長期レビュー

東芝「大清快 UDRシリーズ RAS-281UDR」 その2

~超省エネエアコンの実力を実験で検証!
by 藤山 哲人

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



東芝「大清快 UDRシリーズ RAS-281UDR」

 先週よりお届けしている東芝のエアコン、大静快UDRシリーズだが、非常にすごしやすい天気が続いていて、読者のみなさんは大喜び。しかし筆者にとっては、かなり危機的状況となっている。

 なにせエアコンの冷房性能をテストしようにも、外気の方がよっぽど快適という状態なのだ。

 ということで、今回は真夏の部屋をシミュレートして冷房性能を実験することにした。

 

メカ好きにはたまらない! 見ているだけで楽しいエアコン!

 前回の記事で「コンプレッサが要!」と言っておきながら、いきなり超付加機能をお勧めしたい! このエアコンは、アニメのロボットのように変形するのだ! 変形……それは男のロマン――

家電Watch読者ってこーゆーの大好きでしょ?

 まずは次のムービーを見て欲しい。


フロントカバーオープン

 普段は何の変哲もない形をしているUDR。いや、エアコンにしてはシンプル過ぎるデザインで、部屋のイメージを壊さない。なぜなら通常のエアコンは、全面が空気取り入れ口になっているためメッシュになっているが、UDRシリーズはノッペリと平面になっている。

 そしてリモコンで運転を開始すると、全面のパネルがゆっくりと持ち上がり、本体との間に隙間ができる。これが空気取り入れ口になるのだ。

 運転を終えると、フロントパネルがゆっくりと降りてきて、本体に密着。


フロントパネルクローズ

 コレは超カッコイイ! カッコイイだけではなく、通常のエアコンにありがちなメッシュにホコリがホッコリ貯まるのを防いでくれる! ってこっちがメインだけど。従来のエアコンは、しばらく使ってないと運転する前にメッシュのホコリを掃除機で吸い取ってやらなければ、食卓や部屋にホコリの雨が降るが、UDRはメッシュがないので、雑巾でサッとひと拭きしてやればOK。というか、ひと拭きもいらないぐらい。

 「これじゃメンテナンスできないじゃないか!」という声もあるだろうが心配無用。自動車のボンネットのようにカバーを跳ね上げ固定することも可能だ。

ウチで一番汚れているエアコン……メッシュにホコリは貯まってるわ、タバコで黄ばんでるわでお恥ずかしい。夏が来る前に掃除しなくっちゃ……一方UDRは、凹凸もメッシュもないので汚れようがない。フロントパネルのギミックは、メンテナンス性を向上させるものだった!自動車のボンネットの支持棒のようなものがあり、フロントパネルが取り付けられているメンテナンスドアごと開けられる

 そもそも、UDRシリーズは自動清掃機能が付いているので、日頃のメンテナンスもフリー。そしてコレがまたメカニカル!


自動清掃機能

 運転を終了すると、フィルターが上下に動きエアコンの中に仕込まれているブラシでキレイに掃除し始める。ムービーは、見やすいようにエアコンのカバーを開けた状態になっているが、通常は安全性を考え、カバーを閉じていないと掃除しないようになっている。ちょっと残念(笑)

メンテナンスフリーな自動清掃機能&空気清浄機能

 ホコリ予防のフロントパネルに自動清掃機能のメカを楽しんでもらったついでに、機能面も説明しておこう。

 UDRシリーズには、空気清浄機能も備わっている。空気吹き出し口には、マイナスイオン発生機が設けられており、送風と共にこれらが部屋中に飛び出す。

 飛び出したマイナスイオンは、部屋を浮遊するウィルスやカビ菌などに付着して、マイナスの電気を帯びるようになる。一方UDRは、14畳間の空気を約4分で入れ替えるというパワフルな換気機構により、マイナスに帯電した部屋の浮遊物をアルミのメッシュになった熱交換器に吸い込む。熱交換器は、あらかじめプラスに帯電されているので、マイナスに帯電した浮遊物は熱交換器が磁石のようにキャッチするというわけだ。その前に大きなホコリの類は、フィルターがキャッチする。

マイナスイオン発生器。エアコンから吹き出す冷気に乗って部屋全体にマイナスイオンを放出する部屋の浮遊物をキャッチするしくみ(イメージ図)。東芝のカタログより

 熱交換器に付着した浮遊物は、部屋の湿気を集めた水滴とともに、ドレンホースを伝って屋外に水と共に排出されるようになっている。つまりエアコンを運転している間、常にメンテナンスしているというわけだ。

