【エコプロダクツ2011】
非常時にも電気代削減にも役立つ蓄電池、LEDで野菜を育てる「野菜工場」など

 12月15日~17日の3日間、東京ビッグサイトで日本最大級の環境展示会、「エコプロダクツ 2011」(以下、エコプロ)が開催されている。

 今年で13回目となるこのエコプロは、開催テーマに「Green For All,All For Green、日本発!エコの力で明日を変える」を掲げ、752社・団体が出展し、最新のエコ関連製品を展示している。

エコプロダクツ 会場のようす

 会場は社会見学・遠足でやってくる小学生、中学生も非常に多く、子供目線でも分かる展示が多いのもエコプロの特徴だ。日本最大級というだけに会場も広大で、ビッグサイトの東1~東6までの6ホールを使ってのイベントとなり、一回りするだけでもかなりの時間を要する。

 本稿では、大手家電メーカーの展示を中心に、会場で見つけた気になる製品、グッズなどについて紹介していこう。


パナソニック、電気代を抑えて非常時にも役に立つリチウムイオン蓄電池付きHEMS

 大手家電メーカーの展示で目立ったキーワードが「HEMS」(ホームエネルギーマネジメントシステム)だ。HEMSは家庭内の電力利用量や電気料金を“見える化”するような管理システムのことだが、HEMSの定義がはっきりしているわけではないため、各社それぞれ方向性に違いが出ているのも面白い。基本的には住宅の電気エネルギーの消費状況をモニターすることを基本にしているが、メーカーによって消費電力を減らすように自動制御できるようになっていたり、太陽光発電と組み合わせたり、蓄電池を充電したり……といろいろだ。

 まずは、パナソニックが参考出品していた「SEG(スマートエナジーゲートウェイ)」に注目したい。これは太陽光発電とインテリジェントなパワコン、そして5kWh分のリチウムイオンバッテリーを組み合わせ、その中枢分にSEGというコンピュータ的な機能を備えた統合的なシステムだ。SEGを通じて家庭の電力使用状況・発電状況をクラウドにデータを送信していくため、パソコンやスマートフォンで電気の状態が確認ができるのはもちろんだが、「ピークカットモード」に設定すると、深夜の安い電力時間帯にバッテリーに充電し、日中にその充電した電気を使用できるようにする。これにより、ピークカットができるとともに、電気代も安くなるという。

パナソニックが参考出品していた「SEG(スマートエナジーゲートウェイ)」SEGに搭載される“インテリジェントな”パワコン。太陽光発電の電気もバッテリーからの電気も交流に変換できる
5kWh分のリチウムイオンバッテリーも備えるSEG本体

 この状態で売電すると、電力会社との契約で違反となってしまうため、そうならないような制御をしており、パワコンは太陽光発電の電気もバッテリーからの電気も交流に変換できるようにしている。

 また停電のような非常時に「自給自足モード」に設定すると、日中は太陽光発電による電気をバッテリーに貯め、夜間はパワコンを通じて電気を供給できるようにする。従来の太陽光発電システムの場合、専用の非常用コンセントからしか電力供給できなかったが、このシステムでは特殊な配線を行なうことで、冷蔵庫や照明などにも電気を送ることができるようにするという。

 パナソニックとしては、こうしたシステムを2012年度中には発売したい考えだ。価格的には、リチウムイオンバッテリーの比率が一番大きくなってしまうが、従来の太陽光発電システムと比較して200万円程度の価格差で実現したいと話していた。


三菱電機、制限電力を超えると自動でストップ、ピークカットする「生活パターンセンサー」

分電盤に取り付けられた、三菱電機の「生活パターンセンサー」。電気の使用状況をモニタリングしながらコントロールする

 三菱電機は、自動的に節電ができるシステムを参考出品していた。これは家庭用の分電盤に「生活パターンセンサー」を取り付け、電気の使用状況をモニタリングしながらコントロールするというもの。

 たとえば「15%節電」という設定をしておくと、昨年の実績を元に、15%減らした制限電力を目標値とする。この状況で、エアコンとIHクッキングヒーターという消費電力の高い機器を使い、制限電力を超えると、優先度の高いIHの使用量はそのままに、エアコン側の使用を抑制するのだ。この際、エアコンの運転を制御するのは無線LANで行ない、IHの使用が終わったら元に戻すという仕組み。来年度の商品化を目指しているという。

