家電製品ミニレビュー
しっかり&スイスイお掃除が進む、日立の紙パック式掃除機
by 藤原 大蔵(2014/3/12 07:00)
12年間使い続けた掃除機が壊れたのをきっかけに、新しい掃除機を探すべく大型量販店へ出向いた。自分が掃除機を選ぶポイントは3つ。1に取り回しが楽な「軽快なヘッド」が付き、2に絨毯の深部まで届く「力強い吸引力」があり、3にゴミ捨てがラクな「紙パック式」である事だ。
流行りのサイクロン式ではなく、あえて紙パック式にこだわる理由は、手も周囲も汚さずに、紙パックごとポイッとゴミ捨てができて便利だから。部屋の中でゴミをまとめるのが常の集合住宅居住者にとって、粉塵を立てずに掃除機のゴミ捨てができるのは勝手が良い。
購入するにあたり、売り場で様々な紙パック式の掃除機十数種を試した。その中で「これぞッ! 」と購入に踏み切ったのは(もちろん自腹)、日立アプライアンスの「紙パック式クリーナー CV-PY30」だった。CV-PY30は、日立の紙パック式掃除機の上位3機種、「かるパック」シリーズの中位にあたる。
メーカー | 日立アプライアンス |
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製品名 | 紙パック式クリーナー「かるパック」 |
品番 | CV-PY30 シャンパン色 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | yodobashi.com |
購入価格 | 34,800円 |
選んだ理由を一言で表すなら、「パワフルなのに、かけやすい! 」からだ。強力な吸引力を実感するのに、自走式のヘッドが軽々と前へ進むので、ヘッドの往復がとにかく楽チン。しかも手元のハンドル操作だけで、ヘッドの縦使い、寝かせ使いも思いのままにできるので、狭い場所や隙間も掃除機がかけられるのも気に入った。床質を感知してパワーを自動調節する「ecoこれっきり」機能にも大いに惹かれた。
ヘッドもブラシも取り付けたままコンパクトに収納でき、持ち運びもラク
本体の大きさは313×266×224mm(長さ×幅×高さ)で、重さは3.7kg。本体にホース、パイプ、ヘッドを取り付けた重さは5.4kgになる。コードはリール式で、長さは5mだ。
ホースの直径は50mmと太めだが、柔軟で軽く、ねじれにくい。パイプは463mmから715mmまで伸縮するタイプ。自走式ヘッドの幅が300mm(高さは65mm)あるので、ワンストロークで広い範囲が一気に掃除できる。さらに、グリップハンドルの付いたホースと、パイプ先の、どちらにも取り付けたままにしておける「クルッとブラシ」もついている。
持ち運びの取っ手へも配慮が感じられる。本体のハンドルの他、本体とホースの接続部に「サッとハンドル」が取り付けられるので、本体を持ちながら掃除機をかけるスタイルにも楽に対応できる。
「サッとハンドル」は収納にも役立つ。ヘッドがついたパイプが引っ掛けられるので、面積もさほど取らず、コンパクトにまとめられる。
床質に応じて自動運転できて、吸引力はパワフル
便利なのは「ecoこれっきり」運転。ボタン1つ押すだけで、ヘッドが床の材質を感知して、3段階のパワーを自動的に切り替えてくれる。ボタンはグリップハンドルの手元にある。実際に「ecoこれっきり」で運転してみると、フローリングは弱運転、ループで毛足が短い絨毯は中運転、毛足の長い絨毯は強運転と、ものの見事に自動的に感知してくれた。パワーの強さは、ヘッド部のインジケーターが赤(強)、黄(中)、緑(弱)に光って知らせてくれるのでとてもわかりやすい。
「ecoこれっきり」運転は、ヘッドの動かし方や床の状態によってパワーは変化するものの、概ね合っていた。リビングルームなど、部分的にカーペットを敷いたフローリングなど、材質が混在する床を掃除する時、いちいちパワーを切り替える煩わしさが無いのが良い。
もちろん、「強/中/弱」ボタンを押せばパワーは手動で調節できる。床の材質が一種類の廊下や洗面所などは、手動で切り替えて使い分けている。手動切り替え時も、インジケーターが強さを知らせてくれるので、手元のスイッチをいちいち確認せずに掃除が進められた。
実感するのは、パワフルな吸引力だ。「強」運転の吸込仕事率は670Wで、紙パック式掃除機全体の中でも特にパワフル。毛足の長い絨毯にもしっかりと食らいつき、毛先に絡まったゴミも、毛足に入り込んだ埃も根こそぎ吸い取ってくれる。弱運転(吸込仕事率110W)でも、フローリングに密着するような吸引力が、グリップハンドルを持つ手に伝わり、どんどんキレイになっていく! という感覚を覚える。目地に詰まった埃もしっかり吸い取られた。
スイスイ動き、狭いところもラクラク入って行ける
