【FC EXPOセミナー】
パナソニック、“燃料電池は2015年以降に本格普及。コストを半分に”

燃料電池事業化プロジェクトの清水俊克氏

 燃料電池関連のイベント「FC EXPOセミナー」が福岡県・小倉市で開催されている。セミナーには今年5月、初めて家庭向け燃料電池を発売したパナソニック 燃料電池事業化プロジェクトの清水俊克氏が登壇した。

 家庭用の燃料電池は都市ガスを燃料として、電気を発生させる装置。CO2も排出量が少なく、太陽電池と並び、クリーンエネルギーの中心を担う製品と期待されている。また、自宅の装置で発電するため、効率もよい。「火力発電所だと100発電したうち、送電ロスなどで37しか残らない。発電時の熱も利用できる。雨の日でも必要なエネルギーを供給できる安定したインフラ」(清水氏)。


火力発電に比べてはるかに効率がよい1999年の開発スタートから10年で商用化にこぎ着けた成果を焦らず、時間をかけて取り組む

 パナソニックは1999年に開発を開始し、政府のバックアップを受けながら実証実験を繰り返し、今年5月に初めて一般家庭向けの燃料電池を発売した。

 「パナソニックのビジョンである“環境立社”を目指すために重要な事業。今後の成長の柱」(清水氏)と位置づける燃料電池事業だが、一般への普及は2015年以降だという。現在の状況については、「性能、品質、耐久性は商用化の段階に至ったが、普及にはさらなるコストダウンが必要」(清水氏)と分析する。

 現在、販売されている燃料電池の価格は約120万円(工事費別)。補助金を利用してもまだ高額な印象は否めない。2015年にはその半額程度を目指す。コストダウンのカギは、「一企業だけでは難しい。産学の連携、国との連携、業界内での部品共通化などの連携、こうした連携に加え、独自技術を加えていくことが必要だろう」(清水氏)としている。

 また、鳩山首相が2020年までにCO2排出量の25%削減を世界に向けて発信した点についても触れながら、「CO2の大幅削減のために必要な技術。パナソニックにとって、燃料電池事業は開発投資が先行する段階。補助金や研究支援をお願いする」(清水氏)とも語り、政策レベルでのサポートが不可欠であることを訴えた。

性能面、耐久性など実用面はクリア。問題はコストだ2015年までに今の半分までコストダウンを狙うコストダウンのためには、政府のバックアップや産官学の連携が必須という

 クリーンエネルギーとしては、太陽電池も有望視されているが、同氏は燃料電池との違いについて、「天候が悪くても使える」ことと、「周辺産業を活性化できる」ことの2点を強調する。特に後者について、「太陽電池はパネルの素子が性能を決定する、いわば“素子産業”。燃料電池は1,000以上のパーツからなる技術とノウハウの集合体で、この点が決定的に異なる。国際競争力でも世界をリードできる」(清水氏)という。

 ただし、パナソニックは燃料電池のみにこだわってるわけではない。現在も手続きが進められている三洋電機の子会社化によって、パナソニックにない「太陽電池」というピースが手に入る。

 「最終的には、太陽電池、燃料電池、発電した電気を貯める蓄電池、この3つを組み合わせて“CO2ゼロ”の家を提案していきたい」(清水氏)とビジョンを語っている。

 最後に同氏は、「普及にはまだ時間がかかるが、情熱と信念を持って必ずやり遂げます」(清水氏)と関係者を前に力強く宣言し、講演を締めくくった。

燃料電池は1,000以上の部品からなる「すりあわせ」型のデバイスだとし、その点が太陽電池と異なるという2015年以降に本格普及を狙う最終的には、太陽電池、蓄電池と組み合わせ、“CO2ゼロ”の家を目指す




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2009年10月22日 15:28