日立、人や部屋の状況を認識する「くらしカメラ」搭載エアコン

~ターゲットはLDK。暖房機能も充実

 日立アプライアンスは、人や部屋の状況を把握して自動で節電するエアコン「ステンレ・スクリーン 白くまくん Sシリーズ」8機種を、10月中旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は21~34万円前後。

 同社では高級モデルに位置するエアコン。今回は、人や部屋の状況を素早く把握する、新開発の「くらしカメラ」を搭載し、快適性を保ちながら節電運転を行なう点が特徴となる。


「ステンレ・スクリーン 白くまくん Sシリーズ」の室内機室内機の中央部分にあるのが、新製品の特徴となる「くらしカメラ」

「くらしカメラ」で、人数や居場所に合わせた節電空調が可能に

「くらしカメラ」が見分ける機能の一覧

 くらしカメラは、半導体画像センサー「CMOSイメージセンサー」を搭載したカメラで、室内機の吹き出し口付近に設置されている。

 このカメラでは、人の出入りや、室内にいる人の人数や居場所、活動量、さらに間取りや太陽光が差し込んでいるエリアなどの情報を認識する。この情報を、温度・湿度センサーや季節の情報と合わせて分析し、温度・風向・風量を適切に制御することで、在室者の快適性を保ちながら節電運転を行なう仕組みとなっている。検知範囲は室内機から150度。

くらしカメラの内部構造。CMOSイメージセンサーを搭載している検知範囲は150度発表会で行われたテスト。室内機の前にいる人の顔を認識している。なおテストではデモ機を使用しており、実際のくらしカメラには、映像の出力機能はない

 例えばLDK(リビング・ダイニング・キッチン)を暖房する場合、LDKに入室した人数分の室温の上昇を予測し、暖房能力を下げた運転に切り替える。室内に居る人数が増えるほど、能力を落とした暖房を行なう。冷房はその逆で、部屋の人数が増えるほど能力を高めて、人数が減るほど能力を抑えて運転する。

 なお、くらしカメラがOFFの場合は、室温が変化した時点で能力を落とす。同社のテストにおける暖房能力を落とすまでの時間は、くらしカメラONの場合が約2分30秒、OFFが15分となった。

くらしカメラOFF時の場合、室内の人数が増えて、室温が上昇したのを検知した後、出力を下げる。日立のテストでは、能力を下げるまでに約15分くらしカメラがONの場合、室内の人が増えて、室温の上昇を予測し、早めに出力を下げる。日立のテストでは、能力を下げるまでの時間は約2分半と早い
従来モデルと比較したテスト。1人の場合は、従来モデルとあまり変わらないが、人数が増えても、新製品では出力を抑える最終的に人数が3人追加された場合。従来モデルと比べた消費電力は100W以上も差が開いている

 部屋に活動量が多い人と少ない人が混在している場合、従来モデルでは活動量が多い人を優先していたが、くらしカメラでは一人ひとりの活動量の把握が可能。室内に居る人たちの平均の活動量で温度を設定し、風向や風量を調節するため、快適な運転が行なえるという。

 さらに、人が居る場所に合わせた気流の設定も可能。人が部屋の広い範囲に分布している場合は、左右に広く送風するが、人数が片寄っている場合、あるいは人が一人だけの場合は、その方向だけに絞った送風を行なう。

活動量を多い人、少ない人を見分け、その平均で温度、風向・風量を設定する部屋に居る人数が片寄っている場合、あるいは人が一人だけの場合は、その方向だけに絞った送風を行なう

人の位置によって、送風方向を変えるデモ映像

 また、キッチンで人の動きを検知した場合は、キッチンに優先して気流を届ける。同社によると、実際に炊事中の人の動きを何件も調査を重ねたことで、炊事中か否かを見分ける技術を開発したという。なお、キッチンからエアコンの正面が見えない場合は動作対象外となる。

キッチンで炊事を行なっている場合は、優先して空調を行なうリビングに比べると、キッチンでの空調に不満を感じている人は多いという

 エリアに応じた送風ができるよう、送風性能も向上した。ファンには従来モデルよりも27mm長いロングファンを採用し、風量を向上。送風口では、2枚のフラップ(風向板)の間隔を従来の72mmから43mmに縮めることで、気流を絞り込み、風を遠くに届けるという。また、左右方向への風速も、暖房時で従来モデルより約40%向上した。

