やじうまミニレビュー

イワタニ「カセットフー マーベラス」

~食卓からアウトドアまで大活躍の風よけ付きコンロ
by 藤山 哲人


やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです


 今日紹介するのは、カセットコンロの代名詞ともいえるイワタニの「カセットフー マーベラス」をご紹介しよう。製品名は「カセットフー」となっているが、カセットコンロそのものである。

イワタニ カセットフー マーベラストップカバーを閉じると縦置きも可能

 写真を見ると風防が付いているため、アウトドア専用と思われてしまうかもしれないが、屋内外兼用のカセットコンロだ。風防は片付けるときのトップカバーとなるため、これまでのようにボロボロになったダンボールにしまう必要がなく便利だ。

 カラーはサンセットオレンジとフレッシュグリーンの2色が用意されており、屋内で使ってもアウトドアで使っても違和感のないデザインになっている。


メーカーイワタニ
製品名カセットフー マーベラス
希望小売価格21,000円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格13,320円

ロボットアニメのような変形ギミック!

 女性読者にとっては、まったく興味のないところかも知れないが、このカセットコンロの変形ギミックが凄い! 男である筆者は、ガンダムどころかコンバトラーVやゲッターロボを観て育った世代で、変形と聞くといてもたってもいられない。つい3日前にも飛行機がロボットに変形するという「超時空要塞マクロス」のおもちゃを買ってしまった……。

変形ってのは男のロマンなのだ! っつーか、ここまで来ると立体パズルかも?

 当然、奥さんに怒られた……が! パソコンの脇において仕事に疲れるとは変形させて遊んでいる(笑)。ということで性能は後回しにして、変形ギミックを紹介しよう! もちろん家電のレビュー記事としては、ダメダメな構成ってのは百も承知の上なので、クレームメールを編集部に送らないようにお願いしたい。

【格納モード】

重い土鍋を置いてもびくともしない頑丈さ。

 第1形態は「格納モード」。薄いSPCCという自動車のボディ用の鋼板を使っているが、躯体がシッカリしているので強度は高い。キッチンの吊り戸棚にしまって、その上に土鍋や焼肉プレートを置いても問題ないだろう。

 また塗装は、近年になって普及してきた粉体塗装が施されている。近い将来自動車にも利用されるのでは、と言われる塗装方法で、静電気を帯びた金属に塗料のパウダーを拭きつけ、熱を加えることで定着させるという塗装方法だ。塗装の皮膜強度が高く、耐水性や耐油性、耐食性や耐候性などにも優れているため、アウトドアには最適だ。さらに粉体塗装は耐熱性にも優れているため、トップカバーを風防にしても色あせしたり剥げたりしないのだ。

 自動車の焼き付け塗装とは異なるが、ほぼ同程度の塗装皮膜であると考えてもいいだろう。

 取っ手の素材は明らかにされていなかったが、おそらくクロムメッキ加工された鉄材。細いので手に食い込むように思えるが、ガスを装着していないと本体重量は3kgなので、手が痛くなるようなことはない。

取っ手はクロムメッキで加工され、器具栓つまみのプロテクタにもなっているカセットガス装填部。カバーはSPCC鋼板で両面が粉体塗装されている

 奥に見える黒い部分はカセットガス装填部だ。ここにもギミックが仕込まれており、トップカバーを閉じると縦置きができる。キャンプに出かけると車のトランクは満載になるが、縦置きできるのでキャンピングチェアの足の隙間などに押し込めるので非常に便利だ。また縦置きできることで、キッチンでも収納場所に広がりが出るだろう。

【アウトドア使用形態への変形】

 トップカバーの両サイドにあるロックを2つ解除すると、カバーが開く。角度は90度まで立ち上がり、内蔵されているロックバー2本をコンロに差し込むと固定完了だ。太いロックバーなので、台風でも来なければ風防兼トップカバーが倒れることはないだろう。

両サイドにあるトップカバーロックトップカバー内部には、風防として固定するロックバーが内蔵され、頑丈な作りだ

 次に取っ手のサイドに付いているロックレバーを解除すると、取っ手が下がり、器具栓つまみを操作できるようになる。これで不用意に点火用の圧電素子がスパークすることがないので、小さな子供のがいる家では、チャイルドセーフ機能としても役立つ。

取っ手のロックレバー解除すると取っ手が下がり、つまみの操作が可能になる

 なお五徳は、いかにもアウトドア用といった面持ちのクロムメッキされた鉄材。通常のコンロはアルミ製だが、いかつい五徳がカッコよさを演出している。コンロ面もトップカバーと同じSPCC鋼板+粉体塗装となっているため、鍋の吹きこぼれや焼肉の飛び散った油などにも強く設計されている。

