やじうまミニレビュー
とことん混ぜて、納豆の極みを目指す「魯山人納豆鉢」
by 小林 樹(2014/8/18 07:00)
納豆は混ぜれば混ぜるほど美味しくなる、と唱えた人がいる。美食家で知られる文化人、北大路魯山人(ろさんじん)だ。
彼は“納豆の拵(こしら)え方”について、「糸を出せば出すほど納豆は美味くなるのであるから、不精をしないで、また手間を惜しまず、極力ねりかえすべきである」と、よく練り混ぜることの大切さを説いている。
とはいえ、現実的には難しい。忙しい朝食タイムに納豆を何百回もかき混ぜる暇なんかないわい! というツッコミたくなるのが本音である。そんなところに出会ったのが、タカラトミーアーツの「魯山人納豆鉢」だ。
メーカー | タカラトミーアーツ |
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製品名 | 魯山人納豆鉢 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 1,500円 |
魯山人納豆鉢は、納豆をスピーディーに混ぜ、粘り気たっぷりで味わえるアイテム。ハンドルを回すだけで簡単に、魯山人の愛した納豆の味を再現できるという。
本体には説明書、ギアケース、ハンドル部などの細かいパーツがセットになっている。本体は納豆を入れるカップと、ハンドルを装着する「メカ部」に分かれる。
使う前に、本体を組み立てよう。まず、メカ部にハンドルを装着する。そして、空豆のような形のギアケースと、撹拌棒を醤油投入口に取り付ける。最後に、この2つをはめ合わせたら、準備は完了だ。これらのパーツにより、ハンドルを1回回すと、攪拌棒が2回転する仕組みになっている。
さっそく納豆をカップに入れ、メカ部でフタをする。最初に投入したのは、スーパーでよく見かけるタカノフーズの「おかめ納豆 極小粒」。小粒で柔らかめの色の濃い豆だ。
使用モードは、424回撹拌して魯山人好みの味に近づける「魯山人モード」と、好きな回数をかき混ぜられる「我流モード」が用意されている。今回は魯山人モードを選んだ。
ハンドルを回し始めて30秒ほどすると、糸がよく出て粘りが強くなり、手ごたえを感じるようになる。「まだかな……まだかな……」とさらにハンドルを回し続ける。
ひたすら回すうちに、一体いつまで混ぜればいいんだろう……と途方に暮れたくなるが、この魯山人納豆鉢にはモチベーションを高める仕掛けがある。それが、メカ部の窓に表示される言葉だ。撹拌した回数によって「まだまだ」→「手を抜くな」→「極めよ」といった魯山人的なコメントが表示される。それを見ると、あとどれくらい回せばいいのかがわかる。
さて、かき混ぜ続けて1分を過ぎた頃、突然メカ部のフタが開き、醤油の投入口が顔を出した。そう、ある一定の回数を回したら、自動でフタが開き、醤油を差すよう促すギミックがあるのだ。
醤油を差したら再びフタを閉めて、さらに1分ほど、ひたすらハンドルを回し続ける。醤油が入ったことで、ハンドルが滑らかに回るようになった。さらに回し続けて、開始からおよそ3分が経った頃、カパッとフタが開いた。これが攪拌の終了サインだ。
ついに、424回もかき混ぜた納豆とご対面だ。一体どうなっているだろうと、期待に胸を昂らせながらフタを外すと、大量の糸を引いた納豆が現れた。糸は空気を含み、ふわふわと白く、豆にまとわりついていて、カサが増したように見える。お箸ですくうと糸の粘り、ボリュームがすごい。
ご飯に盛り付けて、一口食べて驚いた。食感がいつものおかめ納豆と全然違う!
納豆は大量の糸を引いて、粘りは強いが、口どけは滑らか。味は豆のコクが感じられる。逆に、豆の歯ごたえは薄らいでいる。香りも、パックを開けた時よりも芳醇だ。一言で言えば、まろやかで美味しい。
ハンドルを沢山回したから美味しく感じる、という精神論ではない。タカラトミーアーツによれば、混ぜるほどコクがアップするという調査結果があるという。ちなみに納豆の糸の正体は、グルタミン酸(さん)と、フラクタンという糖分。このグルタミン酸が旨み成分なのだ。
昔懐かしの藁納豆で試してみた
こうなったら、昔懐かしの藁納豆で試したい! というわけで、有楽町の茨城県のアンテナショップで、藁納豆を仕入れてきた。
水戸の藁納豆は、昔ながらの納豆の味を今に伝えている。匂いは強く、豆は大きく、1粒1粒は固い。
魯山人納豆鉢に入れて、ハンドルを動かしたが、とにかく固い。ハンドルを回すのにとても力が要る。なんとかハンドルを回していると、粘りが強くなって、さらに固くなり、ハンドルが回しにくくなる。無理をすると撹拌棒が抜けそうになるので、ここは慎重に回そう。
それでもゆっくり、時間をかけて、なんとか424回の攪拌を終了。おかめ納豆では3分程度だったが、こちらは5分以上かかった。
混ぜ終わった藁納豆は、とにかくワイルドの一言に尽きる。うねるような強い糸の粘りに、豆が絡まっている。もともと強い匂いがさらに強烈に香る。
口に入れるとネバネバが止まらない。噛んでも噛んでもネバネバする。匂いと、粘りと、豆の歯ごたえが力強く、噛むのに力が要る。これはこれで美味しいと思った。ただし、喉の奥までねっとりとするので、人によって好みはあると思う。
「手間を惜しむな」
さて、納豆をスピーディーに400回以上混ぜて、美味しさを引き出す魯山人納豆鉢だが、ひとつ心に留めておきたいのは、片付けが大変だということ。使用後のネバネバした状態で、パーツをギアまでバラして洗うから、かなり面倒である。おまけにパーツは細かいものもあり、洗うたびに失くさないかヒヤヒヤする。
冒頭の魯山人先生の言葉にあるように、美味しいものを求める以上は、手間を惜しんではいけないのだろう。
納豆が好きな人、いつもの納豆を美味しく味わいたい人、魯山人の境地が気になる方には是非、試してみて欲しい。