長期レビュー
ダイキン「うるるとさらら Rシリーズ AN40LRS-W」 最終回
ダイキン「うるるとさらら Rシリーズ AN40LRS-W」 |
前回はAN40LRS-Wの加湿機能を中心にレポートしたが、今回はAN40LRS-Wのもう一つの大きな特徴である4方気流についてお伝えしたい。
機種選びや設置工事をレポートした第1回はこちらから、加湿機能を中心にレポートした第2回はこちらから。
ダイキン独自の4方気流について話す前に、最近の高機能エアコンには必ずといっていいほど搭載されている気流制御について少し説明しよう。気流制御は簡単に言うと、風の向きや流れをコントロールすることだ。暖房使用時であれば、足下に暖気を、冷房使用時であれば天井付近に冷気を流し込む。こうすることでより効率的に室内の環境を整えることができる。
さらに、最新のエアコンでは、気流制御にセンサーを組み合わせてより省エネ性を高めるという機能が搭載されている。
たとえば、夏に紹介したエアコン、三菱電機の「霧ヶ峰」では、人や物を感知するセンサーで風の向きを制御していた。また、パナソニックでも人の位置や活動量までをセンシングして最適な温度、最適な風の向きを計算し、制御している。
ダイキンのAN40LRS-Wでは、そのようなセンサーは搭載せずに風の向きをユーザーが自在にコントロールできる「四方向気流」をウリとしている。風の向きをコントロールするフラップを前面だけでなく、左右にもフラップにも取り付けて、上下左右の気流を自在にコントロールできるというものだ。
風が上下、左右の4方向から吹き出す「4方気流」を採用している(写真は製品発表会時に撮影したもの) | エアコンを部屋の隅に設置しているような場合、風を全方向に吹き出すのは効率が悪い | 本体のすぐ、左や右といったこれまでエアコン暖房では盲点となっていた場所も効率的に暖めることができる |
これだけを聞くと、センサーで自動的に感知してくれる機種の方が魅力的に感じるが、この制御の優れているところは、設置場所を考慮して風の向きをコントロールできるところにある。
たとえば、我が家のように左側はすぐ壁というような設置場所の場合、全方向に風を送るのは効率が悪い。そこで、リビング方向に向いている右側を中心に送風する。など状況に応じて、風の向きを変えられる。
エアコンの風向きはリモコンで簡単に設定できる | 全エリアに設定したとき | エアコンの左エリアを優先的に暖めたいとき |
そのために、AN40LRS-Wでは前面だけでなく左右にもフラップを設けているのだ。実はこれはエアコンとしては“世界初”の機能だという。
左右のフラップはもちろん、驚いたのが前面のフラップの動き。ホームページによると、この3つのフラップの組み合わせで12通りもの風向きを調節できるという。ファンヒーターや、電気ストーブの場合、暖めたい場所に本体を移動させて使ったりするが、AN40LRS-Wでは風向きの調節1つで12畳のリビングを全て、カバーしてしまう。
前面のフラップは、風向きや運転モードに合わせて色々な方向に動く | 横から見ると、今どの方向に風を送っているのかよくわかる | これは暖気を床方向から送っている状態 |
前面のフラップを調節しているのはベルトコンベアーのような部品だ | 風向きの設定に合わせて様々な動きをする |
前面の大型フラップと左右のフラップで全部で12通りの風の向きを調節できるという |
我が家の場合、普段過ごすことが多いテーブルコーナーやソファーはエアコンから見て右側にある。なんの設定もしない状態だと、当然エアコンの前スペースが優先的に暖まるわけだが、先に暖かさを感じたいのは右側のスペースだ。
風向きを調節することでエアコンの無駄な暖気運転をせずに、すぐに暖かさを感じることができるため、省エネにもつながる。
また、温風を壁や床に這わせるようにして、周囲から暖めるという使い方もできるので、エアコンの温風を身体に感じたくないと言う人にも嬉しい機能だ。ただ、その場合、暖かさを感じる速度は通常運転より遅くなる。
人や物の位置を自動的に感知するセンサーが搭載されていない弱点としては、まず省エネ性がやや劣ること、もう1つはユーザーが自分で風向きを設定しなければいけないということだ。ただ、ダイキンでは、室内環境を整えるために、センサーとは全く違うアプローチである湿度管理機能を搭載している。どちらが良いかというのは好みの問題となるが、エアコンを使った時の乾燥が気になる、必ず加湿器と併用しているという人にはAN40LRS-Wをオススメしたい。
■肌に最適な湿度を自動で保ってくれる美肌保湿暖房
さて、次にAN40LRS-Wに搭載されている運転コースを紹介しよう。
運転モード | 加湿運転 | 特徴 |
