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ネスレ日本、高岡浩三氏「食品メーカーの役割は、健康寿命を伸ばすことに貢献すること」

 ネスレ日本は2018年の事業戦略発表会を開催。昨年の実績とともに、今後の事業戦略を同社CEOの高岡浩三氏が語った。

 まず昨年の業績は次の通り。オーガニックグロース(為替変動や買収売却等の影響を除いた売上額の伸び率)は+2.8%、営業利益額は+4.9%、営業利益率は+41bps(いずれも対前年同期比)。

高岡浩三 代表取締役社長 兼 CEO 高岡浩三氏
2017年のネスレ日本の業績
オーガニックグロースの比較

 高岡氏は、昨年の業績に大変満足しているとしつつも、かつては毎年5%くらいの売上の伸びを約束していたけれど、ここ3-4年はBRICSなどの新興国の成長にブレーキがかかったことで、同社の成長もやや鈍化しているとした。

 それでも、ネスレ日本においては、ソリュブルコーヒーとレギュラーコーヒーの(1杯ずつ作る)シングルサーブについては、家庭の内外で大きく伸長しているとする。また、キットカットに関しても、インバウンド需要の影響が大きく、姫路工場を増設し、より海外需要に応えられる態勢づくりを進めてきたとする。

 また、昨年からスタートした、ユーザーに足りない栄養素を抹茶に含ませた「ネスレ ウェルネス アンバサダー」に関しては「大変、非常に素晴らしい伸びを示している」とする。

 第三の柱として位置づけた抹茶に関しても、「健康飲料として古くから馴染みのある抹茶だけれど、家庭で簡単に泡の立った美味しい抹茶が飲めないという問題を解決したことで、こちらも大きく伸長している」と語り、次のように続けた。

 「(ネスカフェ ドルチェ グスト用の抹茶は)商品化して1年半くらいだが、本格抹茶飲料の急伸長を我が社一社で牽引しています。この市場には競合がいない状態なのです。今年中には70%以上のシェアを達成できるでしょう」

「本格抹茶」の市場推移とネスレ日本のシェア

新たな問題を解決するためのネスレ日本の施策

 順調な成長を遂げたように見えるネスレ日本だが、高岡氏によれば「2017年は弊社にとっても意味深い年、難しい年でありました」という。

 「この7-8年、常に我々が向き合っていた問題なのですが、それが色んな形で、いっぺんに大きな波のように押し寄せてきました。これまで何度もお話している新しい現実としては、世帯の少人数化があります」

 世帯の少人数化により、これまで売れていた、容量が大きくお買い得感の高い製品が、売れなくなってきているとする。高岡氏は、カレーのルーの売上がカレーのレトルトパックの売上に逆転された、ことを例として挙げた。さらに、少人数化して家庭では使い切れなくなった大きなパックの醤油は売れなくなり、小さなパックへとシフトしていることを挙げる。

 「食品のカテゴリーが違っても、直面する新たな現実と、それに起因する問題は、すべて同じです。我々も大きなラージサイズは売れず、1杯ずつのスティックにシフトしていく」

 そこで同社は、砂糖やミルクが一切入っていない、レギュラーソリュブルコーヒーのスティックタイプのブラック、「ネスカフェ エクセラ スティック ブラック」と「ネスカフェ ゴールドブレンド スティック ブラック」を、地域限定で販売テストを行なったという。

 結果、市場のカテゴリーではソリュブルコーヒーは、売上が下がっているが、このブラックのスティックに関しては、予想の2倍以上の売上を達成したという。この結果を受けて、今月から全国発売に踏み切ることにした。

「ネスカフェ エクセラ スティック ブラック」と「ネスカフェ ゴールドブレンド スティック ブラック」

縮小していく家庭“内”需要への対応が「ネスカフェ アンバサダー」

 高岡氏は、縮小していく家庭内需要だけで今のビジネスを支えるのは非常に難しいと語る。そこで同社は、「ネスカフェアンバサダー」を代表とする、家庭“外”でのビジネスを促進。

