと言われている。夏バテ防止にも効くとのことで、これからの季節に強い味方だ!

 甘酒を作るには酒粕から作る方法と、糀から作る方法がある。私は酒という字が付いているので、酒粕で作るものとずっと思い込んでいた。ただ、酒粕の場合は調理してもアルコールが残ってしまうから、飲むタイミングは難しいなと思ってあまり飲むことが無かったけれど、今回、糀からも作れることを知った甘酒初心者の私。ちなみに「こうじ」という漢字には「麹」と「糀」があるが、「麹」は米・麦・大豆で作られたこうじ全てを指すのに対して、「糀」は米で作られたものだけを指すのであります。トリビア〜!

 さて、早速甘酒作ってみるよ。

 「美容に良い」とか「ダイエットに良い」と聞くとどうしても気になってしまうのが女心。めちゃくちゃ楽しみなのであります。

 まずは容器を熱湯消毒する。これが一番大事。熱湯消毒していないと雑菌も一緒に培養してしまうので、体に良い甘酒どころか、体に悪い菌を増やして飲むという、想像するのもおぞましいことになってしまうのだ。面倒臭がりの私もそれを想像すると、さすがに丁寧に熱湯消毒をする。煮沸消毒は容器が変形するのでNG。あくまでも熱湯をかけて消毒。

容器や内蓋、使うスプーンは熱湯消毒する。これは大事な作業!

 熱湯消毒が終わったら材料を入れていく。おかゆからでも普通に炊いたご飯+お水からでもどちらでもOK。おかゆを用意するのは面倒くさい私は、ジャーに入っているご飯の余りで作ってみる。冷やご飯だったら水を温めて、熱いご飯の場合はお水を足して混ぜて60℃位にする。糀菌は冷たすぎると動きが鈍くなるし、熱すぎると死滅しちゃうというちょっとナイーブな菌のようなので、快適な寝床を準備するわけです。

おかゆまたはご飯と水を合わせたものを60℃くらいにしておく
米こうじも入れて準備完了。あとは本体にセット

 その寝床ができたら糀を入れて、熱湯消毒したスプーンで混ぜる。マルコメから、同じ「プラスこうじ」というブランド名で糀も売っている。分量1回分の100gの袋が小分けで入っているし、パラパラと綺麗にほぐれているので扱いやすい! 簡単って嬉しい。私はこのプラスこうじの糀を使ってみた。

同じ「プラスこうじ」ブランドの米こうじも販売されている

 材料を混ぜたら蓋をして、甘酒メーカーの中に入れて外蓋も閉め、温度と時間設定をしてスタートするだけ。電源に甘酒メーカーの電源コードを差すと、「ピッ」って音と共に液晶部分に「--」と表示されるので、「設定」ボタンを押して時間と温度の設定を行なう。ライトが緑色に光っている間に「+」「−」ボタンで設定を行なうが、何も操作をせずに3秒経つと勝手に確定。3秒って結構焦ってしまう(笑)。温度設定を3秒操作せずに放置すると自動でスタートするので、「スタート」ボタンはむしろいらない気も(笑)。

 確定後に設定をやり直したい場合は、電源プラグを再度抜き差しする必要があるのだけれど、「スタート/キャンセル」ボタンを押しても何も反応しないので、「キャンセル」機能は謎。おそらくスタートオンリーで、キャンセルする場合も電源プラグを抜くというのが正しいと思われます。

電源にコードを入れて、時間と温度を設定してスタートするだけ

 甘酒は55℃で8時間。数時間に1回混ぜるとムラなく熟成できると書いてあるけれど、公式ページには「外出中でも就寝中でも安心」と書いてあり、私としても夜寝る前にセットして朝出来上がっている状態が嬉しいのと、数時間に1度スプーンを熱湯消毒するのは面倒で続きそうにないため、ただ放置。ただ8時間放置するのみ! がんばれ糀。頭の中では、漫画「もやしもん」の世界がめくるめく(笑)。「頑張って醸せよー!」なぁんて話しかけつつ、朝起きるのが非常に楽しみに就寝。

55℃でずっと保温していたので、蓋には水滴がたっぷり。
見た目は派手な変化なし。本当に出来ているのかちょっと不安
完璧に甘酒! 甘い!

