長期レビュー

東芝「大清快 UDRシリーズ RAS-281UDR」

~エアコンを使った部屋干しってどうなの?
by 藤山 哲人

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)




東芝 大清快UDRシリーズ。写真は14畳用のRAS-281UDR
 5月も末になり、やっと停滞前線が張り出しじめじめとした長雨の日と、カラッ!と晴れて暑い日が交互に訪れるようになった。

 そこで今回は、東芝の「大清快UDRシリーズ」を1カ月に渡って長期レポートしていきたい。エアコンのレポートなので冷房の性能からお伝えしたいところだが、なにぶん天候に左右されるレビューなので、今回は部屋干し乾燥の実力を見ていこう。

 まぁ、そのうち暑い日が来るので冷房の性能もレビューできるハズ!? お天道様! なにとぞ! なにとぞ! 気温が30℃を越える夏日を6月中旬までにヨロシク!!


メーカー東芝
製品名大清快 UDRシリーズ RAS-281UDR
希望小売価格オープンプライス
購入場所ヨドバシ.com
購入価格178,000円


本体に光るデジタル表示は省エネ性能の証し

 まずは、本体の特徴を見ていこう。外観で特徴的なのは、エアコン本体にあるデジタル表示だ。

 赤青緑の葉っぱは、それぞれ暖房、冷房、除湿運転を示すマークとなっている。その下のデジタル表示は、表示モードが切り替えられるようになっていて、現在の消費電力や1時間当たりの電気代、運転開始からの通算電気代、運転パワーの強弱、コンプレッサの省エネ運転状態、室温などが表示される。

エアコン本体にある大型のデジタル表示。写真は消費電力を表示しているところ。カラー部は運転モードを表している(写真は一部合成)1時間当たりの電気代表示運転開始からの電気代表示
運転パワー表示後述のデュアルコンプレッサの、デュアル/シングル運転表示現在の室温表示

 数字の下には「eco」ランプも設けられており、消費電力をセーブしたエコ運転になると、このサインが光るというものだ。

 このようにエアコン本体に、エコ運転を示すサインが表示される機種は多々あるが、

 消費電力や電気代まで表示するエアコンはこれまでになかった。

 他社のエアコンの中には、電気代を表示するものも出てきたが、消費電力までリアルタイムで表示するのは依然として東芝だけだ。

 これが意味することは、

それだけ省電力性能に自身があるという現れだ。

 省エネに自身がなければこのような表示はまずできないだろう。たいていのメーカーはエコ運転サインをアイコンの数などで示し、お茶を濁しているようだ。

 エアコンのカタログには省エネ基準として「APF」(通年エネルギー消費効率)が明記されているが、カタログ下の脚注には小さな文字で細々とした条件が書かれていて、いまいちピンと来ない。

 しかし東芝の大清快UDRシリーズは、電気代の表示を見れば経済性がすぐに計算できる。とはいえ電気代や消費電力を数字で示しただけでは、省エネ運転なのか分からない人も多々いるため、補助サインとして「eco」マークも点灯するようになっている。

 またこの電気代の表示機能は、リモコンと連動していて、今回運転分の電気代や、過去3日分の電気代に加え、1カ月の積算電気代まで表示してくれる機能もついている。エアコンを頻繁に使う夏や冬は、電気代の請求書を見て愕然とすることがある。しかしこの機能によって、エアコンにかかった金額がはっきり分かるので、エアコンの設定温度を少し変えてみたりといったエコ意識も自然に高まるのだ。

大型の液晶ディスプレイを持つリモコンには、ドットマトリクス表示できる部分があり、ここにさまざまな情報を表示できる電源を入れてからの時間と電気代月ごとの累積電気代
室内の温度や湿度に加え、外気温も表示できるCo2の排出量も表示できる
3日間の電気代の推移3日間の電気代をグラフ表示したもの

自信を裏付ける東芝独自のデュアルコンプレッサ

 最近のエアコンには、さまざまな付加機能が装備されている。イオンを放出して室内の空気を洗浄する機能、センサーで人のいる位置を調べて風向きや風量を変える機能、フィルターを自動清掃してくれる機能などなどだ。これらの機能も便利だが、あくまでも付加機能。エアコンは室内の温度と湿度を正確にかつ、最近は省エネでコントロールするのが本質。