 ほかに4-5年前から開始したのが「カフェ・イン・ショップ」や「ネスカフェ サテライト」というもの。前者が自動車ディーラーの店舗などに同社のマシンを設置。後者は、喫茶店やカフェなどが、同社の看板を掲げ、同社のメニューを導入すると、同社が宣伝費を負担するというものだ。

 この3つサービスについて当初は、2020年の目標を、それぞれ500,000人、4,000店舗、2,000店舗としていたが、現在時点で既に400,000人、3,100店舗、1,800店舗と目標の達成が近づいているという。

3業態の目標設定を修正

 そこで同社は目標設定を修正し、いずれも2020年までに、「ネスカフェアンバサダー」については700,000人、「カフェ・イン・ショップ」と「ネスカフェ サテライト」については各7,000店舗を目指す。

 さらに「ネスカフェアンバサダー」については、「いつとは申し上げられませんが、必ず1,000億円レベルのビジネスモデルに成長させる」と高岡氏は語る。

ネスレ ウェルネス アンバサダーを21世紀型のイノベーションへと拡充させる

 「世界のウェルネス企業が、これからやらなくてはならないのは、美味しいものをリーズナブルな値段で届けるだけでなく、健康寿命を伸ばす、ということに貢献できるものを提供することだと、考えています」(高岡氏)

 医学の進歩により、一般的な寿命と、健康な状態で長生きできる年齢とのギャップがどんどん開いてきてしまっている。そのギャップを減らすため、健康寿命を伸ばしていくのが喫緊の課題。そうした問題を解決したいという思いで始めたのが「ネスレ ウェルネス アンバサダー」だという。

 「ネスレ ウェルネス アンバサダー」とは、家庭でも職場でも、自分に不足しがちな栄養を、抹茶で美味しく補えるというサービス

質問に回答していくとユーザーに適したカプセルを教えてくれる
足りない栄養素を抹茶ラテで補えるのが「ネスレ ウェルネス アンバサダー」

 高岡氏は「これまでは、自分の体に何か足りないものがあれば、何が足りないかはわからなくても、とりあえずはサプリメントをのむ、という方がほとんどだったと思います。

 要するに、今は一人ひとりに対しての診断がない。どういう栄養素は足りているけど、どういう栄養素は足りていないということができていない。病気になってからの診断はあるけれど、病気になる前の診断はない。という問題があるんです」(高岡氏)

 こうした顧客が気が付いていないかもしれない問題を解決するために「ネスレ ウェルネス アンバサダー」では、その診断を先に行ない、足りない栄養素を提供するという。

 「さらに今後は、例えばガンのリスクを検査し、そのリスクが高い人には、このカプセルを飲んでくださいというようなビジネスモデルを、我々は目指してネスレ ウェルネス アンバサダーを起ち上げたのです」(高岡氏)

ウェルネス アンバサダーは開始から約半年で6万人を突破
よりパーソナライズされたサービスへと拡充

 「ネスレ ウェルネス アンバサダー」は、昨年の10月から全国でのサービスがスタートし、1カ月で1万人強、この5カ月で既に6万人を突破致した。高岡氏は2020年までに25万人になると予測。

 しかも、同サービスの1人あたりの売上は「ネスカフェ アンバサダー」の1.5倍になるという。

 「最終的には、家庭や職場にいながら、同サービスが人間ドックのような役割を果たせるようになることです。診断をし、その後に必要な栄養を提供する。

 現在、共同開発を進めているファンケルさんの存在は大きいです。我々にはないノウハウを蓄積されているからです。

 今後も他の産業の企業とタッグを組んで、今後もサービスを拡充していきたい。そして健康寿命を伸ばしていくためのケアリングシステムを、ネスレ ウェルネス アンバサダーで作っていきたいと考えています。

 それが21世紀型のイノベーションなのではないかと思っています」(高岡氏)