神原サリーの家電 HOT TOPICS

今年の夏も高級扇風機が勢揃い!

~各メーカーの特徴から、選ぶ時のポイントまでレクチャー

羽根のない扇風機として知られるダイソンの「エアマルチプライアー」

 2009年秋に発表された英国・ダイソンの“羽根のない扇風機”を皮切りに、震災以降の省エネ・節電の流れをくんで、一気に広がった高級扇風機市場。2013年モデルでは、ついにパナソニックもDCモーター採用モデルを投入し、まさに百花繚乱の状態だ。扇風機のトレンドを振り返りつつ、2013年モデルの特徴をチェックしてみたい。サーキュレーターとの違いや、エアコンと組み合わせた上手な使い方などもおさらいしておこう。

【ポイント1】省エネで静かなDCモーター&心地よい風がトレンド

 ここ2~3年、“高級扇風機”といわれる2~5万円の高額なものが店頭にラインアップしているが、これまでのものとどんな点が違うのだろうか。その最大の特徴は、従来の扇風機に使われていたAC(交流)モーターでなく、DC(直流)モーターを採用していること。このDCモーターの利点は、少ない電力で回転させることができ、速度制御や出力制御がしやすいため、省エネ性が高く、微風から強風まで細かく運転を制御できるところ。最弱の運転時にはわずか1~4Wの電力しか使わず、モーター音が静かなため、就寝時などでも音を気にしないで使用できる。

 もう1つ、各社が提唱しているのは「風の質」の追求。羽根の中央部の直径を小さくしたり、副翼をつけたり、流体力学を採用した羽根など、風ムラを抑え、面で広がる風の工夫をしている。ムラのない風は自然界の風に近いため、心地よさを感じさせ、風速や風量をアップさせるのにも役立つ。

 そのほか、温度センサー、湿度センサー、人感センサーなどを搭載して、さらにムダなく快適な風を届けるようにしているものもある。電源を気にしないで持ち運んで使えるコードレスタイプの登場も2013年モデルの特徴といえるだろう。省スペースでデザイン性にも優れたDCモーター採用のタワーファン(タテ型扇風機)のラインアップも増えている。

【ポイント2】扇風機は風を当てて涼むもの、サーキュレーターは風を循環させるもの

無印良品のサーキュレーター「AT‐CF26R‐W」

 扇風機とサーキュレーターは“デザインの違い”と思っている人も多いようだが、実は役割が違う。扇風機は基本的に「風に直接当たることで体の表面の気化熱を奪い、涼しく感じさせるもの」で、サーキュレーター「室内の空気の循環や、新鮮な外気を取り込むのに適しているもの」。サーキュレーターは、元々、天井が高い欧米の住環境で、天井付近にたまってしまった暖気を循環させるために生まれた“冬の家電”だった。それが、エアコンでの冷房時にも、床面に沈んでしまいがちな冷気を持ち上げて室内全体を涼しくさせるのにも役立つと注目され、冬と夏の2シーズン活躍する家電となったのだ。

 扇風機では、風を遠くまで飛ばすことができても、風量が弱くなってしまうため、循環させるまでにはなかなか至らない。また、エアコンや天井に向けてしっかりと風を送るためにも、しっかりと上向きの角度に首振りできることも重要なポイントになる。その点、普通の扇風機では角度の調整が浅いものが多いため、思ったところに風を飛ばすことができない。つまり、首の向きを自在に調整して、大風量の風を遠くまで届けることができるのがサーキュレーターなのだ。反対にサーキュレーターを扇風機のように使おうとしても、風がやわらかくないので不快感があり、直接当たって涼むには不向きといえるだろう。

 ただし、2013年モデルの扇風機の中には、上向きどころか真上に角度を上げ、風を最強モードにしてサーキュレーターとしても使用できるものも出てきている。エアコンと併用時にはサーキュレーターとして、就寝時などには単体で涼やかな風を送るものとして使い分けられる。また、サーキュレーターの中にも、高級扇風機同様にDCモーターを採用して省エネ性を高め、静音性を高めたものも登場している。エアコン+サーキュレーターで省エネ性と快適性の両立を図りつつ、音も静かなのでテレビや会話を楽しむ際にも気にならないという点で、おすすめできる。

【ポイント3】切タイマー・入タイマーを上手に使って“快眠&節電”

 3つ目に、扇風機のタイマーを利用した快眠の裏技をご紹介しよう。扇風機のタイマーで比較的多く見かけるのは「2・4・6時間後」に自動で運転が止まる“切り忘れ防止”のための切タイマー。最近は、設定時間になるとオフになるという細かな制御もできるものが多くなっている。