ブルーの部分が熱交換器を帯電させるユニット。部屋の空気はエアコンの上部とここから吸い込まれ、熱交換器を経由して吹き出し口に向かう熱交換器にある隙間1mm程度で整然と並ぶアルミフィン。ここを浮遊物が通過するとフィンにキャッチされ、水滴とともに屋外へドレンホースを通り排出される

 そして運転を終了すると、熱交換器に貯まった水分を乾燥させるよう、しばらくの間送風運転が行なわれる。こうしてエアコンの中を完全に乾燥させてから運転を終了するため、湿気を好むカビの温床にもならないのだ。

 さてフィルターでキャッチしたホコリの類は、運転終了後に行なわれる自動清掃機能の担当。フィルター中央に取り付けられた回転ブラシによって、一時的にホコリを貯めるダスターに集められる。集められたホコリは、換気用のファンをフルパワーで運転し、掃除機で吸い込んだように、換気用ダクトを通って屋外へ。

フィルターのクリーニング機構。刺さっているのは、フロント用(右側)のフィルタクリーニング機構を裏から見たところ。本体側のギアによってフィルターを動かし、中央部にあるブラシでホコリを落とすブラシとブラシの奥が一時的にホコリを貯めるダスター。換気ホースを設置している場合は、ダスターに貯まったホコリも自動的に屋外に排出される

 このようにフィルターに関してもほぼメンテナンスフリーと思っていいだろう。ただ、稀なケースとしてキッチンのコンロ近くにエアコンがあり、揚げ物などの油もののメニューが多い家庭では、ラーメン屋のエアコンのように油まみれになってしまうので、通常のエアコンと同程度フィルターの掃除が必要になるだろう。

 しかし、熱交換器のアルミフィンは、フッ素樹脂加工のような表面処理が施されており、もし油汚れが付いてもドレンパイプに水と一緒に流れ出すようになっているので、中華料理店にもお勧めのエアコンなのだ!


取り付けには要注意

 UDRシリーズには、冷房、除湿、暖房運転に加えて、空気清浄機付きの換気運転も備えている。このためエアコン本体と室外機をつなぐ配管が従来式のものに比べ若干太い点に注意したい。

 従来のエアコンは、金属の冷媒管2本にドレンホースと電源の4本を通すだけなので壁に60mmの穴を開ければよかったが、UDRの場合はこれに換気用のホースが加わった5本となるため、70mmの穴が必要になる。

ウチには70mmの配管口が開いていたので、とくに工事することなくUDRを取り付けられた。ただし、穴の右下に斜めに走る補強材が邪魔して、ホースを通すのに一苦労。60mmの穴だと、太い換気用ホースを通せない左から電源ケーブル(細いグレー)、浮遊物と水を排出するドレンホース(ライトグレー)、フィルターのホコリの排出用も兼ねる換気用ホース(途中で切れているクリームの太い管)、そしてスチロール樹脂にくるまれた冷媒管(往復)の5本ある

 一戸建てであれば、取り付け工事の際に穴の拡張工事をその場でしてもらえるが、借家やコンクリート製の壁の場合は注意したい。かくいうウチも一戸建てだったのだが、穴の部分に建物の補強材が出ていたため、70mmの穴は開いていたものの取り付けには苦労していた。

 どうしても穴の拡張工事ができない場合は、換気用のホースを通さず工事して、本体の換気機能を切ることも可能だ。この場合、空気清浄機能は有効だが、部屋の空気を入れ替えられなくなる。また自動清掃機能のダスターに貯まったホコリを屋外に排出できないので、数カ月に一度はダスターを掃除機で吸ってやる必要がある。


加湿器とファンヒーターを付けっぱなしで夏の日中を再現! これでも室温は下げられるのか!?

 さて暑くなる日を心待ちにしていたこの1週間だが、今週も穏やかな五月晴れの日が続き、快適! 快適! って、これじゃ冷房の実験ができないではないかっ!

