家電製品ミニレビュー

ブラック・アンド・デッカー「multievo(マルチエボ)」

~ヘッドを交換して、ドリル・丸ノコ・空気入れなどに使える万能工具
by 藤山 哲人

 男ならぜひ持っていたい工具と言えば、電動ドリルや電動ドライバーだ。手回し式のドライバーから電動に乗り換えると、もう2度と後戻りできない。木工や石膏壁にアンカー(石膏壁用のネジ)を取り付けるには、手回し式だと腕が筋肉痛になるほど回しまくるので、電動ドライバーは必需品。ついでに、電動ノコギリや電動ヤスリなど他のツールも次々と欲しくなる。

 しかし、電動工具は安いものでも1万円ほどするため、いろいろな工具をそろえようとなると、結構な金額になる。筆者もかなり工具に大枚を叩いてきたクチで、今計算してみたら50万円ほど注ぎ込んできたようだ。

 そんな工作歴30年以上の筆者がおすすめしたい工具が、ブラック・アンド・デッカーの「multievo(マルチエボ)」だ。


メーカーブラック&デッカー
製品名multievo(マルチエボ)
希望小売価格オープンプライス
購入場所直販サイト
購入価格スターターキット 19,800円

 普通の電動工具なら、1製品につき1つの作業しかできない。ドリル・ドライバーは穴あけやネジ止めにしか使えず、木を切断するには別途電動ノコギリを買わなければならない。でもmultievoなら、ヘッドを交換するだけで、ドリルやドライバー、電動ノコギリや電動ヤスリ、空気を送るエアーコンプレッサーになるのだ。ヘッドの種類は現在6種類あり、今後も追って発売されるという。しかもそれぞれのヘッドの価格は、4,000円~5,000円とお手軽なのもポイントだ。

 とはいえ、汎用性が高くて安い工具は、使い勝手が専用品より悪かったり、強度が弱かったりと、心配な点も多々ある。ここでは実際にモノづくりをしながら、長年愛用できる工具なのかを見極めていこう。

2万円のスターターキットなら、木工に必要な工具がすべてそろう

専用の工具箱も付いてくるので収納にも困らない

 最初に購入するのが、「multievoスターターキット」と呼ばれる製品で、次のようなものが同梱されている。

 






【スターターキットの内容】
(1)コードレス・ボディー(本体)(2)ドリル・ドライバー
(3)ジグソー(4)サンダー
(5)リチウムイオンバッテリー(18V、1.3Ah)×2個
(6)充電器(7)サンドペーパー:#80×5枚、#120×5枚
(8)ジグソーブレード:高速切断×2本、木工標準×2本、木工曲線用×1本
(9)ドライバービット:プラス#1/#2、マイナス#1、6角4mm/5mm、ポジドライブ
(10)ドリルビット:2.5/4/5/6/8mm

コードレス・ボディにドリル・ドライバー、ジグソーにサンダーと木工に必要な工具がたった2万円で揃うバッテリー充電器に、高額なリチウムイオンバッテリーが2本ついてくる。かなりおトクなセットと言っていいだろう充電器は急速充電器になっており、30分ほどでフルチャージできる。2本添付されているので、片方のバッテリーで作業をしている間にフルチャージできるだろう。余った電線を巻いておけるのも便利

 電動工具は大電流が必要なので、電源には大電流を出せるニッカド電池タイプの製品が多くある。しかし、ニッカド電池は、重い上に使い切らないと充電ができないので不便だ。

 その点、multievoのバッテリーは、軽くて大容量のリチウムイオン電池。軽く継ぎ足し充電もできるので扱いが楽になっている。電圧18Vで容量1.3Ahとなっており、400回の繰り返し利用が可能だ。

楽天市場にある同社の直販サイト。オプション品などの入手が困難な場合は、オフィシャルショップを利用するといいだろう

 別売の交換用バッテリーは18V 1.5Ahと少し容量が大きいタイプで、1個7,000円で、同社が直販する楽天市場のブラック・アンド・デッカーの通販で購入できる。バッテリー単体で購入すると非常に割高に感じるが、電動工具のバッテリーはだいたいこのぐらい。別売のバッテリーでも、付属の充電器で充電できる。2013年の春には、100Vのコンセントから電源を取れるコード式ボディーが発売予定となっている。

