長期レビュー

日立「圧力スチーム 極上炊き 蒸気リサイクル RZ-JV100K」その1

~素早くふっくらもっちり、圧力炊飯器のなせる技
by 藤山 哲人

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



日立「圧力スチーム 極上炊き 蒸気リサイクル RZ-JV100K」

 先週は最近の炊飯器のトレンド、をまとめてお伝えしたが、今回からいよいよ炊飯器の実機レポートをお伝えしたい。トップバッターは日立の「圧力スチーム 極上炊き 蒸気リサイクル IHジャー炊飯器 RZ-JV100K」だ。2009年秋において、日立の炊飯器の最上位機種に位置づけられている。

 現在のところ、蒸気レスで圧力式というのは、日立の独壇場だがおいしいご飯が炊けるのかをいろいろ実験してみたい。おそらく誰もが疑問に思う「高級機で高級米を炊いたらおいしくなるのは分かるが、高級機で激安米を炊いてもおいしくなるのか?」といったひねくれた疑問にもお答えしよう!


メーカー日立
製品名圧力スチーム 極上炊き 蒸気リサイクル
型番RZ-JV100K
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格59,330円


圧力式の象徴は内釜のフタに隠された鉄球

 圧力式の炊飯器でもっとも特徴的なのは、その炊飯時間だ。非圧力方式だと、炊き上がりまで60~50分かかるところだが、この炊飯器は40~50分。食べ盛りの子供がいるファミリーにとって、その10分は、兄弟ケンカが始まるか否かを大きく左右するだろう。

日立の炊飯器は、「極上の硬め」モードで40分。お腹を空かせている子供ならアニメでも見せておけば、何とかしのげる時間だ筆者宅の10年ものの炊飯器は、「極うま」モードで70分。70分も待たせれば、絶対兄弟げんかが始まる

 まず感じたのは、フタのを閉めるときの重さだ。非圧力式のフタと違って、閉めるときには軽く押し込んでやる必要がある。その際に内釜の空気がプシューと圧縮されている音がするので、圧力方式なのを強く感じるだろう。またフタのしまるときの音が「シュー! ガッタン」と低い音で、まるで高級自動車のドアの音のようだ(高級車はドアの音も高級感がでるように設計されている)。

 なにより圧力釜を象徴するのは、フタの裏に隠されているピンボール並の大きさの鉄球。これが蒸気バルブとなって、炊飯中に1.3気圧がかかり、107℃の熱湯で炊飯が可能になっている。炊飯中は圧力を調整しているようで、時折この鉄球のバルブを開閉する「ゴットン」という音がする。

上ブタを分解すると、このようになっている直径2cmほどの鉄球が入っていて、これが内釜に圧力ををかける。後ろにあるのは、安全用のバルブのようだ

 カタログによれば、圧力をかけ高温で炊飯することにより、ご飯の芯まで炊き上げ、甘みが従来機の25%アップしているという。


「蒸気リサイクル方式」は蒸気レスを実現!

 この炊飯器の特徴の1つは、ほとんど蒸気が出ないことだ。炊飯器の様子を一部始終でも見ていなければ、おそらく蒸気がでていることにも気づかないだろう。

炊き上がりまで残り7分で、透明なケースには一切水滴が付いていない左の写真では、お米が入っていないように見えてしまうので、炊き上がり後にフタを開いてみた。これだけの蒸気が密封されているわけだ

 写真は、おいしさ重視の炊飯モードで炊いたときの写真だが、炊き上がっても透明のケースに一切水滴は付いていない。何も入ってないんじゃないか? とフタを開けてみると、ご覧の通り蒸気がモクモクと……

 ただ完全に蒸気が出ないというわけではなく、炊飯中ずーっと見ていれば、次の写真のように少し蒸気が出るときがある。とはいえ、数分も経つと自然に乾燥し、家具に露が付くことはない。ちょうどメガネを拭くのにハァーと息を吹きかけるあんな感じで、水滴は消えていく。

 筆者が普段使っている従来型の炊飯器の水蒸気も調べてみると……うはっ!豪快っ!

筆者が普段使っている炊飯器の場合。炊き上がり11分前でご覧の通りの豪快な湯気炊き上がりには、湯気は水滴になってしまっている。普通の炊飯器なら、たいていこんな具合だろう

 RZ-JV100Kの場合、最高に蒸気が出る瞬間でも次の通りだ。

最高に蒸気が出た瞬間を狙ったもの。炊飯器をずーっと見張ってないと、この湯気を見ることはできない写真は炊飯中に付着した蒸気だが、炊き上がるころには、蒸発して乾いてしまっている。古い炊飯器に比べ粒子が細かいのがわかる

 また炊飯モードを1合を15分で炊けるという快速モードにすると、従来機なみにモクモクと蒸気を出るが、通常使うモードではほぼ蒸気レスといっていいだろう。

 他メーカーの蒸気レス炊飯器は、水タンクを持っていて、そこに蒸気を通すことで再び水として回収する方法を取っているが、この炊飯器では、フタについている大型の排気ユニットの中で自然冷却し、それを上ブタ内にある水貯めに一時的に貯めている。

大型の排気ユニット内には蒸気の通路が作られており、ここで冷やされ水に還元される還元された水は、先の鉄球の付いたフタの内側にある「オートスチーマ」という部分に一時的に貯めている

 オートスチーマに回収された水は、蒸らしの段階で高温スチームとして再利用される他、保温時にご飯がパサつかないように、この水を利用してごはんにうるおいを与える場合にも利用されるのだ。


