長期レビュー
無印良品「紙パック式ヨコ型掃除機 SC-MJ500」 最終回
無印良品「紙パック式ヨコ型掃除機 SC-MJ500」 |
無印良品「紙パック式ヨコ型掃除機」の長期レビューの3回目をお送りする。
本体についてレビューした1回目はこちら。違う種類の掃除機と比較した2回目はこちら。
■キャニスター型のアタッチメント
さて、前回の検証で、キャニスター型の利点は強力な吸引力が長続きすることだとわかった。部屋が広く部屋数が多いとか、床がカーペット敷きであれば、それだけでキャニスター型を選ぶ理由になる。
逆に、部屋数が少なく、床がフローリングの場合、機種さえ選べばスティック型やハンディ型の掃除機でも支障なく掃除できることがわかった。
では、キャニスター型の利点を生かし、もっと活用できる方法はないものだろうか。
というわけで、今回はキャニスター型を生かすアタッチメントを探してみた。
■いろいろあるアタッチメント
ほとんどのキャニスター型掃除機には、一般的なヘッドのほかに、隙間ノズルが付属する。これは、障子や窓の桟(さん)や、狭い場所を掃除するためのものだ。
しかし、探してみると、それ以外にもいろいろなアタッチメントが販売されている。たとえば、ヨドバシカメラの通販サイトで「掃除機用ノズル・ヘッド・ブラシ」というジャンルを見ると、なんと59品目もある。
それを大きく分類してみると、次の6つになる。
1)ふとん用ブラシ
2)家具用ブラシ
3)手ぼうき(はぼき系)
4)隙間ノズルの改良型
5)畳/フローリング用ヘッド
6)それ以外
1)ふとん用ブラシ
これは、ふとんのホコリやダニを取るための製品だ。通常のヘッドでは、ふとんに吸い付いてしまい、思うように動かせないので専用のヘッドが必要になる。ふとんの皮を吸い込まないように、網目状のカバーが付いているものが多い。また、ふとんを叩く機構を組み込んでホコリを叩きだそうという発想の製品もある。
これは、以前にパナソニックと三洋の製品をレビューしているので、そちらをご覧いただきたいが、非常に有効なものだ。ふとんを干せない人やアトピー持ちの人には特にお勧めしたい。
パナソニック「ふとん清潔ノズル MC-FU1」 | 三洋電機「アトピットターボ SCS-ATP20」 |
2)家具用ブラシ
標準のヘッドや隙間ノズルは、堅い部分が表に出ているので、傷がつきやすい家具の掃除には向いていない。家具用ブラシは、丸形ブラシの周辺に、柔らかいが腰のある馬の毛を植えたもので、東芝の「VJ-M2U」などから出ている。同様のものでは、日立から長めのナイロンブラシが付いた「D-H3」もある。こちらは静電気が起きにくいナイロンブラシの特性を生かして、ホコリを払うという発想だ。
3)手ぼうき
20年ほど前から、通信販売されている「はぼき」の流れをくむものだ。はぼきはハタキとホウキを組み合わせた製品名で、ノズルの先に柔らかいビニールパイプとブラシが付いている。細いパイプから吸引するので、大きな物は吸い込まず、ホコリだけ吸引するというコンセプトだ。また、パイプが柔らかく凹凸の多い場所でも吸いやすいという。最近の機種は、ペットボトルやホースの先に装着して水洗いに使えるなど、掃除機用品の枠を越えたものになっている。
4)隙間ノズルの改良型
標準装備されている隙間ノズルは、ブラシがついていないとか、長さが短くて棚の奥に届かないなどの欠点がある。なので、ブラシを植えてみたり、先端を長くした製品が存在する。
5)畳/フローリング用ヘッド
以前レビューした、三菱電機の「TI-30」は、ブラシの素材をビロード状の布にして、フローリングをから拭きしようという製品だった。また、パナソニックはフローリングと畳専用にして、床に優しく掃除しようという発想のソフトタッチノズル「AMC-FN9F」や、畳に最適化したという「AMC-FNS8」など、この分野にこだわりを見せている。
