【第6回国際水素・燃料電池展】
新日本石油、2015年に家庭用燃料電池を50万円に




新日本石油が販売するエネファーム(写真は2009年の国際水素燃料電池展のもの)
 新日本石油の松浦幾敏 代表取締役 副社長執行役員は、家庭用燃料電池「エネファーム」について、2015年に価格を50万円へ抑えるすると、「FC EXPO 第6回 国際水素燃料電池展」の基調講演にて明らかにした。

 エネファームは、ガスや灯油などから取り出した水素を空気中の酸素と反応させることで発電する、燃料電池の技術を用いた家庭用の発電設備。導入価格は約300万円と高いが、発電効率が高く、CO2排出量も少ない点が特徴となる。2009年より補助金付きでの一般販売が全国で開始されており、新日本石油では、三洋電機との合弁会社「ENEOSセルテック」が製造した、ガスを燃料とするエネファームを販売している。

火力発電と燃料電池の比較。年長電池の方が、投入エネルギーに対するエネルギー効率が高い。また、CO2排出総量も比較的少なく済む新日本石油のエネファームはLPガスを使用する。「エネゴリ」くんのテレビコマーシャルでも有名

基調講演に登壇する、新日本石油 の松浦幾敏代表取締役 副社長執行役員
 松浦氏は基調講演にて、ENEOSセルテックの生産計画を披露。2009年度は1,400台、2015年は40,000台と増産してく方針だという。これにともなって、現在約300万円の価格を、2012年には120万円、2015年には50万円に引き下げる見込みだという。

 「これぐらいの生産台数にならないと、なかなかコストダウンは進まない。コストダウンが輸出可能なレベルまでくれば、さらなる量産化効果で、普及が進むと見ている」(松浦氏)

 普及の拡大に向けては、エネファームのコスト低減はもちろん、エネファームの性能のアップや、品質管理体制を強化するなど信頼性の向上なども重要と指摘。「さまざまな方法を総動員する必要がある」と、エネファーム普及の意欲を見せた。

 なお、エネファーム市場全体の普及台数は、2015年に75万台、2030年に“原子力発電所2基分”という累計250万台を、業界全体で目指しているという。

ENEOSセルテックによる、エネファームの生産計画。2015年には4万台、累計で15万台を生産するという量産化に伴って価格も抑えられ、2015年には50万円となる見込み
普及拡大には、コスト低減はもちろん、性能の向上や故障のしにくさなどの改良が必要になるという業界全体では、2030年に250万台の普及を見込む。これは、原子力発電所の約2基分に相当するという

SOFCの製品版は2011年度末に


国際水素燃料電池展にて公開された、新日本石油のSOFC
 また新日本石油では、現行のエネファームで採用されているPEFC(固体高分子形燃料電池)方式よりも、小型で発電効率の高い「SOFC(固体酸化物形燃料電池)」方式によるエネファームの実証実験を、NEDOの助成により行なっている。現在実験中のSOFCについて松浦氏は「順調に運転している」と評価し、「なんとか2011年度末には商品機を出していきたい」との意向を示した。

 SOFCは、発電効率が45%~55%と、PEFCの35%~45%よりも高い点が最大の特徴。また、PEFCのように触媒に使用している高価な白金が不要で、システムもコンパクト化できるというメリットもある。
現行のエネファームで採用されているPEFC方式と、SOFCの仕組みの違い。SOFCはPEFCと比べると、触媒に貴金属を使用しないため、改質装置が小型で済むというメリットもある新日本石油では、SOFCを一般住宅や社員寮に導入し、運転を実証している。2008年度の実証機は、いくつかトラブルはあったものの「順調に運転しており、ほぼ定格に近い」(松浦氏)という2008年度機よりも「大幅に性能を向上」(松浦氏)したという2009年度機の実証も行なっているという



(正藤 慶一)

2010年3月4日 18:20