初めて運転した時、思わず驚いた。というのも、パワフルな吸引力が実感できるのに、ヘッドが自らスっと前へ進んだからだ。平らなフローリングならともかく、毛足の長い絨毯の上も、軽い力でどんどん前へ進められる。グリップハンドルは手になじんで力がかけやすく、片手でスイスイと掃除できるのが本当に快適だ。パワフルな吸引力と、ヘッドの動かしやすさは特筆に値する。
快適な操作感は、搭載されている日立の上位機種用の「スマートヘッド」によって生み出される、と言っても過言ではないだろう。ヘッド前方に高速回転ブラシが装着されており、ヘッドを前方へパワフルに自走させると同時にゴミをしっかり掻き出す。後方にはローラー式のハケがあり、ヘッドの動きに合わせて後ろ側のゴミも巻き込む。つまり、自走しながら前後のゴミを掻き集め、強力な吸引力で効率良く掃除ができる、というわけだ。床の材質に対応すべく、3種類の硬さと毛の長さで構成されたブラシも見逃せない点だ。
操作感をさらに向上させるのが、ヘッドの広い可動域だろう。ヘッドの根元は左右合わせて180度、上下に90度回転する。グリップハンドルを「ひねる」、または「傾ける」だけで、ヘッドの縦使い、寝かせ使いが簡単にできるのだ。ラクな姿勢のまま、ヘッドを壁際や狭い場所、家具と床の隙間にスイスイッと滑り込ませられ、少ない力でヘッドの往復ができるので、使い勝手がすこぶる良い。
パイプの長さ調節もラクラクだ。ヘッドに足を軽く添えて、グリップハンドルの「手元レバー」を引きながら、グリップハンドルを引く・押すだけで長さの調節ができてしまう。掃除の流れを止めずに、臨機応変にパイプの長さが変えられる。
自走式のスマートヘッドの他に、「クルッとブラシ」も使い勝手が良い。使い方は、「グリップハンドル」と「パイプ」の間に取り付けているなら、「クルッとブラシ」の取り外しボタンを押して「パイプ」を外せば、ブラシが自動的に飛び出してくる。場所に応じてブラシ部を回し、垂直面や棚上、階段、高所の掃除に重宝する。一般的なアタッチメントと違い、「クルッとブラシ」は取り外しボタンを押さないと外れないので、掃除中に抜ける事が無い。また、常に取り付けておけるので、失くす心配も無い。
ゴミ捨ては超簡単
さすが紙パック式、ごみ捨ては超簡単だ。本体を立て、上ふたを開ける。紙パックを押さえているフックを上方向に持ち上げて、紙パックを引き出すだけだ。たとえ紙パックがいっぱいになっていても、本体内部に引っかからず、「するり」と引き出せる。手はまったく汚れない。粉塵もほとんど舞散らないので、周囲も汚さない。紙パックの装着も簡単だった。
なお、集塵容積は1.7Lと、同社サイクロン式の4倍以上大きいので、ゴミ捨て回数が少ないのも利点だろう。吸引力が弱くなると、本体のランプが赤点滅して、紙パックの交換を知らせてくれる。
紙パック式はゴミが溜まると、どうしても吸引力が落ちる弱点がある。そこで、CV-PY30に紙パックの目詰まりを抑えるちょっとした工夫がある。電源コードを引くたびに、本体内部の振動ゴムが、上ふた内側にある「振動プレート」を振動させ、紙パックを細かく叩いて塵を落としてくれるのだ。
排気は、紙パックに溜まったゴミを通過して排出されるため、サイクロン式よりは分が悪いかもしれない。だが実感として、密閉した室内で掃除機をかけた後、空気もスッキリと感じられた。
本体後方にある排気口も工夫がある。排気の勢いを分散させ、上方に向けられるので、排気で床面の塵や埃が舞い上がりにくい。
パワーがある分、消費電力も高い
消費電力は「強」で1,200W前後、「中」で600W前後、「弱」で200W前後だった。1度の掃除で30分間連続運転した場合、「強」が約13円、「中」で約7円、「弱」で約2円という試算になる。
「ecoこれっきり」運転でもう1つ便利な機能は、運転中に操作しないとセンサーが感知して、自動で待機運転に切り替えてくれる(120W前後になる)事だ。さらに何も操作しなければ約40秒後に自動停止し、無駄な電力を抑えてくれる。
とは言うものの、数週間使って実感するのは、「弱」運転だけでも部屋中が十分キレイになる事だ。スマートヘッドが効率良くゴミを掻き出してくれるので、「弱」運転でも絨毯のゴミが簡単に取れるからだ。日常的な掃除なら「弱」、徹底的にするなら「ecoこれっきり」と、使い分けている。
欠点を挙げるなら、運転音の大きさだろう。吸込仕事率670Wを謳うだけに、「強」の運転音のカタログ値は65dBで、「騒々しい電話のベル音(70dB)」に近い大きさになる。それでも「弱」は59dBで、掃除機の中ではとりわけ静かな部類になる。
価格は少々お高いのも事実だが、とても気に入っている。何よりも、グングン前へ進むパワフルな自走式ヘッドのおかげで、掃除の労力が減り、短時間で済むようになったからだ。片手操作で、フローリング、毛足の長い絨毯はもちろん、隙間もスイスイと流れ良く掃除できるのが気持ち良い。パワフルで、取り回し、ゴミの始末がラクな掃除機として、オススメの一台だ。