 その心臓部となるのが、室外機の中にあるコンプレッサだ。販売店では、室内機のモックアップや実機は展示してあるものの、室外機まで展示しているのは稀。ましてや室外機のコンプレッサを運転している状態を見せたり、カットモデルを展示しているところはない。あるとすれば、スクロールコンプレッサやロータリーコンプレッサ内蔵しているやら、ダブルで搭載しているなどの売り文句が1行程度だ。

ほとんど見ることのできないエアコンの室外機。左側のファンはケースの外からでも見られるが、右側のケースに隠れている性能を左右するコンプレッサはまず見られない(写真は東芝UDRのもの)コンプレッサの中にあるモーター。紫色の部分が回転子だが、星型に配置された磁石により、出力を維持したまま小型化に成功している

 確かにメカに詳しくない人に、コンプレッサの性能を訴求しても売れ行きを左右するものではないが、家電Watchの読者は例外(笑)。家電メーカーが必死に考えたやさしいキャッチコピーじゃ軟弱すぎてサッパリという人種だ。

 おそらくエアコンの買い替えで読者が候補とするメーカーは、東芝、三菱重工(ビーバー)、日立といったモーターを自社製造できる会社だろう。また業務用に強いダイキンという人もいるハズ。エアコン、しいてはコンプレッサを駆動するのはモーターなので、これが省電力・ハイパワーなものであることが第一関門だ。

 第2関門は、ロータリーコンプレッサかロータリーコンプレッサか? ダブルかシングルか? という違いだが、これはもう性能差はほとんどなく好みという現状になっている。しかしコンプレッサの流行としては、ハイパワー方向に向かっていた。フル回転したとき、どれだけ早く部屋を冷房できるのか? という性能差だ。


スクロールコンプレッサとロータリーコンプレッサ
左側タンクの紫色の部分がモーターで、その下にある緑色の部分が2つのコンプレッサ室。モーターの軸に直結されたシリンダは、軸からズレた状態になっている

 この第2関門に疑問を投げかけたのが、東芝のデュアルコンプレッサだ。隙間風の多い古くからの日本家屋はどんどん少なくなり、断熱性の高いツーバイフォーや高気密・高断熱住宅にシフトしつつある現状で、ハイパワーに特化したコンプレッサに疑問を抱いたというわけだ。

 東芝のデュアルコンプレッサは、その名の通りロータリー式のコンプレッサを2つ備えている。これはダイキンなども同じだ。しかし、東芝が特許を持っているデュアルコンプレッサは、片方のコンプレッサを止めてシングルで運転することも可能になっている。

 暑い日にエアコンの電源を入れたときは、2つのコンプレッサを同時運転しハイパワーで急速に室温を下げ、設定温度に近づいたら片方のコンプレッサを止めシングル運転することで、消費電力を抑えつつ室温を一定に保つようにしているのだ。


シングル&デュアル運転

 エアコンをつけていて、チョット寒いなと感じてから、しばらくするとエアコンがOFFになったり、逆に熱いなと感じてからしばらくすると再び運転がはじまるというアレだ。ツーバイフォーや高気密・高断熱住宅に住んでいる読者なら、誰しも経験があるはず。

 これは高気密・高断熱住宅では、コンプレッサの性能が高すぎるので、ON・OFFの間欠運転をせざるを得ないため生じる現象だ。ご存知の通り、モーターはエンジンと一緒で、あまりに低い回転数では運転できない。エンジン場合は、アイドリングの回転数がそれだ。これを下回るとノッキングのような振動が起きたり、エンジンストールということになる。

上段は常に運転するロータリーコンプレッサ。ベーンと呼ばれるコンプレッサ室を仕切る金具がバネでピストンに押し付けられている。下段は運転停止が可能なコンプレッサ。この状態は、ベーンが磁石に吸引され、シリンダが空回りしている状態