 ドリル・ドライバーやジグソー(ノコギリ)への変形は、ボディーにそれぞれのヘッドを差し込むだけでいい。取り外しはボディー上部のリリースボタンを押しながら引き抜くだけなので、交換には10秒もかからない。


ヘッドの取り替えは、ボディ上部のリリースボタンを押しながら、ヘッドを引き抜くヘッドをボディに合体させる場合は、差し込むだけでびったりと合体できるヘッドのジョイント部分は、このようなギアで動力を伝達している

軽量で小型、パワフルなモーターを持ったコードレス・ボディー

 ここまでキット全体を見てきたが、次からボディーとヘッドを詳しく見てみよう。まずは、本体部の「コードレス・ボティー」から。このユニットは、multievoに対応したヘッドを駆動させるためのモーター部で、電源は18Vのリチウムイオンバッテリーとなっている。

 ブラック・アンド・デッカーはアメリカの会社なので、グリップは女性の手にはちょっと大きいかもしれない。しかし、個人的にはちょうど良い大きさ。握り部分がゴムになっているのでしっかりと握れる。人差し指も自然にトリガースイッチ(拳銃の引き金のようなところ)に来るようになっていて、違和感はまったくない。トリガーの斜め上についている。正転・逆転スイッチもトリガーに指を掛けながら親指(もしくは中指の中央)で押せるため、操作性も問題ない。

黒い部分はゴムになっており、グリップのホールド感を高めているほか、衝撃を吸収するようになっているトリガースイッチは無段変速で、ストロークは15mm程度。操作感覚は他社製品と変わりないので、違和感なく使える。トリガー横のスイッチは、正転・逆転スイッチ。中央にするとトリガーにロックがかかる

 このコードレス・ボディーは無段変速になっており、トリガーの引き具合で回転数を調節できる。トリガーの重さとストローク(ドリガーをどれだけ引けるか)が操作性を左右するが、重さもストロークもちょうど良く、操作しやすい。特に、低速回転時のトリガーは軽く、速度の微調整ができる点がいい。操作のフィーリングは他社製の電動工具と変わりないので、multievoに乗り換えても違和感なく使えるだろう。

 特筆すべきは、モーターの軽さだ。小型で軽量ながら、必要十分のパワーを持った直流ブラシモーターを採用していて、元気よく回ってくれる。

 バッテリーの着脱も非常に簡単だ。リリースする場合はバッテリーのリリースボタンを押すと、バネの力でバッテリーが簡単に外れる。セットする場合は、グッと押し込むだけでロックされるようになっている。

バッテリーはカセット方式でワンタッチ装着OK。リリースするときはボタンを下に下げバッテリーの上部分には、交換用のドライバを挟めるので非常に便利

 また安全面への配慮もされており、ドリル・ドライバーなどのヘッドを取り付けない限り、トリガーを引けないようになっている。ジョイント部のギアが露出しているが、安全だ。

 さらにグリップの下には、交換用のドライバーを挟み込めるようになっているので、脚立に乗って作業するときなど、交換用ドライバを腰のポケットから探さずに済む。

 少し残念だったのは、ヒモなどを取り付ける穴がないという点だ。脚立に上って高所で作業する場合など、万が一手が滑ってドリルを落としてしまわないよう、、筆者は必ず工具をヒモとカラビナを使って腰ベルトに引っ掛けて使っている。しかし、そのヒモを通す部分がない。グリップにマジックテープなどを巻きつけ、そこにヒモを通せばなんとか代用は可能だ。

