長期レビュー

パナソニック「スチームIHジャー炊飯器 SR-SJ101」 最終回

~裏モードを駆使した使いこなし術から玄米や寿司メシまでの応用編
by 藤山 哲人

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



 3回にわたってお伝えしてきたレポートも今回で最終回となる。第2回では、炊飯メニューと蒸し料理の性能、そして炊飯中の蒸気について紹介したが、今回は、洗いやすさと保温性能を中心にお届けしよう。

 ちなみに連載の1回目はこちらから、2回目はこちらからご覧いただきたい。

非圧力方式なので部品点数は少ないが洗いにくい場所もあり

 お米を炊くたびに洗わなければならない部品は3つ。1つめは内釜だが、これはどの炊飯器でも変わらないだろう。2つめはフタだ加熱版。こちらも普通の炊飯器と変わらない。非圧力方式なので構造は単純で、突起物も少なく手間取ることもないだろう。着脱のボタン1つで簡単に取り外し可能だ。

もちろん内釜は毎回洗う必要があるロックを解除するとフタが簡単に外せる凹凸も少なく洗うのに苦労することはない

 3つめは、フタの内部にある「うまみキャッチャー」と呼ばれる部品。これは、炊飯中にフタまで上がってきた「おねば」を蒸気と甘みの液体に分離して、蒸気のみを外部に排出、おねばは内釜内部に還元させるという部品だ。

 取り外し方には、ちょっとコツが必要だが覚えてしまえば、簡単に着脱できるだろう。問題は、内部が複雑な形状をしていてかつ、管状になっているためスポンジでは洗いづらいことだ。マニュアルによれば、水で振り洗いすればよいと書かれているが、甘みキャッチャーの中にたまった糊状のおねばが乾燥してしまった場合は、お湯などにつけてふやかしてから洗う必要がある。

フタを外すと見えるうまみキャッチャー角度をつけて引き抜くので、コツさえ分かれば簡単だ甘みキャッチャーはこのような部品で、複雑かつ管状になっているので中まで洗うのは大変

 梅雨時などは、カビも発生しやすいので食事が終わったら、甘みキャッチャーだけは当日中に洗って乾燥させておきたい。

 いっぽう排気口や吸気口は、毎回洗う必要はないということだ。とはいえ、炊飯中は常時ファンが回るので、コンロのそばにおいてあると、揚げ物などで油汚れがついてしまうと、それが接着剤となりホコリがたまってしまう恐れがある。できるだけ、コンロから遠い場所に置くのが望ましいだろう。

 吸気口が汚れた場合は、食器洗い洗剤などをつけた歯ブラシなどで軽く裏と表を洗い流すだけでいい。しかし排気口は、箱型になっておりそれ以上分解することができないので、歯ブラシを奥に差し込んで洗う必要がある。油を吸い込んでしまった場合などは、付けおき洗いが必要になりそうだ。

吸気口はフィルターを外して洗うだけでOK排気口は、これ以上分解できないので中まで洗う場合は、歯ブラシなどで掃除するメニューにある「お手入れ」モード。これで内釜の臭いやうまみキャッチャーの汚れをふやかして洗浄できる

 パナソニックらしい気配りは、お釜などに臭いが移ってしまった場合や、加熱フタの汚れが落としにくい場合の、洗浄メニューがある点。内釜に水をそそぎ、メニューから「お手入れ」を選ぶと、60分で洗浄してくれるという機能がある。場合によっては完全に臭いや汚れが取れない場合もあるが、レモン1個を輪切りにして入れておくと効果的ということだ。

上部と側面は凹凸が少ないので、フキンでサッとひと拭きすればOKごはん粒が付きやすい、内釜の回りはステンレス製なのでお手入れが簡単

 また炊飯器本体は、凹凸の少ないデザインなので汚れもサッとフキンできれいにできる。特に内釜の周りは、汚れが付きにくく、落としやすいステンレス製になっており、ご飯粒などが付いてしまってもサッとふき取れる点がうれしい。

