やじうまミニレビュー

ペンタックス「パピリオ 6.5×21」

~最短50cmからフォーカス可、近接性能に優れた双眼鏡
by 片岡 義明


やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです


ペンタックス「パピリオ 6.5×21」。サイズは6.5倍モデルが114×110mm、8.5倍モデルが116×110mm。厚みは55mm。重さは290g

 日増しに気温が高くなってきたが、そろそろ夏に向けてアウトドアでの遊びを計画している人も多いのではないだろうか。登山やキャンプというのはただシンプルに自然の中に身を置くだけでも満足できるが、そこにちょっとした道具をプラスするだけで、さらに楽しいものになる。

 中でも手軽でおすすめなのが双眼鏡だ。筆者はアウトドアに出かけるとき、いつもザックに双眼鏡を入れておくのだが、先日、以前から欲しかった双眼鏡をようやく手に入れた。ペンタックスの「Papilio(パピリオ) 6.5×21」という製品である。



メーカーペンタックス
製品名パピリオ 6.5×21
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格10,800円


 この双眼鏡の特徴は、最短50cmからフォーカスできる抜群の近接性能にある。たとえばペンタックスのベーシックモデル「タンクロー」シリーズの焦点調節範囲を見てみると、「タンクローR」は約2.8m~、防水モデルの「タンクローWP」が約1.9m~、ズームタイプの「タンクローZOOMⅡ」が約3m~となっている。

 これらに比べるとパピリオの50cmというスペックは圧倒的に短い。他社でもこれほど短い距離でフォーカスできる双眼鏡は見当たらず、その存在はかなり貴重だ。50cmというのがどれくらい近いかというと、双眼鏡を覗いたまま、もう片方の腕を伸ばした先にある手の平にピントが合ってしまうほどだ。

中央上部のダイヤルを回してピントを調節する右側の接眼レンズの付け根にある視度調整用リング対物レンズが奥まった場所にある独特のデザイン

 ちなみに近接性能といえば思い浮かぶのがカメラのマクロレンズである。花や虫など小さいものを大きく撮影するにはマクロレンズが有効だが、パピリオがマクロレンズと大きく異なるのは、対象物を2つの眼で見る点にある。1つの眼で見るカメラのレンズとは違って、2つの眼で見ることで遠近感のある立体視が可能となるわけだ。

 写真ではこの感動を表現できないのが残念だが、実際に使ってみると両目での近接観察に新鮮な驚きを感じることだろう。手を伸ばせば触れるくらい近くの花にスッとピントが合う気持ちよさは、この双眼鏡でしか得られない独特の感覚で、双眼鏡というよりはむしろ顕微鏡を覗いている感覚に近い。

 パピリオのように近接性能にこだわった双眼鏡が他社ではあまり見られないのは、カメラのレンズと違って双眼鏡で短い合焦距離を実現するには複雑な機構が必要となるためだ。パピリオには、近距離へのフォーカスに連動して左右のレンズがスライドして中央に寄る「ピント連動対物レンズ位置補正機構」という独自の技術が採用されており、これによって短い距離でのピント合わせが可能となっている。いわばレンジファインダーカメラのパララックス(視差)補正機能のようなものだ。

 もちろんふつうの双眼鏡と同じように遠くのものを眺める用途にも使える。レンズ構成は1群2枚/5群5枚と「タンクローR」より多いが、それほど暗さも感じられず、視界はとてもクリアだ。視度調整機構や収納可能な目当てリング、メガネをかけたままでも見やすい15mmのロングアイレリーフ、マルチコーティングレンズ、滑りにくいラバー外装など、双眼鏡としての基本性能も高い。

 三脚用のネジ穴も付いており、底面と三脚台座との干渉を防ぐためのアダプターもオプションで用意されている。近接観察だとブレが気になるので、腰を据えてじっくり見たいときは三脚や一脚に取り付けて使うと便利だ。

下面には三脚穴を装備するストラップを装着可能ベルト穴が付いたケースが付属する

 また、双眼鏡というとアウトドアや広いイベント会場などで使うものというイメージがあるが、パピリオの場合はその近接性能を活かして、美術館や博物館、寺社で美術品や工芸品、仏像などを見るのにも重宝する。混んでいる美術館で展示物を遠くからしか見られないときなどは、パピリオがあると本当に便利で、細かい部分までよく見える。

 ラインナップは倍率6.5倍と8.5倍の2つがある。どちらも近接性能は同じなので好みで選べばいいが、個人的には6.5倍のほうが使いやすくおすすめだ。ショップで展示品を見かけたら、ぜひ一度覗いてみて、パピリオの近接性能を体感していただきたい。



2010年 6月 4日   00:00