 今回注目したいのは、「設定時間にオフ⇒設定時間にオン」という、「切・入ダブルタイマー」機能の付いたもの。就寝時にエアコンと扇風機を時間差で活用することで、快眠&節電につながるのだ。使い方は簡単。まずはエアコンを使用し、就寝後1~2時間でオフになるようにタイマーをセット。その後、室温がやや上がり始める1時間後に扇風機の入タイマーを時間差でセットして、室温が上がり過ぎるのを防ぐのだ。寝入りばなには、なるべく室温を低めに保って深部体温(表面温度でなく、体の内部の温度)を下げることが快眠につながるので、特に熱帯夜の時などはおすすめの方法といえる。

 エアコンを使うほどでないという夜に扇風機だけで心地よく眠る方法もある。就寝時に微風モードで首振り運転させ、1~2時間程度運転したら、切れるように切タイマーをセット。さらに起床時間に室温が上がり始める前に扇風機が運転するように入タイマーをセットしておけば、寝汗をかいて起きることなく快適な目覚めが期待できるというわけだ。タイマーの設定が面倒という向きには、温度センサーによる自動運転機能があるものが便利だろう。

 扇風機選びのポイントについて3つ挙げたところで、次に具体的な製品を紹介していこう。

床に座ってくつろぐ時にも最適なロータイプが登場

~ダイソン「エアマルチプライヤー AM02リビングファン/AM01テーブルファン」

 ダイソン独自のテクノロジーにより、吸気口から空気を取り込んで周囲の風を巻き込むことで、16倍の風量を生み出す「エアマルチプライヤー」。従来の扇風機のような高速回転する羽根がないため、断片的で不快な風ではなく、スムーズな風なのが特徴。安全性やお手入れのしやすさにおいても魅力的だ。

 新モデルの「リビングファン」は、日本の暮らしに合わせたロータイプで、これまでのタワーファンよりも高さが13cm低く、床に座った時に最適な高さを実現させている。また、2009年9月に発表された丸いデザインのテーブルファンAM01には、新しくブラックが加わり、インテリア性を高めている。

ダイソン「エアマルチプライヤー AM02リビングファン」。カラーはシルバー/シルバー、アイアン/サテンブルー。参考価格54,000円
ダイソン「エアマルチプライヤー AM01テーブルファン」。カラーはブラック/ニッケル、アイアン/サテンブルー。参考価格39,000円

静かで心地よい自然の風がコードレスでも

~バルミューダ「GreenFan2+」/「GreenFan mini」(コードレスモデル)

 2010年に登場した国内メーカーの“高級扇風機”の先駆け「GreenFan(グリーンファン)」。最新モデルとなる「GreenFan2+」は最小の消費電力2Wとなり、専用バッテリーを搭載したコードレスタイプもお目見えしている。2重構造のファンによって、風を1点に集中させ、空気のかたまりと渦を消滅させてから、拡散させる空気は“面”の風となって、不快さを感じさせない。

 カラーバリエーションにホワイト×グレーが加わった「GreenFan mini」は最小の消費電力が1Wに。コードレスタイプでは最強運転で約4時間、最大30時間使用でき、2.5㎏と軽くコンパクトサイズで持ち運びやすいので、電源のとりにくい場所でも使えて便利。また、バッテリーの「UniPack」はGreenFanシリーズだけでなく、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器への充電も可能。スマートフォンの満充電2.5回分の電力を供給できる点も魅力だ。

バルミューダ「GreenFan2+」カラーはホワイト×ブラック、ホワイト×グレー。販売価格34,800円(コードレスモデルも同色で44,800円)
バルミューダ「GreenFan mini」カラーはホワイト×ブラック、ホワイト×グレー。販売価格24800円(コードレスモデルも同色で34,800円)

ユーモラスに動く3Dファンがコードレスに

~シャープ「コードレス3Dファン」/「プラズマクラスタースリムイオンファン」

 シャープの「コードレス3Dファン」は、空を滑るように数万kmも飛び続ける「アホウドリ」の、細く鋭い翼を応用した羽根が特徴。空気抵抗が小さいので、コンパクトでも約10m先まで届く、直進性の高い風を生み出す。上下・左右に自動で首を振る「3Dターン」は見ていて楽しく、季節や用途に合わせて、上下首振り範囲をコントロールでるため1年中活躍する。2013年モデルは、約6時間の充電で最大約16時間のコードレス運転が可能。