 総合的に見ると、油の周りで利用しないように心がけ、炊飯したら甘みキャッチャーだけは早めに洗うということを心がければ、メンテナンス性に問題はないといえるだろう。

保温に加え再加熱でホカホカご飯も楽しめる

 炊飯が終わると自動的に保温モードに切り替わるが、ご飯がパサ付かないようにスチームを還元するスチーム保温が採用されている。規定の保温温度は60℃だが、高温多湿の季節や地域では、後述するモード切り替えで74℃まで上げられる。

 なおスチーム保温は、炊飯中にも使うポンプを利用し、スチームを循環させるため、音がしない静かな部屋だと10分おきに「コトコトコト」という音がする。テレビをつけているとまったく気にならないが、静かだと「アレ? なんの音だろう」とあたりを見回すことになるだろう。

炊き上がりから8時間スチーム保温にしておいた8時間経過したご飯だが見た目は、炊き上がりと遜色ない味も炊き上がりとほどんど変わらずおいしく食べられる

 実験では、8時間経過したご飯を食べてみたが、見た目も味の遜色もほとんど感じなかった。

8時間経過したご飯粒炊きたてのご飯粒。頭に少し胚芽が付いているのは無視してほしい

 さらに熱々のご飯が食べたいという場合は、保温中にもう一度保温ボタンを押すと、5~7分で再加熱されホカホカのご飯が食べられる点も嬉しい。

口のなかでほぐれるアノすし屋さんのご飯を再現!

 以前に銀シャリのしゃっきりモードでご飯を炊けば、すし用の酢飯にもなると書いたが、この炊飯器には「すし」モードが搭載されている。どんなご飯が炊き上がるのか非常に気になったので実験してみた。

すしモードで炊いたご飯をすし桶に移す市販のすし酢を加えて熱いうちによくかき混ぜる最後にうちわで扇いで荒熱を取る

 炊き上がりは、銀シャリのしゃっきりより、しゃっきりしたご飯で、そのまま食べるとかなり硬いなという印象だ。しかし、すし桶にご飯を移し、すし酢をかけてやるとご飯がどんどんお酢を吸い込み、ふっくらしてくる。最後にうちわで荒熱を取ってやると、触感はまさにすし屋の酢飯。

 粘りがほとんどなく、かなりシッカリ握っても口の中でホロっっと崩れるシャリが簡単に作れる。今回はにぎりを作るプラスチック製の型を使ったが、型から外すとすぐにシャリが崩れてしまうほど粘りがなかった。

おもちゃの回転ずしにシャリを乗せて、好みの具材を乗せて食べるのが我が家の寿司スタイルだこうしてシャリだけ先に作っておくと、誰かひとりがシャリを作り続けて一緒に食べられないということがない

 色々試してみたところ、サランラップにご飯を置き、手でギュッ! と握るのがベストのようだ。また手巻きずしだとご飯がノリにくっ付いて、均一に広がらないのが常だが、すしモードで炊いたご飯は薄く均一に広がるので、巻物にもピッタリだ。

 酢飯はどうしても多く食べすぎになってしまう(家の場合5合は軽くなくなる)が、巻物で均一にご飯を広げられたり、シャリを小さくすることで4合で足りるという快挙を成し遂げた。

パナソニックらしい細かい設定ができる裏モードと音声ガイド

 たとえば先に紹介した保温中のポンプの音。ガサツな筆者は、家族の指摘を受けるまでまったく気づかなかったが、気になる場合は裏モードで音を消すことが可能だ。

炊飯中のファンの音を静かにするには、回転数をHIからLOに切り替える。これでLOに切り替え完了

 裏モードで細かな機能設定ができるのは、次の6点。


保温中に内釜やフタに露が多くつく場合設定で露つきを少なくできる
ご飯の保温温度を上げる通常は60℃の設定だが、パサつきや臭いを見ながら72℃、74℃、76℃に切り替えが可能
おこげの状態を変えるお米の品種によっておこげができやすいものと、そうでないものがあるので、ヒーターの強さを強弱で設定できる
お米の性質や状態で好みの状態に炊き分けできないとき銀シャリや無洗米、少量メニューは使えなくなるが、エコ炊飯の白米モードで上手に炊けるように設定が可能
保温中のポンプ音が気になる場合スチーム保温を解除して通常の保温に切り替え、音を消すことが可能
ファンの音が気になる場合炊飯中のファンの音が気になる場合は、回転速度を2段階で切り替えられる。ただし弱くすると排出される蒸気の温度が上がる

