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パナソニック、2016年度の事業方針を発表~営業利益は“あえて”減少を想定

 パナソニックは、2016年度の事業方針を発表した。その中で、登壇した同社の津賀一宏社長は、これまで目標としてきた2018年度の連結売上高10兆円の達成を、「現状を踏まえた上で見直す」とし、同年の売上高の見通しを8兆8,000億円に引き下げた。

 一方で、「全社として“増収増益”を目指すという、戦略的な方向性は変わらない」とし、増収増益の企業体質の構築実現を目標に据え、新年度の事業方針を語った。

パナソニック 津賀一宏社長

2015年度の売上高は下方修正

 会見では、まず2015年度を振り返るところから始まった。2018~2020年までを見据えた中期的な観点では、2015年は、売上成長による利益創出へと舵を切った年度だったという。

 だが結果的には、売上高が年初目標に対して4,500億円という大幅な下方修正、営業利益についても200億円の下方修正をすることになり、同社が目指す“増収による増益”の構図を作れなかった。

事業構造改革を完遂させ、持続的な成長ステージへ進むための、売上成長による利益創出を図ったのが2015年度
結果としては、売上高と営業利益とも下方修正をすることになり、増収による増益を達成できなかった(営業利益自体は前年比で増益)

 そう説明したうえで、2015年度を総括すると、以下の3点に集約されるという。

1. 中国市況の低迷など事業環境の変化に対応しきれなかった
2. 増益は確保でき、収益力強化の取り組みでは成果を出した
3. 将来の成長に向けた仕込み、戦略投資を着実に進展させた

 津賀社長は、総括を踏まえて言えることは、「全社として“増収増益”を目指すという戦略の方向性は変わらない」と語る。また2018年度の経営目標については、「現状を踏まえて見直す必要がある」としつつ、各事業で取り組んでいる成長戦略は、引き続き推進していくという。

家電領域は成長、グローバルで商品展開を強化

 これまで同社は、5つの事業領域と3つの地域を掛け合わせて事業戦略を推進してきた。その結果、この5つの事業領域で今後目指すべき方向性が、より明確になってきているとした。

 特に「家電・住宅・車載」領域については、どの市場で、どのような手を売っていくのかが明確になり、成長の軌道に乗りつつあると、津賀社長は語った。そして同領域の営業利益率を5%以上、営業利益を3,000億以上にすることを中期的に目指すという。

2015年度の「5つの事業領域」を、2016年度以降は、4つに組み替えて戦略を練っていく
家電・住宅・車載領域と、その他のB2B領域での営業利益を、それぞれ3,000億以上を中期的に目指す
家電・住宅・車載・B2Bの各事業を、高成長事業/安定成長事業/収益改善事業にわけ、高成長事業にはリソースを集中。売上と利益の成長を牽引させる

 中期的な目標を目指すために、家電・住宅・車載・B2Bの各事業を、高成長事業/安定成長事業/収益改善事業にわけていく。そして高成長事業には、リソースを集中させ、売上と利益の両面で牽引する役割を担わせるという。

 リソースを集中して投下する「高成長事業」の代表例をいくつか上げた。家電については、中国など重点国におけるプレミアム商品展開を加速させる。さらにインドでの商品ラインナップの強化、アフリカでの販売基板の強化を図るとする。

 また住宅事業においては、国内のリフォームやエイジフリー(介護サービス)の事業拡大に向け、拠点の大幅な増強。アジアでは、パナホームを中心に現地のデベロッパーとの協業などにより、街づくり事業を積極拡大していくとした。

 その上で2018年度には、連結売上高を8兆8,000億円とすることを目標にする。うち家電事業については、2015年度の2.1兆円から2018年度には2.3兆円へ、同じく住宅事業については、1.3兆円から1.6兆円へと成長させるとする。

 この売上見通しをベースに、2018年度の営業利益を、家電と住宅、車載事業を合わせて3,000億円、B2B事業を2,000億円とする。全体での営業利益は5,000億円。当期の純利益を2,500億円以上に設定。

2016年度は“あえて”営業利益350億円の減少を想定

 冒頭の2015年度の総括から、事業戦略や中期目標の見直しを経て、導き出された2016年度の連結売上高の目標が7兆5,000億円。これは、2015年度見通し7兆5,500億円の99%。営業利益は3,750億円と2015年度比で350億円の減少となる。

2016年度の連結売上高の目標を7兆5,000億円に設定。営業利益は2015年度から350億円減益の3,750億円とした
350億円の減益は、先行投資を積極的に行なうことで、固定費増を見込むため。津賀社長いわく「意思を込めた減益」

 この営業利益の減益に関して津賀社長は、「将来の売上と利益につながる先行投資を実行すること」としたためと言う。2015年度までは、利益優先の経営をしてきたことで、将来の成長に向けた投資などに、積極性が不十分だった事業があったとする。そうした不十分だった点を改め、今年度は「高成長事業」を中心に、先行投資を積極的に行なっていくのだという。そのための「意思を込めた減益」と表現した。

 これは、今年度はこれまで取り組んできた構造改革の仕上げを行ない、積極的な攻勢に備えるということ。そして、2017年度には増収増益を実現し、2018年度以降からは増収増益を定着、2020年には、増収増益の体質、同社が目指す姿を定着させることを目指すと語り、会見を締めくくった。

河原塚 英信