 ということで、今回はちょっとズルをさせてもらって冷房性能を検証してみた。とはいえウチは実験室じゃないので、気温と湿度をコントロールして、夏の猛暑を再現するのは不可能。苦肉の策として次の実験を行なってみた。


実験1
 あらかじめ石油ファンヒーターと加湿器で、部屋を蒸し風呂のようにしてエアコンを運転。ファンヒーターの設定温度は30℃として、エアコン運転中もヒーターと加湿器をつけた状態にする。ファンヒーターは、およそ2時間で自動的に切れてしまうので、エアコンはその後1時間運転させて停止する。エアコンの設定温度は28℃として、フルオートモードで運転し、1分間隔でサンプリングした。

 このときの外気温度は19.9℃。エアコンなんてつけられない……

 なおこの実験は、一酸化炭素中毒になる危険性があるため、機器はすべてリモート操作で行なっています。同様の実験を行なう際には、十分注意してください。って、誰もやらないか……

カメエアコンには、湿度計と温度計をセット、右に見える三脚には床上160cmの位置に温度センサー(エアコンの上に載っている温度計に連動)を取り付け、エアコンの風が直接当たらないようにしている。カメラはエアコンの電力系と湿度計、温度計を捉え、1分間ごと(もちろんコンピュータを使って正確に)に撮影しデータを取ったファンヒーターと加湿器を使って夏の蒸し暑い部屋を再現!

 実験を開始したのは、室温約31℃、湿度が約40%になってから。ヒーターをつけているためか、加湿器をつけてもさほど湿度が上がらなかったが、室温から見れば夏の暑い日という感じだろう。ただし、湿度については夏日を再現したとはいいがたい。気象庁のデータによると、昨年の7月の最高気温の平均は28.4℃で、湿度は78%だという。室温はほぼ7月だが、湿度はほぼ1月というチグハグなものになってしまった。

 なお、夏日を再現するために、冷房運転中もヒーターを付けっぱなし、カーテンは開けたままで、直射日光が入ってる状態にしている。

 グラフのオレンジ色の線が室温、ブルーが湿度を示している。一番下のグリーンは、エアコンに表示される消費電力を示したものだ。横軸はエアコンを運転し始めてからの分数をしめしている。

 さすがにヒーターを付けっぱなしの状態だと、部屋が冷えるまでにかなりの時間がかかる。55分を過ぎるまでエアコンはほぼフルパワーで運転。ようやく涼しくなり始めた70分ごろパワーセーブしたECO運転に移行した。

 オレンジ色とグリーンの線を見比べれば分かるとおり、部屋が涼しくなってきたことを敏感に検知して、55~75分で徐々にパワーセーブしていることが分かるだろう。また設定温度に近づくと、緩やかに室温を下げていることが分かる。

 湿度のグラフに注目すると、エアコンがフルパワーで運転している60分程度は、加湿器から出される湿気も何とか除湿しているという感じだ。70分を過ぎたあたりから湿度が高くなり始めるのは、室温が下がったことで、必然的に湿度が上がったもので、エアコンの性能によるものではない。

ここでミニ知識 温度と湿度の関係
 湿度は、水蒸気を最大でどのぐらい貯められるか? という飽和状態を100%とした、湿度の程度を示している。とはいえ、温度が高ければ高いほどたくさんの水蒸気を貯められ、低いとわずかな水蒸気でも飽和状態になってしまう。

 したがって、湿度が一定の状態で気温が下がると必然的に湿度が上がってしまうのだ。

 部屋の温度は設定値をわずかに下回った110分ごろ、ここでエアコンが再び強く運転を始める。おそらく湿度が50%が越えたこと検知して、10分間ほど除湿運転をした結果だろう。10分後には湿度が50%を切り再び10Wでの超パワーセーブ運転に切り替わってる。

 湿度のグラフがいったん平坦になった120分ごろ、ファンヒーターの電源が自動的にOFFになる。ただ室温は設定温度よりも1℃以上下回っているので、湿度が60%を越えても除湿運転をしないようだ。

 このように、UDRシリーズは気温の変化や湿度の変化をいち早く察してパワーをこまめにコントロール。設定温度に近づくと、消費電力はわずかに10Wという省エネ設計だ。その省エネっぷりがピンと来ないという読者のために、LED電球に換算してみよう。省エネで話題のLED電球ではあるが、エアコンをつけていても60W相当品2個分しか電力を使わないのだ!

 特にツーバイフォー住宅や高断熱・高気密住宅は、断熱性に優れているので、運転開始から数十分はフルパワーで運転をするものの、エアコンを付けっぱなしにしていても、ほとんど電気を食わずに超ローパワー運転が行なえる。それが独自のデュアルコンプレッサを持つ、東芝の大静快UDRシリーズの強みなのだ。


卓上コンロでヤカン1個分の湿度を放出! 夏の昼下がりを再現!

