家電製品ミニレビュー

パナソニック「リビング扇 F-CJ329」

~自然に近い“1/fゆらぎ”の風でぐっすり睡眠。目覚めも爽やか

パナソニック「リビング扇 F-CJ329」

 微風が音も無く、頬を優しく撫でていったかと思ったら、次に髪がフワリと浮き立つようなそよ風が一瞬で吹き抜ける――。緩急の予測のつかない自然界の風は、ずっと当たっていたいと思うほど心地良い。この不規則な強弱のリズムは「1/fゆらぎ」と呼ばれ、人に心地良さを与えると言われている。

 一方、一般的な扇風機が作り出す風は、ゆらぎのない連続風だ。風が身体の同じところにあたるのは、短時間ならば気持ち良いが、長時間となると不快な寒さを覚える。連続する風が肌表面から熱を奪い続け、身体の内部の体温(深部体温)まで低下させるからだ。たとえ首振り機能を使っても、同じ場所に規則的に当たるのは変わらない。

 そこで今回は、自然に近い“ゆらぐ風”を再現した扇風機を紹介しよう。やさしく、心地良い風を生みだす、パナソニックの「リビング扇 F-CJ329」だ。実際に睡眠中に扇風機をつけっぱなしにしても、ダルさを全く感じずに快適に目覚められた。優れた扇風機だ。

メーカーパナソニック
製品名リビング扇 F-CJ329
購入場所yodobashi.com
購入価格29,800円

 本製品の最大の特徴は、扇風機の人工的な風にもかかわらず、「自然に近い、心地良い風」を室内で再現できることだろう。自然な風は、信州の蓼科高原の風を分析した「1/fゆらぎ」のリズムが基となっている。微風から強風まで、回転数をきめ細かく制御できる「DCモーター」と、広範囲に広がる風を送り出す「ひねりを加えた新・7枚羽」を搭載することで、1/fゆらぎを実現しているとのこと。DCモーターなので、消費電力も低く、音も静かだ。

 また首振り運転は、上下と、左右を組み合わせた「立体首振り」が利用できる。温度センサーも搭載されている。さらに、脱臭効果のあるイオン「ナノイー」の放出機能も搭載されている。衣服についたニオイも数時間で低減する効果も期待できる。

羽根全体で効率的な風を生み出す「ひねり羽根」。羽根の取り付け部と羽根の先端の角度が大きいのが特徴だ。直径は30cm
ひねり羽根と従来品の比較(ホームページより抜粋)。DCモーターをゆっくり回しても、効率的に風を作り出すという
脱臭効果がある「ナノイー」の効果(ホームページより抜粋)。洗濯しにくい衣類のニオイを数時間で低減するという

組み立ては工具不要であっという間に完成

 組み立てはとても簡単で、5分もかからなかった。工具も一切要らない。

 手順は以下のとおり。スタンド(支柱)をベース(台座)に挿しこみ、専用のナットで固定する。次に後ガード、羽根をスタンドに取り付け、これもナットで固定する。前ガードのフックを後ガードにかけ、前ガードについているクリップを倒して固定し、あとは、ACアダプターのプラグを取り付ければ作業は終了。あっという間にできてしまった。

F-CJ329のセット一式。画像左から、スタンド、ACアダプター、リモコン、リモコンホルダー、固定用ナット(スタンド用、後ろガード用、羽根用)、後ガード、前ガード、羽根、ベース
取り付け手順は番号の通り
【1】スタンドのスイッチがある側を、ベースにはめ込む
【2】本体を横向きにし、ナットを右に回してスタンドとベースを固定する。ベースの裏側には6つのゴム足が付いている
【3】後ガードを本体にはめ込み、ガード止めナットを右に回して固定する(画像左)
【4】モーター軸のキャップ(黒)をはずし、羽根を差し込み、スピンナーを左に回して羽根を固定する(画像右)
【5】前ガードを取り付ける。前ガードのフックを後ガードに引っ掛ける(画像左)。次に、両手で前後ガードの全周をはめ込み、前ガード下にあるクリップを後ガードに倒して固定する
【6】ACアダプターの接続用プラグを、本体後部の差込口に確実に差し込む
【7】コンセントにアダプターを差し込んで終了。アダプターのサイズは、約39×64×75mm(幅×奥行き×高さ)だ
【8】完成した様子。白とシルバーを基調としたシンプルなデザインだ

 完成時のサイズは、376×370×905mm (幅×奥行き×高さ)で、高さはスタンドの後にある「高さ調節ボタン」を押すことで、1,100mmまで10段階で伸ばせる。デザインは白とシルバーの本体、透明な羽根にフラットな前ガードで構成されており、どんな部屋にも馴染みそうな印象だ。

 操作は本体の操作パネル、またはリモコンで行なう。ボタンそれぞれに役目が明記されており、操作はとてもわかりやすい。ボタンを押すと、スタンド表示部のそれぞれのインジケーターが点灯するので、今どんな状態で運転しているのかも一目瞭然だ。手動で停止させた時は、最後の運転状態を記憶する。

