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介護・安心・ライフスタイルまで徐々に全貌が明らかになってきたFujisawa SSTとは

問い合わせは1,000件以上

 パナソニックが事業主体者として展開する「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」の商業施設や健康、福祉、教育施設、タウンサービスなどが、10月21日に、神奈川県藤沢市内で発表された。

 Fujisawaサスティナブル・スマートタウンは、100年続くサスティナブルな街づくりを目指し、神奈川県藤沢市の19万ha(約6万坪)におよぶパナソニック工場跡地を活用したスマートタウンプロジェクト。2014年春の街びらき、2014年秋のグランドオープンを予定しており、戸建、集合住宅をあわせて、約1,000戸の住宅に約3,000人が居住。商業・公益施設を含む大規模スマートタウンを開発し、1990年比でCO2排出量で70%削減、生活用水で30%の削減の街づくりを目標としている。

建設中のFujisawaサスティナブル・スマートタウン
場所は藤沢駅と辻堂駅の中間。奥に江の島が見える
Fujisawaサスティナブル・スマートタウンの模型
Fujisawaサスティナブル・スマートタウンのパンフレット

 パナソニックと藤沢市は、2010年11月に同プロジェクトのコンセプトおよびその実現に向けた基本合意を結び、2012年10月には、パナソニックとパートナー企業との共同出資による「Fujisawa SSTタウンマネジメント」を設立。2013年9月には、三井不動産レジデンシャルおよびパナホームが、戸建街区着工を発表した。すでに1,000件の問い合わせがきているという。

代官山T-SITEを開発したソウ・ツーが商業施設を担当

 今回、明らかにしたのは、新たなライフスタイルを発信する商業施設、健康施設、福祉施設、教育施設およびタウンサービスを行なうパートナー企業。Fujisawa SST協議会により決定した。

 商業施設事業者には、代官山T-SITEを開発したソウ・ツーを選出。ソウ・ツーとカルチュア・コンビニエンス・クラブにより、「心動く『湘南スマートライフスタイル』の発信拠点」をコンセプトに、「本」と「食」を軸として、新たなライフスタイルを発信し続ける「湘南T-SITE」を企画するという。

 湘南T-SITEは、3棟に分かれており、北側の450坪にはパナソニックが発信する施設が配置され、南側には905坪および889坪の2棟に、蔦屋書店のほか、レストランなどのテナントが入ることになる。開業は来年秋を目指すという。

新たなライフスタイルを発信し続ける「湘南T-SITE」を企画するという
藤沢市にどんな場所が欲しいかというアンケートでは、映画館、カフェ、書店が上位3つを占めた
ライフスタイルを一気通貫で提案できるようにした『スタイル訴求型家電提案』を行なっていく
ソウ・ツーの武田宣社長

 ソウ・ツーの社長であり、カルチュア・コンビニエンス・ストアの社外取締役を務める武田宣社長は、「生活提案力がこれから重視される時代になるなかで、湘南T-SITEは、ソウ・ツーが商業施設開発を行ない、カルチュア・コンビニエンス・ストアが店舗開発を行なう。社会貢献、収益性、顧客価値、Fujisawa SST協議会への貢献といった4つの観点が組み合わった形での提案になる」としたほか、「生活提案を行なうのに最適な地が藤沢である。藤沢市にどんな場所ができてほしいのかという調査をしたところ、映画館、カフェ、書店が上位3つを占めた。また、それらはどういう場所になって欲しいのかという質問には、ゆっくりできるところ、商品が充実しているところが欲しいという回答が上位になった。そして、住宅を購入する際にはなにを重視するのかという点では、公園がある、コミュニティが充実しているという声があった。まさに、これはFujisawa SSTであり、生活提案力が重視されるという時代背景と、藤沢市の人たちが思うこととが合致した環境の実現を目指したい」とした。

 さらに、「代官山T-SITEでは、書籍、雑誌、文庫本といった形に分類した既存の書店の展示方法をやめて、料理や旅行、自動車などのライフスタイル軸で展示した。湘南T-SITEでは、これを進化させ、本だけでなく、関連ショップや教室、イベント、家電の展示などを含めて、ライフスタイルを一気通貫で提案できるようにした『スタイル訴求型家電提案』を行なっていく」などと述べた。

健康・福祉・教育施設事業はFujisawa SSTだけでなく周辺地域もサービス対象に

 一方、健康・福祉・教育施設事業者には、学研ココファンホールディングス、社会福祉法人長岡福祉協会、アインファーマシーズの3社が、事業パートナーに決定。24時間365日体制での地域包括ケアを推進。保育所、学習塾、特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、クリニックモール、薬局などが連携した総合拠点「Well SITE(仮称)」を展開するという。

学研ホールディングス・宮原博昭社長(左端)をはじめ、学研ココファンホールディングス、社会福祉法人長岡福祉協会、アインファーマシーズの関係者
保育所、学習塾、特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、クリニックモール、薬局などが連携した総合拠点「Well SITE(仮称)」を展開するという

 サービス付き高齢者向け住宅は70戸、保育所は60人の収容規模、特別養護老人ホームは100床、ショートスティ用では18床をそれぞれ用意。Well SITEの延床面積は約1万平方mになるという。2015年の開業を予定している。Fujisawa SSTの住民だけでなく、藤沢市内の周辺地域にまでサービスの対象を広げるという。