暖房 | なし | 14~30℃の間で温度を設定する |
加湿暖房 | あり | 14~30℃の温度、40~50%の湿度を設定する |
加湿 | あり | 加湿運転のみ |
快適エコ運転 | あり | 室内・室外温度に応じて自動で温度・湿度を選択。 通常運転に比べ年間約25%の省エネとなる |
美肌保湿暖房 | あり | 湿度を高めに保って、肌に優しい運転をする。 温度は調節可能 |
パワフル | なし | 風量最大で、素早く室内を暖める |
ロング | なし | 風の届く距離が通常より長くなる |
暖房快眠 | なし | 起床時間をあらかじめセットすると、3時間かけて設定温度を2℃下げて、 設定時刻の一時間前から設定温度を1℃上げるモード。 美肌暖房快眠では高湿度、 加湿暖房快眠では睡眠中の湿度を標準程度にそれぞれ保つ |
美肌暖房快眠 | あり | |
加湿暖房快眠 | あり |
詳しい機能や設定については上の表をご参照いただきたいが、この中でも私が特に使っているのは快適美肌コース。詳細、特徴うんぬんというより、ネーミングに惹かれ、購入後まず試したコースだ。このコースで気に入っているのは、高めの湿度設定はもちろん、温度が自分で設定できるという点。自動コースの場合、温度などは全て自動設定されることが多く、自分で調節できないものが多い。
それが最適な運転だと言われても、寒かったり、逆に暑さを感じることもあるため、コース運転の中で温度が調節できるというのは魅力だ。
センサー制御などで、全て自動運転するという機種が多い中、AN40LRS-Wでは比較的自分の好みに合わせて設定できる項目が多い。その意味で言うと、自分の好みを細かく設定したいという人向きかもしれない。逆に、設定したり変更したりするのはめんどくさい、という人のはやはりセンサーが搭載されているタイプのエアコンが向くだろう。
運転モードはリモコンの詳細設定で変更する | 快適美肌コースを選択 |
美肌快適コースを設定するまえの室内温度 | 1時間後の室内温度 | 湿度はしっかり50%が保たれている |
なお、上の表では暖房の運転モードだけを紹介しているが、冷房の運転モードも各種揃えている。中でも気になるのは冷房快眠モードだ。暖房でも備えているが、首都圏近郊地域ではそれほど寒さが厳しくないため、睡眠中に暖房器具を付けるというのは一般的ではない。ただ、夏にエアコンを付けないと寝られないという人は多い。今回は試すことができなかったが、来年の夏に期待している。
■お手入れは10年不要
お手入れについては、特に説明することがない――といっていいほど、簡単。一昔前まで1カ月に1回はしなければならなかったフィルター掃除は全て自動で行なわれ、基本的にはお手入れ不要。フィルターはいずれも、10年間交換不要となっている。掃除の必要性があるのは、フィルターの自動掃除の際に、集められたホコリがたまるダストボックスだけだ。
といっても、掃除の必要性がある時にリモコンに「ダストボックスおそうじ」と表示されるので、日常生活を送っている中でエアコンのお手入れを気にする全くない。
フィルター自動掃除設定は、初期設定で入りとなっているため、個人でなにか設定する必要はない。特に汚れが気になる時には、リモコン操作で、フィルター掃除運転をすることもできる | 一昔前の機種では1カ月に1回はしなければならなかったフィルター掃除だが、最新モデルの高級タイプではほとんど自動掃除機能が搭載されており基本的には何もする必要がない |
■湿度が気になるなら絶対コレ!
この製品の魅力はなんといっても加湿運転だ。
風邪を引きやすい、肌が乾燥しやすい体質ということもあって、例年ならリビングと寝室にそれぞれ設置している加湿器だが、リビング用のものはまだ一度も出番がない。
これまでずっと加湿器を使ってきたこともあって、乾燥には敏感なほうだと自負しているが、今のところ、必要性を感じないのだ。購入当初から、加湿を目的の一つとしていたが、ここまで活躍してくれるとは思っていなかった。
冷暖房の基本機能にくわえて、加湿機能もここまで充実しているなんて、エアコンのイメージがガラリと変わった。エアコンは年間通して使えるまさに最強の複合機かもしれない。
製品の購入を検討している人は、店頭に行く前に、是非一度メーカーのホームページをご覧になることをオススメしたい。消費電力や、サイズなど基本的なスペックだけでは見えない、エアコンの魅力が詰まっている。そこから何を重要視するのか、決めると良さそうだ。
その中でも、この「うるるとさらら」は、加湿機能を搭載している唯一のエアコン。部屋の湿度が気になるという人には、迷わずオススメだ。
2009年12月24日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)