 デュアルコンプレッサは、外気と室温の差が少ないとき、また断熱性が高い部屋で室温を一定にするのにパワーを必要としない場合には、コンプレッサをシングル運転して消費電力を最低限まで絞る。またシングル運転を行なうと、パワーが弱いので微妙な温度制御もできるという利点もある。これにより、寒いな、暑いなと感じる前に、微妙な温度制御ができるのだ。


コンプレッサの運転状態運転条件
デュアル運転運転開始時、室温と外気の差が大きい、室温が設定温度になりにくい
シングル運転室温と外気の差が小さい、室温がほぼ設定温度

 つまりデュアルコンプレッサは、ハイパワーからローパワーまで幅広いレンジで対応できるコンプレッサというわけ。そして特許の関係から、現在は東芝しか作れないコンプレッサなのだ。

 読者の中には「他社のコンプレッサも同様なしくみを搭載できるハズ」と思う人もいるだろう。しかし、東芝によると同じロータリー式を採用している他社製のコンプレッサは、構造上の問題で設計をイチから見直さなければデュアル化することは難しいという。またスクロールコンプレッサの場合は、デュアル化するのは技術的な課題が山積みだという。しばらくは東芝の独壇場のコンプレッサとなる、それがデュアルコンプレッサなのだ。


部屋干し乾燥のランドリーモードは電気代が乾燥機の半分!

 エアコンのレビューなので、まずは冷房性能からレビューしたいところだが、まだエアコンをつけるのは寒すぎっ! ということで、部屋干し乾燥機能から紹介しよう。っていうかエアコン本番の季節の前に、じめじめとした梅雨が来るので時系列的には、これが本道だ! そうだ! 言い訳じゃない!

梅雨の日曜日の雨は、危険がたくさん潜んでいる

 梅雨どきのファミリー世帯と言ったら「母ちゃん! 運動着(給食当番の服)を出すの忘れた~」と日曜夜に発せられるエマージェンシーコール。ときに、2日間発酵されたお弁当箱と共に投下される場合もあり非常に危険だ。

 独身世帯の場合は「休みの土日に1週間分の洗濯をしようと思ったのに雨で外で干せない!」という魂の叫び。ニオイはファブリーズでなんとかなるが、キノコの養殖場になりかねないギリギリのエネミーライン。

 そんなときに強い見方になるのがランドリーモードだ。除湿運転モードの機能の一つで、現在の室温を保ちつつ部屋干しした洗濯物の湿気を除湿するというもの。驚くべきはそのパワフルさで、カタログによればYシャツ27枚を3時間で乾燥させてしまうという。乾燥機5台分に匹敵するパワーだとか……しかしこれは、あくまでカタログスペック。Yシャツを一度に27枚洗うヤツはイネーよ! と突っ込みたくなったので、普通に洗濯物して部屋干ししてみた。

 洗濯物はだいたい4kg程度。洗濯機に入れて50Lの水が必要な量だ。おりしも今日は、朝からずーっと小雨の降ってて、やむ気配がない。普段ならウンザリだが、実験にはうってつけ。何てラッキー! 気象庁の発表によれば、湿度は90%近くあり、気温は18.5℃ほどなので、部屋干しにうってつけの条件だ。

 写真のように洗濯物を部屋に干し、湿度と温度計をセットして5分間隔で撮影して洗濯物の乾き具合と室温、湿度を調べてみた。

今回実験したのは高断熱住宅で部屋は14畳。ただし南北と東側に窓があるため、外気の影響を受けやすい環境だエアコンと洗濯物、温度・湿度計を入れて、5分間隔で撮影する「除湿」ボタンを何回か押すとランドリーモードに切り替わる。通常は3時間で自動的に停止するモードだが、連続運転も可能。運転時間は、リモコンの「タイマー」欄にグラフで表示される

 ランドリーモードは、3時時間で自動的にOFFになるモードと、連続運転するモードがあるが、既定の3時間運転モードで行なった。次のグラフは、その実験結果だ。

上段の青い部分が湿度、下段は室温と外気温を示している。全体にグレーになっている部分は、エアコンが停止している状態を示す

 グラフで特徴的なのは、湿度と室温のコントロールだ。とくに湿度は、最初60%近くまであったが50%付近まで下がってくると乾燥しすぎるのを防ぐため微弱で運転しているようだ。室温の変化に連動して、湿度がノコギリの刃のように変化しているのも分かるだろう。