 なお、インジケーターの明るさ調節はリモコン、チャイルドロックは本体側で行なう。リモコンはリモコンホルダーを使えば、スタンドの後ろ側に収められる。

高さ調節は手動。スタンドの後ろの「高さ調節ボタン」を押して固定を解除し、調節する
高さを変えた様子。最低は905mm(左)で、最高は1,100mmだ(右)
本体でもリモコンでもほぼ同じ操作ができる
運転状況は、スタンドの中央にある表示部に、各インジケーターが点灯して知らせてくれる。インジケーターの明るさは、リモコンで2段階の調整ができる。写真中の表示は、風量「5」、上下首振り、1/fゆらぎ、ナノイー、左右首振りになっている状態だ
リモコンはリモコンホルダーを使うことで、スタンドの後方に納められる。所定位置があれば失くしにくいだろう

頬をなでるような微風から、髪が乾かせる強風まで。風は静かに広範囲に広がる

 電源を入れ、風量を調節してみよう。風量はリモコンの「+/-」のボタンを押して、「1」から「8」まで、8段階の調節ができる。

 もっとも弱い「1」は微風で、風というよりは、空気がフワリと動くような柔らかい感じだ。しかし、頬を空気に撫でられるような風が、2m以上離れても感じられほどちゃんと届くのが驚きだ。しかも、無音と言っても過言でないほど静か! 最小風量運転時の音の大きさは18dBとされているが、これは1m離れた木の葉の触れ合う音や、時計の秒針の音の20dBよりも低いということになる。

 風量を上げて、3~4ぐらいになると、ようやく一般的な扇風機でいう「弱」の感覚に近くなるが、それでも“窓から吹き込むそよ風”レベルだ。風量を上げるにしたがって、羽根の風切り音がかすかに聞こえてくるものの、まだまだ静かで、モーター音もほとんど聞こえない。扇風機を部屋の隅に置いても、風はしっかり届く。

 風量5~7は、一般的な扇風機の「中」程度。風に煽られるような強さを感じるが、やはり静かなまま。風量「8」になると、急にギアチェンジしたかのように、風がグンと強くなる。洗髪後の髪を乾かしたくなるぐらいの強風だ。しかし、運転音は静か。説明書では44dBとされているが、この値は図書館レベルで、一般的な扇風機とは比べ物にならないほど静かだ。

リビングルームで使用している様子。背が高くなるので、椅子の生活にもぴったりだ。部屋の隅においても、しっかり風が届く
風量に関わらず、ムラのない風が淀みなく素直に届く。羽根の風切り音がとても静かだ

 最も「今までの扇風機と違う!」と感じたのは、風の質だ。扇風機までの距離や風の強弱に関わらず、風のうねり、ムラのないひと塊の風が、周りの空気を巻き込まずに、静かに、それでいて淀みなく素直に届く。これまでの扇風機で感じたことのないような、スッキリと整えられた風を実感した。

 首振り運転も利用できる。首振りは上下、左右の2種類があり、どちらも滑らかなに作動する。上下の首振り運転は約15度の1種類、左右は60度、75度、90度の3つの中から選べる。上下左右の組み合わせも可能だ。

上下の首振り運転は約15度。リモコンでも操作できる
左右の首振り運転は3種類選べる。左から60度、75度、90度の様子
上下、左右の首振りが組み合わせられ、立体的な風を部屋中に広げられる。風量に関係なく、一定の速度で変化する(再生時間:1分21秒)
首振り運転に加え、羽根全体の風向調節も手動でできる。上下は約35度の範囲で傾けられる
左右の風向調節は約36度ずつ。左右合わせて約72度だ

就寝時に最高! 自然界に近い「1/fゆらぎの風」は、心地良さがずっと続く。

 風量を自分の意思で変える通常運転の風も心地良いが、「1/fゆらぎ」運転にした時にこそ、本製品の7枚羽根と細かな制御ができるDCモーターの良さが発揮される。運転は本体またはリモコンの「1/fゆらぎ」を押して切り替える。

 1/fゆらぎ運転にすると、風量に予測のつかないきめ細かな強弱の変化が起こる。作動音はとても静かで、扇風機をつけているのを忘れてしまうほどだ。それでいて、フワリとした風が吹いたかと思えば、風が凪ぎ、今度は意表をつくように一陣の風がスッと吹き抜ける。密閉された室内に居ながら、自然の風に吹かれているような心地良さが実感できるのだ。首振り運転と合わせれば、さらにランダムな風が作り出せる。

 仕事、食事、くつろぎの場面で、この1/fゆらぎの風を運転してみたが、身体の一部が冷えたり、風が集中的にあたったりが無いので、従来の扇風機のように、寒くなり扇風機を止める、ということはない。風はあるのに、会話やテレビの音を邪魔するような雑音も無く、書類も吹き飛んだりしない。部屋全体の空気が常に柔らかく動いているような感覚で、心地良さがずっと続く。

1/fゆらぎの風はとてもやさしい。長時間当たっていても不快になりにくい、自然に近い風なので、就寝時にも大いに活用できる。高さ調節ができるので、背の高いベッドでも無理なく風を向けられる
ガード後ろの風も乱れない。風量を最大にしても、15cm後ろにある薄いカーテンを吸い込まなかった。窓際にも置きやすいだろう

