家電製品ミニレビュー

パナソニック「スリムファン F-S1XJ」

~ワンルームや書斎に最適、羽根のないパーソナル自然風発生器

パナソニック「スリムファン F-S1XJ」

 いよいよ夏本番がやってきた。エアコンが活躍するのは当然のことながら、省エネ意識の高まりで、扇風機も活躍する季節だ。

 しかし扇風機は、ワンルームマンションや狭い部屋で使うと、設置スペースを食ってしまう。特に趣味や仕事で何かとモノが積まれている部屋だと、扇風機を首振りさせると、積んであるAmazonの箱に引っかかってギギギッ、反対を向くと本棚の角にブツかってギギギギッ! ということがある。

 そんな部屋に住んでいる人にオススメしたいのが、パナソニックの「スリムファン F-S1XJ」。幅が18cmという“超省スペース扇風機”なのだ。

メーカーパナソニック
製品名スリムファン F-S1XJ
購入場所ヨドバシ.com
購入価格26,100円

 パナソニックで「新 扇風機」と謳われているように、厳密にいえば扇風機とは少し違う。かといってサーキュレーターでもない。あえて言うなら、自然なそよ風を送る「自然風流機」である。

とにかく省スペース。手のひらサイズの床さえあればOK!

 普通の扇風機は、床に直径40cmのスペースがなければ設置できない。ましてや首振りをさせるとなると、扇風機の周囲およそ1mをあけなければならない。人によっては「なんだそれぐらいのスペース」と思ってしまうかもしれないが、前述のような部屋だと、「かなりのスペース」になる。

 しかしパナソニックのスリムファンなら、手のひらを開いた直径18cmのスペースがあるだけでいい。一般的な扇風機のような丸い羽根はなく、上部の細長いスリットから出る。左右合わせて90度の首振りも可能だ。

 一般的な扇風機は、そのデザインから存在感と生活感を感じさせるが、スリムファンは邪魔にならないというだけでなく、扇風機の気配や生活感をまったく感じさせない。上部の長いチューブは1枚のアルミ板から作ってあり、オシャレでかつ高級感のあるデザインになっている。

扇風機の場合、土台はもちろんのこと、首振りをするスペースも必要になる。しかしスリムファンなら、手のひらサイズの18cmの空間があればOK
一見すると扇風機や送風機の類には見えず、何かしらのオブジェっぽい。部屋の雰囲気を壊さない
タイマーは1/2/4時間の3段階、送風は5段階の調整が可能。ナノイー発生器も内蔵している
吹き出し口は1cm程度のスリット。ここから風が出る。細い支柱は、1枚のアルミ板でできている

 モーターは省エネのDCモーターとなっている。送風レベルは5段階あり、1,2,4時間のタイマー運転と、同社独自のイオン機能「ナノイー」の発生装置がついている。電源はACアダプタ方式となる。

 土台は直径18cmと小さい。高さは95cmで、腰程度ほどの背丈があるため、安定性が心配になるが、ガタつきグラつきは一切なく非常に安定している。重心は下部に寄せてあるようで、倒れる心配はほとんどないだろう。

扇風機としては弱すぎるが、都会で経験できないやさしい風

 冒頭でも少し述べたが、スリムファンは扇風機ではない。その理由を言葉で説明するのは非常に難しいのだが、まずはこれから紹介する実験を見てもらいたい。

 下の写真は、自作の風力計で扇風機の風を計測したもの。子どもの学習用風力発電機を改造して、ごく微弱な風でもその羽根を回し、風の強さを測定する装置だ。

 まずは、一般的な扇風機の風を見てみよう。

一番弱い「1(弱運転)」で運転すると風の強さレベルは48
中ぐらいの「2(中運転)」で運転するとレベル93
最強の「3(強運転)」で運転するとレベル106

 扇風機では一番弱い1でも十分に風を感じられ、最強にすると耳元で風のゴーゴーと音を立てるほどに強い。まあこれが一般的な扇風機の風というものだ。

 しかしスリムファンの場合、風は扇風機と比べかなり弱かった。詳しくは次の写真を見ていただきたい。

風が弱い「風量1~2」では、風が吹くものの、測定器の羽根は回らず
中程度の「風量3」にすると、風の強さレベルは31。扇風機の最弱の半分程度
「風量4」で風のレベルは46。扇風機の最弱より弱い
最強の「風量5」にして、ようやく扇風機の弱運転と同じレベルになる

