藤山哲人のモバイルバッテリー診断

日立マクセル「mobile VOLTAGE MPC-C5000」

~便利な直結式ケーブル。低ロスで急速充電もできる5,000mAhバッテリー

「モバイルバッテリー診断」は、スマートフォンの外部電源として普及しているモバイルバッテリーをレビューするコーナーです。(編集部)
日立マクセル「MPC-C5000」。今回購入したのはレッドで、ほかにブラックとイエローがある

 今回紹介するバッテリーは、日立マクセルの「mobile VOLTAGE(モバイルボルテージ) MPC-C5000」だ。容量は5,000mAhと、スマートフォンならほぼ2回は充電できる。大きさもスマートフォンと同じようなサイズとなっている。

 最大の特徴は、スマートフォンの給電用のMicro USBケーブルと、MPC-C5000に内蔵のバッテリーを充電するUSBケーブルを、本体内に内蔵している点。iPhoneなど、Micro USBに対応していない機種を充電するために、出力2AのUSBポートも付いている。

メーカー名日立マクセル
品名・型番MPC-C5000RE
バッテリー容量5,000mAh
繰り返し利用回数説明書に記載なし
サイズ(幅×奥行き×高さ)69×115×20mm
重量170g
カラー・モデルブラック、レッド、イエロー
販売価格4,580円(yodobashi.com)
対応スマートフォンAndroid:○(本体直結ケーブル)
iPhone:○(本体USBコネクタ)
iPad:○
上部には2A出力できるUSBコネクタと、電源ボタン(左)、バッテリー残量計(右)がある
下部左側には本体充電用のUSBコネクタ、右にはスマートフォン充電用のMicro USBコネクタが収納されている
電源ボタンの上部から見て右側のようす。本体充電用のUSBコネクタのケーブル長はおよそ5cm
電源ボタンの上部から見て左側。スマートフォン充電用のUSBコネクタのケーブル長はおよそ5cm
天部は亀の甲羅のように丸みを帯びた形状になっており、手のひらにフィットする
底部には出力表などが明記されている
■■連載を通じた注意■■

・実験結果は、室温がコントロールされていない環境で行なっています。電池は温度により、その特性が大きく変わる点にご注意ください。
・実験結果は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません。
・実験結果に基づいた実容量やロス率は、その値を保障するものではありません。
・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにはお答えできません。

スマートフォンを2回フルチャージ。ケーブルいらずで携帯性◎

充電の実測テストには、2012年夏モデルの富士通「ARROWS X F-10D(docomo)」を利用した。内蔵バッテリー容量は1,800mAh

 まずは、内蔵バッテリー1,800mAhのスマートフォン(ARROWS X F-10D)を充電してみた。当連載の実験環境、実験器具については、別のページでご確認いただきたい。[→連載「モバイルバッテリー診断」の性能チェック方法]

 ここで便利だったのが、充電用のMicro USBケーブルが直結な点。ケーブルを探す手間もなく、どこかに忘れてしまうこともない。

 ただ、充電中にスマートフォンとモバイルバッテリーを重ねて置くには少し短い。移動中にポケットに入れて充電したい場合は、機器に同梱のケーブルを使う方が良さそうだ。

・スマートフォン充電テストの結果
充電回数「2回 +10%」(3,690mAh相当)

※測定条件は、WiFi:ON、Bluetooth:ON、GPS:ON、省電力モード:OFF、画面OFFの状態で充電、電池残量約10%から充電開始し90%程度までを繰り返し、アプリ「Battery Mix」にて容量変化を記録

並べて充電するぶんには、ケーブルの短さを感じることはない
しかし、スマートフォンと重ねて充電すると、直結ケーブルが短かい
iPhone系やスマートフォンを重ねて充電したい場合は、端末に同梱のケーブルを使う
電源スイッチは斜めにカットされた側面に配置されているため、不用意に押されないようになっている。バッテリー残量は、緑とオレンジの2色で残量を示す

 この出力用USBコネクタと、本体直結式のMicro USBコネクタは、同時利用も可能。合計で最大2Aまで利用できる。スマートフォンなら、2台同時に約1Aの急速充電ができる。

 若干使いづらさを感じるのは、バッテリー残量計が2段階と大雑把な点だ。30%までは緑、それ以下ではオレンジに点灯するようになっている。2回以上充電できるスマートフォンでは、あと1回フル充電できるか否か? の判断がつきづらい。

