長期レビュー

無印良品「紙パック式ヨコ型掃除機」 その2

~タイプの違う3つの掃除機を使い比べ
by 伊達 浩二

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



2回目となる今回はタイプの違う3つの掃除機を使い比べてみた

 無印良品「紙パック式ヨコ型掃除機 SC-MJ500」の2回目をお届けする。

 前回は、無印良品の掃除機が、一見、特徴がないように見えて、現代の掃除機として必要十分な、ど真ん中の仕様になっていることを確認した。

 第1回の記事はこちら


キャニスター型は本当に便利か

 今回は、SC-MJ500が属し、日本の掃除機の代表とも言えるキャニスター型掃除機が、どういう性格の製品なのか、もう一度確認してみたいと思う。

 と、言うのは、本当に現在の暮らしにキャニスター型の掃除機がマッチしているのかどうか、ずっと疑問に思っていたからだ。

 なお、ここで言うキャニスター型とは、横型とか、床移動型と呼ばれるもので、大きな本体が床を移動し、接続したホースの先からゴミを吸引するものだ。日本で掃除機といえば、この形の製品が主流である。

 さて、古い話になるが、私の家に掃除機が来たのは、40年前の1970年頃のことで、ゴミの分離はまだ紙パック式ではなく布袋式だった。厚みのある二重構造の布袋をゴミ捨てのたびに洗って使うのだ。それまでは座敷箒(ざしきぼうき)が中心だったのだが、畳の上にカーペットを敷いた部屋ができたので、その掃除のためにと言って買ったのだと記憶している。したがって、使用頻度が低く、月に数度使えば上々という感じだった。

 その後、独身時代の一人暮らしのときも、掃除機は持っていたのだが、やはり同じような頻度でしか使わない。ひどいときは年に一度の大掃除のときにしか使わなかった。

 私一人がそうなのかと思っていたが、意外とそうでもなさそうなことがわかったのは数年前だ。「家電Watch」を創刊する前に、家電について話を聞き回ったときのことだ。ヒアリングの際に、「よく使う家電と、使わない家電」という話題を出すと、よく使うのが洗濯機と電子レンジ、使わないのが掃除機という答えが多かった。

 使わない理由としては、部屋の隅から出してくるのが面倒くさい、ゴミを捨てるのが面倒だ、フローリングなのでフローリングワイパーで用が足りるという答えが主だった。

 つまり、キャニスター型は、使い始めるまでがおっくうなのだ。


手軽な製品と比べてみる

 では、逆にキャニスター型の利点は何だろう。それを考えるために、キャニスター型ではない、スティック型とハンディ型の2台の掃除機を用意し、同じ条件で比較してみた。

 まず、スティック型から説明しよう。スティック型は、ホースのないまっすぐな形の掃除機で、主にフローリングの床に適している。

スティック型のツインバード ATC-1005

 今回使ったのは、ツインバード工業の「ATC-1005」という製品で、2005年製とやや古いが、本体が1.6kgと軽量で使いやすい。購入価格は2,000円もしなかったと思う。最近のスティック型は重たい製品が増えているのだが、本体ごと持ち上げることも多いので、軽さは重要なのだ。スティック型は充電式の製品もあるが、吸引力が弱いことが多いが、これはAC専用で、吸込仕事率12Wだ。ゴミの分離はサイクロン式だが、フィルタに多く依存している。

 ハンディ型は、ちょっとしたホコリを吸うための製品が多く、箒の代わりというよりはハタキの代用に近い。

 そのハンディ型の中で、マキタの製品はちょっと異色だ。電動工具メーカーの製品だけに、充電式なのに吸引力が強いのだ。軽くて移動しやすく、吸引力が強いので、新幹線の車内やビルの清掃などの現場で目にすることが多い。

ハンディ型のマキタ 4072DW

 今回は、そのマキタの「4072DW」という製品を使った。2007年製の製品だ。購入価格は1万5千円前後。本体の重さは1kgと軽い。ゴミの分離は紙袋式だ。吸込仕事率は公開されていないが、吸引力に不足を感じたことはない。

 この2台は、普段自宅で使用している製品で、これまで何台もレビュー用に他社の製品が来たが、買い換えの必要を感じていない。最新の製品ではないが、一定水準以上の製品であるということでご理解いただきたい。共通した利点は、軽量で手軽に取り扱えることと、そこそこの吸引力が両立していることだ。

