長期レビュー
無印良品「紙パック式ヨコ型掃除機 SC-MJ500」
■無印良品の家電の特徴
「紙パック式ヨコ型掃除機 SC-MJ500」 |
無印良品の家電製品には、共通の特徴がいくつかある。
1つは、シンプルなデザイン。白かグレーを基調にした本体色で、自分の存在を主張しない、部屋に溶け込むようなデザインだ。
2つめは、ほどほどの性能。最先端の新機能をつぎ込むのではなく、実用的な性能を持っている。道具として割り切って考えられている。ただし、これがあだになって、冷蔵庫の省エネ性などでは大手メーカー品に遅れをとることがある。
3つめは、自社開発ではなく、メーカーとの共同開発であること。共同開発には、コスト面や機構面での安心感というメリットがある。ただし、メーカーとの力関係などの諸般の事情で、「無印良品らしさ」が濃い製品と薄い製品があると感じる。自分で試した範囲で言うと、「持ち運べる明かり」とか「扇風機リモコン付」などは、無印良品らしい製品で、使っていて楽しかった。逆に共同開発元の製品と本体の色が違うだけに見える製品もある。
そんな無印良品の家電の中から、今回試したのは、「紙パック式ヨコ型掃除機(ターボブラシ付) SC-MJ500」という掃除機だ。直販サイトでの価格は1万円を切っており、送料込みで1万円をちょっと越える。今年の春から販売されている。
メーカー | 無印良品 |
製品名 | 紙パック式ヨコ型掃除機 SC-MJ500 |
販売価格 | 9,799円 |
購入場所 | 無印良品ネットストア |
今回のロングレビューのテーマは2つあって、1つは掃除機という少し大きめの家電でも無印良品らしさが感じられるのかどうか、もう1つは、昔からあるキャニスター型の掃除機が、いまでも有効なのかを改めて考えてみたい。併せて、キャニスター型掃除機を活用するためのグッズ類も試してみたいと思っている。
■無印らしいシンプルさ
では、さっそく製品に触れてみよう。
今回は無印良品のオンライン通販で購入した。到着した箱は、掃除機にしては小さめで、短距離なら一人で抱えて持てる大きさだ。
重量は、実測で約4.4kgあるので、手提げで持って帰れる大きさではないが、駐車場に駐めた自動車に運ぶぐらいはできそうだ。箱の中身はホースやパイプがぎっちりと詰まっていた。
ダンボール箱の中はみっちり詰まっている | 本体正面 | 本体底面。後輪の大きさがわかる |
折りたたみ式の取っ手がついているので、階段などは持ち上げて移動できる | 背面の排気口 |
本体はコンパクトで、下に置いた30cm定規より短い | 隙間ノズルは本体に収納できる | 隙間ノズルはパイプにも固定できる。使用頻度が高い人はこっちだろう |
取扱説明書を見ると、製造管理元は三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社になっている。掃除機では定評のあるメーカーだ。
箱から、中身を取り出して組み立てる。本体はコンパクトで、写真で想像していたよりも一回り小さい。まず、2つの部品からなる伸縮パイプを組み立てる。つぎに、先端のターボブラシから順に、伸縮パイプ、ホース、本体とつなげば、もう組み立ては終わる。伸縮パイプの組み立ても難しくはなく、取扱説明書を見なくても、すぐに使える状態になる。
開梱時はパイプが2本に分かれている | 組み合わせて、この状態にすればできあがり |
SC-MJ500のゴミの分離/廃棄は紙パック式だが、これも本体に、あらかじめセットされている。すぐに使える、とても良い配慮だと感じた。
電源コードをコンセントにつないで、軽く掃除をしてみる。独立した電源スイッチはなく、ホースについている「手元コントロールスイッチ」で、すべての操作を行なう。スイッチはスライド式で、「切」→「弱」→「中」→「強」→「ハイパワー」と調整できる。各段階ごとのクリックはなく、スムーズに移動する。ちょっとスムーズすぎて、ついハイパワーにしてしまうことが多いので、ここはクリックがあった方が良かったと思う。
操作はすべて手元で行なえる | パイプの指が当たるところに凹凸がつけてあり握りやすい |
紙パックは最初からセットされていた | 電源コードは5mと長め。もちろん自動巻き取り式だ |
