カメヤマ「花げしき 備長炭」

　気が付くと年長の家族や親戚で彼岸に渡ってしまった人が増えてきた。自宅に仏壇はないが、和室の一角に遺影とお花を並べ、お線香を上げるようにしている。

　しかし、狭いマンションなので、お線香の香りが気になる。線香の香料は強く、家具や壁に染みこんでしまう。とくに本を始めとする紙のたぐいは、香りがうつりやすく、思い切り線香臭くなってしまうのだ。

　調べてみると、線香には墓参用と仏壇用の区別があるようだ。墓参用は、煙が多く出て香りも強い。法事のときにお寺でくださるお線香は香りも煙も強かったが、あれは墓参用だからなのだろう。

　仏壇用は煙を抑えており、最近はラベンダーなどの花の香りがするものも増えているらしい。さらに、最近では活性炭と消臭剤を配合して香りを抑えた製品も登場しているようだ。マンションのように狭く、密閉度の高い部屋に向いている製品だろう。

　というわけで、今回はカメヤマの「花げしき 備長炭 ミニ寸」を買ってみた。これは、煙をごく微量に抑え、しかも備長炭と活性炭と消臭剤を配合することで、線香特有の香りを極限まで抑えているという。

外箱	ふたを開けた状態	解説とともに、煙がごく少ないという表示がある

　もう1つ特徴があって、線香の長さが短くなっている。通常のお線香が約25分燃焼するのに対し、この製品では約19分になっている。言われてみれば、朝の忙しい時間や、出かける直前に、お線香に着火して、あとの火の始末が気になるときもないではない。慌ただしい現代の生活に即していると言えるだろう。

　内容量は約50gと重量で表記されているが、購入した製品では30本で10gだったので、だいたい150本ぐらい入っている計算になる。

主原料は、活性炭、備長炭、消臭剤で、通常のお香とはだいぶ趣が異なる	だいたい150本ぐらい入っている	上に置いた通常のお線香に比べると4cm強短い

　外観はごく普通のお線香と同じだ。着火時も特に火が付きにくいというようなことはない。煙はほとんど立たない。普通のお線香と一番違うのは、やはり香りだ。普通のお線香のように鼻にくる感じが少ない。

一般的な香炉で供すると、やはり短く感じる	火が灯っている状態でも、ほとんど煙が出ない

　ただ、まったくの無臭というわけではない。香料の香りは弱いが、物が燃えているときの独特の臭いはする。匂いにトゲがない感じだ。

　感じ方に個人差はあると思うが、通常のお線香を使うよりも、ずっと香りは少なく、窓を開けなければという要求は起きない。

　こういう製品に対して、「お線香なのに香りが少ないなんておかしい。そんなお線香では仏さまが喜ばない」という見方もあるだろう。また、「生きている人間の都合を仏様に押しつけるようで申しわけない」と感じる人もいるだろう。

　でも、ウチの祖父や祖母なら、多少、香りが少なくて、燃える時間が短くても、毎日お参りしてくれることの方を喜んでくれると思う。結局、仏様にお参りするということは、その人たちのことを思い出してあげて、感謝することだと思うのだ。

　仏様のためにも、自分のためにも、できれば毎日、そういう時間を持つのが理想だ。お線香の香りが気になって、お参りする回数が減ったり、縁遠くなってしまうよりは、こういう製品をうまく利用していきたい。