自然にドリルが進んで使いやすいドリル・ドライバーヘッド

ドリル・ドライバーヘッド。10段階のクラッチとドリル用のクラッチ固定がある。先端ツールは、1~10mmまで対応している

 次はドリル・ドライバー ヘッドを見てみよう。このヘッドは、木材や金属に穴を開けるドリルビットや、ネジを回すためのドライバービットが取り付けられる。



回転数0~800rpm
最大トルク22N・m
穿孔能力木工:直径25mm、鉄工:直径10mm

 ドリルやドライバービットを取り付ける「チャック」と呼ばれる部分は、専用工具を必要としないキーレス仕様になっていて、1~10mmのドリルビットなどがセットできる。ドリルとして使う場合は、チャックがどれだけしっかりドリルビットを噛んで固定できるかが工具の良し悪しを決める。

 試しに10mmのドリルビットを付けて、1mmの鉄板に穴を開けてみたが、ドリルが滑ることなく穿孔(せんこう。穴を開けること)できた。グリップがよく、自然に垂直にドリルが進む。

キーレスチャックで先端ツールの付け替えも簡単。1mm~10mmのドリルビットやドライバービットをセットできるチャックにドリルをセットしたところ。前後の重量バランスもよく、安定した作業ができそうだドライバーをセットしたところ。同梱されるドライバービットは短いので、市販の長いビットも合わせて買っておいたほうがいいだろう

 木工などで活躍する「クラッチ」は10段階にセットできる。クラッチとは、ネジが木材にめり込みそうになると空転する機能で、常にネジを一定の力で回すようにセットできる。なおドリル用で使う場合は、クラッチをロックするドリルモードも備えている。


ドリル・ドライバーヘッドを使っているところ

 重量配分はチャック側にあるので、手首でバランスを取ってもかまわないが、トリガーの人差し指で重量の一部を支えてやると、壁などの垂直な面の長時間作業でも疲れにくいようだ。

ネジに一定の力以上を加えないようにするクラッチは10段階。ドリル用にクラッチをロックすることもできる重量バランスはトリガーの根元あたりにある。グリップでバランスを取るよりトリガーの指でバランスを取るほうが作業は楽になるグリップがよく、自然に垂直にドリルが進む

 気になったのは、ヘッドとのジョイント部のギアに若干あそび(余裕)があるようで、高速回転させると一般的なドリルに比べると少し動作音が大きい。ジグソーや丸ノコなどは、それ自体が大きな音を出すので気にならないが、ドリル・ドライバーを使っているときに若干動作音が気になる。

 

パワフルなジグソー ヘッドで厚く硬い木材も簡単に切断

ジグソーを取り付けたところ。ドリルがジグソーに変わる姿は、変形ロボットアニメを見ているようでカッコイイ

 ジグソーは、電動ノコギリの一種で、ごく極小さいノコギリの刃が上下に動き、木材などを切断する。特徴は曲線が切断できること。たとえば机の天板の角を丸くしたい場合などに便利だ。一方で、一直線に切断することが難しいという短所があるが、小さな棚を作る程度であればこれで十分だろう。もし誤差を数mmレベルに抑えた直線を切りたい場合は、後述の丸ノコ ヘッドを使うといい。



ストローク数0~2,800回/分
ストローク長13mm
切断能力(厚)バイン材(硬めの木材):45mm、アルミ:5mm、軟鉄:10mm

 添付の刃はおよそ5cm厚まで切れる(別途購入した場合は刃の長さによる)ので、机の天板などはもちろん、棒状の角材の切断などにも使える。

 刃の交換はワンプッシュ式になっていて、しっかり固定できるのかが少し心配だったが、実際に2.5cmの角材や厚さ1mmの鉄板を切ったところ、途中で外れたり滑ったりすることはなかった。一般的なジグソーはネジで固定するものが多いので、刃の交換が簡単なジグソーへッドはかなり使い易い。

 スターターキットには、木工用の刃が3種類同梱されている。高速切断用、仕上げ用、曲線用の3種類で、刃の少ない高速切断用の刃は、速く切れるが断面は荒くなる。また、刃の多い仕上げ用の刃きれいな断面となる。曲線用の刃は、前述の2つと比べると、細く短い刃になっている。