 真上への送風が可能なので、扇風機としてだけでなくサーキュレーターとしての役割も果たす。温・湿度センサーや、夏の高温・高湿状態を光と音で知らせる「みはり機能」、足元を照らすフットライトなど多機能なのも魅力だ。

シャープ「コードレス3Dファン PJ-C2DBG-C」。カラーはベージュ系。実勢価格35,000円前後
シャープ「プラズマクラスタースリムイオンファン PF-FTC1」。カラーはホワイト系とブラウン系。実勢価格28,000円前後

 2代目となるスリムイオンファンは、独自の「エアロダイナミックフォルム」の送風メカニズムで、高濃度プラズマクラスター25000を含んだ風を部屋の遠くまで届ける。3Dファン同様、温度・湿度センサーで検知して光と音で注意を促す「みはり機能」を搭載。こちらは夏の高温・高湿状態に加え、冬の低温・乾燥状態もみはる。上向き約60度から下向き約20度の上下スイングルーバーに加え、よく使う3つの風向きをリモコン操作で簡単に選べるダイレクト設定もある。1人で使う時には左右約15度で左右にスイングする「パーソナルモード」が便利だ。タイマーは入/切ともに1/2/4/6時間。

進化した1/fゆらぎによる“不規則な強弱の自然風”で蓼科高原の風を送る

~パナソニック「扇風機 F-CJ329」/「スリムファン F-S1XJ」

 パナソニックの「扇風機 F-CJ329」は、同社の扇風機として初めてDCモーターを採用した高級モデル。工場などの大空間で使用される換気送風機器のファン技術を新羽根の開発に生かし、ひねりを加えた7枚羽根を採用。より滑らかで広範囲に広がる大風量の風を実現させている。同社独自の風速制御“1/f ゆらぎ”も進化し、不規則な強弱の自然風を再現、蓼科高原に吹く風を体感できるとしている。また、温度センサーが室温を感知し自動運転、設定温度によって風量も自動で調節する。ナノイー搭載で衣類に付着したニオイの脱臭もできる。

 さらに、DCモーター採用の「スリムファン F-S1XJ」も今年からラインナップに加わった。独自構造の流体素子技術の採用によって、ルーバーなどの気流制御機構なしでも広角の送風を実現させ、やさしく揺らぐ風を送るしている。風量は5段階で切タイマー1/2/4時間付き。場所をとらず、シンプルなデザインなので「ナノイー発生機」として、1年中部屋に置いて使える。高さは950mm。リモコンはポール上部に取り付けられる。

パナソニック「扇風機 F-CJ329」。カラーはシルバー。実勢価格29,800円前後
パナソニック「スリムファン F-S1XJ」。カラーはシルバー。実勢価格27,000円前後

温度と湿度のデュアルセンサーで風量を自動調節するバッテリー搭載モデル

~東芝「SIENT F-DLR-300X」

東芝「SIENT F-DLR-300X」。カラーはブラック。実勢価格35,500円前後

 東芝「SIENT(サイエント)」の新モデルは、消費電力がさらに下がって最小の消費電力が2.3W、最大時で29Wとなっている。独自の7枚羽根とDCインバーターモーターによる滑らかな風が特徴だ。1サイクル120秒で自然に吹く風に近いパターンを再現し長野県・上高地の自然風を体感できるという。

 温度と湿度のデュアルセンサー搭載で、室内の温度と湿度に合わせて、風量を自動で調節する機能も。バッテリー搭載で、夜間電力を有効に活用して昼間の電力消費量を減らすことができるピークシフト運転が可能。20:00~13:00の間にバッテリーを充電し、使用電力量が多くなる13:00~15:00に自動でバッテリー運転に切り換わる仕組みだ。高さ110cmのハイポジションタイプ。

“赤ちゃんとママのための扇風機”がさらにやさしく

~ツインバード「コアンダエア EF-D959W」/「タワーファン EF-D944PW」

 お母さんが枕元で仰ぐうちわのやさしい風をコンセプトに、2011年に誕生して以来、“赤ちゃんのための扇風機”として人気を集めている「コアンダエア」の3代目モデル。精密機器にも使われているブラシレスDCモーターの搭載で回転数を自在に制御し、超微風から力強い風までを送り出せるのが特徴だが、新モデルでは、羽根の外径を5cm大きくしたことで風効率をアップさせ、回転数をさらに抑えて、よりやさしい風を送れるようになったという。また、お母さんが赤ちゃんを抱っこしたままでも取り外しやすいようにという配慮から、リモコンの収納部を本体上部に設置。最大110cmまで10段階に高さ調節ができるので、ベビーベッドにもしっかり風が届く。