 朝起きてワクワクしながら甘酒メーカーをチェック。蓋のところに蒸気の水がたくさん付いている。蓋を開けると……おかゆっぽいけれど、お米に水を足した効果なのか発酵が進んだからなのか、甘酒初心者の私にはわからない。熱湯消毒したスプーンですくってパクッと一口……。

 「あまーーい!!!!!」

 某お笑い芸人のように思わず声を出してしまった! びっくりするほど甘い。めちゃくちゃ甘い! これが本物の甘酒なのか! と一口でめちゃくちゃ感動できる。甘酒って本当に甘いんだなと。口の中でご飯をよく噛んでると唾液のアミラーゼでご飯が甘くなるけれど、麹菌の分解はそれと比にならない! めちゃくちゃ甘くてびっくりした。ひとまず朝ごはんがわりに甘酒をもぐもぐしてから発酵食品のパワーを思い知りつつ、ご飯200g+水300cc+糀100gと1度作ると結構な量になるので、どう消費していこうかと考えることに。

 私たちの身近に発酵食品はたくさんあるけれど、菌によって快適な温度が違う。このメーカーの良い点は1℃ごとに温度設定ができるところで、色んな種類の菌のヨーグルトも作ることができる。市販のプレーンヨーグルトだったら40℃前後が快適温度、カスピ海ヨーグルトなら27℃、ケフィアヨーグルトだったら25℃といった具合に、結構違いがあるので、仕込む前に要チェック。

 ヨーグルトを作る際も容器をきちんと熱湯消毒する。プレーンヨーグルトと牛乳(成分無調整)を合わせてかき混ぜて、40℃で8時間。こちらも寝る前に仕込んで、ただ待つ(寝る)のみ。前日作った甘酒は容器に入れたまま蓋をして冷蔵庫に入れていたので、付属の容器大を使う。こちらも朝起きるとばっちりヨーグルトに。容器も白、ヨーグルトも白、牛乳も白、出来上がりも白。写真を撮っても何も伝わらないライター泣かせのヨーグルト(笑)。ただ、ばっちりヨーグルトに仕上がっていました。水切りヨーグルトが作りたい場合は、付属の水切り容器を一緒にセットして作ればできる。

ヨーグルトできた! 白→白でぱっと見違いがわかりにくい
牛乳がきちんと固まってヨーグルトになっている

 さて、甘酒とヨーグルトを作って「ばっちりできたー!」と感動したものの、どう消費するかが長く使っていく上での課題。甘酒は毎日ぐびぐび飲みたいと思えるほど私が好きな味では無く、体に良いなら続けたいなぁと思った程度。そして加熱すると生きた糀の酵素などが死滅しちゃうので、できたらそのままの状態で飲みたい。そんな中、ヨーグルトと合わせて食べると美味しいし、腸内環境が整って良いという情報を得た。なるほど!と思い、作った甘酒とヨーグルトを合わせてみた。それだけだと、まだちょっと香りが気になったので、私の大好きな乳酸菌飲料「カルピス」の原液をちょっと加え、ブレンダで滑らかに。

 「めちゃくちゃ美味しいラッシーじゃないか!」と、その美味しさに衝撃が走る。これは世に広めたい位に美味しい。カルピスの南国マンゴーを使えば、マンゴーラッシーにもなる。カルピスと甘酒の甘さにヨーグルトの酸味がめちゃくちゃマッチしていて、声を大にしてオススメする!