 先の実験はファンヒーターと加湿器を付けっぱなしにしてエアコンを運転した結果だ。しかし、エアコンにはあまりに過酷すぎたと反省。だって、グラフを見れば分かるとおり、エアコンを60分もつけないと涼しくならないってナイでしょ。普通。

 とはいえ、迫り来る締め切りもあり危機的な状況だ(笑)。いや~、長期連載は1週間で実験方法の検討に始まり、実際の実験、さらに失敗したら再実験、そしえ原稿を書かなきゃならないので、皆さんが思っている以上に大変なんすよ。しかも気候に左右されるエアコンなんだもん。

 そんな中、ふと思いついたのが、冬場に鍋を食べたときのあの熱気。ガラスには水滴はしたたるほど付着し、相当に湿度も高くなるはずだ! これなら先の実験では再現できなかった、猛暑の夏の気温と湿度に近づけられるはずだ!

 ということで、締め切りギリギリで間に合った、もう1つの実験だ。

実験2
 あらかじめカセットガスコンロと、水を満タン(およそ2L)にしたヤカンを用意して、部屋の温度を暖めながら水蒸気を放出。部屋のカーテンやドアはすべて締め切り、外気にできるだけ左右されないようにした。夏場近くの温度になったらコンロを停止。エアコンのみを運転して室温を観測する。

 外気が34℃の猛暑で室温を28℃にする場合(外気マイナス6℃)を想定して、実験開始の室温31℃を25℃までマイナス6℃にする実験を行なった。なお室温は、実験1のときと同じ床から160cm位置の温度を計測。

 このときの外気温度は、22.4℃。清々しい天気だ……

 ヤカンを火にかけること30分ほど。1.8Lの水は、すべて部屋の中に放出され、室温は31℃に上昇。あまりにもアナログな方法だが、先の実験より、より夏らしい部屋ができあがった。

 なにせ機材のセッティングをしている間、汗が吹き出してくる。実に不快指数が高く、体感では7~8月の部屋そのものだ。

ストーブと加湿器を使うより、こんな単純なやり方の方が夏の蒸し風呂状態の部屋を作れるなんて……これだから実験は大変だ実験のセッティングを行なう筆者。頬やらあごやらを汗が流れ落ちる。そうそう! 真夏の部屋ってこんな感じだよ!

 カーテンをぴっちり閉め外気の影響を受けにくくしたので、たいだい7月~8月上旬にかけての昼下がりの部屋といったところだろう。

 実験1と違い、室温には2つのグラフがある。これは実験1の室温の推移を見ると、床上160cm地点ではエアコンの設定温度より1℃ほど低かったためだ。もしかすると、エアコンの設定温度はエアコン本体と同じ高さの室温を計測しているのでは? ということで2点で計測してみた。

 さすがに外気を34℃として室温をマイナス6℃の28℃にしようとすると、なかなか10Wの超パワーセーブ運転にはならないようだ。グリーンの電力のラインをみれば分かるとおり、70~155分あたりでは45W、165分以降は65Wで運転を続けていた。とはいえ、その消費電力は部屋のシーリングライトを1段絞った程度のものなので、かなり省エネと言えるだろう。

 実験1では60分間も下がらなかった室温だが、実験2では15分も運転するとほぼ設定温度になっている。また湿度は運転開始直後からみるみる下がっている。買い物で家を空けて、帰ってきたときの蒸し暑い部屋を冷房したシーンにほぼ近いグラフになっているはずだ。

 さらに1と2の実験から察すると、自動運転の場合は湿度を50%程度に保つようになっていると思われる。これなら飛行機のエアコンのように、空気がカラカラで肌が突っ張るということもなさそうだ。

 もう1点2つの実験から分かるのは、エアコンの設定温度は、エアコンと同じ高さの温度を基準にしているらしいという点。したがって立って状態で頭の部分で感じる温度は、設定温度より1℃程度低いということ。つまり「エアコンの設定温度は28℃にする」というスローガン通りにしておけば、実際の室温は27℃以下になっているハズだ。冷気は部屋の下に貯まるので、ソファーなどに座っていれば、さらに温度は低くなるはず。

 これらの実験で分かったことは、エアコンの設定温度を28℃とした場合、ツーバイフォー住宅や高気密・高断熱住宅でUDRシリーズを使うと、7月一杯はほぼ10Wの超省エネルギー運転で冷を取れるということだ。外気が34℃を越えるような猛暑になる8月中旬は、さすがに10W運転は厳しそうだが、部屋のシーリングライトの半分程度の電力で快適な生活ができるだろう。

 さて次回の最終回は、除湿性能と暖房性能(実験できるかな?)、その他の便利な機能についてレポートする予定だ。



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2010年6月7日 00:00