家電製品ミニレビュー
日立リビングサプライ「HEF-DC1000」
~組立不要ですぐに使えるDCモーター扇風機
by 伊達 浩二(2013/7/25 00:00)
日立ブランド初のDCモーター扇風機
東日本大震災以来の電力不足と、DCモーター搭載の高級機の登場で、ここ2年ほど扇風機のブームが続いている。
日立リビングサプライの上位機種は、昨年はACモーターに8枚羽根という構成だったが、今年の最上位機種である「HEF-DC1000」にはDCモーターを搭載してきた。風の切れ目がなく優しいという8枚羽根に、低速運転がしやすく微風が作れるDCモーターの組み合わせで、柔らかな風が期待される。DCモーター搭載の扇風機は、日立ブランドでは初めてだ。
ほかにも、90度上を向くサーキュレーター的な機能や、首を伸ばしたときに全高が1m10cmに達するハイポジションなど、実用的な機能が搭載されている。ネット通販では、1万円台の後半で販売されていることが多い。
メーカー名 | 日立リビングサプライ |
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製品名 | HEF-DC1000 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 15,800円 |
届いたら、すぐに使える大胆なパッケージ
今回は通販で購入したが、製品が到着した段階で、かなり驚いた。製品の箱がとても大きいのだ。
箱の高さは女性の腰ぐらいまであるのだが、扇風機の箱によくある薄いタイプではなく、断面がほぼ正方形になっている。箱のサイズで言うと、830×380×370mm(幅×奥行き×高さ)もある。手提げで持ち帰るには難しい大きさなので、自動車で買いに行くか、通信販売で購入することをお勧めする。
なぜ、こんなに箱が大きいかというと、箱の中に扇風機が組立済みの状態で入っているのだ。
たとえば、昨年の最上位機種であった「HEF-700HR」という製品は、台座、支柱、本体、羽根ガード(前/後)の5つの部品に分かれて箱に入っていた。
それが、HEF-DC1000(以下、本機)では、全部組み立てられた状態で入っている。本体以外には、リモコンと取扱説明書しか入っていない。本体を取り出して、電源コードを繋げば、すぐに使いはじめることができる。
扇風機の組み立てに慣れた人であれば、5つぐらいの部品を組み立てることは苦にならないが、慣れていない人にとっては、台座と支柱を組み合わせ、羽根や羽根ガードをはめ込むことは難しいことだ。箱が大きくなることを厭わずに、すぐに使える状態でパッケージするという本機の試みは、かなり思い切った決断だと思う。
たとえば、私が実家の母に送る扇風機を買うとしたら、このパッケージだけで、本機にしてしまうだろう。
スマートな外観とガッシリした構造
箱から取り出したHEF-DC1000は、薄いビニールの袋をかぶっているが、これを外せばすぐに使いはじめることができる。
取り出した本体は、スッキリとしたデザインで、背が高い。HEF-DC1000は、ハイポジションタイプなので、かなり大柄な扇風機だ。支柱をたたんだ状態でも高さは81cmある。小振りな扇風機が支柱を伸ばした状態と大差がない。さらに、支柱を伸ばした状態では110cmとなり、ダイニングテーブルに座った状態でも、十分に風が当たる。
外観の特徴を上から見ていこう。
羽根の直径は30cmで、一般的な大きさだ。羽根は8枚で、見た目でも切れ目なく風が送られる感じがする。
羽根ガードは、一般的な製品より薄くデザインされている。薄く作ると強度が心配だが、保護リングが入っているので心配ない。羽根の後ろにあるモーターのカバーも小さく、コンパクトだ。
この羽根とモーターが一体になっている部分は、大きなU字型の部品で支えられている。観光地の展望台などによくある据え置き型の双眼鏡の台座を思わせるような、がっしりしたデザインだ。これは、羽根を真上に向けた状態でも安定して動作するために構造だ。