 一方、東芝は太陽光発電との組み合わせでエネルギーロスの少ない、“直流家電”というアプローチでの参考出品を行なっていた。直流・交流のハイブリッド分電盤を設置するとともに、直流駆動の照明を利用するという。またこのシステム内において、HEMS機器同士を制御する統一規格として、エコーネットコンソーシアムが策定した新たなホームネットワークの通信規格「ECHONET LITE」を採用していくことも発表している。

たとえば「15%節電」という設定をしておくと、制限電力を超えた家電製品の運転をストップするエアコンの運転を制御するのは無線LANで行なう
東芝は“直流家電”を参考出品していた。写真は直流・交流のハイブリッド分電盤明かりも直流駆動で光る

 NECが展示していたのは、クラウド対応型HEMS。これは、住宅用の分電盤に計測システムを取り付け、消費電力量をリアルタイムに計測できるようにするとともに、太陽光発電による発電量も計測する。その結果をクラウドにアップすることで、パソコンなどの画面で、利用状況がモニタリングできるというわけだ。

 NECではまた、電力会社からの電気と系統連系が可能な6kWhの大容量の家庭用蓄電システムも展示。これを利用することで夜間電力を充電し、日中に活用することでピークカット、ピークシフトに貢献できるという。いずれのシステムもすでに実用化されており、セキスイハイムの住宅で使用されているという。現在のところ、個人への直接販売はせず、住宅メーカーを通じての供給になるとのことだった。

NECのクラウド対応型HEMSでは、分電盤に計測システムを取り付け、消費電力をリアルタイムに計測する測定結果をクラウドにアップし、パソコンなどの画面で利用状況がモニタリングできる


ソーラーパネル付きマンションは大人気。既存マンションへの導入は難しい

 太陽光発電では、マンション向けのシステムに力を入れているENEOS(JX日鉱日石エネルギー)のブースに注目した。同社では以前から、三洋電機のHIT太陽電池と組み合わせて使う小型のパワコンを発売しているが、ここ1年で新築分譲マンションでの採用実績が増えてきているという。

 たとえば模型が展示されていた練馬の6階建てマンションの場合は、全戸に太陽光パネルが接続されているとのことで、各家庭に1つずつこの小型のパワコンが設置されている。パワコンは容量1.2kWで、非常用電源もパワコン上に搭載されているというもの。このシステムにより、各家庭で月平均4,000円程度の電気代の節約ができているという。また太陽光発電搭載のマンションは、現在のところ非常に人気が高く、すぐに売れるため、マンションデベロッパー側にとっても大きなメリットとなっているようだ。なお、マンション用ではあるが、マンション管理組合の制度などの関係もあり、既築マンションに後付けというのは実際のところは難しい。そのため、現在のところは新築時の設置ということになっているようだ。

練馬にある6階建てマンションの模型。屋根に全戸分の太陽光パネルが置かれている各家庭にも小型のパワコンが設置されており、非常時の電源も用意されている

 太陽光発電ばかりでなく、太陽熱利用の展示もいくつかあった。中でも良さそうに思えたのが東京ガスの太陽熱利用ガス温水システム「SOLAMO」だ。これは90Lの保温タンクを搭載したガス給湯器と、太陽電池パネルのようにも見える集熱ユニットをセットにしたもので、年間のガス代を30%程度削減できるというシステム。これは集熱パネルで不凍液を熱し、それを熱媒配管を通じてタンクに送って水を温めることで、ガスの使用量を減らすというもの。発電効率が15%程度の太陽光発電と比較し、集熱ユニットならエネルギー変換効率が約40~50%と高いのが特徴。約4平方mの集熱ユニットとタンク付給湯器、それに工事費を入れて80~90万円になるという。

太陽熱ガス温水システム「SOLAMO」の貯湯ユニット写真は集熱ユニット。エネルギー変換効率は約40~50%と高い


容量1.2kWh・出力1,000Wのハイスペックバッテリー、ベランダで使える発電システムも

 系統に繋がない、独立系の太陽光発電システムもいくつか展示されていたので紹介しよう。太陽工房が参考出品として出していたのは、1.2kWhのバッテリーを備えたシステム「VS12」。同社では、これまでバイオレッタ・ソーラーギアシリーズという太陽電池パネル、バッテリー・インバータをセットにしたシステムを販売していたが、VS12はその最大容量となるシステムで、来年早々に発売する予定。