 なお、別途金属用のジグソーブレードを購入すれば、金属やプラスチックなどの切断も可能だ。市販されているブレードの根元形状には3種類あるが、いずれにも対応している。

刃の交換は、クリップを押し下げたまま刃を抜き差しして固定する
同梱されている木工用のジグソーブレード(刃)。左から高速切断用、仕上げ用、曲線用になっているので、適宜使い分けるとキレイな仕上がりになる市販されているジグソーブレードには、刃の根元形状が3つあるがいずれにも対応している

 実は筆者、multievoのような拳銃型グリップのジグソーは使ったことがなく、使用前はかなり使いにくいのでは? と思っていたが、実際に使ってみるとあまり違和感がなかった。グリップはやや斜めについているため、木材を抑えつつジグソーを前に押し進める力も加わり、スムーズに切断できる。


ジグソーを使っているところ

 ただ、木のフシなど硬い部分があると、ジグソーを押し進めるのに力が必要だ。無理に片手で切断しようとすると、重心が高い位置にあるので左右に振られてしまう。トリガーを引いている手はジグソーを木材に押し付け、もう片方の手でジグソーを押してやるとキレイに切断できるようだ。

 また、使っていると、切りはじめでちょっとしたコツが必要になることが分かった。それは切断を開始するとき、ベースプレート(ジグソーの下にある四角い金属プレート)全体が木に乗っておらず、ジグソーの重量バランスがグリップ側にあるため、ベースプレート前方が木から浮いてしまうという点だ。切り出し開始時には、意識的にベースプレートが木に密着するように、グリップを手前に引く感じで持つ必要がある。なおベースプレート全体が木に乗ってしまえば、ベースプレートは安定する。

12mmの合板であれば、片手だけで簡単に切断できる。硬い金属や木材の場合は、両手を使った方が良い重心がグリップ側にあるため、切り出し開始時には少しグリップを手前に引くようにしたい。そうしないと、ベースプレート前方が浮いてしまう
切断面がウマく垂直にならないのもジグソーの弱点。机の脚などを切断する場合は、数mmの余裕を持って切断し、カンナやヤスリで仕上げるといい

 mutievoに限った話ではないが、ジグソーは断面が斜めになってしまう点にも注意して欲しい。厚さ10mm程度の板ではそれほど気にならないが、机やイスの脚に使う角材を切断すると、断面が直角にならないというクセがある。そのため、足などを切り出す場合は数ミリの余裕を持って切り出し、後でカンナやヤスリをかけて断面を垂直にする必要があるのだ。


コーナーや狭い場所にもヤスリがけできるサンダーヘッド

アイロン型をしているので、小さな部分やコーナーなどまでヤスリがけができる

 サンダーは、紙ヤスリでヤスリがけをするツールだ。アイロンのような形をした底に、マジックテープで紙ヤスリを貼り、トリガーをONにすると小さな円を描くように底面が動き、ヤスリがけができる。

 利用する紙ヤスリは、専用のものを使用する。スターターキットには、木工用#80(荒め)と仕上げ用の#120が、それぞれ5枚ずつ添付されており、ブラック・アンド・デッカーの楽天市場では、さまざまな紙ヤスリが手に入る。

 急ぎの場合や、#800や#1000といった耐水ペーパーヤスリを使いたいという場合は、普通の紙ヤスリをアイロン型に切り取り、粘着テープ式のマジックテープを貼って代用することも可能だ。

 使ってみると、広い面から細かく狭い場所までヤスリがけができるという印象だ。多くのサンダーは、四角や丸型をしているので、コーナーはなかなかヤスリがけしづらい。しかしアイロン型のサンダーなら、尖った先端を使うとコーナーの奥までヤスリがけができて非常に便利だった。

 パワーも申し分なく、面倒なヤスリがけが短時間で終わる。断面などの狭い部分は片手でも作業できるが、広い面はサンダーがかなり暴れるので、両手で作業するほうがいい。

 また小型ながらも集塵機能がついている点も便利だ。付属のアダプターをサンダーに差し込み、そこに掃除機をセットすると、木屑を吸い取りながら作業できる。屋内で工作するときには、かなり重宝するだろう。

