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パナソニック、地域・企業・自治体が共創する次世代スマートタウン「Tunasima SST」がグランドオープン
2018年3月27日 16:27
パナソニックは3月26日、神奈川県・横浜市の次世代都市型スマートタウン「Tsunashima サスティナブル・スマートタウン(Tsunashima SST)」のグランドオープン式典を開催した。パナソニックの関係者のほか、Tsunashima SST協議会参加企業のほか、横浜市、慶應義塾大学の関係者が参加した。
Tsunashima SSTが目指すサスティナブル・スマートライフとは
Tsunashima SSTは、パナソニック事業所跡地を活用した街づくりプロジェクト。敷地面積約3.8haの土地に、94戸の住宅、163名収容の学生寮のほか、商業施設、公益施設、エネルギーセンター、技術開発施設が設置される。
パナソニック代表取締役社長 津賀一宏氏は、「Tsunashima SSTは、施設やシステムなどのプラットフォームと、住人や地域、参加企業や自治体とともに共創しながら課題を解決し、サスティナブル・スマートライフを実現していく、次世代型スマートタウンです。
ここにあったパナソニックの事業所は、1960年に当時の松下通信工業が通信機器などの製造を行なう生産拠点として開設したもので、2011年に閉鎖しました。実は私も、この場所で新人研修・実習を行ないましたので、個人的な思い入れもある場所なんです」と語った。
Tsunasima SSTの、街づくりの道しるべとなる全体目標は、2016年3月の「まちづくり構想」から変更なく、CO2排出量を2005年度比で40%削減、新エネルギーの利用率を30%以上、生活用水使用料の30%削減と設定。また非常時に通常状態まで復旧するまでの計画であるCCP(コミュニティ・コンティニュイティ・プラン)は3日間、主要出入口での映像取得率100%、タウン内の発報から警備員駆けつけまでの時間15分、という目標も構想通りとなった。
7つの施設からなるTsunashima SST
Tsunashima SSTは、7つの施設で構成される。東京ガスの運営する「タウンエネルギーセンター」は、SST内に電気と熱を供給する施設。都市ガスを用いることでエネルギーの安定供給性を確保。また発電時に発生する熱を冷暖房や給湯などに利用することで、省エネとCO2削減を行なうという。
JXTGエネルギーの運営する「横浜綱島水素ステーション・スイソテラス」は、燃料電池自動車(FCV)への水素供給設備。Tsunashima SST内には、サンオータスによる5台のカーシェアリングと30台のサイクルシェア、オリックスレンタカーのカーデリバリーが設置されている。さらに2018年秋には、カーシェアリングでもFCVが利用可能となるという。
居住施設は、野村不動産、関電不動産開発、パナホームの協業による「プラウド綱島SST」と、慶應義塾大学の「綱島SST国際学生寮」があり、いずれも入居が開始されていた。プラウド綱島SSTは、1階にグローバルキッズ運営の保育園を併設。また各戸に設置したプライベート・ビエラで、インターホンの応答のほか、冷暖房の温度設定、照明操作、風呂の給湯といった機器管理が行なえるという。国際学生寮は、キッチンとダイニングスペースを共用化することで、コミュニケーションの活性化を図る。またデジタルサイネージを使った寮内の情報発信や交流促進がなされている。
商業施設は、ユニーの運営する「アピタテラス横浜綱島」で、3月30日にグランドオープン予定。ニトリやABCマートなど専門店60店舗と、アピタフードマーケットで構成されるという。SSTならではの特徴としては、パナソニック製で対面据え置き型の「多言語翻訳機」や、コミュニケーションロボット「Cocotto(ココット)」、ネットスーパーでの注文品を受け取れる「街受ロッカー」などが設置され、コミュニケーションの醸成や利便性向上によるCO2削減を目指すという。
パナソニックが運営する「タウンマネジメントセンター」は、イノベーションと様々な交流を生み出す拠点として、国際学生寮1階に設置。センター内の「エクスチェンジスタジオ」「Tunashima SST Lab」は地域の問題点などを学生らとともに抽出を行なう拠点として、「イノベーションスタジオ」は抽出された問題を、技術的・マーケティング的に実証活動を行なう拠点となるとした。また「タウンサービススペース」では、タウン内コミュニティへのイベント情報や街のエネルギー情報の提供を行なうほか、ALSOKの警備員が常駐し、セキュリティカメラの集中管理やSST内の駆け付け拠点としても機能するという。
スマート技術開発施設には、すでにAppleが入居。アジア初の技術開発施設だという。
すでに開始されている実証実験としては、パナソニックのセンシング技術と、大林組のSCIM(Smart City Information Modeling)との連携させた「IoTセンシング実証」がある。温度、湿度、気圧、照度、UV、雨滴、CO2、PM2.5、花粉などの「環境センシングユニット」や、街に訪れる人の数や性別、年齢をリアルタイムに画像解析可能なカメラ「Vieureka」設置。
商用施設入り口、国際学生寮入り口、集合住宅入り口の3箇所へ設置されたサイネージで、生活データを街を3D化した状態で閲覧できるという。なおこのサイネージでは、エネルギーに関する目標の達成状況なども閲覧可能。街への来訪者状況は、商業施設での販売等に役立てていくという。
第3弾は「吹田SST」、2022年街開きを目指す
パナソニックによる街づくりプロジェクトは、2014年にオープンしたFujisawa SSTに次いで2番目。また3番目の事例として「吹田SST(仮称)」が発表された。吹田SSTは、敷地面積2.2haのパナソニック大阪吹田工場跡地での展開を予定。Fujisawa SSTが郊外型街づくり、Tsunashima SSTが都市型街づくりであるのに対し、吹田SSTは「健都型街づくり」であるとした。
健都とは、吹田市と摂津市が推進する、吹田操車場跡地への複合医療産業拠点の形成と、それによる「健康・医療のまちづくり」のことで、「北大阪健康医療都市構想」の略称。吹田SSTはこの構想と連携する形を取り、「多世代居住」「地域矯正」「健康介護」を柱に、2022年の街開きを目指すという。