三菱電機「AMC-FN9F」 | パナソニック「AMC-FNS8」 |
6)それ以外
以上、挙げたもののほかにも、網戸や玄関など特定の場所に特化したアタッチメントもある。
このようにアタッチメントは、用途や掃除する箇所によって、さまざまな種類のものが用意されている。今回は、その中から、東芝の「薄型すき間用ノズル VJ-M4」と「回転網戸ブラシVJ-AM1」を使ってみた。
■本棚と網戸用のアタッチメント
今回紹介する「薄型すき間ノズル VJ-M4」と「回転網戸ブラシ VJ-AM1」は、東芝が2000年から2002年まで、開設していた子育てママのためのサイト「たんぽぽママ」のチャットや掲示板の声を反映して開発されたものだ。東芝では、主婦の声を集めて開発したこれらのアタッチメントを「取れる秘訣シリーズ」として、ラインナップしている。
今回紹介した2製品のほかにも、「三段伸縮すき間ノズル」や「ベランダ玄関ブラシ」など、他社にはないユニークな製品が揃っている。なお、製品の一部は生産終了となっている。
まずは、厚さ20mmの薄型ノズルを搭載した「薄型すき間ノズル VJ-M4」から紹介しよう。薄型すき間ノズルは、通常のすき間ノズルとは異なり、吸い込み口が薄く、広くなっている点が特徴。本棚に並んだ本の上面を掃除するのに向いている。オープンプライスで、購入価格は2,199円だった。
VJ-M4には、他社製品に対応するためのアダプタと、高い場所でも掃除しやすいように「へ」の字型に曲がったパイプが付属している。今回の無印良品の製品には、そのままでは使えなかったので、さっそくアダプタが役に立った。
掃除機に付属している隙間ノズルは、吸い込み口が45度の角度になっているものが多く、本の上部を掃除しようとすると、掃除機のホースを高く持ち上げる必要がある。しかし、VJ-M4の吸い込み口は下を向いているので、ホースを持ち上げなくても良い。
実際に試してみると、ノズルが長く、高さが2cmと薄いため、棚板と本の隙間が狭いときでも、スッと差し入れて一度に掃除できる。付属のへの字型ブラシも有効で、高い場所でも手が届く。
東芝「薄型すき間ノズル VJ-M4」 | パッケージ裏面 | 手前が本体、奥はへの字型パイプ、右は他機種用のアダプタ |
細い本体の周囲にブラシが植えられている | 本の上部を一度に掃除できる | への字型パイプを使うと、高い位置の棚の上もきれいにできる |
もう1つの「回転網戸ブラシ VJ-AM1」は、丸いブラシの中に、吸引力で回転するブラシが内蔵されている。こちらもオープンプライスで、購入価格は2,836円だった。
網戸の掃除は、なかなか面倒な仕事だが、さぼっていると視界が悪くなるし、汚れも目立ちやすい。VJ-AM1のブラシは馬毛製で、弾力もあり期待をかき立てる。
アダプタ経由で掃除機に取り付け、電源を入れると、ブラシが激しく回転する。網戸に当ててみると、ブラシが汚れをこそげ落とす感じで、かなり良く落ちる。普通の丸ブラシを使っているときと違って、内部でブラシが回転している手応えがあって楽しい。網戸を水で洗うときの爽快感はないが、洗う前に、あらかじめ汚れを落とすための道具として充分に使える。
東芝「回転網戸ブラシ VJ-AM1」 | パッケージ裏面 | 内部ブラシには羽がついており、吸引された風で回転する |
アダプタの使い方。メーカーによってパイプの太さが違うので、直接装着できないときは付属のアダプタを間に入れる | 網戸にあてて、スイッチを入れるところ |
掃除機のスイッチを入れると、内部のブラシが高速で回転する |
2つのアタッチメントを使ってみて感じたのは、キャニスター型につきもののホースによる制限だ。本棚のような高い場所を掃除するときは、どうしてもホースが重いし、長さも短い。下手にホースを引っ張ると、さらに重い掃除機本体までついてきてしまう。無印の掃除機は、約4.4kgで軽い部類ではあるのだが、せめて、この半分になってほしいと思った。もしくはホースが、現状より軽く長くなってほしい。しかし、そうすると床掃除のときに困るだろうしなぁ。