 欲を言えば、広い面をヤスリがけするときはトリガーを引きっぱなしになるので、トリガーONのロックが欲しいところだ。

広い範囲にヤスリをかける場合は、全面に紙ヤスリを貼るピンポイントでかける場合は、先端だけにヤスリを貼る集塵用のアダプタを取り付け、そこに掃除機を連結すると、集塵しながらの作業ができる

サンダーヘッドを使っているところ

 車を持っている方にオススメしたいのは、別売のスクラビングセットだ。これに同梱されているスポンジパッドをサンダーに取り付けると、ワックスがけがかなり楽になる。他にもフローリングのキズを修復したり、タイルの汚れを落とすなど、家庭でも使える便利なパッドが付いてくる。

 別売パーツとしては、「ポリッシングセット」というのもある。これは、金属に光沢を出したい場合などに使えるので、金工だけでなく輝きを失ったトロフィーなどをピカピカにできる。車のワックスがけと同じで手作業で磨くとかなり力と時間が必要になるが、サンダーで使うとあっという間に作業が終わるので便利だ。

楽天市場にある同社のWeb通販。直営なのでどんなオプションでも手に入るぜひ揃えたいのがスクラビングセット。車から家まで、さまざまなシーンで使える

安定した切り心地が気持ちいい丸ノコヘッド


スターターキットに付属のヘッド以外で、まず揃えたいのが丸ノコだ。ジグソーと使い分けると工作の精度や仕上がりがワンランクアップする

 丸ノコは、木材を一直線に切ったり、断面をきっちり垂直にしたい場合に利用する。スターターキットには含まれていない別売品で、価格は4,980円となっている。ただ2012年12月31日までキャンペーンが行なわれており、それまでにスターターキットを購入し同梱のハガキで応募すれば、応募者全員にタダで丸ノコヘッドがもらえる。これはかなりお買い得なので、買うなら今しかない!

 ジグソーとの違いは、直線が切れる点と、切断できる厚みが20mmまでと、薄いものにしか使えない点だ。

 


回転数0~3,400rpm
チップソー外径85mm
チップソー内径15mm
最大切り込み深さ21mm

 スターターキットには、木工用の刃(チップソー)が添付されているが、市販品の鉄工やコンクリート用などに取り替えも可能だ。ただし外径85mmと内径(チップソー中央の穴)15mmのモノにすること。外径は85mmでも内径が20mmというタイプがあるので注意して欲しい。

 一般的な丸ノコとの違いは、切り込む深さや左右の傾きを調整できないこと。本製品はどちらも固定となっているため、溝を切り込む用途には使えない。あくまで切断専用のものだ。

 実際に木を切断してみた。一般的な丸ノコとグリップがかなり異なるが、問題なく切断できて驚いた。片手でも軽く押し進められ、硬い木のフシであってもパワフルに、そして一直線に切断してくれる。一般的な電動丸ノコは重いので「これぐらいなら手引きのノコギリで切るか……」となってしまうところだが(そして案の定、筋肉痛になる)、この丸ノコはサッとヘッドを交換して使える上に、コンパクトで置き場所も取らずかなり使い易い。

安全のためロックスイッチを押し上げないと、トリガーが引けないようになっている見た目は使いづらそうだが、実際に切断してみるとさほど力を入れなくても丸ノコを押し進められるのにビックリ切断面はキレイに直角になる。テーブルやイスの足を切断するには、ジグソーより丸ノコが便利

 


丸ノコを使っているところ

 注意したいのが、電動丸ノコは刃が高速回転するため非常に危険な工具の1つということ。無理に強く押し進めた場合などは、刃が木に食い込んでしまい大きな衝撃が起こる。場合によっては電動工具や木材が吹っ飛ぶほどなので、切断はゆっくりと慎重にしたい。

