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家電の気になる噂・都市伝説は本当? 家電王と家電ライターがぶっちゃけトーク

家電ライターの藤山哲人さん(左)と、家電王・中村剛さん(右)がぶっちゃけトーク。実は同い年というお2人

春は新生活がスタートする季節。転勤や転居などで家電の移動や新規購入をする人も多いのではないでしょうか? しかし、引っ越しをする際に家電をどう扱うべきか、あるいは新しいものに買い換えるべきか、悩むことも多いもの。そこで、今回は家電のプロ2人を迎え、引っ越しに備えた家電との向き合い方について教えてもらいました。

登場いただいたのは、“家電王”中村剛さんと、家電ライターの藤山哲人さん。豊富な知識のお2人の対談は、どんどんマニアックな方向にも話が広がり、家電の上手な選び方&使い方や、気になる都市伝説の真相まで……!?

家電王:中村剛さん

東京電力エナジーパートナー株式会社勤務。「TVチャンピオン」のスーパー家電通選手権で優勝した、まさに家電王! 現在は毎週月曜配信の動画マガジン「くらしのラボ」や各種メディアにて家電との便利な暮らしについて情報発信している。

中村剛さん
家電ライター:藤山哲人さん

家電 Watch読者にもおなじみ、あらゆる家電を使いこなしテストするマニアックな技術系家電ライター。電気工事士 第1種の資格保持者。その強烈なキャラクターが愛され「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)など、多数のテレビ番組にも出演する。

藤山哲人さん

引っ越し後に、使えなくなる家電がある?

――春は遠くに引っ越しする方も多い時期ですが「関東と関西では使える家電が違う」といわれる理由を教えてください。

家電王・中村剛さん(以下敬称略):これは周波数の違いのことですね。電気の周波数って西日本では60Hz(ヘルツ)、東日本では50Hzと異なっているんですよ。なんでそんな面倒なことになったかというと、実は発電機を輸入した会社が違うから。東京にはドイツ製の50Hz周波数、大阪にはアメリカ製の60Hz周波数の発電機がやってきた。そこから規格が変わっていないんです。

周波数50Hzと60Hzの地区(出典:パナソニックのサポートページ「家電情報ポケット」より)

家電ライター・藤山哲人さん(以下敬称略):いまは両方の周波数で使える家電も多いけれど、安い家電なんかではいまだ「50Hz専用」「60Hz専用」というものが残っていますよね。特に多いのが電子レンジ。日本製の電子レンジでも安いモデルだと専用ヘルツの製品が結構ある。あと、故障の可能性があるから気をつけたいのが専用ヘルツの洗濯機かな。今はLEDばっかりになったけれど非インバーター式の蛍光灯なんかも周波数が合わないとチカチカしちゃう。JR東日本の新幹線が西日本に乗り入れできないようなモノですね。入れるのはE7系の新幹線だけ(笑)。

中村:引っ越し先で家電を購入する場合は、普通その地域に合わせた製品を販売しているので大丈夫ですが、問題となるのは引っ越し先に古い家電を持ち込む場合ですね。油断して周波数が異なるものを使ってしまうと不具合の原因にもなります。まずわかりやすい不具合はタイマー。50Hzの電気式タイマーを60Hzの地区で使うと、60分にセットしたものが50分で切れたりします。あとは過負荷などで壊れたり燃えたりという危険もあるので「50Hz専用」「60Hz専用」のものは、それぞれエリアを守って使用してください。

藤山:ちなみに、掃除機とか扇風機とか、周波数によって性能は変わるけど、そのまま使える家電もあります。ただ、それにしてもエリアで使える家電が変わるのは面倒だし、家電メーカーも両方の周波数が使える家電を作るとコストがかかるし無駄が多い。家電王! 日本国内での周波数の統一はいつになるんですかね?

中村:(壮大な計画すぎて)当分は無理じゃないかな(笑)。

電力会社側でも統一したほうが良いというのは認識しているんですけどね。特に最近は災害が多いじゃないですか。異なる周波数のエリアへ電力を融通しようとするとサイリスタバルブとよばれる変換装置が必要になる。東京電力だと長野県にこの施設があるんですけど、融通できる電力の能力が決まっているので「西が無事だからどんどん電力を回して!」というわけにはいかないんです。もちろん変換にはコストもかかる。

藤山:最近は災害が大型化したからか、災害時の電気の復旧に時間がかかることも増えていますよね。引っ越しを機にポータブル電源とか、新居なら蓄電池を導入するのも良いかもしれないですね。

パワフルな家電には、漏電の危険も潜んでいる!?

藤山:あと大切なのは、引っ越しするときは安全のためにキチンとアースを繋げること!