 またボタンを押すごとに、音声で次の操作をガイドしてくれる機能は、子供やお年寄り、普段ごはんを炊かないお父さんに便利な機能だ。

「お米の種類を三角ボタンで指定してください」とガイダンスが流れる聞き逃してしまったらもう一度「音声」ボタンを押すと聞き直せる
「炊き方を三角ボタンで指定してください」とガイダンス指定を終えると「炊飯ボタンを押してください」という音声。手際よくスイッチを押している場合は、音声ガイダンスは行なわれないようになっている。

ヘルシーな玄米を炊いてみた

 パナソニックの炊飯器で最後に実験したのは玄米の炊飯だ。玄米とは精米する前のお米のことで、稲の皮を取っただけの状態なので茶色い米粒となっている。いわば白米に皮がかぶった状態だ。

 白米は茶色い部分を削り取った状態だが、最近のヘルシーブームで玄米の皮にこそビタミンなどが豊富に含まれており健康的というのだ。ただし皮をかぶった状態なので、白米に比べ水も吸いにくく、少しクセがあるのが特徴。今回は、あきたこまちの玄米を炊いてみた。

 少し困ったのは、玄米の袋には「炊き方は炊飯器のマニュアルを参照」としてあり、炊飯器のマニュアルには「玄米の袋の説明を参照」となっており、何を参照していいのか分からなかった点。

 そこで今回は、炊飯器のレシピとして掲載されていた、玄米ひじきご飯のレシピを元に、ひじきを抜いて100%玄米を炊いてみた。

 お米の研ぎ方は、白米と同じ。何回か水を変えてお米を研いでやる。お米の包装には、一晩付けおきしておくと書かれていたが、炊飯器を使う場合は、そのまま炊飯器にセット。玄米モードで炊飯した。

 炊き上がりまでの時間はマニュアルどおりの130分。まあ一晩浸して置かなくてもいいということを考えれば、かなり早いと言えるが、19時に夕食を食べようとなると17時から炊飯する必要があるので、予約炊飯をお勧めしたい。

今回使ったのは、あきたこまちの玄米ご飯粒は薄茶色で、魚卵のようにプチ!とはじける触感と甘さが楽しめる

 かまどで炊いたご飯のように、かに穴までできていた。食べてみると、これが甘い! 露地栽培のとうもろこしなみに甘いのだ。

 家の家族は、香菜(パクチー)などの強い香辛料でもイケるくらいなので、臭いはさほど気にならなかったが、人によっては糠臭さが気になるかもしれない。

この日の晩ごはんは、豚の味噌漬け焼きと玄米ご飯。いつもは4合を食べきるのだが、玄米ご飯だと白米に比べ噛み応えがあるため3合でおなか一杯に

 玄米ご飯は非常に甘いので、おかずにはしょっぱい系が合いそうだ。このときは、豚の味噌漬け焼きをおかずにしたが、ベストマッチの組み合わせだった。

 なお食感は、外側の糠がプチ! っとはじけて白米の甘さがにじみ出る感じで、お米のアルデンテといった感じだ。そのため自然に咀嚼回数が増え、あまりご飯を食べていないのにおなか一杯になるのが特徴的だ。いつも炊くお米より1合少ないぐらいがちょうどいい分量ぐらいだろう。

 さて3回に渡りレビューしてきたパナソニックの炊飯器も、今回が最終回。次回の掲載はちょっと時間をおいて、三洋電機の「おどり炊き」をレビューする予定だ。




2009年11月16日 00:00