やじうまミニレビュー

カメヤマ「節電球」

~電球の形をしたロウソクで節電を考える
by 伊達 浩二


やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです


デザインコンペから生まれた商品

カメヤマ「節電球」

 カメヤマローソクで有名なカメヤマが、この6月に発売した「節電球」は、一言で言えば“電球の形をしたロウソク”だ。

 この商品が、ちょっと変わっているのは、もともとは一般公募のデザインコンペの応募作から商品化されたことだ。まず、その来歴を紹介したい。

 この作品が当選したのは、昨年(2011年)10月に発表された「Tokyo Midtown Award 2011」という、東京六本木の東京ミッドタウンが主催したコンペだった。

 コンペのテーマは東京ミッドタウン5周年にちなんで「5」。審査員評でもわざわざ触れている方がいたぐらい、ベタなテーマだったが、シンプルなのが良かったのか、応募総数は1,161作品もあったという。

 そのコンペで、「東京ミッドタウン特別賞」に選ばれたのが、この節電球だ。作者は、浅木翔氏と長砂佐紀子氏。

 受賞のコメントは「節電球は、節電を呼びかけるための、5時間分のロウソクです。ロウソクを電球の形にすることで『電気の替わりにロウソクを』という意識を生み出します。また5時間という時間設定をすることで、節電時間を視覚的に感じることができます。小さな灯りが消えるまでの5時間。日本のことを想う素敵な時をお過ごしください」とあり、「5」は5時間の燃焼時間にかけてあったことがわかる。東日本大震災の影響で、強い節電活動を強いられていた昨年の東京にふさわしい応募作だ。

 そして節電球は、カメヤマの手により商品化され、今年6月30日から、東京ミッドタウン内の「Green DeLi」というショップで販売されている。今回は、カメヤマのcandle house直営通販ショップから通販で購入した。楽天市場やAmazon.co.jpのマーケットプレイスでも販売されている。


メーカーカメヤマ
製品名節電球
購入場所candle house直営通販ショップ
購入価格1,050円

電球型が丸ごとロウソク

 手元に届いた節電球のパッケージは、シンプルな茶色の箱で「節電球【setsu den kyu】」と書かれている。商品化にあたって、燃焼時間が24時間に伸びたので「24h」とも書かれている。コンペの募集テーマだった、「5」とは関係なくなってしまったが、実用性が上がったのは良いことだ。

 箱の側面には、「節電球は1日分のあかりを灯してくれるロウソクです。溶けていく節電球が、節電量を視覚的に教えてくれます。節電球を1つ使うことで、1日分の電気を節約できます」と書かれている。ロウソクを灯すことによって、電気の使い方を考えようというコンセプトは変わっていない。

シンプルなパッケージ側面にコンセプトが書かれている
背面には取扱説明がある。独立した取扱説明書はないので、良く読むことクッションにくるまれて節電球がゴロンと入っていた

 箱から出した節電球は、手の平に乗るぐらいの大きさだ。サイズは75×98mm(直径×高さ)とされている。

 節電球は、丸ごとロウソクの固まりだ。そこに1cmほどの芯が見えている。

 電球でいう口金の部分は、幅が約30mmあり、一般的な電球のE26口金よりも太い。また、電球の底部は安定のために平らになっているので、電球独特の丸っこさは薄い。これは燃焼中の安全性を考えてのことだろう。

パッケージの上部と、節電球側面に「24h」と書かれている本体の「24h」は彫り込み無垢のロウで電球を模している
この角度から見ると電球っぽい芯は1cmぐらいの長さ左はE26形の白熱電球。節電球は一回り大きい
側面から見ると大きさの違いがわかる左から、白熱電球、節電球、LED電球。LED電球は大型のタイプだが、それでも節電球の方が大きいパッケージだと、プロポーションの違いがよくわかる

大きめの炎で思いの外に明るい

 節電球の使い方は、芯に火をつけるだけだ。部屋の照明とパソコンやテレビを消す。ライターで着火すると、すぐにロウソクが点った。

 念のため、火をつける前に、周囲の環境に注意したい。裸火なので周りに燃えやすいものがないことや、エアコンの風などが直接当たらないことは確認しよう。

 また、ロウが垂れるので、「必ずガラス・陶器等、底の平らな不燃性の皿、容器をご使用ください」とある。手頃な皿がない人は、購入時に専用のガラスプレートとのセットも選べる。こちらは1,575円だ。今回は手持ちの白い皿を使用した。

節電球を使うときは必ず皿などを敷く着火直後しばらくすると炎が安定してくる
大きめの炎が思っていたよりも明るく周囲を照らす2畳ほどの玄関は、これ1つで照らせる

 節電球は、植物性ワックス(パーム)が配合されており、無臭とされている。実際に、吹き消した直後や、風で炎が揺らいだりしなければ、ロウソク特有の匂いはしない。

 炎は安定しており、比較的大きめだ。明るさも強めで、これ1つをテーブルの上に置いて、食卓を囲むぐらいはできる。部屋全体を照らすことはできないが、しばらくすると目が慣れるので、台所との行き来ぐらいは不自由しない。

 燃焼時間は24時間とされているが、連続で燃えるのは8時間とされている。

ちょっと忘れかけた節電を思い出すために

 昨年夏の東京の夜は、明かりが少なく暗かった。それに比べると、冬は以前の状態に戻り始め、今年の夏になると、節電を感じるのはエアコンの温度設定ぐらいになっていた。

 もちろん、照明器具のLED化を始めとして、見えないところで節電は進んでいるだけれど、ちょっと急ぎすぎのような気もした。

 街に以前の明るさが戻ったときにホッとしたのも本音だが、まったく以前の状態に戻ってしまうと、そんなに早く何もなかったかのように戻っていいのかとも思う。

 そういうこと、モヤモヤとした気持ちを考えるためにも、節電球で一晩過ごしてみるのは良いきっかけだ。

 機能のことだけ考えれば、普通のロウソクでも良いし、むしろ、防災用のカップ入りロウソクの方が風に強いので安全性は高いだろう。

 しかし、節電球は、電球の形をしていることで、このロウソクを灯すと言う行為が、電気を使うということの代わりだと意識できるのが、良い所なのだ。また、電源コードさえつながっていれば、いつまでも無限に使えるような気になりやすい電気というものが、実は燃えれば溶けるロウソクのように有限の存在なのだということも、暗示しているのだろう。

 ちょっとだけ「節電」を忘れかけているかもしれないと感じている人にお勧めしたい。





2012年 10月 22日   00:00