HEF-DC1000は、羽根を真上、つまり天井に向けることもできる。これで、部屋の空気を循環させるサーキュレーターとしても使用できる。冬期にエアコンと組み合わせるなど、季節を問わず使うことを考えているのだ。
なお、天井に向けるのは手動で行なうが、動作は軽い。もう少し、ノッチが固くても良いかもしれない。また、自動首振り機能は、水平方向だけで、縦方向には動かない。
これらを支える支柱は、ボタンひとつで高さが変えられる。その動きはスムーズだ。
支柱と台座の部分は、滑らかな曲線でデザインされており、一体感がある。
操作は、台座に配置された、タッチ式のボタンで行なう。機械的なボタンやダイヤルが無いため、操作部分はフラットになっている。ホコリが溜まりにくく、掃除も軽く撫でるだけできれいになる。ボタンのインターフェイスは、直感的で、迷うことはなかった。
とくに、風力調整のタッチボタンは、左右に長い配置になっていて操作がしやすい。「+」「-」の2つのキーで風力を操作するだけではなく、LEDの下にある「・」を押すだけで、その風力に設定できる。指一本で、パッっと風力が決められるのが気持ち良い。
台座の側面には、リモコンを収納するためのスロットが用意されている。リモコンの頭を軽く押すと、飛び出てくるタイプだ。最上位機種らしい凝った造りで、リモコンをなくしにくい。
電源コードは、一般的なもので、長さは2.2mある。台座の内部は、コードの収納スペースがあるなど、まだ余裕がある感じなのでコードリール機構が欲しかった。
上から、下までずっと見ていくと、軽快に見せたいデザイン側の要請と、がっしりした構造にしたいという機械的な要請が、交じり合っている感じで面白い。
微風に特徴がある滑らかな風
実際に2週間ほど使っているが、ともかく静かな扇風機という印象だ。
羽根のバランスが良いのか、DCモーターの特徴なのか、細かい振動がほとんどなく、音も静かだ。
風力調整は8段階で、特に弱い風を細かく指定するのが得意だ。3段階に調整できる機械スイッチ式の弱が、この機種では4段階目ぐらいにあたる感じだ。それぞれ最強の風量は差があまりないので、弱い風を好みに応じて指定できるというところが、この製品の特徴になっている。
振動が目立ちやすい超微風や、最大の強風状態でも、静かな印象に変わりはない。あえて言えば、支柱を一番上まで伸ばし、自動首振り機能をONにし、羽根を斜め上に向けるという、力学的に負荷がかかるような状態にすると、本体がやや揺れる。最上位機種なので、こういう条件下でも、がっしりした感じがほしい。もちろん、これは極限に近い状況であり、支柱をちょっと下げるだけで揺れなくなる。
風量調整での、もう1つの特徴が、リズム運転が2種類あることだ。扇風機のリズム運転は、風量を自動的に変化させて自然の風に近づける機能だが、その変化が大きすぎてわざとらしく感じる場合も多い。本機では、一般的なリズム風である「通常」モードに加えて、風量の変化を抑えた「やわらか」モードも用意されている。実際に使い分けて見ると、2つのモードの差はかなりある。私は、柔らかモードの方が好みだった。
HEF-DC1000は、最上位機種だが、機能は実用的なものが多い。
一例として、ON/OFFタイマーは、それぞれ独立して組み合わせて使用できる。4時間後にOFFにして、7時間後にONにするというような設定も簡単だ。こういう機能は、珍しくないが操作が面倒なことが多い。本機では、設定の操作が直感的で、実際に使える機能になっている。また、タイマー設定を行なうと、自動的にLEDが暗くなり、電子音もしなくなるのも良い。
多機能や飛び道具的な機能を目指すのではなく、実用的な機能を、ちゃんと使えるように磨いているという感じだ。
自動首振りの角度が最大90度までなのを120度ぐらいまで広げたいとか、リモコン操作で全てのLEDの消灯と消音ができるようにして欲しいというような、個人的な細かい希望はないでもないが、全体として、羽根やモーター、操作性など基本性能については文句はなしだ。
なお、消費電力は最大で21Wとされているが、普通に使っている状態では10W以下を示していることが多かった。DCモーター採用の効果と言えるだろう。