 この結果だけを見ただけでは、ただの非力な扇風機でしかないが、ここで早とちりは禁物。次に、吹き出し口に貼り付けた2本の糸の動きから、風の質を見てほしい。

扇風機の風はうねり(渦巻き)を伴った風。遠くまで届くものの、不自然だ
こちらはスリムファン。扇風機と違って、2本の糸が絡んだり、渦を巻いたりしない。風はスリットからストレートに流れる
首振り運転しているわけではないのに、風が左右に10度程度振れる

 高原を抜けるそよ風のような自然の風は、扇風機のように渦巻いたり、うねったりすることなく、肌をかすめ抜けるが、スリムファンの風はそれに近い。扇風機と違って、2本の糸が絡んだり、渦を巻いたりしない。風はスリットからストレートに流れる。

 この風はパナソニックが独自の流体素子技術を使って、フラップ(エアコンなどで風向きを決める羽)などの機構に頼らず、あくまでも自然の力を利用して空気の流れを制御しているという。

スリットの内部には、迷路のようになった風向き制御用の空気の抜け道がある
吹き出し口の左右の気圧を変化させることで、スリットから吹き出す風を左右に揺らしている

 夏の暑い夜、窓を開けたカーテンはほとんど揺らぐことはないが、なぜか涼しい風が抜けていくといった経験がないだろうか? 都会ではなかなか経験できないが、田舎の宿などに泊まると感じられる。スリムファンは、そうした風に近いのだ。

 スリムファンと扇風機では、風の質がかなり異なるので、扇風機のように一極集中した強い風を求める人にはオススメできない。またスリムファンはごく自然な風を送るため、家族5人で使う扇風機としてもオススメできない。基本的に1人用の製品なのだ。

消費電力は最大でもたった12W。ホコリの手入れはこまめに

 スリムファンのメリットとしては、DCモーターを採用しているため、扇風機に比べても格段に省エネという面もある。詳しくは下の表を見ていただきたいが、消費電力は最大でもたった12Wだ。

【スリムファンの消費電力(実測値)】
風の強さ消費電力
14W
26W
37W
49W
512W
【一般的な扇風機の消費電力(実測値)】
風の強さ消費電力
113W
226W
331W

 スリムファンの風は、本体下部から吸い込む。通常冷気は床付近にたまるため、下部から吸気して、腰辺りから送風することで、ちょっとしたサーキュレーション効果も期待できるかもしれない。ただ、ホコリっぽい部屋で使う場合は、吸い込み口にあるフィルターをこまめに清掃する必要がありそうだ。

上部からの送風は少し強めで、下部の送風は弱めになっている
吸気口は本体下部の床スレスレにある
U字型のユニットは簡単に取り外し可能
洗濯物などを取り込む居間で2週間使っていたところ、かなりフィルターが詰まっていた

 またリモコンもオシャレだ。支柱上部にあるスイッチは取り外しができ、リモコンとして使用できる。一体感のあるデザインなので、パッと見た目は取り外せることが分からないほどだ。本体のスイッチで操作できることは、すべてリモコンからも操作できる。

本体上部に乗っているリモコン。一体感のあるデザインなので、パッと見た目は取り外せることが分からないほど

ワンルームや書斎に最適。羽根がなくやさしい風なので赤ちゃんや子供用にも

 筆者は仕事部屋で使用した。仕事部屋は6畳間なのだが、実験機器やらレビューする家電の数々で部屋は床が見えない(笑)。普段は銭湯や温泉にある壁掛け式の扇風機で部屋の空気をサーキュレーションしているが、首振りにしてしまうと書類が飛び散るので、非効率なのは承知で、部屋の中央からソッポを向くようにして空気を循環している。

 そこでスリムファンを使ってみたところ、これが快適! 直接風を当てても書類は飛ばないし、極めて自然なそよ風が肌を抜けるので、エアコンの設定温度を1~2℃高めに設定しても、体感温度は涼しいままというのがうれしかった。

 本文中でも述べたとおり、スリムファンは扇風機でもなければサーキュレータでもない、いうなればパーソナル自然風発生器といったところだ。したがって5人家族が集まる8畳間の扇風機代わりにしたり、風呂上りに浴びる扇風機として使うには不向きだ。主な用途は、独身世帯のワンルームで使う扇風機、さらに書斎で個人的に使うものとしてオススメしたい。

 また自然な風を送れるという点では、赤ちゃんから小さな子供用の扇風機としての利用価値が高い。回転する羽根もなく、自然に近いナチュラルな風なので、子どもの健康や安全も最適だ。

藤山 哲人