ブロックやレンガ、タイルの穴あけに使える振動ドリルヘッド

高速と低速の切り替えができる振動ドリルヘッド。木工や金工ではとくに必要ないが、ブロックの穿孔では必須アイテム

 振動ドリルヘッドは、別名ハンマードリルと呼ばれる工具で、ブロックやレンガ、タイルなどに穴を開けるもの。スターターキットに同梱されているドリル・ドライバーとしても使えるが、ハンマーモードに切り替えると、穿孔の際に衝撃を加えてブロックなどに穴が開けられるのが特徴だ。このヘッドも別売となっており、価格は3,980円となっている。



クラッチ9段階、ドリルモード、ハンマードリルモード
回転数低速時0~500、高速時0~1600rpm
打撃数低速時0~7,500、高速時0~24,000回/分
最大トルク46N・m

 ドリルやドライバビットを固定するチャックの噛みもよく、10mmの穴を1mmの鉄板にあけてもすべることはなかった。

 またこの振動ドリルの大きな特徴は、回転数を2段階に変えられることにある。スイッチを低速の「1」に切り替えると、回転数を0~500rpmに下げたぶん、トルク(回転する力)が大きくなる。慎重に作業をしたい場合や、パイン材などの硬い木材に深い穴を開ける場合に使うといいだろう。

 高速の「2」に切り替えると、回転数は通常のドリル程度に速くなるがトルクが小さくなる。通常の工作なら高速側でもトルクは十分にあるので、低速で使うシーンは限られそうだ。

回転数の切り替えはこのスイッチで行なう打撃を加えないドリルモードと、打撃を加えるハンマーモードがあるドリルビットなしだと重量バランスはトリガ辺りに来るが、ビットを付けるとチャック側がかなりヘビーになる

 重量バランスは、ドリルビットを外した状態では、トリガー寄りだが、ドリルビットを付けるとチャック側に寄ってしまうので、長時間壁などの垂直な面に使っていていると、手首が疲れやすい。ドライバービットや5mm程度のドリルビットなら軽いのでさほど気にならないが、ブロックの穿孔だとコンクリートプラグ(コンクリートなどにネジ止めするためのもの)などを使うため、8mm程度のビットを使うため手首にかかる重さが気になる。

コンクリートプラグ。下穴を開けてプラグを差し込み、そこにネジ止めすることでモノを固定するブロックなどに穴をあける場合は、付属の鉄工用ビットではなく、コンクリート用のものを別途購入すること。刃先の形状が少し違うブロックなら難なく簡単に穴あけできる

振動ドリルヘッドを使っているところ

 ハンマードリルの穿孔能力を、8mmのコンクリートドリルビットでテストしたところ、ブロックやレンガ、タイルの穴あけには十分。しかし、コンクリートには刃が立たなかった。自宅のブロック塀にフックなどを取り付ける場合などには使えるが、土間コン(駐車場など床をコンクリートで固めること)に穿孔するのは難しいだろう。

 なお同梱されているドリルビットは、木工・金工用なので、コンクリートやブロックに穴を開ける場合は、別途コンクリート用ドリルビットを用意する必要がある。

 

打撃力で住宅の外壁にもネジ止めできるインパクトドライバー

家の外壁にモノを取り付ける場合などに必要となるインパクトドライバー。ブロックなどコンクリート系に使用するため、木工ではほとんど使うことはない

 別売品のインパクトドライバ(4,980円)は、ネジを回す際に衝撃を与えて硬い材料でもネジ止めするドライバー。スタータキットに同梱のドリル・ドライバーではしっかり入らないネジでも、インパクトドライバーを使うとすんなり打ち込める。主に住宅用の外壁材(窯業系サイディングと呼ばれるコンクリート系の壁)にネジ止めする場合に用いる。

 通常の木工ではまず必要ないが、まな板などに使われるブナ、ナラ、けやきなどの木材に、あらかじめドリルで下穴を開けず、長いネジを使う場合などに必要になる。


回転数0~3,100rpm
打撃数0-4,000回/分
最大トルク140N・m

 チャックはドライバー専用なので、着脱が簡単な差し込み式。スリーブと呼ばれる黒い部分を引っ張りながらドライバービットを差し込むとしっかり固定される。同梱品には、#2のプラスドライバビットが同梱されているが、長いものなどを別途購入する場合は、両端が頭になっているビットでなければ利用できないことに注意して欲しい。