――家のコンセントにアースを繋げる部分が見つからなくて、そのままプラプラさせているという人もいるのではと思います。

アースの取り付け方法(出典:パナソニックのサポートページ内・レンジへのアース線の取り付け方より)

中村:アースはね、絶対必要。特に電子レンジとか洗濯機とか、水の近くにある家電は感電が怖いからアースは絶対取り付けて欲しいです。たまに年配の方で水道の蛇口に取り付ける人もいるのですが、これは意味がありません。蛇口部分は金属でも、そこからつながっているパイプは塩ビ製なので通電しないのです。

アース線の取り付けはしっかりと

藤山:家電って意外と漏電しているんですよ。うちには5台くらいパソコンがあるけど、左右の手で2台さわるとビリビリくるなんてことも(笑)。

中村:完璧に漏電していますね(笑)。

くらしのラボ「古い家電、もし漏電したらどうしますか?」

藤山:1カ所のアース端子に複数のアース線を付けても大丈夫なので、大電力の家電は家のなかのアースを見つけて頑張って取り付けて欲しいですね! ぜったいアースがあるのはエアコンと洗濯機のコンセントかな。うちは必要な家電はアース線を延ばして全部エアコンのアースに取り付けています。

中村:アース線はホームセンターにも売っているので、短くてアースのあるコンセントまで届かないという場合は、専用線を購入すればよいですよ。

藤山:最近はウォシュレット(などの温水洗浄便座)が多いから、トイレのコンセントにもアースが付いているものが多いですね。

中村:トイレといえば、実はヒートショック(家の中にある急激な温度差が原因で発生する、心筋梗塞や脳梗塞、失神といった身体への影響のこと)が起きやすい場所の第1位は冬の脱衣所・風呂場、次が冬の寒いトイレらしいんですよ。なのでトイレにもヒーターがあると良いのですが、ヒーターは消費電力(W)が大きいです。水気の多いトイレで使うならこれもアースを取り付けて欲しいですね。

トイレの話から、電気代や冷蔵庫の話まで

藤山:トイレが寒いといえば、結構「寒いから」と換気扇を止めてしまう人も多いですよね。

中村:そうなんです。でも基本的にトイレの換気扇って、室内の空気を外に出しているんですよ。なので換気扇を動かしている間は、むしろリビングとか廊下の暖かい空気がトイレに流れ込んできます。たぶん「換気扇をつけると寒い」という思い込みがあるんですよね。

藤山:台所の換気扇と違って、トイレの換気扇にシャッターが付いていない場合だと、止めた時に余計に寒い空気が入ってトイレ内が寒くなっちゃうのに。

中村:電気代がもったいないと思う人もいるのかもしれませんね。とはいえ、トイレの換気扇なんて小さいし消費電力はせいぜい2~3Wくらい。1日中つけっぱなしでも2円弱くらいです。

藤山:電気代が! という思い込みは多いですよね。

中村:そうですね、「電気代が高くなる」と誤解して、買い物の後などに急いで冷蔵庫に食材を放り込む人もいるのですが、これも個人的にはNGだと思っています。冷蔵庫はしっかりと整理して欲しいです。冷蔵庫内の食材をきちんと整理することで食材ロスをなくせますし、庫内が整理されていれば冷蔵効率も良くなって結果的に節約になります。そもそも今どきの大型冷蔵庫って省エネ性がかなりアップしていて、年間の電気代が8,000円くらい。年間ですよ! じっくり庫内を整理したところで、そこまで電気代が大きくはね上がるなんてことはないです!

くらしのラボ「意外と知らない冷蔵庫の選び方!」

――なるほど。一体なぜそこまで省エネ性がアップしたんでしょうか?

中村:なんといっても断熱性能が格段に上がっていますね。昔の冷蔵庫は化粧パネルの下にウレタンを入れただけ……みたいな断熱材だったのですが、今は薄型真空断熱の製品などがあります。断熱性は格段に高いのに薄型なので、見た目が同じ大きさの冷蔵庫でも庫内が格段に広かったりするんですよ。

藤山:高機能な大型冷蔵庫のほうが良い断熱材を使っているので、大型冷蔵庫のほうが小型冷蔵庫より消費電力が低いこともあります。

――冷蔵庫といえば、引っ越しのときに「すぐに電源を入れては駄目」なども聞いたことがあります。

中村:引っ越し先なら、すぐに電源を入れて大丈夫です。駄目なのは部屋の模様替えなどで、一度電源を切った冷蔵庫をすぐ運転することですね。

くらしのラボ「【家電王】都市伝説!冷蔵庫、コンセントにすぐさすのはNG?運搬時の横積み厳禁?電子レンジで栄養素は崩壊?」

藤山:冷蔵庫って、頻繁に停止することを想定されて作られていないので、場合によっては、モーターや歯車などの機械系がサビてて、起動時に突入電流という大きな電流が流れて壊れることがあるんですよね。だから冷蔵庫って停電復旧時に壊れることが意外と多い。

