東芝、世界最高水準94%の効率を実現したエネファーム

~年間約6万円の光熱費を削減。停電時利用も対応予定

 東芝と東芝燃料電池システムは、総合効率94%で“世界最高水準”を謳うエネファームの新製品を、2012年3月にガス販売会社向けに発売すると発表した。一般向けには、4月2日より大阪ガスが販売する。販売価格は260万4千円。

 エネファームは、燃料のガスから水素を取り出して発電し、同時に発生した排熱によって給湯を行なうコージェネレーション(熱電併給)システム。大阪ガスでは、燃料電池発電ユニットは東芝製だが、容量200Lの排熱利用給湯暖房ユニットには長府製作所製を採用する。

エネファームは、ガスを使って発電し、その排熱で給湯を行なう商品燃料電池発電ユニット排熱利用給湯暖房ユニット。大阪ガスが販売するエネファームでは、長府製作所が製造する


“世界最高水準”の総合効率で年間約6万円節約。販売価格は従来から約65万円安い

 燃料電池ユニットでは、内部構造を改良することで、エネルギーの効率を向上した点が特徴。現行品では、発電効率が35%、排熱効率が45%だったが、新製品では発電効率が38.5%、排熱効率が55.5%となった。これにより、両者を合わせた総合効率は、94%となった(いずれも都市ガス、低位発熱量基準[LHV]の場合)。東芝ではこれを“世界最高水準”としている。

 この結果、CO2排出量の削減率も向上。従来の40%から48%と、より排出量が抑えられるようになった。また大阪ガスの試算では、東芝の新型エネファームを導入すると、ガス料金は増えるものの、電気代が減るため、年間で約61,000円の光熱費が抑えられるとしている(4人家族の場合)。

燃料電池ユニットのエネルギー効率が向上。CO2排出量も削減された効率の向上により、光熱費は年間で約61,000円抑えられるという
コスト削減にもこだわった。大阪ガスでの販売価格は、従来の約65万円安い価格となる

 また、本体のコストダウンも図った。インバーターをワンボード化したり、燃料電池部分に低コスト材料を採用するなど、燃料電池ユニットだけで従来比約30%のコストを抑えたという。この結果、大阪ガスでの販売価格は、従来の販売価格から約65万円安くなった。

 さらに、コンパクト化も実施し、給湯ユニットと合わせた設置面積は、従来の2.4平方mから、新型機では1.9平方mに小さくなった。燃料電池ユニットでは、本体裏面からのメンテナンスはいっさい行なわないため、壁にほぼ直付けの状態で設置できるという。さらに、燃料電池ユニットと給湯ユニットがそれぞれ独立したセパレート型のため、窓の下や、離れた場所など、フレキシブルに設置できるという。

 運転音については、“業界トップレベルの低騒音”という38dB。夜間の高層住宅地域並みという。

サイズも小さくなった。同社が設置した場合、設置面積は従来の2.4平方mから1.9平方mになった運転音は、従来と比べて2dB低い38dB

 耐久性については、従来の40,000時間の倍となる80,000時間。製品寿命の10年まで、安心して使えるという。また、定期メンテナンスは、従来の2年に1回から、3年半に1回と、スパンが長くなった。作業自体も、フィルターや樹脂を交換する程度と、約30分程度で済むとのこと。

 燃料は、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)に対応。このほか、長野や北海道の一部で使用されているという天然ガス(NG)や、千葉など一部で使われている12Aガスも利用できるという。さらに、水素エネルギーが活用される未来を見通して、純水素も燃料として使えるという。

寿命は80,000時間に伸びた定期メンテナンスは、3.5年間に1回と、スパンが長くなった利用できる燃料の種類が多い

停電時にもエネファームが使えるシステムを検証中

現在、検証中の自立運転システムの概要

 新製品ではさらに、停電時などにも使えるよう、燃料電池の自立運転システムの導入が検討されている。

 一般的なエネファームは、停電時には発電できない。しかし東芝の自立運転システムでは、発電中に停電した場合、自動的に電力系統への接続を断ち、専用のコンセントに接続した機器に電力を供給するという。

東芝燃料電池システム 永田裕ニ技師長

 「震災以降、自分たちでエネルギーを確保しようという機運が高い。しかし、燃料電池のシステムに、さらに緊急時用の外部バッテリーを導入するとなると、今度は価格が高くなる。停電の頻度を考えると、コストはあまりかけられない。そこで、蓄電池と燃料電池を組み合わせるのではなく、燃料電池だけで自立運転を実現するシステムとした」(東芝燃料電池システム 永田裕ニ技師長)

 なお、この自立運転については、開発は完了しているものの、現在のステータスは「検証中」となっており、今回の発表時点では、新しいエネファームに搭載されない。検証が完了次第、オプション品などで、自立運転機能を実機に搭載していくという。

 本体サイズは、燃料電池ユニットが780×300×1,000mm(幅×奥行き×高さ)で、発電出力は250W~700W。長府製作所製の給湯ユニットは、サイズが750×440×1,760mm(同)。貯湯容量は200Lで、貯湯温度は約60℃。


電力不足の影響で、エネファームの販売数が増加

従来のシステムとエネファームの比較。熱が給湯に利用できることで、一次エネルギーの94%が使えることになる

 永田技師長はまた、エネファームを導入することのメリットについて、エネルギーがロスなく使える点を指摘した。

 「エネファームは、電気を使うところで電気を作る、地産地消の究極の分散型発電システム。例えば火力発電の場合、投入した一次エネルギーのうち、家庭に届くまでに全エネルギーの60%が排熱や送電のロスとなるが、この新しいエネファームなら、発電効率は火力並みの38.5%で、排熱の55.5%も給湯に利用できる。ロスとなるエネルギーは、利用困難な6%の排熱だけで済む」

東芝 執行役常務 電力システム社 前川治統括技師長

 また、東芝の発電部門である、電力システム社の前川治統括技師長は、東芝のエネファームが、全国40社のガス事業者に販売されてきた実績を披露。新製品についても、「地域の事業者に拡販を進めていきたい」と意欲を示した。

 販売数については、東日本大震災による電力不足の影響を受けて、好調という。

 「2009年度、2010年度のエネファームは、合わせて約4,000台強の売上だったが、2011年度現在で、約6,500台の売上を記録した。例年に比べると、台数は顕著に増えている。この流れを続けていきたい」(前川氏)

 東芝では、今後も商品の開発と販売を強化することで、販売数を2012年度は1万5千台、2015年度には5万台の達成を目指している。

これまでの東芝エネファームの納入実績と保守拠点販売台数の目標。2012年度は1万5千台、2015年度には5万台を目指している





(正藤 慶一)

2011年12月21日 00:00