ツインバード「コアンダエア EF-D959W」。カラーは。実勢価格15,800円前後
ツインバード「タワーファン EF-D944PW」。カラーはパールホワイト。実勢価格12,600円前後

 「タワーファンEF-D944PW」は上下70度の可動範囲を持つ上下電動ルーバー付きで、温度センサー検知による自動運転機能も搭載。室温が下降している時には30℃になったら「中」運転、27℃で「弱」に切り換わる。反対に室温上昇時には29℃になったら「中」、32℃で「強」運転に切り換わる仕組みだ。お任せで運転が切り換わるので、エアコンとの併用などにもムダなく、より快適に過ごせる。

真上にも向くサーキュレーター機能&人感センサー搭載のハイポジションモデル

~山善「DCモーターハイリビングサーキュレーター YHCX-BD30」/「スリムファン YSR-P110」

 長年、扇風機市場で高いシェアを誇ってきた山善。DCファンシリーズの最新モデル「DCモーターハイリビングサーキュレーター YHCX-BD30」では、ハイリビング扇とサーキュレーターを1つにしたハイリビングサーキュレーターが登場。外羽根に内羽根をプラスして風速と風量をパワーアップしたツインブレードを採用する。さらに、人感センサー付きで自動でオン・オフを行なうため、ムダがない。上向き90度と真上にも向く角度調節でサーキュレータ―として使用する際にもしっかりとその機能を発揮する。

山善「DCモーターリビングサーキュレーター YHCX-BD30」。カラーはブラウンとホワイト。実勢価格10,500円前後
山善「スリムファン YSR-P110」。カラーはホワイト。実勢価格9,000円前後

 初投入のスリムファン「YSR-P110」は111.5cmのハイポジションタイプで椅子に座った生活にもぴったりの高さ。オートルーバーで上下にも送風できる。左右の首振りは40/80/120度の3段階。4時間の切りタイマー付き。就寝時に最適な静音モードも搭載している。

オンオフタイマーとリズム風で安眠対策もバッチリの美形モデル

~±0「DCファンX610」

±0「DCファン X610」。カラーはホワイトとブラウン。実勢価格14,700円

 ±0の「DCファンX610」は、連続風に加え、風の強さに変化をつけて自然に近い風を送るリズム風もあり、それぞれ9段階の風量設定に対応。上向き90度まで角度調節できるのでサーキュレーターとしても活用できる。左右の首振り角度は30/60/90/120度の4段階に設定可能、集まった人数によって角度調整できるので便利だ。

 オンタイマーは1/2/4時間、オフタイマーは2/4/6/8時間の設定ができるため、就寝時にはオンオフタイマーを組み合わせて使うことによって、安眠にも役立つ。ホワイト、ブラウンの各色とも、羽根から本体まですべて一色でそろえたデザインが美しい。

カモメ羽根が生み出す超静音の自然風

~ドウシシャ「kamomefan KAM-LV1302D」

ドウシシャ「kamomefan KAM-LV1302D」。カラーはホワイトとグレー。実勢価格19,800円前後

 船舶用プロペラメーカー「ナカシマプロペラ」の開発チームが、カモメの羽根をヒントの設計・開発した“カモメ羽根”による流体力学に基づいた羽根が特徴の「kamomefan(カモメファン)」。新モデルの「KAM-LV1302D」は、首振り用のモーターを本体内部基板に移動させたことで、驚くほどのスリム化に成功。

 高性能DCモーターを採用しており、自然の風を再現しながらも、静かなのが特徴だ。ムダのない気流を作り出し、最弱運転時にはわずか10.7dBという木の葉のふれあう音よりも静音が高い。支柱ごと回転する首振り運転も印象的だ。真上(90度)のほか下方向30度の角度調節でサーキュレーターとしても使える。

通年使うものも多い扇風機、長く愛用できるデザインを

 消費電力の少ないDCモーターを採用し、微風からサーキュレター並みの強風まで自在に制御できる高級扇風機。イオン搭載やバッテリー内蔵タイプなど更なる付加価値で魅力を高めているものもある。ラインアップが拡充したため、選ぶのポイントが難しいと思う人も多いことだろう。

 1つ言えるのは、使用する空間になじんで愛着を持って使えるかどうかも大切なポイントになるということ。サーキュレーターとして夏だけでなく冬の暖房時の空気循環のためにも使う“通年”の家電であるのならばなおのこと、インテリアの一部として考えたい。2台目、3台目として購入するのならば、小型で持ち運びが楽なもの、コードレスタイプなどもおすすめだ。お気に入りの1台を見つけて、まずはこの夏を快適に過ごしてほしい。

神原サリー