 インパクトドライバーの回転力は非常に高いので、「ユニクロ」と呼ばれる鉄のネジは、ネジそのものをねじり切ってしまう場合がある。強度の高いステンレス製のネジに使うことをオススメする。また通常の木工などに使うと、ネジが木にめり込んでしまうので注意が必要だ。

バランスはトリガー根元にあるため、安定性は抜群長いビットを別途購入する場合は、両端が頭になったドライバビットにすることパイン(松)材程度なら、インパクトドライバーは不要。まな板に使われるようなブナ、ナラ、けやきなどに長いネジを使う場合に使う


インパクトドライバーを使っているところ

あると便利に使える空気入れのインフレーター

コンパクトな空気入れだけに、あるといろいろ重宝する。なにせエアーコンプレッサは重くて引っ張り出してくるまでに一苦労する

 別売品のインフレーターヘッド(3,980円)は、簡単に言えば空気入れのこと。一般的な空気入れ(エアーコンプレッサー)は、圧縮した空気を溜めるエアータンクを持っているが、本製品はそれがないため、空気の圧力は変化する。空気の圧縮はピストンを使ったレシプロ方式のようで、ポンポンと音を立てる。

 各種バルブに対応できるように、先端のアダプターがいくつか用意され、一般的な自転車のバルブに加え、アメリカ式のバルブ、フランス式のバルブにも対応。また浮き輪などの空を入れるためのアダプタや、ボールに空気を入れるアダプタも同梱されている。

 また圧力計も備えているので、タイヤなど空気圧を見ながら入れられるようになっている。ただし目盛りの表記はbar(バール)とPSI(ポンド/平方インチ)となっており、kg/平方cmの場合は単位を変換する必要がある。

先端のアダプターは各種揃っているので、まず困らないだろう空気圧計はbarとPSI単位。kg/平方cmがないのが少し残念
紛失しがちなアダプターだが、ポンプの中に収納できるようになっていて便利自転車の空気入れもあっという間に終わる

インフレーターで空気を入れているところ

パーソナルユースならこれ以上安くて使える工具はない!

 見た目の第一印象はサンダーや丸ノコなど、通常の工具とグリップが違うので、かなり使いづらいのでは? と懸念していた。しかし、multievoだけを使って1畳の板から棚を作ってみたところ、グリップの違いに違和感もなく、すべての作業がスムーズにできた。正直驚いている。使う前は、「丸ノコやサンダーはチョット無理しすぎでは?」と思ってしまいがちだが、まったくそんなことはなかった。

鍋を入れる棚を作って操作性を検証したとにかく使い勝手のいい工具という印象。これは超オススメ!完成! バッテリーはちょうど2個分使いきった。製作時間は2時間ほど

 しかも、2万円のスターターキットだけで、木工に必要な電動工具はすべて手に入る。ドリルビットやドライバビット、ジグソーブレードに紙ヤスリと、作業に必要な先端ツールなどもすべて揃っているだけでなく、バッテリーも2本標準装備という太っ腹さだ。しかもキャンペーン中に購入すれば、丸ノコまでタダで手に入る。

 「安かろう悪かろう」という点は微塵もない。グリップは握りやすく、バランスもハンマードリル以外はすべて問題なし。チャック類の噛みもしっかりしていて、モーターもパワフルだ。

 それぞれ専用の電動工具を使うとなると、アッチからコッチから工具を引っ張り出して後片付けも大変だ。しかも丸ノコやエアーコンプレッサなどは重いので、倉庫から出してくるだけでも一苦労。そんな悩みを一気に解消してくれるのが、このmultievoだ。

 すでに電動ドリル、電動ドライバーは持っているという方には、2台目として持っておくことを薦めたい。ドリルは2台あると片方をドリルで使い、片方をドライバとして使うと、先端ツールの交換が不要で、作業がはかどるからだ。

 D.I.Y初心者からセミプロまで幅広く使える電動工具として、このmultievoを強くオススメしたい。






2012年10月29日 00:00