長期レビュー
東芝「大清快VOiCE EDRシリーズ」
東芝「ルームエアコン 大清快VOiCE EDRシリーズ」最終回
~オフシーズンも使える。電気代が気にならない便利で快適なエアコン
(2013/5/16 00:00)
除湿運転は冷房よりも電気代がかかる!?
11年ぶりにリビングのエアコンを買い替えるにあたって、東芝ホームアプライアンスの「大清快VOiCE EDRシリーズ」を選んだ理由や設置の様子、デュアルコンプレッサーによる省エネ性の高さやecoモード、PM2.5にも対応する空気清浄機能の詳細については、第1回、第2回の記事で紹介してきた。
最終回となる今回の記事では、まず除湿運転について紹介したい。古いタイプのエアコンでは、「除湿運転=弱冷房運転」の方式をとっており、部屋の湿気は取れるものの、寒く感じられるものが主流だった。その後、部屋の温度をあまり下げずに湿気をとることのできる「再熱除湿」方式が上位機種を中心に広がり、快適さがさらに高まっている。ただし、一昨年からの節電意識の高まりによって、「再熱除湿の場合、冷房よりも電気代がかかる」と認知され、除湿運転を使わない傾向にあるともいわれる。
このEDRシリーズでは、湿度を60%とやや高めの設定にした「おすすめ除湿」のほか、「除湿50%」「除湿40%」と3つの除湿モードに加え、部屋干しの洗濯物を乾かすのに有効な「衣類乾燥」モードと4つの除湿モードを備えている。いずれも部屋の湿った空気を一旦エアコン内部にとりこみ、熱交換器でしっかり湿気を取った後で、空気を温め直してから、カラッとした空気を部屋に送り出す「再熱除湿」方式を採用している。室温も好みに応じて17℃~32℃で設定できるようになっている。快適性は高そうだが、果たして電気代はどうなのか。
湿度は「おすすめ除湿(湿度60%)」「除湿50%」「除湿40%」の3段階から選べる
まずは、リモコンの除湿ボタンを押すと最初に表示される「おすすめ除湿(湿度60%)」で運転をさせてみた。この日は朝から雨が降っており、リビングの温湿度計を見てみると、室温は22.4℃、湿度は64%。スイッチオンをしてから、運転が安定してきた後では、室内機のリアルタイムモニターがだいたい0.3kW~0.4kWという電力表示になっていた。
部屋の空気が何となく乾いてきたと感じた1時間半後に、温湿度計を見てみると、室温が22℃、湿度は57%になっており、部屋の湿気がとれているのがわかる。電気代を確認してみると「5円」の表示。さすがに冷房の「涼風」モードの1時間1円と比較すれば、電気代がかかっているが、快適性を重視するなら、気兼ねなく使える範囲なのではないだろうか。
続いて、リモコンの除湿ボタンを2度押しして、「除湿50%」で運転させてみた。こちらも1時間半後の電気代は「5円」と表示され、おすすめ除湿と変わらない結果に。今回は、試した時間が短いので差はなかったが、もう少し長い時間使用すると差が出るのかもしれない。雨が続いて、外気温が下がったせいだろうか。ずっと24℃設定の除湿にしていたが、少し肌寒く感じられた。
日が落ちてもまだ雨が続いていたこの日、最後に試したのが「除湿40%」。少し寒くなってきたので設定温度を26℃に上げたところ、しっかりと湿気がとれつつ、室温もちょうどよく快適に。これまでと同様1時間半後の電気代を確認してみると「6円」と少しアップ。だが、この程度なら問題なく使えるように感じた。
今まで使っていたエアコンの除湿運転は「弱冷房」だったため、湿気は取れても寒くなってしまうため、ほとんど使ったことがなかった。だが、大清快の除湿なら好みの湿度と温度が選べ、快適性が高いので、使う頻度が上がりそうだ。あとは、除湿時の室温の設定をどの程度まで上げるべきなのかを、使いながら把握していきたいと思う。
これは便利! 洗濯物がよく乾く「衣類乾燥モード」