しかし、一方で、キャニスター型の強力さも強く印象づけられた。
回転網戸ブラシを使っている際に、ホースの長さによる制限を強く感じたので、前回で比較用に登場したマキタの「4072DW」というハンディ型の掃除機に回転網戸ブラシを付けてみた。しかし、吸引力が弱く、ブラシがほとんど回転しないのだ。一般の掃除では充分に強力で500円玉も吸い込むほどのマキタだが、キャニスター型の吸引力とは大きな差があることを、改めて感じた。
回転網戸ブラシを、ハンディ型のマキタにつけても内部ブラシが回らない。ハンディ型としては例外的に強力なマキタでも、キャニスター型の吸引力とは大きな差があるのだ |
アタッチメントは、キャニスター型の応用範囲を広げてくれるということが確認できた。それぞれの用途では本当に便利だ。しかし、ホースの長さや本体の重さという点で、キャニスター型の欠点を補うものではない。もう1つ、これらのアタッチメントを、普段、どこに片付けておくかというのも問題だろう。
■道具は生活に合わせて選ぼう
本体の大きさや移動が面倒など欠点はあるものの、吸引力の強さはキャニスター式ならではの長所だ |
今回の長期レビューを行なうにあたって、キャニスター型の掃除機をどう使っているか、いろいろ聞いて回った。
そうしたら、キャニスター型で良かった、便利だと思っている点は、「吸引力の強さ」が予想通り一番だったのだが、意外な答えとして「ふとん圧縮袋の利用」がかなり高い比率を占めた。ご家庭では、衣類とふとんの圧縮のための、手軽なコンプレッサーとして、キャニスター型掃除機が活用されていたのだ。本来の用途とは異なっているが、確かに、代わりになる製品のない用途ではある。
もう1つわかったのは、掃除機の選択は、住んでいる家の構造にとても左右されるということだった。部屋数が多い一軒家に住んでいる、ウチの叔母などは、私がキャニスター型の利点を一生懸命に聞くこと自体が、よくわからない。
専業主婦の彼女にとって、週に何度か、すべての部屋を掃除して回ることが当たり前になっている。そのために、ヤワなスティック型やハンディ型は選択肢に入らないのだ。「それで、これで何時間掃除できるの、えっ、たったの十分、それじゃあ使えないわよ」というわけだ。
とても当たり前な話で、申しわけないのだが、「家電品を買う前には、自分の生活を顧みて、本当に必要かどうか考えましょう」ということを結論とさせていただきたい。
改めて書くと、間取りで言えば、開け放しにすると和室が何間も続くような家や、各部屋が敷き詰めのカーペットという家では、キャニスター型は絶対のおすすめとなる。逆に、部屋数が少なくフローリングが中心であれば、スティック型やハンディ型という選択肢を考えるべきだし、フローリングモップとコロコロだけで掃除機は買わないという選択肢もあるだろう。
その上で、キャニスター型の掃除機を選択するとすれば、今回の無印良品「紙パック式ヨコ型掃除機」はお勧めできる製品だ。価格は手ごろであり、デザインはどぎつくない。回転ブラシもついており、通常の使い方であれば、まったく問題なく使用できる。
ハイパワーにするとうるさいという欠点や、紙パック式への好き嫌いはあると思うが、とりあえずの1台として、必要充分な機能を備えた製品だと思う。とくに、キャニスター型掃除機を使う頻度が見えない(わからない)状態であれば、いきなり付加機能の多い高い掃除機を買うよりも、とりあえずこのクラスで試して見ることをお勧めしたい。
2010年7月29日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)