 くらしカメラではこのほか、人が不在の場合は、10分後に運転を控えめに切り替える機能も備えている。1時間不在の場合には、任意設定でオートオフするような設定もできる。

新製品のファン。風量を高めるため、従来モデルよりも長くなった2枚のフラップの間隔を、従来の72mmから43mmに絞り、より遠くに風が届けられるようになったという不在時には控えめ運転に移行。1時間不在の場合はオートオフにもできる

くらしカメラは、運転中に“目”が動いている

スピード暖房、霜取り運転対策、55℃のパワフル温風など、暖房機能が充実

55℃のパワフル温風など、暖房機能が充実した

 暖房機能では3つの機能が追加された。1点目は、起床時間や帰宅時間など、予め暖房を開始する時間を設定しておくことで、素早く暖房運転を開始する「すぐ暖房」。設定時間の1時間前から予熱運転を開始しておくことで、1分も待たずに温風を吹き出すという。

 2点目は、霜取り運転時の温度低下を抑える「あらかじめ温風」。一般的にエアコンの暖房運転時には、室外機の熱交換器に付着した霜を取り除く除霜運転を行なうが、この際に室内に吹き出す風が停止することで、温度が低下する。しかしあらかじめ温風では、霜取り運転に入る前に、温風の吹き出し温度を上げて室温を上昇することで、霜取り運転時の室温低下が抑えられるという。

 3点目は、高温風を一時的に吹き出す「温風プラス」。送風温度が物足りない場合、リモコンの温風ボタンを押すことで、約30分間だけ約55℃の温風が吹き出せる。

素早く暖房運転を開始する「すぐ暖房」と、霜取り運転時の温度低下を抑える「あらかじめ温風」を新搭載「すぐ暖房」の実演。運転後1分以内に温風が吹き出ている。約30分間だけ約55℃の温風が吹き出せる「温風プラス」

 

室内機は、電源や制御回路などを前面に配置した「フロントプレイス」仕様。写真上が新製品、下が従来製品
 このほか室内機では、従来までは側面に配置していた電源や制御回路などを、前面に移動した「フロントプレイス」仕様とした。これにより、熱交換器の横幅が拡大し、さらに前述のロングファンが搭載できるようになったため、送風動力が低減できたという。室外機では、日立独自のスクロール圧縮機の性能を改善している。

 

 室内機のサイズは全機種が798×299×295mm(幅×奥行き×高さ)。室外機のサイズは、冷房能力2.2/2.5/2.8/3.6kWタイプが750×288×570mm(同)で、冷房能力4.0/5.6/6.3/7.1kWタイプが799×299×629mm(同)。室内機内部には、除菌効果のあるステンレス素材を採用している。


“エアコンでLDKすべてを空調したい”というニーズは高い

日立アプライアンス 常務取締役 空調事業部 青山貢 事業部長

 日立アプライアンス 常務取締役 空調事業部 青山貢 事業部長は、新製品について、LDKすべてを1台のエアコンで空調するニーズに応える製品と評価した。

 「日立の調査では、リビングの間取りの構成はLDKが80%と高く、『夕食後は就寝までリビングで家族で暮らす』という人が74%もいた。エアコンでLDKを空調したいというニーズは高い。今回はLDKをターゲットに、節電・快適機能を充実したエアコン、ということで開発した」

 青山部長はまた、エアコン市場全体の動向に触れ、「非常に厳しい。我々が攻めつづけてきた新興国を中心に、前年度を下回っている。日本もエコポイントが終了し、2012年度の市場全体の出荷台数は前年度比で94%と見ている」と分析した。

 一方で、「日立では、地域別に生産拠点を構える“地産地消”を再徹底している。構造改革も徹底的に行なっており、日本でも栃木を中心とした構造改革の結果、12年度は台数で対前年度比109%と、大きく改善する予定。増収増益になると見ている」と、改善策に効果が出ていることを明らかにした。

LDKすべてをエアコンで空調したいというニーズは高いというリビングの生活時間は長く、同社の調査では、夕食後もリビングで就寝まで過ごす人が74%を占めているという過去15年のエアコン市場。2012年度の出荷台数は、全体で前年度比94%になるという





(正藤 慶一)

2012年9月5日 17:49