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国内初、パナの子供2人乗せ電動アシスト自転車に押し歩きモード 全モデル対応に期待
2024年4月16日 10:05
パナソニック サイクルテックは、幼児2人同乗用電動アシスト自転車としては国内初となる「押し歩き」機能(以下、ウォークモード)を搭載する「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き」を2024年6月上旬から順次発売する。価格は183,000円。
ウォークモードが国内で初搭載されたのは2021年の「ビビ・L・押し歩き」。実に3年ぶりとなるウォークモードは幼児2人同乗用モデルに採用された。「ビビ・L・押し歩き」は、わずか1カ月で年間の企画台数分を発注する大きな反響の一方で、幼児2人同乗用電動アシスト自転車へのウォークモード搭載の要望も非常に多かったという。
新発売される「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き」は、幼児2人を乗せて荷物も積載するために安全性を考慮したセッティングが必要なので、発売までに時間を要したという。子乗せ電動アシスト自転車の取り回しの苦労を実感した母親社員たちが企画したこともあり、「ビビ・L・押し歩き」とは異なる進化のポイントがいくつもある。
電動アシスト自転車やe-bikeを愛用する人にお聞きしたら「ウォークモードがあれば絶対に欲しい」というのが大半の意見ではないだろうか。日頃からe-bikeをクルマに積んだり走ったりしているとウォークモードがあれば……と何度も体感しているが、e-bikeは趣味性が強い乗り物。実際に子供を乗せて移動する実用性を重視する電動アシスト自転車からウォークモードが搭載されるのは当然だろうとも思う。また、子乗せモデルに乗っていなくても、そもそも電動アシスト自転車の経験がなくても、子供を乗せて押し歩く行為は大変だし、怖いとも想像できるのではないだろうか。
今回、もっとも驚いたのはウォークモードを搭載しても販売価格に大きな差がない点。2023年12月に発売された「ギュット・アニーズ・DX」は175,000円、ウォークモードを搭載した「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き」は183,000円。8,000円しか変わらない。もちろん、メーカーとしては車体ごとのセッティングの苦労もあり、高額な電動アシスト自転車をさらに値上げしたくない思いもあるかもしれない。しかし、電動アシスト自転車を選ぶ人は、8,000円高くなったとしてもむしろ歓迎するのではないだろうか。
パナソニックは今後もニーズに合わせてウォークモード搭載モデルを増やしていきたいと話していたが、個人的には全モデルに搭載してほしいと感じた。便利な電動アシスト自転車は子供乗せに限ったことではなく、ドライブユニットとバッテリーを搭載するため車体は重たくなってしまう。漕ぎ出しは便利で、運転免許を自主返納した高齢者も移動手段として活用しているだろう。しかし、押し歩く場合は重たいので、そのまま歩道を走る人に怖い思いをした歩行者も多いはず。ならば、すべての電動アシスト自転車にウォークモードが搭載となれば、歩道では押し歩きの法律やマナーが徹底できるのではないだろうか。特定小型原動機付自転車などさまざまなモビリティが登場し、法律やルールが整備されつつあるが、ウォークモードでも6km/hまでと決まっている。
「ギュット・アニーズ・DX ・押し歩き」のウォークモードは?
車体と関係ない話が長くなってしまったが、「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き」のウォークモードを体験してきた。幼児2人を乗せなかった場合でも、ある程度「慣らし」が必要で、パナソニックも販売時のウォークモード説明はもちろん、体験できる機会、今後も正しい自転車の乗り方を啓蒙する機会を増やしていきたいとしている。
基本的には「ビビ・L・押し歩き」と同じしくみで、車体重量が重たくなる「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き」向けにセッティングされている。ちなみに、日本で日本の道路交通法では2019年に規則の一部が改正されて(令和元年内閣府令第31号)、電動アシスト自転車を押して歩く際にもアシストが可能となった。全長190cm・全幅(=ハンドル幅)60cm以下の自転車で(このためMTBは除外となる)、下記の3点の条件を満たす必要があるためだ。
1.歩く速度が時速6km以下
2.自転車から離れると駆動が停止する
3.乗車装置(サドル)が使えない、乗れない
電動アシスト自転車は、スピードセンサーやモーター内蔵センサー、トルクセンサーで乗車状況に合わせたアシストをする。そこに「乗車装置(サドル)が使えない、乗れない」をクリアするためのサドル傾斜センサーを追加。乗車状態ではウォークモードが機能しない。