 最高だったのが、就寝時にエアコンと併用する使い方だ。エアコンの設定温度を普段より1~2℃上げておき、立体的な首振り運転で1/fゆらぎの風をONにすれば、密閉された部屋なのに、自然の夜風の中で眠るような心地良さがある。涼風が時には顔、時には腕、時には足に不規則に触れることで、やさしく眠りに誘ってくれる。風は感じるのに静寂さが保たれるため、まどろみが全く邪魔されない。身体が冷えたり、逆に暑くて大汗をかきながら目覚めたりすることは全く無く、朝までぐっすりと眠れた。

 起床時も、喉や鼻が乾いてガラガラにもならなかった。扇風機を点けっぱなしにして眠ったのに、驚くほど快適な目覚めを迎えられたのは初めてだった。これはヤミツキになってしまった。

 点けっぱなしを気にするのであれば、「切タイマー」、「入タイマー」を併用すると良いだろう。切タイマーは1時間、2時間、4時間の3種類があり、設定時間後に自動で停止する。入タイマーも設定時間は3種類あり、4時間、6時間、8時間後に自動で運転を再開してくれる。両方のタイマーの組み合わせもできる。

 なお、1/fゆらぎの他、室温の変化に応じて風量を自動的に切り替え、停止できる「温度センサー運転」も搭載されている。

ナノイーの風をあてて、扇風機で衣類の脱臭

 本製品には「nanoe(ナノイー)」機能が搭載されている。ナノイー装置は、モーター部の上のハンドルにある。運転は本体側は、操作パネルの風量の「+」と「-」を同時に3秒押すか、リモコンの専用ボタンで操作する。

 実際にタバコのニオイのついたスーツを用意し、風が直接当るように風向を調節した。2時間ほどあててみたところ、確かにニオイが緩和される印象だった。ナノイー運転中は、「ジー」というノイズが発生するが、小さな音なので数m離れれば特に気にならなかった。

 確かに脱臭の効果があるようだ。寝具や部屋干しの洗濯もののニオイの予防、洗面所や浴室の乾燥など、ニオイが発生しやすい物、場所に活用できそうだと感じた。

ナノイーイオンはハンドルの下から発生される。写真はガードと羽根をはずして撮影したもの。見にくい場所にあるが、ナノイーは風に乗って広がる
ナノイーでタバコのニオイを脱臭している様子。鴨居の高さにかけたスーツも、上下首振り運転でくまなく風が当てられる。ニオイはほとんどわからなくなり、効果を実感した

最小消費電力はたったの2W

最小の消費電力はたったの2Wだった(上)。風力を最大(8)、上下首振り運転、ナノイーONとフル機能を駆使しても消費電力は20W。最大にしても、30cm羽根の一般的な扇風機の弱風(約30W)よりも消費電力が低い

 DCモーターの特徴は、音が静かで細やかな制御ができるだけにとどまらない。消費電力が一般的な扇風機と比べ物にならない程低いのも大きな特徴だ。

 本製品の風量を最弱の「1」、首振りOFF、ナノイーOFFにして計測してみると、消費電力はたったの2W。風量を最大の「8」、上下・左右の立体首振り運転で、ナノイーをONにした状態でも20Wだった。

 普段なら風量は2~6ぐらいで十分だ。立体首振り運転にしても、消費電力は7~11W程度に抑えられる。かつて使用していたDCモーターではない、羽根が30cmの扇風機は30~40Wの消費電力だったので、実質的に1/4前後の消費電力で済んでしまう。比べられないほど快適で静かなのに、省エネまでできる。

【消費電力のバリエーション】
風量ナノイーOFF
首振りOFF
ナノイー
のみ追加
上下振り
のみ追加
左右振り
のみ追加
上下・左右
首振り運転
上下・左右
首振り運転
+ナノイー
1(弱)2W3W3W3W5W6W
22W3W3W4W5W7W
32W4W4W4W5W7W
43W5W4W5W6W8W
54W5W5W5W7W8W
66W8W8W8W10W11W
710W12W11W11W13W15W
8(強)16W17W17W17W18W20W

もう手放せない! エアコンの温度を上げても、涼しく快適に過ごせる

 とにかく「1/fゆらぎ」の風が快適だった! 扇風機とは思えない、天然のゆらぎを感じる風が、ボタン1つで部屋の中で再現でき、就寝時も含め丸1日心地よく使用できる。今までの一般的な扇風機で全く味わったことのなかった静かで快適な風は、使い始めた日からもう手放せなくなってしまった。

 かなり褒めてしまったが、価格は一般的な扇風機の2~3倍はする点はマイナスか。しかし、設計上の標準期間は12年と長く、10年以上は使い続けられるものなので、高くても快適なものを選ぶのは悪い選択ではないはずだ。

 心地良い風が部屋で吹くと、夏場のエアコンの温度を上げても、十分に涼しく快適に過ごせるのを実感した。高い快適性と節電が両立するので、たとえ家に扇風機があったとしても、買い換えを強く勧めたくなるほど魅力的な扇風機だ。

藤原 大蔵