【スマートフォン充電(出力)スペック】
項目詳細
USBコネクタ数2口(USB+直結式Micro USB)
USB最大電流Micro USBコネクタ:1A
USBコネクタ:2A 同時利用の場合は合計で2Aまで
充電ケーブル(コネクタ)本体直結式のMicro USB(スマートフォン充電用)
本体直結式USB(本体充電用)
残量表示1灯2色式
(1目盛りあたりの容量:100~31%緑
30%以下オレンジ)
自動電源OFF本体電源ON時も有効
40mAでOFFを確認
複数台同時充電スマートフォン2台:○
スマートフォン+iPad2:○
ただし、合計出力は最大2Aまで

ロスが少なく、電流・電圧とも極めて安定した優秀なバッテリー

 たいていのスマートフォンは約1Aで急速充電するため、独自の測定器を用いて連続して1Aの電流を流し、電圧と電流の変化、そしてスマートフォンに充電できる実容量を測定した。

 なお実用量とは、パッケージの「○○mAh」というバッテリー容量のうち、実際にスマートフォンを充電できる容量を示す。実用量率は、表示容量に対する割合で、値が大きいほど高性能バッテリーといえる。

電圧はピッタリ5.0Vで始終安定している
最初の1時間ほどは、測定器の温度変化が原因で不安定になっていると思われる。極めて安定した出力電流といえるだろう

 測定器(※)でテストした結果、電流、電圧ともに非常に安定しており、性能はかなり優秀といえそうだ。なお表示のバッテリー容量は5,000mAhとなっているが、スマートフォンの充電に利用できるのはおよそ65%の3,300mAh程度(連続利用時)。ずば抜けてロスが少ないというわけではないが、それでもロスの少ない部類に入る。

実容量のロス率。表示容量のおよそ65%が充電に使える。この数値は、モバイルバッテリーの中ではずば抜けていいわけではないが、非常に高効率といえる

 なお計算を元に出した実用量から、各種スマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機をおよそ何回充電できるかは、次のとおりになる。Android系の場合、カッコ内が内蔵バッテリー容量を示している。

【実用量と各種スマートフォンの充電回数予測】
項目詳細
バッテリー表示容量5,000mAh
連続利用時の実用量3,257mAh(65%)
連続実用量1,000mAh
あたりの価格
1,412円
充電回数(理論値)Android(1,300mAh):2.8回
Android(1,500mAh):2.5回
Android(1,800mAh):2.1回
Android(2,000mAh):1.8回
Android(2,200mAh):1.7回
iPhone4S(1,432mAh):2.6回
iPhone5(1,434mAh):2.6回
iPad2(6,580mAh):0.6回
iPad3(11,560mAh):0.3回
ソニー PSP(1,200mAh):3.1回
任天堂 3DS(1,300mAh):2.8回

充電機能は標準的だが充電中のキンキン音が気になる

充電器は同梱されていない。別途2A出力できるUSB-ACアダプタがあると便利

 本体内蔵バッテリーの充電時間は、パソコンのUSBコネクタに接続した場合で、フル充電まで20時間とのこと。専用の充電器は内蔵されていないため、できれば2A以上が出力可能なUSB-ACアダプタを別途用意したい。この場合の充電時間は4時間17分。5,000mAhクラスのモバイルバッテリーとしては標準的といえる。

 気になったのは、充電時に発生するキンキン音だ。他の製品と比べてもかなり音が大きく、静かな環境では、数m離れていても音が聞こえた。

 なお一般的なモバイルバッテリー(に内蔵されているリチウムイオン電池)は繰り返し500回利用できるが、本製品は繰り返し利用回数が明示されていない。

【本体充電スペック】
項目詳細
本体充電用コネクタ本体直結USB
添付充電器(仕様)なし
充電時間(カタログ値)4時間(2A出力USB Acアダプタ利用時)
20時間(PCのUSBコネクタ[0.5A]利用時)
充電時間(実測)4時間17分
繰り返し利用回数不明

カバンや机の周りにモノが多い人にうってつけのバッテリー

 5,000mAhクラスのモバイルバッテリーでも、薄型がほしいという場合にオススメ。特に充電ケーブルが本体直結式になっているので、カバンや机の周りのモノが多く、ケーブルを忘れたり紛失しやすいという人にはうってつけだ。

 5,000mAhという表示容量に対して、スマートフォンを実際に充電できる実用量も問題ない。出力も安定しており、総合的に優秀なモバイルバッテリーとしてオススメできる。

【総合評価】
メーカー・品名日立マクセル「MPC-C5000」
ロスの少なさ ★★★★☆(4)
持ち歩きやすさ★★★☆☆(3)
単位容量の安さ★★★☆☆(3)
 充電の早さ ★★☆☆☆(2)
使い勝手のよさ★★★★☆(4)

藤山 哲人