カデーニャ

位置情報取得の要「GPS」の精度を高めるための開発者の苦悩

 GPS(じーぴーえす)とは、「Global Positioning System」の略で、衛星を使って現在位置を把握する位置測位システムの名称。カーナビやスマートフォンの地図アプリなどで活用されている。

 衛星を利用した位置測位システムそのものの名前として認知されることも多いが、GPSは元々アメリカ合衆国が軍事用のシステムとして開発したもので、現在も運用はアメリカが行っており、衛星を利用した位置測位システムとしては欧州の「ガリレオ」、ロシアの「GLONASS」も存在している。

 また、日本でも「みちびき(準天頂衛星システム)」という衛星測位システムのプロジェクトを進めており、GPSと組み合わせることでより高精度な測位が可能になるとしている。みちびきの詳細については内閣府のWebサイトに詳しい。

 みちびきとは|みちびきについて|みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト – 内閣府

 これら衛星を利用した測位システムの総称は「GNSS(Global Navigation Satellite System)」である。前述の通り、衛星測位システムそのものがGPSとして呼ばれることも多いが、これは家庭用ゲーム機すべてを「ファミコン」と呼ぶのに等しい。

 GPS衛星が発している電波を受信するため、測位するには空が見える必要があるだけでなく、周囲に高い建物があるといった立地条件、雨が降っているなどの天候条件によって精度が左右される。また、高い精度を求めるためには、より多くの衛星情報を取得する必要もある。

 精度以外に取得までの時間もGPSの大きな課題。位置情報を取得するための衛星の軌道情報をまったく取得していない状態のGPSは「コールドスタート」と呼ばれ、位置情報の取得まで30秒から数分程度がかかる。これに対し、軌道情報を取得済みの状態は「ホットスタート」と呼ばれ、数秒程度で位置情報の取得が完了する。そのため、パッケージを開けてすぐに製品を使うという場合には、最初の数分間は位置情報が正しく取得できない。

 一方、スマートフォンではGPSに加えて、携帯電話回線を利用して測位に必要な衛星の軌道情報などをダウンロードする「A-GPS」という仕組みが提供されており、測位時間を短縮できる点が大きな違い。GPS搭載機器を開発する場合はどうしてもスマートフォンと比較されてしまうが、前述の通りGPSは仕様上コールドスタートを避けることができないため、スマートフォンほど短い取得時間を実現することが難しい。

 それ以外にも、GPSアンテナが指向性を持っている場合、アンテナの取り付け位置によっては精度が下がる場合もある。また、電子機器の電源が発するノイズが測位精度に影響することもあり、精度を高めるための設計も考慮する必要があるなど、単にGPSを搭載しただけで正しい位置を取得できるわけでは無い、というのがハードウェア開発の難しさだ。

 なお、GPSで取得できるのはあくまで位置を測位した座標データであり、取得したデータを地図上で表示するには地図データを端末側で用意する必要があるため、GPSだけで位置情報を取得できるわけではない。Cerevoの自転車向けデバイス「RIDE-1」は走行ルートを本体のみで記録できるが、これも座標データのみを本体で蓄積し、Webサイトまたはスマートフォンアプリと接続した際に地図データ上へ座標を表示することで走行ルートを確認できる仕組みになっている。

 また、GPSを搭載したフルHDカメラ「REC-1」は、さまざまなスポーツシーンでの利用を想定しており、車で利用する場合はサイドボディに取り付ける可能性もあるため、開発中にはロッカーのドアを車に見立てて、サイドボディでの精度実験を簡易的に実施する、という工夫も行なっている。

この記事は、2017年11月14日に「カデーニャ」で公開され、家電Watchへ移管されたものです。

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