「ビビ・L・押し歩き」はショッピングモデルで車体重量は約23.5kg。前後に子供を乗せられる「ギュット・アニーズ・DX ・押し歩き」は車体重量が約32kg、子供を2人乗せる場合のフロントチャイルドシート、荷物などを含めるとかなりの重量になるため、最大約66kgの押し歩きで設定されている。商店街や公園、歩道橋に駐輪場などでの快適な移動をサポートする。
基本的な使い方はサドルを下げて乗車できないようにすることで、アシストスイッチでウォークモード動作が可能になる。「ビビ・L・押し歩き」ではディスプレイ一体型のスイッチに「押し歩き」ボタンがあったが、使いやすさを考慮して別途ボタンが用意されている(現行モデル「ビビ・L・押し歩き」もこの仕様に)。その後ボタンを押し続けるだけで、押し歩きが快適になるシンプル操作だ。ほかにも細部まで安全に使える機能も盛り込まれている。
安全なウォークモードのために「自転車を正しく」使うことが大事
サドルを下げて、押し歩きボタンを押すだけのシンプル操作だが、まずは子供を乗せずに練習すること。そして、日頃から「アシスト任せ」でなく変速も正しく使う習慣がポイントになる。
電動アシスト自転車もe-bikeも同じ「電動」で、日本の法律に沿って24m/hまでアシストが効く。ただし、その範囲内でも乗り物としては大きく異なる。実用性重視の電動アシスト自転車は遅いスピードで力強いトルクが出るように作られており、漕ぎ出しからパワフルなアシストが特徴だ。そのため内装3速ギアが付いていながらも、「3」に固定したまま乗り続けて、そのギアだけが消耗していくケースが多いという話を自転車業界の関係者からよく聞く。変速せずとも漕ぎ出しがパワフルなので、ずっと固定で変速せずに走り続けているケースが多いのだろう。
ガチャガチャ変速しなくてもパワフルだから問題ない、なんて考えているかもしれないが、ウォークモードを安全に活用するには「ギアを軽くする」習慣が大切になる。
今回の「ギュット・アニーズ・DX ・押し歩き」も従来モデル同様に内装3速のギアを搭載する。ウォークモードは停車してサドルを下げて、ボタンを押し続けて進む。その際にギアが重たい「3」になっていると、ウォークモードに合わせて6km/h以下でも強め(速め)に働く。6km/hなんて遅いと思うかもしれないが、実際に体験すると平坦な道ではかなりグイッと引っ張られて驚くことだろう。その際に子供が乗っていて驚いてバランスを崩したらどうなるのか? ウォークモードを使う際にはギアを1か2に落とす習慣を身に付け、日頃から停車する目標に向けてギアを軽くして正しく使うと、自転車も健全に使えることに繋がる。
メディア向けの試乗会では、子乗せモデルや電動アシスト自転車に慣れてない関係者が苦労している様子も見られた。先述したように、パナソニックも販売時にはしっかり説明を行なうとしている。まずは変速の意識をしっかり持つことが大切で、正しく使えば安全にウォークモードを使える機能もたっぷり搭載されている。
子供を乗せた状態での安全性のこだわり
6km/h以下のウォークモードにも2段階でアシスト速度が用意されている。速めのほうで約4~5km/h、遅めのほうで約3~4km/hだとしている。通常走行時のアシストモードの設定ボタンで切り替えられる。
子供を乗せていると予期せぬことも起きがちで、押し歩きボタンから指を離してしまうケースがあるかもしれない。それが平坦な道であれば止まるだけだが、上り坂の場合はずり下がってしまう危険に繋がってしまう。そのため、約10秒間車体が勢いよくずり下がることを抑制する機能が搭載されている。発表会で試してみたが、思わず指を離してしまっても気付いて押し直せる余裕が十分にあるだろう。
ほかにも細かい機能が搭載されている。ウォークモードで前輪が何かにぶつかって後輪が浮いてしまったような場合は、センサーが即座に起動し体感で2秒ほどで動作が止まる。また、サドルを下げたウォークモード状態で停車し、電源を入れてそのままウォークモードで動き出すとディスプレイにはエラーが表示される。ウォークモードで停車して、そのままウォークモードで動きたいと考えるかもしれないが、電源を入れる前に必ずサドルの上げ下げ動作を必須にしているのは、パナソニックの安全性のこだわりだろう。個人的にも変速含めて安全に使ってほしいと思うので同意できる。
また、左側のペダルには軽めの重りが装着されており、ウォークモードの開始・終了後には必ず左側のペダルが下に位置するように工夫されている。ペダルが脛に当たるのはあるあるだが、子供を乗せた際に痛みでハンドルを手放したりバランスを避けるためだろう。開発担当者が経験したヒヤリハットがあったのかもしれない。そうした点にもこだわられている。
これで車体価格が8,000円上がっても高いと思うだろうか? ぜひ電動アシスト自転車のウォークモード標準装備で、愛用者の快適さと交通安全が進むことを期待したい。