 また五徳の周りにあるお皿状のものは風防になっている。トップカバーの風防とあわせて、ダブルの風防を装備しているというわけだ。上には鍋などが乗るため、これだけの風防が備わっていれば、突風でも吹かない限りまず火が消えることはない。なによりバーナー自体が風に強いアウトドア仕様になっているのだ。

 アウトドア利用時で助かるのが、カセットガス装填部に仕込まれたヒートパネルだ。

コンロ面も油と水、火に強い設計だ。五徳の周りにあるお皿状のものは風防今やほとんどのガスコンロについているヒートパネルだが、キャンプ用品ではいまだにオプション品

 スプレー塗料を塗ったことがある人ならお分かりの通り、圧縮ガスを長時間吹き続けると、缶がどんどん冷たくなりガスの吹きが悪くなる。これは気化熱という現象で、液体が気化するとに熱を奪うというものだ。カセットガスの中には、圧縮された液化ガスが入っているので、コンロを使って長時間ガスを気化すると、缶がキンキンに冷えてしまうのだ。結果、温度が下がると缶内部の圧力が低くなり、ガスの出が悪くなる。

 これを防止するためにヒートパネルはバーナーまで伸びており、常にカセットを暖め、長時間使っても火力が落ちないようになっている。キャンプ用品だと、この機構はオプションとして別売されるものなのだが、標準装備されている点がうれしい。

【インドア使用形態への変形】

 インドアへの変形プロセスは、トップカバーを外すだけ。ロックバーを解除して、トップカバーを上に持ち上げるとカバー全体を外せる。あとはダイニングテーブルの中央にに置けば、どこに座っても鍋をつつけるようになる。

まずロックバーを解除してトップカバーを持ち上げると、ヒンジ(丁番)が外れるようになっている

 逆にインドアで利用する場合でも、家族でオイルフォンデュを楽しんだり揚げ物をする場合は、子供の座っているほうに風防を立てておけば、油はねガードにもなる。これは通常のカセットコンロにまねできない便利な機能といえるだろう。

 注意する点は、五徳には丸い鉄材が使われているため、アルミ製のものに比べると調理器具との接点が少なく滑りやすい点だ。また付属品として添付されている五徳をセットすると、イワタニ製の各種プレートが取り付けられるようになるだけでなく、標準の五徳では滑りやすい鍋も安定させられる。なお利用できる最大の鍋は直径27cm程度まで。

 五徳の下に落ちてしまった食材は、五徳を立てることで簡単に取り除ける。とはいえ、五徳は火にさらされて熱いので、火を消してしばらく待ってから行なうこと。

添付の五徳をセットすると、イワタニ製の各種プレートが取り付けられるほか、標準の五徳で安定しない鍋にも対応できる26cmフライパンも余裕で乗せられる大口径の五徳五徳は持ち上げてメンテナンスできるようになっている


メンテナンス形態への変形

 メンテナンス形態への変形は、インドア形態から行なう。トップカバーの取り付け部にあるネジ2本を外すと、五徳と風防が付いたコンロ台が外せるようになっている。

 2本のネジはさびにくいステンレス製、しかもドライバレスで回せるようになっている点は、アウトドア派の筆者から見て高得点だ。驚かされたのは、本体内部も粉体塗装がされている点。

ドライバレスで解体してメンテできる点はアウトドアで便利だコンロの土台を外すと、内部まで塗装されている!通常のコンロは、内部がすべて塗装されていない場合がほとんど

 通常のカセットコンロは、本体外側は塗装処理されているが、内部はチョコチョコ鉄材がむき出しという場合はほとんど。長年使ったカセットコンロを持っている読者に確認してもらいたいが、見た目はキレイでもコンロの内部のあちこちがサビたり腐食していることだろう。つまり、通常のコンロは鍋などの吹きこぼれが、五徳の下まで流れ込んでしまい、素肌の鉄材に付いたままにしておくと内部から腐食してしまうのだ。