 学研ホールディングス・宮原博昭社長は、「医療、介護、子育て支援、教育などの分野が違う企業のノウハウをシームレス活用し、パナソニックグループと共同で、魅力のあるサイトにしていく。これは周辺地域に対しても、安心、安全、快適性を提供していくことになる。少子高齢化のなかで、多世代が暮らせる新たな街を確立したい」とした。

EVや電動アシスト自転車のシェアサービスも

 さらに、タウンサービスとしては、セキュリティサービス事業パートナーに綜合警備保障(ALSOK)、モビリティサービス事業パートナーをサンオータスに決定。ゲートや柵で閉ざすことなく、住民を見守る「バーチャル・ゲーティッドタウン」の実現や、巡回サービス「セキュリティ・コンシェルジュ」の実現、EVカーのシェアや、電動自転車のシェア、レンタカーデリバリーなどを行なうトータルモビリティサービスを提供する。ここでは緊急時の電力供給手段として、EVとV2H(Vehicle to Home)コンセントを、集会所である「Committee SITE(仮称)」に配備するという。

 綜合警備保障 法人営業第一部・小野誠司部長は、「Fujisawa SSTは、環境に配慮した新たな街であり、この街に長く住みたいと思ってもらうようにすることが大切。スマートライフの実現のなかで、重要な要素の1つである『安心』の一翼を担うのがALSOKになる。おもてなしの心を持って対応していきたい」とした。

 サンオータスの北野俊社長は、「当社にとっては、この事業は、JASDAQに上場して以来、15周年を迎えた記念事業の1つとなる。Fujisawa SSTの住民に対して、カーライフ全般をサポートしていくことになる」とした。

綜合警備保障 法人営業第一部・小野誠司部長
サンオータスの北野俊社長

 なお、Fujisawa SST協議会のメンバーは、パナソニック、アクセンチュア、オリックス、電通、日本設計、東京ガス、パナホーム、NTT東日本、三井住友信託銀行、三井不動産、三井不動産レジデンシャル、三井物産で構成されている。

世界を変えるFujisawaモデル

 10月21日午後1時から、神奈川県藤沢市の湘南モールフィルで開かれた会見には、パナソニック関係者や、新たな事業パートナーとして選ばれた企業の関係者などのほか、藤沢市の鈴木恒夫市長や、地元町内会の会長、神奈川県や国土交通省などの関係者、藤沢市教育委員会の関係者などが出席した。

パナソニック エコソリューションズ社・井戸正弘副社長

 パナソニック エコソリューションズ社・井戸正弘副社長は、「Fujisawa SSTは、パナソニックが目指している『お客様価値の実現』を、街づくりを通じて、総合的に実現する場になる。今日は、それが新たなステージに進んだことを示すことができた。Fujisawa SSTは、生きるエネルギーが生まれる街を目指しており、単なるスマートハウスという家だけの集合体ではなく、街全体を捉えたプロジェクトである。街に過ごす方々の課題を解決する環境を整え、100年にわたって、サスティナブルで、スマートな暮らしを実現することになる。そして、実証実験に留まるのではなく、市民や行政が一緒になり、実稼働する街であり、この成果を世界に発信していく。Fujisawaモデルは暮らしを進化させ、世界を変えることになる」とした。

Fujisawa SSTマネジメント・宮原智彦社長(Fujisawa SST協議会代表幹事)

 Fujisawa SST協議会代表幹事である、Fujisawa SSTマネジメント・宮原智彦社長は、「最初の10年を生成・構築期、その後の30年ごとに成長期、成熟期、さらなる発展期として、3世代に渡って、100年間持続する街づくりを目指す。そのためには、街に関わる人たちの行動が変わりゆくための仕掛けづくりが必要であり、それに向けて、コンセプト、全体目標、ガイドライン、街の仕組みサービス、街に関わる人の行動という5つのステップを踏んでいくことになる。今回の取り組みは、街の仕組みサービスの提供になる」と話した。

 さらに、「管理費用は大規模集合住宅での料金体系をターゲットにしていきたい。Fujisawa SSTは、管理費が高騰するのではないかといわれるが、生活に関わる費用全体を軽減させることができるので、そのあたりも考慮し、ここで生活する価値を認めてもらいたい。なお、住宅の販売価格は現時点では発表していない。パナソニックとしては、今後30年間で400億円の事業貢献を見込んでいる」とした。

藤沢市の鈴木恒夫市長

 一方、藤沢市の鈴木恒夫市長は、「藤沢市は、観光都市であり、学術にも長けた街。そして、関東で一番、災害に強い街と言われている。藤沢市では、環境施策への取り組みにも力を注いでおり、太陽光発電への助成金制度のほか、エネファームへの助成金制度をいち早く導入するなど、新エネルギーの活用を促進してきた。Fujisawa SSTのプロジェクトは、計画段階から環境負荷の軽減や、エネルギーの効率化などに取り組むなど、過去に例がないことである。Fujisawaの名前を冠するスマートタウンが誕生すること、そこにおいて、先進的な街づくりが行なわれることに期待している。日本はもとより、世界に広がっていくことを期待している」と語ったほか、「江ノ島の事件で活用された防犯カメラはパナソニック製である」などとして、パナソックの技術がすでに地域に採用されている例を紹介した。

大河原 克行