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価格160万円、初号機の半額を実現したパナの家庭用エネファーム

 東京ガスとパナソニックは、家庭用燃料電池「エネファーム」の新製品を共同で開発。東京ガスは、4月1日から同製品を発売する。両社が共同開発した戸建向け製品としては4機種目となる。

 新製品は、部品点数を15%削減するとともに、主要デバイスである発電を行なうスタックの構成見直しや、水素を作る燃料処理器に採用している触媒の貴金属材料の見直しにより、現行モデルに比べて、30万円低価格化。希望小売価格は160万円(税抜、工事費別)としているのが大きな特徴だ。

家庭用燃料電池「エネファーム」の新製品
標準装備しているカラーリモコン。文字やグラフを見やすくしたという

初号機の半分以下の価格を実現

パナソニック アプライアンス社 スマートエネルギーシステム事業部 燃料電池事業担当の清水俊克氏
東京ガス 燃料電池事業推進部・穴水孝氏

 「2009年に発売した第1号機の330万円に比べると半分以下の価格になる。部品点数の削減は、重量の削減にもつながっている。また、スタックの白金量を20%削減したことでコストダウンを実現した」(パナソニック アプライアンス社 スマートエネルギーシステム事業部 燃料電池事業担当の清水俊克氏)という。

 さらに、「政府の補正予算で盛り込まれた補助金を活用すると、さらに導入価格は低く抑えられる。機器に対しては30万円の補助とともに、設置、撤去費も補助金の対象になる。ユーザー調査をすると、100万円を切ったらエネファームを購入したいという回答が多い。経済産業省の実勢価格調査などをもとにすれば、今回の低価格化と、補助金の利用によって、利用者の負担額が100万円に近づくことを期待している」(東京ガス 燃料電池事業推進部・穴水孝氏)とした。

 エネファームの導入により、一般的な給湯器に比べて年間6万円の光熱費削減が可能であり、「一般的な給湯器の価格は約40万円。まだ、約60万円の差があるが、光熱費削減を踏まえて逆算すれば、10年間で元が取れる段階にいよいよ入ってきたともいえる」(東京ガス・穴水氏)とした。

 なお、東京ガスでは10年間に渡り、無償でのフルサポートサービスを提供しているという。

 また、これまでオプションで提供していた停電時発電継続機能を燃料電池ユニットに内蔵した製品を追加。停電発生時には、500W以下の電力を、最長4日間(96時間)に渡り利用できるという。停電時専用のコンセントを通じて、テレビの視聴や携帯電話およびPCの充電、電気スタンドなどに利用できるほか、停電時の給湯や床暖房も使用できるようになるという。

 「停電時にもシャワーを浴びることができるのがエネファームの特徴。停電時発電継続機能を内蔵したことで、省スペース化と省施工が可能になる。停電時に電気が使える安心を手軽に導入できるようになる」(パナソニック・清水氏)としたほか、「停電時発電継続機能は、市場ニーズが高い機能である。内蔵モデルの価格は167万円となり、別売りでの購入に比べても6万円安くなる。エネファームの価値をさらに高めることができる」(東京ガス・穴水氏)と述べた。

部品数や白金量などを削減することで160万円という価格を実現した
一般的な給湯器と比べて年間の光熱費が約6万円安くなる

サイズ小型化で導入を促進

 さらに、様々な設置スペースに柔軟に対応するために、貯湯ユニットはバックアップ熱源機と一体型、別置型の2種類を用意したという。

バックアップ熱源機と貯湯ユニットを一体型としたエネファーム
バックアップ熱源機と貯湯ユニットを別置型としたエネファーム

 「設置スペースに制約が多い首都圏の戸建住宅などに導入しやすくなる。一体型は2011年モデルと比較すると奥行きを80mm削減、設置スペースを15%削減。さらに、一体型、別置型ともに、高さを100mm低減した」(東京ガス・穴水氏)としている。

 そのほか、耐久時間についても、現行モデルの6万時間を7万時間へと延長。起動停止の耐久性も4,000回とし、「耐久性を17%向上。エネルギー使用量が多いユーザーも、10年間の利用が可能になる」(パナソニック・清水氏)とした。

一体型の設置スペースは、2011年モデルより15%削減している
耐久時間、起動停止の耐久性も向上

 東京ガスでは、戸建て向けのエネファームで、2015年度には1万7,500台の出荷を計画しているという。

 なお、パナソニックでは、「LPガス対応は用意していないが、全国での需要の動きをみながら、引き続き検討は進めていく」(パナソニック・清水氏)とした。

 エネファームは、1999年から東京ガスとパナソニックが共同開発をスタート。2009年5月に、世界で初めて一般販売を開始した家庭用燃料電池だ。これまでに累計5万2000台を出荷。東京ガスではそのうち、4万台を出荷している。パナソニックは、燃料電池ユニットを製造。貯湯ユニットとバックアップ熱源機と組み合わせて、東京ガスに供給する。

 東京ガスの穴水氏は、「新製品の発売により、エネファームの普及拡大に弾みをつけたい。これにより、お客様の快適な暮らしと、地球保全、電力ピークカットなどに貢献していく」と述べた。

大河原 克行