 アウトドアの過酷な環境下で金属の腐食を食い止めようという発想から全体を塗装したと思われるが、家庭内で使う場合にもより長く使えるコンロになるだろう。

 風防とコンロ台の間に入ってしまったカスを掃除するのも簡単だ。

風防を固定しているピアノ線を外すと、土台から風防を取り外せる風防を外してメンテナンスできるので、細部までキレイにできる

 裏面のバネ1本を外せば、風防とコンロ台を切り離し可能。もちろん工具は一切必要ない。

 このように外見からはアウトドア専用に見えるコンロではあるが、家庭内でも収納性の高さ、風防が油ガードになる、内部からの腐食にも強いなどメリットがたくさんある。


アウトドア形態でチーズフォンデュを食べてみた

 まずはさほど火力の必要ないチーズフォンデュを作ってみた。チーズフォンデュ用のチーズなるものがスーパーで売られているが、とけるチーズで簡単にできる。

 用意するのは、短冊状に切られたとけるチーズと小麦粉(薄力粉)、それに牛乳とワインだ。ポイントは、

 とけるチーズに軽く粉をまぶすだけ。

耐熱ヘラでよく混ぜ合わせてチーズフォンデュ開始!

 あとは鍋にチーズ2掴みと牛乳1カップを入れて加熱。大人だけの場合は牛乳を半分にして、もう半分を白ワインにすれといい。塩分が少ないチーズなら、少しコンソメスープの素を入れてもいいだろう。いっぽう具材は、冷蔵庫にある余りモノでOK。パンやソーセージ、冷凍庫の奥に残ってる冷凍エビに冷凍イカ、少し残った肉類でもOK。賞味期限の切れそうなマルシン ハンバーグなんてのも旨い! 寿命間近でちょっとぐったりした野菜も美味。ただし野菜は、あらかじめレンジでチンしてふかしておこう。にんじん、じゃがいも、インゲンにたまねぎ、ブロッコリといった定番から、キャベツなんて意外なものもおいしい。

 チーズが程よくとけてきたら、一斉に食べ始めよう。今回使ったカセットコンロは、火力が強いので火は消える寸前ぐらいのとろ火でOKだった。余り火力を強くすると、なべ底のチーズが焦げてしまうので注意しよう。

 なお途中で水分が飛んできたら、牛乳やワインを入れればいい。またチーズが少なくなったら、粉を振ったチーズを追加する。

 ご飯好きならパンの変わりにお皿に盛ったご飯に具材を乗せて、トロトロチーズをかけてもおいしい。ポイントは、ちょっとおしょうゆをたらす点だ。

好きな具材にチーズを絡めて楽しもう!ご飯の上に具材とチーズを載せても美味。ポイントはおしょうゆ


キャンプ用品を使ったことがないと音がチョット怖いかも?

 イワタニのカセットフー マーベラスは、バーナーの形が特徴的だ。一般的なカセットコンロは、台所のコンロと同じ形で真鍮製のカバーをかぶせるタイプ。ところがマーベラスのバーナーは、キャンプ用そのものなのだ。小さな穴がたくさん開いていて(このコンロは282個)、それぞれから小さな炎が出る。

 キャンプ用のバーナーを使ったことがない人は、その轟音に少しビックリしてつまみを全開にできないかも知れない。一般的なガスコンロは、多くても穴が数十個程度あるだけで、ガスの噴出する音はほとんど聞こえない。しかしキャンプ用のバーナーは穴が小さく、ガスの噴出するシュー! という音と、火の燃え盛るゴーという音を立てるのだ。

通常のカセットコンロのバーナー部分マーベラスのバーナー部分キャンプ用のバーナー部分

 点火しづらい点も少し怖いだろう。決して点火しづらいわけでなく、ガスの噴出する音でなかなかつまみを全開にできないのだ。こんな場合は、着火用のライターを使うといい。

 でもコツさえ覚えれば、着火も簡単。普通のカセットコンロと同様に、思いっきりつまみを何回か回し続ければいい。このコンロは轟音がするものだと覚悟して操作してみて欲しい。


インドア形態で定番の焼肉!

 子供も大人も大好きなのは焼肉! 一般的な焼肉プレートを使い、風防を外して全方向からアクセスできるようにしてみた。

 火は中火で十分だ。安い味付きの冷凍肉だと、中火だと強いかもしれない。こんな肉のときは、家族一人ひとりが自分の食べる焼肉を焼いていくといいだろう。両親がどっさり肉を鉄板においてしまうと、最後の方は炭になってしまう恐れあり。なおちょっと厚めの焼肉用のカルビなどは、中火よりチョット強めがいい。外がコンガリ中はミディアムのジューシーな焼肉になる。

 サンチュやサラダ菜、レタスなどを添えておけば、子供たちは青虫のように葉っぱを食べるので、肉と一緒にビタミンもたくさん摂取できて栄養バランスもバッチリ。ちなみに筆者は、ご飯派だが……