中村:パナソニックのメーカーページにある「よくある質問」をみると「停止後は約7分おいて起動すること」などと書かれていますね。7分に「約」というのもなかなか厳密ですが(笑)。メーカーによって推奨する放置時間は違うのですが、だいたい10分くらいおけば大丈夫でしょう。

藤山:電源を入れるまで数時間おいたほうが良いシチュエーションというのは、移動時に冷蔵庫を横に寝かせて運んだ場合なんかですね。とはいえ、今どきの配送業者で冷蔵庫を横積みする業者はいないはず。軽トラで個人が移動するなどの特殊な場合を除いて、ほぼ大丈夫だと思います。

中村:冷蔵庫を横積みして移動すると、コンプレッサーのオイルや冷媒などが移動してはだめな場所に動いたりする(笑)。だから移動時の横積みは厳禁です。シャープによれば「万が一、長時間横にした状態で放置した場合は、2~3時間程度は時間をおいた方が良い」とのことです。あくまで放置です。

あとは、引っ越し前はできれば冷蔵庫を一晩か数時間は電源を切っておいて欲しいです。これをしないと、輸送中に冷凍庫の霜が溶けてビシャビシャになることがあります。

エアコン購入時には、電圧もチェックを

――うーん、大型家電はいろいろと引っ越し時に考えることがありそうですね。たとえば、エアコンなんかは引っ越しで気をつけることはありますか?

中村:エアコンは基本的に業者が取り付けをするから問題が起きにくいと思います。ただ、新居に移動するときにエアコンの買い換えを考えている人はいますよね? このとき12畳あたりから100Vと200Vの2種類のエアコンが選択できたりする。こういった場合には200Vを選ぶことをオススメしています。

電圧が高いほうがロスが少なく効率の良い運転ができますから、エアコンに負荷がかかりにくいし電気代も安くなる可能性がある。

藤山:エアコン用のコンセントが100V用だから、と思って100V用を買っちゃう人もいるけど、100Vを200Vにする工事って3,000円くらいで安いんですよ。今後長くエアコンを使うなら断然200Vに工事したほうが良い!

――ほかに引っ越しで気をつけるべきところはありますか?

中村:引っ越しを機に寿命となった製品をきちんと買い換えて欲しいですね。結構、見過ごされがちなのが電源タップ。実は電源タップは、メーカーも3~5年ほどで寿命としているんですよ。でも、引っ越しとかがないと10年くらい平気で使っている人もいますよね。劣化した電源タップによる火事って意外と多いんです。

藤山:危険なタップは、プラグをコンセントから引き抜いたときに歯の部分が黒くなっていたり、根元部分が焦げていたり溶けていたりしますね。ものによっては燃えてしまうことも。

くらしのラボ「【家電王】コンセントから火が?」

中村:見えない部分が断線している可能性もあるので、見た目がキレイでも寿命がきたら買い換えを検討してください。今はプラグを差す部分にシャッターが付いていて、ホコリが入り込まないなど安全性が高い製品もありますよ。

【こぼれ話】ドライヤーの「イオン」効果はどこまである?

――引っ越しとは関係なくても、家電で気になることって他にもいろいろありますよね。最近はドライヤーの多くの製品が「イオン搭載」となっています。その効果って本当にあるのでしょうか?

藤山:効く製品は効くし、効かない製品は効かない。

中村:身もふたもない(笑)。たとえば、パナソニックのナノケアなんかは「ナノイー」という水を超微粒子にしたイオンを使っています。あれは水の微粒子だから「使うと髪の保湿量がアップ」というのは納得できますね。

パナソニックのドライヤー「ナノケア EH-NA0E」

――「イオン搭載」だけではない特徴のある製品に、注目するとよさそうですね。

藤山:あとシャープのプラズマクラスター。あれはプラスとマイナスのイオンを両方発生させる。だから静電気を抑制する効果があるというのはわかりやすい。逆に「マイナスイオン」を発生させる製品はプラスは吸着するけどマイナスはどうなるのかな……例えば一回わざと静電気を発生させて、そこにドライヤーの風を当ててみる。それで静電気が抑制されたら「効果がある」と考えてみても良いのでは?

――なるほど、ちょっと自宅で試してみます!

シャープ「プラズマクラスタードレープフロードライヤー IB-WX1」

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(協力:東京電力エナジーパートナー株式会社)