【IFA 2012】
パナソニック 開発センターチームリーダーに聞く「フリースタイルIH」の魅力

~鍋の噴きこぼれを事前に予知する機能も

 IFA 2012のパナソニックのブースで特に注目を集めていたのは、45個の小さなコイルを天板部に細かく搭載した「フリースタイルIH」だ。1つ1つのコイルにセンサーを搭載し、自由な場所で調理できる点が最大の特徴で、対応ミキサーやフードプロセッサーへの給電機能も持つ。

 製品の概要については、弊誌でも既にご紹介済みだが、ここでは同製品のさらなる細かい特徴について、パナソニック アプライアンス社 技術本部 ホームアプライアンス開発センター チームリーダーの石丸直昭氏に伺った。

45個の小さなコイルを天板部に細かく搭載した「フリースタイルIH」。IFA2012のパナソニックブースに出展されたコンセプトモデルパナソニック アプライアンス社 技術本部 ホームアプライアンス開発センター  チームリーダーの石丸直昭氏

 フリースタイルIHは、コンセプトモデルとして出展された製品だが、IFAに出展するために「ヨーロッパで喜んでもらえるIHクッキングヒーター」を意識したという。

 「ヨーロッパは日本に比べ、IHクッキングヒーターの普及率が圧倒的に高い。IFAのほかのブースを見てもらえばすぐに分かるが、各社デザインや機能に工夫を凝らしたものが並ぶ。ある種成熟した市場の中で、日本のメーカーであるパナソニックの製品にどうにか注目してもらいたいという想いがあった」と石丸氏は語る。

 フリースタイルIHでは、特徴的な4つの機能を搭載する。まずはコイルにIRセンサー(赤外線センサー)を搭載したことで、鍋を置いた場所が青く光り、鍋を移動させてもそのライトがすぐに反応すること。この機能について石丸氏は、「青いLEDライトがすぐに反応するので、今どこが加熱されているのか、一目で確認できる」と安全性に配慮したものであることを明かす。

鍋を置いた所を検知し、加熱中は青いLEDライトが光る鍋を移動させるとLEDライトも移動する複数の鍋を置いたところ

 次に、IHの加熱場所を移動させることで鍋に中に対流を発生させ、かき混ぜ効果を得られる点。この際も加熱している場所が青く光るため、見た目でもかき混ぜているのが確認できる。

 3つ目は、温度調節が非常に正確にできる点。会場で行われていたデモンストレーションでは、フリースタイルIHの上に鉄板を置き、その半分でお肉を焼き、もう半分は熱くなっていないという実演を実施。「加熱する必要のない場所の温度を下げることで省エネにもつながる」(石丸氏)という。

フリースタイルIHの上に鉄板を置いて、デモンストレーションを行なった鉄板の温度はコイルごとに操作できる肉を置いたところだけを加熱している様子

 4つ目は「吹きこぼれ予知」機能。これは鍋のお湯が噴きこぼれる寸前に、加熱温度を下げて吹きこぼれを防ぐというもの。「吹きこぼれたら加熱をストップするという製品は既にあるが、予知機能はさらに一歩先をいったもの。鍋底の温度を正確に検知することで中のお湯の温度を測定する。吹きこぼれの温度はお湯の粘度によっても異なるもので、例えばヨーロッパの硬水と日本の軟水でも違うし、何を茹でているかでも変わってくる。日本のそばやうどんのように、粉が落ちてお湯の粘度が高くなるものに関しては専用ボタンを設けるなどのカスタムが必要になるだろう」(石丸氏)

パスタなどの麺類を茹でている時に気になる吹きこぼれ。泡が鍋の縁まで上がってきているお湯の温度を検知することで、吹きこぼれる前にお湯の温度を下げる本体操作は全てタッチパネルで行なう

 さらに会場でも注目を集めていたジューサーやフードプロセッサーに給電できる機能については「小型の調理家電をコードレスで使えるというのが最大の利点。多くの家庭ではIHクッキングヒーターの奥のスペースに余裕がある。ここにコードレスタイプの調理家電を置けば、利便性が格段にアップする」と語った。

 また給電機能については、同じくコンセプトモデルとして出展されていたパーソナル向けIHクッキングヒーターにも搭載。同製品はパーソナルユースを目的とした1口タイプのコンパクトなクッキングヒーターで、フリースタイルIH同様に給電機能を備える。「個人の部屋やホテルでの使用を想定。小型調理家電はもちろん、加湿器や美容機器とも接続することで、さらに使用の幅が広がる」(石丸氏)

フリースタイルIHから給電するジューサー。鍋で加熱している横で使っているこちらはパーソナルユースのIHクッキングヒーター。給電機能も備える小型の調理家電をコードレスで使えるので、設置場所を選ばず、使用の幅が広がるとしている
今後の展開を示唆していた

 フリースタイルIHは、海外メディアからの注目度も高く「ほかのメーカーからの問い合わせも多かった」という。石丸氏は、「今回はあくまでコンセプトモデルだが、今回開発した技術を活かして今後面白いことができるかもしれない」と今後の展開を示唆した。






(阿部 夏子)

2012年9月10日 14:51