 パッと使えるという点でも、ツインバードとマキタは双璧だ。ツインバードは自立できるので、電源コードをつなぎっぱなしにして部屋の隅に置いておくとすぐに使える。マキタは部屋の隅に立てかけてあって、ツインバードの電源コードが届かない場所にパッと持って行って使うことが多い。いずれにしても、よいしょという感じで準備と決意がいるキャニスター型に比べれば、掃除を始めるための敷居は低い。


3種類の掃除機で吸引実験

 ここでは、3者の違いが、よく表れた「ペレットの吸引実験」を基に比較してみよう。

 ペレットというのは、ポリプロピレンの小さな球で、ぬいぐるみに入れる素材として手芸店で入手できる。適度な重さがあることと、球が小さく散らばりやすいことで、掃除機のテストに向いている素材だ。

テストに使用したペレット今回テストした3機種。左からツインバード、無印良品、マキタの製品

 まず、スティック型のツインバードATC-1005だ。この掃除機は電源のONとOFFだけで、吸引力の調整がない。吸引力は問題なかったが、スイッチをOFFにした時点でペレットが逆流してしまう。ペレットのように重いゴミを吸うことを考えていないようだ。フローリングなどの床でホコリなどの軽いゴミを片付けるための器具と考えた方がよさそうだ。


ツインバードのテスト。最後にペレットが逆流してしまう

 次にハンディ型のマキタ4072DWで試した。吸引力は2段階に調整できるので「強」にした。バリバリと吸引し、とてもハンディ型とは思えない吸引力だ。本体に長いストレートホースをつけた状態で使ったので、ペレットが吸い込み口に戻らないかと心配していたのだが、杞憂だった。紙袋の手前に弁があり、ゴミが逆流しないようになっているのだ。

 ただし、紙袋の容量は330cc(0.33L)と小さく、2回ほど同じテストをすると、ペレットであふれてしまう。もちろん、その場合は、吸引力が低下する。また、ニッカド電池による充電式なので、3時間充電しても強の場合で10分間しか使用できない。部屋2つ分ぐらいは余裕だが、家中をいっぺんに掃除すると電池が切れてしまうことがある。

マキタは本体の入り口に弁があるので、ペレットが逆流しない紙袋が小さいので、外すときにペレットがこぼれてしまった

マキタのテスト。バッテリを使うハンディ型とは思えない吸引力
キャニスター型の無印良品 SC-MJ500

 キャニスター型の無印良品SC-MJ500は、スティックやハンディタイプと比べると、吸込仕事率が500~約70Wと桁違いに大きく、さすがに吸引力が強い。長いホースがあるので、ゴミが逆流することもない。また、紙袋が大きいため、同じテストを10回繰り返しても、吸引力に変化がない。


 

無印良品のテスト。強力な吸引力場所をカーペットに変えても吸引力は変わらない

 もう一つ気がついたのは、SC-MJ500で掃除すると、他の2機種に比べ、フローリングの床がきれいになることだ。吸引力も強いのと、回転ブラシが触れ るので、表面や溝の細かい汚れが落ちるのだろう。無印良品のキャニスター型掃除機が回転ブラシの装着にこだわっているのも、意味のあることだったのだ。

 また、フローリングではなく、カーペットの上でテストするとキャニスター型の圧勝だった。吸引力が大きいので、毛足の中にもぐりがちなペレットがちゃんと吸い込めるのだ。

無印良品のヘッドは回転ブラシ内蔵マキタとツインバードはブラシは内蔵していない。これはマキタのほう

 今回の比較でわかったキャニスター型の利点をまとめてみよう。

1)安定した大きな吸引力
2)大きなゴミ袋
3)回転ブラシによる清掃力の強さ
4)床を選ばない幅の広さ


 つまり、使い始めるまでの設置が面倒だが、使い始めれば安定した吸引力が期待できる。特に、カーペットのように吸引力が必要な床の場合は、キャニスター型のメリットが期待できる。

 間取りで言えば、開け放しにすると和室が何間も続くような家や、各部屋が敷き詰めのカーペットという家では、キャニスター型は絶対のおすすめとなる。やはり、本格派で万能選手な道具なのだ。

 では、我が家のように、狭めの3LDKで、1部屋が畳である以外はすべてフローリングというようなマンションでは、キャニスター型はいらないのだろうか。キャニスター型の利点が生かせるような使い方はあるのだろうか。次回はそのためのアタッチメントの紹介も兼ねて考えてみたいと思う。



その1  /  その2  /  その3



2010年7月21日 00:00