写真では、衣類の乾燥状態がわからないが、化繊と薄手の生地は3時間で乾いていた

 室温の推移にも注目。なんと23~21℃という誤差2℃の範囲で制御している。運転は夜の11:30ごろから行なったため、3時間の自動停止で3時にはいったん停止。洗濯物を見てみると、ジャージなどの化繊類と、生地の薄い給食当番の服はすっかり乾いていた。しかし、生地の分厚い体操服はまだ生乾きで、Tシャツも着られないことはないが、ちょっとジメっとした感じ(夜まで干しちゃったアノ感じ)だ。

 いっぽう部屋の状態はというと、部屋干しの臭さはまったく感じられず、寒くも暑くもない状態。ちなみに、今回実験を行なったのは、子供部屋。つまり、実験中も子供たちは同じ部屋で寝ていたのだ。湿った洗濯物と一緒で、嫌な思いをさせてしまったかなと思ったのもつかの間、いつもより爆睡しているじゃないか! 部屋干しをしても快適さをキープできるのだ!


部屋干し乾燥
6時間エアコンを運転したところ、厚手の生地もフンワリ乾燥

 まだ生乾きの物があったので、再び3時間ランドリーモードで乾燥させてみる。翌朝7時に洗濯物を調べてみると、湿っていた体操服やTシャツも完全に乾燥していた。

 ついでに子供たちを学校にやるのに起こそうと思ったのだが、いつもより爆睡していて起こすのに手間がかかるほど快適ということも付け加えておこう。

 実験結果から、筆者からアドバイスするとこうなる。


洗濯物の種類目安時間
1)化繊類や生地の薄いもの3時間でOK
2)生地の厚い綿、裾や袖の布が厚い部分があるもの6時間

 これは感覚的なものだが、写真の洗濯物の3倍ぐらいは干しても十分に乾燥できそうだ。そして気になる電気代は、

6時間運転して37円!

 比較実験として洗濯機の乾燥機能を使ったところ、5時間で完全に乾燥。これにかかる電気代は、

5時間で79円。

リモコンの電気代表示モードで料金を確認すると6時間の運転で37円と出た

 つまり電気代で比較すると、乾燥する時間はさほど変わらず、電気代は乾燥機の半分ということになる。ランドリーモードは、まだまだ余裕だったことを考えると、大量に洗濯物を乾かすほど経済的と言えるだろう。カタログにあった乾燥機5台分のパワーというのは本当だ!

 ただ今回使った洗濯機は、ヒートポンプ式ではなくヒーター式のもの。ヒートポンプ式の洗濯機は、エアコンと同じ原理を使い乾燥させるので、さほど電気代に差が出ない可能性もある。

 エアコン乾燥のメリットは他にもある。それは乾燥機から出る湿気と温度だ。最近の乾燥機能は、電熱線方式でも部屋に湿気が出にくいようになっているが、ジメっぽさがあるのはやっぱりいなめない。しかも乾燥機からは、どうしても熱風が出てしまう。これが梅雨や夏だと、暑さに一層拍車をかけ、ウキーッ! と叫びたくなる。

 もう1つのメリットは、洗濯物が熱くないこと。乾燥機から出したての洗濯物は、冬場はフワフワ・ホカホカで心地いいのだが、夏には着れたモンじゃない。着た瞬間に汗が吹き出し、これ何の罰ゲーム? って感じだ。ところがエアコンで乾燥させた洗濯物は、乾燥したてでも室温。タンスの中から出した衣類と変わらないのだ。

 日曜日の夜になって急に「これ洗うの忘れてた!」というものでも、一晩ランドリーモードで運転しておけば、朝にはカラッとした(しかも熱くない)服を着られるばかりでなく、快適な睡眠までできてしまうというスグレモノだ!

 というわけで、今回は天候というどうしようもない事情のモト、部屋干しの実力を中心にご紹介したが、次回こそはエアコン本来の使用目的である冷房機能をお届けできるハズ? だ。



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2010年5月31日 00:00