普通モードで炊飯してみた

 工場出荷時の状態である、省エネを重視した炊飯モードで、何種類かのご飯を炊いてみた。使ったのは、高級米として名高い新潟産のコシヒカリ、そして普段食べている安い米(笑)、お米を研ぐ必要のない無洗米の3種類だ。

5kgで3,500円もするコシヒカリ! 食べ盛りの小中学生が3人もいるウチでは、こんな米は食べられない!5kgで2,000円の無洗米、山形産のはえぬき。無洗米としては、中級レベルだろう我が家の味方! 5kgで1,680円の安い米

 炊飯にかかった時間は、いずれも30分前後だ。普通モードで炊飯ボタンを押すと、しばらくはIHのファンも回らず静かに炊飯が始まる。おそらく、この時間帯で浸し工程を行なっているものと思われる。10分もするとIHのファンが回り始め加熱開始。蒸気がさほど出ることもなく、おいしいご飯が炊けた。

ふっくらおいしそうなコシヒカリが炊けたお米の形もしっかりしている

 味は確かに甘いような気もするが、普段食べていない高級米だけに米自体がおいしかったのかもしれない。一方食感は、モチモチ系でふっくら。わずかに硬めの炊き具合となった。

 普段食べている庶民向けのお米は、従来型の炊飯器で炊いた時よりも確かに甘みが倍増しているように感じる。食感もモチモチの仕上がりになったのだが、唯一違ったのがお米のやわらかさ。どうやら庶民のお米は、割れ米が多く混ざっているようで、これが原因でやわらかくなったようだ。

 無洗米の場合は、少しだけ工程が違う。通常の炊飯器のように、軽量カップが添付されているのだが、この炊飯器には無洗米用のカップと、通常のカップの2つが添付されている。

左の白いカップが普通のお米用。右の緑が無洗米用の軽量カップカップの底を見てみると、通常のカップが1カップ180ccなのに対し、緑の無洗米用は1カップが170cc

 この2つの違いはカップの容量だ。無洗米のカップの方がわずかに少なくなっていて、炊飯も無洗米モードで行なう必要がある。その他の手順はまったく同じだ。

 炊き上がったご飯は、若干やわらかめといった感じだが、ふっくらモチモチ感は、通常のお米とまったく変わりない。

 消費電力は、気温や水温、炊いた合数などに大きく左右されるが、4合を炊いて0.17kWhとなった。電気代に換算すると、だいたい3.7円という計算になる。


極上モードで炊いたお米は極上品!?

 今度は同じ3種類のお米を使って、ある意味、省エネ無視でおいしさ重視の「極上」モードで炊飯してみた。この極上モードは、ご飯の硬さを、やわらかめ、普通、硬めで選べるようになっている。

 高級米を極上モードで炊飯すると、それはもうおいしいに決まっている。普通モードで炊飯したときとの違いは、モチモチ感だろう。極上モードで炊飯すると、いずれのモードでも普通モードよりモチモチ感がアップする。

 カタログによれば、極上モードでは浸し工程で、内釜の温度を60℃にすることで、よりお米に水分を吸収させるという。どうやらこれがモチモチ感の秘密らしい。

 安い庶民のお米の場合でも、おいしさがアップしているように感じる。普通モードでは若干やわらかめだったお米も、極上モードなら硬い、普通、やわらかいと炊き方を指定できるため、どんなお米でも好みの硬さに炊きワケが可能だ。もちろん水分を調整する必要はない。

炊き上がったお米の粒を見てみると、普通モードよりふっくらしている「極上」モードには、「極上」が点滅する「極上 普通の硬さ」、「極上」と「硬」が点滅する「極上 硬め」、「極上」と「軟」が点滅する「極上 やわらかめ」がある

 一方無洗米の場合もモチモチ感がアップするだけでなく、炊き上がりの硬さをスイッチ1つで調整できるため、普通モードより使い勝手がかなり上と言えるだろう。

 なお4合を炊いたときの消費電力は、硬めで炊飯すると炊飯時間が短いので、普通モードより省電力の0.14kWh(電気料換算でおよそ3.1円)。普通の硬さで0.19kWh(電気料金換算でおよそ4.2円)となった。極上やわらかめは、さらに炊飯時間が長くなるので、もう少し消費電力が多いと思われる。

 普通モードで炊いたときの電気代が3.7円だと考えれば、水の量を調整する必要もなく、しかもおいしく炊ける「極上」モードでの炊飯がお勧めだ。


古い従来機と炊き上がりを比べてみると……

 古い従来機で炊いたお米を今まで拡大して見たことがなかったので、あわせて撮影してみた。

 まず炊き上がりの内釜の中は、こんな感じだ。

日立の炊飯器は、ごはんがしっとりでムラがない従来型の古い炊飯器は、ご飯がつやつやに見えるが、実はコレ水分のテカリなのだ

 右の従来機の写真は、ご飯が光っておいしそうに見えるが、これは水分のテカリ。詳しくは分からないが、水分のムラと思われる。次にお米を拡大してみると、その違いは歴然とする!

日立の普通モード。お米の形がシッカリ!日立の極上モード。お米の形はシッカリかつふっくら!オンボロの従来機。米の形が違うし、水っぽい!というが食べても水っぽい

 炊飯器は10年も経ったら買い替え時ということを思い知らされた。さて次回は、内釜や煮込み料理までできる豊富な炊飯・調理モード、そして超便利な「少量炊き」モードをご紹介しよう。




2009年10月13日 00:00