エアコンであまり使っている人がいないようなのが、除湿機能の1つとして「衣類乾燥モード」や「ランドリーモード」などの名称で搭載されている、部屋干し対応の機能だ。除湿乾燥機と違うのは、熱交換器でとった湿気を外に排出しているため、タンクの水を捨てる必要がないこと。また、エアコンの能力にもよるが、除湿能力が除湿乾燥機よりもぐんと高いことだ。EDRシリーズにも「衣類乾燥モード」が搭載されているので、わくわくしながら、その実力を試してみた。
大清快を設置した場所はリビングで20畳以上と広く、エアコンの室内機のすぐ近くに洗濯物を干せる場所がなかったため、エアコンの吹き出し口から前方2mくらいのところにタオル掛けを置いて、そこにバスタオルを3枚ほど干してみることに。また、エアコンの設置場所からはかなり離れているが、リビングと続きの間の鴨居に洗濯用ハンガーを吊るしてタオルや靴下なども干してみた。
衣類乾燥モードでは、自動的に3時間タイマーがセットされ、時間が来ると運転が止まる仕組みになっている。リモコンの液晶画面には、スタートした時間から停止予定までの時間が、棒グラフのような形で示される。運転を始めると、通常の除湿運転よりもかなり強めの風が吹き出し、風向ルーバーが上下・左右にスイングして洗濯物にしっかりと風を送っているのがわかる。バスタオルはもちろん、エアコンからずいぶん離れたところに吊るした洗濯ハンガーのタオルや靴下も揺れている。これは、期待できそうだ。
3時間後、衣類乾燥運転が終わると、エアコンの自動クリーニングに切り替わり、室内機は「おそうじ」の表示となった。この時点で、バスタオルをさわってみると、見事に乾いている。洗濯ハンガーのタオル類もOK。厚手の靴下のみ、若干湿り気が残っていた。
ちなみに、リモコン操作で3時間切タイマーをオフにして、もっと長時間、衣類乾燥運転を行なうことも可能だ。ただ、適当な干し場所が確保できるなら、3時間でかなりの洗濯物を乾かすことが可能なのではないかと思う(取扱説明書によれば、4kgの洗濯物を乾かすことが可能とのこと)。
電気代を見てみると、この日、衣類乾燥運転にかかった電気代は24円。その後、エアコン内部の自動クリーニングを行なったため、その分を加えても27円だった。
ちょっとだけ暑い/寒い場合は、リモコンよりボイスコントローラが便利
ここでEDRシリーズの操作方法について、あらためて説明しておこう。このエアコンは大清快“VOiCE”という名のとおり、リモコンだけでなく音声認識機能のあるボイスコントローラでも操作することができるのが特徴だ。初代モデルではコントローラから室内機への一方向の送信だったが、2代目となる2012年モデルのEDRシリーズでは、双方向受信が可能になっている。そのため、前回ご紹介したように、室内機のマイコンに蓄積した気圧情報などにより、天気予報なども知らせてくれることができるのだ。
ボイスコントローラの音声認識ワードは全部で28種類。エアコン操作のほか、電気代や運転状況を知らせてくれる機能や、東芝製のLEDシーリングライト、液晶テレビなどのON/OFF機能、ラッキーカラーやじゃんけんなどの“お遊び機能”も備えている。
実際に使ってみて便利だなと感じたのは、室温などを自分の好みに変更したいときに「あつい」「さむい」と言うと、室温の設定をそれぞれ1℃ずつ下げたり、上げたりしてくれる機能だ。運転開始時の細かな設定などはリモコンのほうがしやすいが、現在の体感温度に応じて調整をしてほしいときなどには、音声で行なったほうが早いし、気軽にできる。
ボイスコントローラが近くにあるときには、天面のスイッチを押して、そうでなければ手を3回たたいて「さむい」と言えば、「設定温度を28℃に上げます」など、現在の設定温度に1℃プラスした温度を伝えてくれるので、耳で聞いて確認できてとてもわかりやすい。
リモコンそのものも、通常の状態では冷房、除湿、暖房、停止、ecoモード、ピコ空清、おしえて、温度(上下)の8種類だけなのでとてもシンプル。液晶画面も大きめで見やすい。カバーをスライドさせると快適気流などの細かな設定ができる仕組みになっている。これは、使い始めや季節の変わり目などに好みの設定に変えればOKだろう。