モーターの回転音は比較的大きめだが、「弱」や「中」であれば、夜間でも使用できる音量だ。フローリングや畳では「中」で吸引力は充分だ。
ヘッドに内蔵されているターボブラシは、専用モーターがなく、吸引した風で回転するタービン式だ。「弱」や「中」では、音が静かなので回っているのかどうか確認しにくいが、「ハイパワー」にすると、ビューンという高い音がして回転が確認できる。ブラシ付きのヘッドの中には、吸入口の周囲が大きくて、壁際などが掃除しにくい製品もあるが、このヘッドは吸入口が先端近くにあり、隅まで問題なく吸引できる。
ヘッドはブラシ内蔵型 | ブラシは簡単に掃除できる |
なお、ホースにはクリップになる部分があり、これを本体にひっかけて自立することができる。キャニスター型の掃除機には、よくある仕様だが、使わないときでもホースがだらしなくならず、コンパクトに収納できる。
使用しないときはパイプ部分を本体に固定できる | 収納時の状態 |
■無印良品の考える掃除機像
ここまで読んでいただければおわかりのように、この製品はごく普通の紙パック式掃除機で、使い方や機能で迷うところはない。家電を生活のための道具として割り切っている無印良品らしい製品と言えるだろう。
では、この製品は開発元の三洋電機のラインナップで言えば、どの製品に該当するのだろうか。いろいろ探してみたところ、「軽量コンパクトクリーナー」という分野の「SC-KK4(WB)」が基になっていることがわかった。
本体サイズや消費電力、吸い込み仕事率などの仕様が、同じ数値なので、まず間違いないだろう。もともと、この製品はブルーとレッドの2つの本体色だったのが、最近になって「ホワイトベーシック」が追加されている。店頭に在庫がなくて、実機は確認できなかったのだが、これが無印良品用の本体色を、そのまま使った三洋電機版だと思われる。
三洋電機の掃除機は、なにかと特徴のある製品が多い。空気清浄機としての機能を持つ「airsis(エアシス)」をはじめ、サイクロン/紙パック兼用機などが、すぐに思い浮かぶ。細かいところでも、壁際に近くなるとブラシのカバー部分が開いて回転するブラシが壁まで届く「ガバどり」とか、ブラシが90度回転して細くなり隙間を掃除しやすくなる「すき間一発! 逆立ちパワーブラシ」などのギミックが盛りだくさんだ。
しかし、SC-K4は、ごく普通のデザインで、そういうギミックは盛り込まれていない。ごくベーシックな製品だ。
ヘッドの吸入口が先端近くにあるので、壁際までよく吸える |
SC-K4と無印良品のSC-MJ500が異なっている点はブラシだ。SC-MJ500がタービン型の回転ブラシなのに対し、SC-K4は回転ブラシのない一般的なタイプとなっている。どうやら、SC-K4の本体にSC-WR5Kという上位機種の「きわどりターボブラシ」を組み合わせたものが、SC-MJ500にあたるようだ。
三洋電機の掃除機のラインナップの中でも、アイデアをそのまま形にしている印象が強い上位機種ではなく、ベーシックな機種を選び、必要十分条件として回転ブラシヘッドを追加したというさじ加減が、いかにも無印良品らしいバランス感覚と言えるだろう。
ちなみに、以前使ったことのある、無印良品の「電気掃除機・ヨコ型 M-V30A」は、開発元は東芝だったが、今回と同じ、紙パック式+回転ブラシヘッド(こっちはモーター内蔵)という仕様だった。ホースを本体にひっかけて自立することができるのも同じだ。このあたりが無印良品が考えるキャニスター掃除機の仕様の落としどころらしい。
今回のSC-MJ500で残念なのは、色は無印調だが、ボディデザインは三洋電機そのままということだ。すぐれたデザインの製品が多い無印良品のブランドからすれば、もうひとがんばりほしい。ただ、開発メーカーの製品に比べ、回転ブラシヘッドなど、仕様などでの無印良品らしいこだわりは感じられる。コスト面など難しいところもあると思うが、もう少し仕様とデザインにこだわった上位機種も見てみたいと思う。
次回は、スティック型やバッテリー式のクリーナーと比較し、キャニスター型の良さを考えてみたい。
2010年7月14日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)