TAF DESIGN「仮装ポチ袋」

　お盆やお正月になると毎年必ずもらえていた「お年玉」や「お小遣い」も、気付くともらう側ではなく、あげる側になってしまっていた。懐具合は寂しいものの、甥っ子が無邪気に喜ぶ顔を見ると、やっぱり上げてしまうのが叔母心というもの。

　お金を渡すのに、むき出しであげるのも気が引けるので、「ポチ袋」を必ず用意していくようにしている。文具店や東急ハンズなどに行けば、それこそ何十という種類が並んでいるのだが、キャラクターモノにはどうも食指が動かない。どうせならちょっと気がきいたものを――と見つけたのが今回紹介するTAF DESIGN「仮装ポチ袋」だ。

　一見何の変哲もない、ただの袋に見えるこの製品。袋の表面には、何やら得たいの知れない人物の姿が書いてある。仕掛けはこの人物の顔にあるのだ。

　よく見ると、どの顔の部分はどれも空白になっている。ここで改めて、ぽち袋に入れる中身のことを考えてみよう。千円札、五千円札、一万円札、どのお札にも「顔」が書いてある。つまり、仮装ポチ袋にお札を入れると、人物の顔の部分にお札の顔が当てはまるという仕組みなのだ。

　仮装ポチ袋は、お金の種類に合わせて「hideyo　銅(千円札)」、「ichiyo　銀(五千円札)」、「yukichi　金(一万円札)」3種類が用意されており、それぞれの紙幣専用となっている。1パック3枚入で、色やデザインは、中に何を入れるかによって違っている。お札を袋に入れる時は、顔が表になるように2つ折りにする。

紙幣の種類によって専用の製品が用意されている。写真が五千円札専用の「ichiyo　銀(五千円札)」。1パック3枚セットになっている	背面部分。種類によって色が異なっている	一万円札、五千札、千円札それぞれに書いてある人物の顔を活かす

　袋の人物は、いずれも中世の騎士や、貴族を彷彿させるようなデザインで、福沢諭吉や野口英世とは雰囲気が全く違う。そのため、組み合わせると、アンバランスで滑稽な印象さえ感じる。

　最初は、このデザインに福沢諭吉が合うの? と半信半疑だったが、実際に入れてみると思ったよりも面白い。マスクなどで顔の一部を隠していることもあって、意外なほどぴったりとマッチするのだ。たとえば。五千円札の顔、樋口一葉などは、つつましくも意志の強いいかにも日本女性らしい雰囲気だが、仮装ポチ袋に入れるとセクシーに早変わり。印象がすっかり変わって「樋口一葉ってこんなに美人だったんだ」と驚いたほどだ。

顔が表側になるように、お札を2つ折りにして入れる	仮装ポチ袋に入れると、お札の人物の顔がデザインの一部になる	それぞれお札を入れたところ。左から一万円札、千円札、五千札を入れている

五千円札を袋に入れる前(左)、入れた後(右)	一万円札を袋に入れる前(左)、入れた後(右)	個人的にマッチしているなと思ったのは五千札の樋口一葉。中世的な雰囲気に、意外な程マッチした

　袋のサイズは、どのお札タイプも一緒なので、組み合わせを変えてみたが、うまく行かなかった。3種類のお札を並べてみるとよく分かるが、それぞれの顔の大きさがかなり違っている。中でも福沢諭吉の顔はかなり大きめに刷られていて、千円札の袋に入れると、顔や目の位置が合わない。サイズだけでなく、雰囲気もなんとなくミスマッチになってしまうので、専用の袋とお札を組み合わせて使うのがおすすめだ。

　さて、実際に3歳と5歳の甥っ子に渡したところ、残念ながら反応はイマイチ――子供はお札のデザインもよく知らないので「なにこの変なおじさん」くらいで、中身をさっさと確認していた。この独特のセンスが理解できるのは、やはりある程度大人でないと無理なようだ。

　ちょと残念だったのは、顔が見えにくい時があったこと。お札の顔が出るスペースは、透明ではなく、薄紙でうっすらと顔が透ける程度なので、場合によっては顔が見えない場合もあった。うっすらと顔が浮き出るように見えることで、絵柄とマッチさせたいという制作者の意図は理解できるが、顔が見えないのではしょうがない。ここは、改善して欲しいところだ。

袋を中から見たところ。紙は透明ではないので、お札を中に入れても見づらい時がある	それぞれのポチ袋は、紙幣専用に作られている。千円札専用の袋に五千札を入れると、顔が微妙に合わない

　子供へのお小遣いは別として、大人同士のお金の受け渡しは色々と気を遣う場面もある。結婚式の二次会パーティーなど、お金をそのまま渡すより、ちょっと気の効いたこんな袋に入っていたら、受け取る方も嬉しいだろう。中身ではなく、袋が話題の中心になる、大人向けのぽち袋だ。