肉を与えておけば姉妹ケンカがない我が家。どこの家も一緒ですな野菜も一緒に食べるには、サンチュなどの葉っぱものがイイ味つきの薄い肉は焦げやすいので火加減を調整しよう


火力対決! キャンプ用バーナー VS カセットコンロ

 最近のキャンプ場では、ガス式のバーナーが大流行している。またカセットコンロの火力も強くなってきているためか、これを使っているキャンパーもチラホラ。そこでキャンプ用品のバーナーと家庭用のカセットコンロ、そしてマーベラス使い、気温7℃の屋外でお湯を沸かしてみた。

最大発熱量3,000kcal/hのマーベラス同じくイワタニの旧式コンロ。火力は最大で2,200kcal/h
キャンプ用のガス式シングルバーナー。火力は不明ガソリン式のツーバーナー。最大火力は6,400kcal/h

 家庭用コンロの代表は、イワタニ カセットフーコンロ AP-1。96年製なので最大発熱量は2,200kcal/hと控えめだ。現在発売されているタイプだと、3,000kcal/h前後なのでもう少し記録が伸びるかもしれない。

 キャンプ用のコンロは、キャプテンスタッグ製のシングルバーナー。こちらも96年製と古く、型番と熱量は不明。もう1台は、キャンパーの定番、コールマンのガソリン式ツーバーナー413。98年製ながら、最大で6,400kcal/hの発熱量を誇る! キッチンにある普通のガスコンロは、強力とうたっているものでも4,000kcal/h前後なので、ガソリン式がいかに強力かがわかるだろう。

 まずは最大で3,000kcal/hという火力を持つイワタニのマーベラスから実験開始。ジャスト1Lの水をケトルで沸かして、沸騰するまでの時間を測定した。結果は、8分を過ぎたあたりで湯気が立ちだし、10分で完全に沸騰。

8分を過ぎると湯気が立ち上り始める10分7秒で100℃に到達!

 次に家庭用のカセットコンロ。完全に沸騰するまで、ほぼ14分を要した。

11分半を過ぎると湯気が昇り始める。水温は95℃13分47秒で沸騰。さすがに旧式だけあってパワー不足だ

 続いては、キャンプ用のガスバーナー。バーナー自体は、マーベラスとほぼ同じ機構なので結果が楽しみだ。

意外に健闘したのがキャンプ用のシングルバーナー。結果は7分5秒ただし風防もなければ、カセットガスを暖める機構もない

 結果は7分。マーベラスと同じ構造ながらも、若干火力が強かったようだ。

 ラストは、大火力のガソリン式ツーバーナー。さすがに圧倒的なパワーで5分も待たずに沸騰した。

4分16秒ですでに87.9℃4分44秒で沸騰。さすがに大火力だ

 実験結果をまとめると、次のような順位になる。


順位品名最大火力沸騰までの時間
1位ガソリン式ツーバーナー6,400kcal/h5分
2位キャンプ用シングルガスバーナー不明7分
3位イワタニ マーベラス3,000kcal/h10分
4位イワタニ カセットコンロ AP-12,200kcal/h14分

 ほぼ無風の屋外では、ほぼ同じ機構のキャンプ用のシングルバーナーがイワタニのマーベラスより3分早かった。しかしキャンプ用のバーナーは、カセットガスを暖める機構がなく、風防もないため強風下で実験したり、長時間使ったりすると順位が逆転する可能性が十分にある。これを考慮すればイワタニのマーベラスは、十分アウトドアでも活用できるといえるだろう。


大火力が必要な鍋料理をインドア形態で食す!

 カセットコンロを使う家庭料理で、一番火力が必要なのは鍋料理だろう。ダシを冷めた状態から沸騰するときはもちろん、具材を大量に投入するとダシの温度が一気に下がるので、大火力がモノを言う。

鍋料理には大火力コンロがいい大量に具材を入れても、火力を強くすればすぐにフツフツと煮立つ!

 ちゃんこ鍋で実験してみたところ、沸騰している状態ならトロ火でもフツフツと鍋が煮えている状態をキープできた。大量の豆腐や肉を投入し、ダシの温度が下がってもフルパワーで加熱すると、1分もしないうちに再沸騰できるパワーを持っている。

 イワタニの「カセットフー マーベラス」は、初心者のキャンパーやハウス型タープの中で使う調理器具として、また家庭では大火力のカセットガスコンロとして1台2役をこなす携帯コンロだ。特徴的なトップカバーは、外では風防として家ではコンロのカバーとして使えるので、縦置きや重ね置きができ収納場所にも困らない。カセットコンロの新機軸といえるだろう。




2010年 3月 24日   00:00