「フィルター掃除+内部乾燥」を自動で行なう
エアコンはどんなに冷暖房効率がよく、省エネ性に優れたものでも、フィルターにホコリがたまって目詰まりしていたのでは、その性能は発揮しない。また、フィルターだけでなく、熱交換器や送風路の汚れを防いでいつもきれいに保つことも、エアコンの初期性能を維持するのに重要なポイントになる。そのため、現在ではフィルターの自動お掃除機能が当たり前のように搭載されるようになっている。
EDRシリーズにも自動クリーニング機能が搭載されており、10分間以上運転した後では、停止後に約75分間かけて、フィルターの掃除と内部乾燥を行なう。まずは、エアフィルターの汚れをブラシとブレードで両面からかき取り、そのホコリは室内機の下部につけられた透明なプラスチック製のダストボックスに排出される。この作業にかかる時間は約12分。
その際、左右2枚のフィルターが自動で上下し、固定されたブラシユニットを通過することによって掃除される仕組みになっているため、室内機の上からフィルターが顔を出し、やがて元に戻っていくのがわかる。その後、内部を乾燥させるために、乾燥運転や空気清浄運転を1時間ほど行なう。この間、エアコンの室内機にはオレンジのランプで「おそうじ」と表示される。
先にも述べたように、この自動クリーニングにかかる電気代は1回あたり3円だが、毎回自動でこの作業を行なってくれることで、初期性能を維持し、カビの発生やいやなニオイを防いでくれるのだとしたら、決して高いものではないように思う。これまで使用していた古いエアコンにはこんな機能は搭載されておらず、フィルターの掃除が面倒だなと感じていたので、本当に便利でありがたい機能だ。
では、自分で行なうお手入れは不要なのだろうか。まだ使い始めたばかりなので汚れはたまっていないが、取扱説明書によれば、1年に1回、ダストボックスにたまったホコリを捨てる(=掃除機で吸い取る)必要がある。これについてはリモコンに「ダストボックスお手入れ」と表示されたら行なえばよいので、神経質になることはないようだ。
また、キッチンの近くなどに設置した場合、フィルターに油汚れが付着することがあるが、これは自動おそうじ機能ではきれいにすることができないので、シーズンごとにフィルターを取り外して、汚れのチェックをすれば安心だろう。もしも汚れが気になる場合は、洗濯用の合成洗剤を薄めた液に浸し振り洗いをし、よく乾燥させればOKだ。今回、ダストボックスやエアフィルターの取り外し作業もしてみたが、前面パネルを開け、それぞれの部品のロックを解除すれば簡単に取り外せるようになっているので、面倒にはならない。
オフシーズンは空清機能がある。1年中、電気代を気にせず便利に使える快適エアコン
大清快VOiCE EDRシリーズをリビングに設置してから約1カ月。季節的に冷暖房がまだ不要な過ごしやすい時期なので、使っていない機能も多いが、一番実感しているのが「ピコ空清」機能のすごさだ。リビングのドアを閉めて除湿や冷房をした際に、ほかの部屋に移動してみるとかすかなニオイが気になったりするのだ。特に雨の日は玄関付近などのニオイが気になるものだが、ピコ空清中のリビングに入るとまさに「清々しい」という言葉がぴったりな気持ちのよい空間になっているのがわかる。
これから梅雨の季節に入るが、除湿機能も活躍しそうでうれしい。部屋干しの洗濯物にも衣類乾燥モードがあれば、すっきりと乾くことがわかったので、状況に応じて使ってみたい。
エアコンは冷暖房のみに活躍する印象があったが、このように1年を通じていろいろなシーンで活躍するものだというのは新たな気づきで、最新エアコンの進化を実感している。この夏は、1時間1円の「涼風運転」で愛犬・大和も熱中症の心配なく乗り切れそうだ。ペットのいるご家庭にもぜひおすすめしたいエアコンだといえる。
寒い朝でもすぐに温風が出る「ダッシュ暖房」など、暖房機能についてはいずれまた、あらためてレビューでご紹介できればと思っているので、お楽しみに。