 1.2kWhと大容量だけあって、バッテリーが入ったオレンジ色のケースは約42kgとかなり重いが、出力1,000Wの正弦波インバータも内蔵されているなど、かなり強力なシステムになっている。これに出力60Wまたは30Wの太陽電池パネルをセットにして発売するという。また、パネルの拡張も可能となっており、最大480W分のパネルを組み合わせることで、より短時間での充電が可能になるようだ。価格はまだ決まっていないが、パネルと組み合わせた価格が35万円以内になるようにしたいと話していた。

.太陽工房の太陽光発電システム「VS12」にセット化されている、容量1.2kWhのバッテリー出力1,000Wの正弦波インバータも内蔵されている

 愛知県安城市にある会社「イーズライフ」では、太陽電池パネルとインバータ、バッテリーなどを一体化させた「ちくでんSUN・KIT」というものをエコプロ限定価格125,000円で販売していた。“ベランダソーラー”を提唱する同社のこのシステムは、ボックスを太陽の当たるところにおいておけば充電でき、停電時などにも利用できるというのが売り。出力6Wと小型の太陽電池と300Whのバッテリー、それにインバーターがセットとなっているほか、家庭用電源からバッテリーに充電するための装置、さらにスポットライト照明がセットとなっている。

 さらに手ごろな携帯型ソーラー発電機を参考出品していたのが東京都品川区にあるGWソーラー。京セラの20Wの多結晶シリコン太陽電池パネルの裏側に安定化回路と蓄電池をセットにした168Whのシステムは、設置スタンド付で、そのまま屋外に置いて太陽光で充電することが可能。2日でフル充電ができ、シガーソケットを通じ12V/5Aの出力ができる。また4WのLEDランプも付属。来春発売で29,800円を予定しているという。

“ベランダソーラー”を提唱する、太陽電池パネルとインバーター、バッテリーなどが一体となったイーズライフ「ちくでんSUN・KIT」インバーターも搭載されているGWソーラーの手頃な携帯型ソーラー発電機


LEDで野菜を育てる「家庭用野菜工場」。レタスが1カ月で収穫できる

 最後に、同じくエコ製品のLED照明についても紹介しよう。各社とも、直管型蛍光灯を置き換えるタイプのものが目立っていたように感じたが、40Wタイプの直管型LEDランプを展示していたのはシャープ。15日発売予定の1灯タイプのもの、26日発売の2灯タイプのものと計6種類が展示されていた。

 いずれも見た目にはFL40型と同サイズだが、安全性を高めるために、業界で定められた新しいL形の口金「GX16t-5」を採用している。そのため、口型が従来の蛍光灯とは互換性はなく、ランプだけでなく照明器具もセットで購入することが前提となるようだ。コスト的には高めになってしまうが、設計寿命が60,000時間と長寿命化した点が特徴となっている。

シャープの直管型LEDランプ。寿命は60,000時間と長い口金にはL形のピン口金(GX16t-5)を使用する。従来の蛍光灯器具では、そのまま使用できない

 その直管型のLEDランプを使ったユニークなシステムも見つけた。レディエンスコーポレーションという東京都町田市にある会社が展示していた、家庭用野菜工場というものだ。植物の育成に最適になるよう赤・青・白の3色のLEDを利用し、室内で野菜を育てようというもの。LED、ラック、発泡スチロールのボックス、土壌、植物活性剤、腐植土などと種がセットとなって発売されている。これによって農薬を使用せず、化学肥料、除草剤などを一切使用しない完全無農薬での栽培が自宅でできるという。またLEDの16時間連続点灯をすることにより、葉物野菜が通常の約2倍のスピードで成長し、レタスであれば1カ月で収穫できるのだとか。

 ただ、価格は安くはなく、一番最初のスタートプラントで通常価格148,000円。右下の写真のような4段のもので294,000円。長く使い続けることで、投資額を回収していく形だ。野菜の価格で考えるとスタートプラントの場合、年間の収穫金額が54,000円分になるため、投資額は2年4カ月で回収できるそうだ。

レディエンスコーポレーションの「家庭用野菜工場」。植物の育成に最適になるよう赤・青・白の3色のLEDを利用し、室内で野菜を育てるというもの写真の4段のプラントの価格は294,000円。安いとはいえないが、長く使い続けることで、投資額を回収していくスタイルになる

 以上、エコプロで見つけた家電製品、システムを紹介してみた。会場が非常に広いだけに、気づかなかった製品も多数ありそうだが、エコ関連製品の未来を見通すイベントとしての位置づけは揺らいでいないようだ。






(藤本 健)

2011年12月16日 15:14