 とても濃厚なので、飲むときは氷を入れるとちょうどいい感じだけれど、それをそのまま製氷機に入れて凍らせると、すごく美味しいおやつになる。私はこれを朝晩数個ずつ食べている。めちゃくちゃ美味しい。

甘酒+ヨーグルト+カルピスで極上ラッシー
製氷器に入れて一口大に凍らせておくと手軽なデザート

 麹の効果を最大限生かすためなら、生きたまま食べるのが一番だけれど、効果だけじゃなくて調味料として便利なのが「塩麹」と「醤油麹」。一時期めちゃくちゃブームだった気がするけれど、これ1つあれば料理が美味しくなるからとても便利なのだ。

 塩麹も醤油麹も簡単に作ることができる。塩麹の場合は塩+糀+水、醤油糀の場合は醤油+塩(少量)+糀。たったこれだけで、8時間で美味しい調味料の完成。流行った時に家でも作ったことあるけれど、毎日かき混ぜてあげて1週間〜10日程かかった気がする。それが甘酒メーカーなら、セットして寝ると翌朝には使える。

塩麹や醤油麹も短時間で簡単にできる

 夏はお野菜が美味しくてとても嬉しいけれど、醤油糀を使ってさっと炒めたアスパラなんて、お野菜自体の味に深みのある醤油が混ざって最高だ。ジップバッグにキュウリを乱切りしたものと塩麹を入れておくだけで、もりもり食べられる美味しいキュウリ漬けができる。手抜き料理がなんとなく手の込んだ料理のように変身するので、常備しておくと便利!

アスパラの醤油麹炒め。アスパラの甘みが引き立って美味しい!
キュウリの塩麹漬け。浅漬けのようにもりもり箸がすすむ

 冊子のレシピにもマルコメの公式HPにも載っていないけれど、OEMの元商品にはしっかり記載されている発酵食品がある、それは「納豆」だ。日本食の代表格納豆! 私は納豆大好き好き! 納豆が家で作れるということは、自分でこだわりの大豆を選んで作ることができる。私は欲張りに「丹波黒豆」という高級納豆を堪能しちゃうぞ。

 しっかりと柔らかめに煮た豆と、市販の納豆があれば納豆は自作できる。納豆を作るナットウキナーゼは快適温度が45℃位だけれど、高熱でも死なないなかなかタフな菌。作るのに1日かかるので、雑菌がつかないように煮た豆を熱いうちに容器に入れて(もちろん熱湯消毒もする)、そこに市販の納豆を入れて45℃で24時間待つ。非常に呼吸するようなので、内蓋はせずに清潔な布巾をかけてから外蓋をして24時間。

 丸1日たって蓋を開けると、「おー!」とこちらは見た目から感動。納豆の糸が伸びてる伸びてる。スプーンですくってみると、確かに糸を引く! 1〜2日冷蔵庫で寝かし、発酵の際に出たアンモニア臭を落ち着かせてから食べる。手作り納豆ご飯は「絶品!」という言葉以外見付からない程美味でございました。納豆好きだったら1度試してみてほしい。ものすごく美味しい。

柔らかく煮た大豆にたね菌となる市販の納豆を混ぜる
呼吸をして酸素を多く必要とするので、密閉せずに布巾で蓋をする
完璧に納豆になっている! 高級黒豆納豆!
1〜2日寝かしてから食べる。これはもう絶品!!!

 この甘酒メーカー、一言でいうと「ブランディングの大成功」な商品な気がする。通常だったら「1℃単位で温度設定できるヨーグルトメーカー」とか、「カスピ海ヨーグルトも作れるヨーグルトメーカー」という感じで、「ヨーグルトメーカー」として発売されるだろうけれど、そこを「甘酒メーカー」という形で発売したマルコメの発想が素晴らしい!

 今までヨーグルトメーカーでヨーグルトを作っていた人も「ヨーグルトを作っている」というのは分かっていても、「発酵食品を作っている」という当たり前の事を忘れがちだ。そこにヨーグルトではなく「甘酒」というワードを持ってくる事で、一気に発酵食品の世界が身近なところで広がる。たくさん溢れるヨーグルトメーカーの中に埋もれるのではなく、甘酒という日本古来の発酵食品で再度掘り起こされたような存在にめちゃくちゃ脱帽&感動してしまった。

 夏バテや脱水など起こりやすいこの季節、発酵食品で健康に乗り切るというのは、体にも負担が少なく非常に効果的だと思う。ヨーグルトより甘酒の方が馴染みがあるという高齢の方にも、健康維持のためにとっつきやすい1台なのではないかと思うのであります。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まない30代後半。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。